テンプレ読むなら配信モノ現代ファンタジーより異世界転生ナーロッパが好き
最近なろうでも別の小説投稿サイトでも、現代ファンタジージャンルで「配信で人気者に!」というジャンルの作品を良く見かけます。
視聴者の反応を掲示板形式を描いたり、徐々にテンプレ化が進んでいますね。個人的にこれらの作品群は「配信モノ現代ファンタジー」と呼称しています。
なぜこのジャンルが流行り始めているのかを考えると、小説というのは「自分の経験していないことを面白く書くのは困難」であるからだと思っています。
超人的な小説家・ライター達のように「どうでもいい題材を上手く調理する技術」があるならこれに限らないですし、逆にどれだけ素晴らしい題材があっても調理技術が皆無なら面白くはなりませんが、「平凡な言語能力や発想力」を想定した場合は現実での体験は重要です。
小説投稿サイトは「平凡な人でも沢山の人に閲覧される可能性のある場所」であって、超人的な小説家だけが書く場所ではないので、小手先の技術や文章力より興味深い体験一つの方が小説の面白さには寄与すると考えています。
そしてインターネットを利用する平凡な人達にとって、"配信を閲覧する"のが最近の現実生活で最も深く体験していることのため、それが関っていると細部まで命が宿った物語を描きやすいのでしょう。
加えて読み専の立場から言えば「自分が体験したり感じたことがない小説を面白く読むのは難しい」もあるでしょう。
代表的な恋愛テンプレを例にすると、「婚約破棄」「浮気ざまぁ」は「クソ男が嫌い」「クソ女が嫌い」という実に分かりやすい現実的な感情を下敷きにしてますから、相当幸せに過ごしている・またはそもそも恋愛に大して興味がない人以外にはウケが良くなります。
配信モノは配信を見たことがある、およびVtuberを筆頭にそういったものが人気があり、かつ配信者はアイドル的な扱いをされている事を知っていれば読めますから、閲覧にあたり敷居は相当低いので人気が出るのも頷けます。
しかしながら、自分は「配信系Vtuber」に一切興味がなく、また配信を見るとしても作業用BGMかゲームの待ち時間にそのゲーム配信などを見て暇潰しする程度なので、このジャンルがとても苦手です。
配信コメントもした事がないのでコメント文化の描写をされても共感が難しく、投げ銭サブスクという文化に至っては一種の憎悪感情すらあるのでもはや理解すら難しい。
なので「流行らないで廃れてくれないかなぁ…」とひそかに思っています。
なろうを暇つぶし目的で閲覧している時はあまり脳に負担を掛けたくないので、新しく読みやすいテンプレが出てくる事自体は読み専として望ましいことです。
「配信」があまりに遠い世界だったのでたまたま好ましくないと思ってしまっていますが、ボーイズラブを除く大半のジャンルは楽しく読める性分なので、新たなテンプレの芽を発見することは概ね喜びに繋がります。
しかし、テンプレ自体はなろうのランキングの通りかなり固定されていて、新しい芽が出てくるのはとても稀です。
その原因として、冒頭でもある通り「自分の経験していないことを面白く書くのは困難」なのが影響していると考えています。
興味深い人生経験を積んでいてかつ小説を書いてみようという意思があり、投稿サイトが人気が出始める前に蓄積していた人達の大半はもう書き終わってしまってテンプレ(オリジン)を残しており、残っているのは読み専と同レベルの「大して人生で面白い体験をしていない人」で、"配信"のような新たな社会的認知度が高い体験談が充実しないとなかなか新しいテンプレは出てこないでしょう。
小説投稿サイトに残っている人も、「人生で得た体験や知識を文章にしたい」という人より「本やネット小説を読むのが趣味で、かつ小説を書きたい人」の比率が高まっているのではないでしょうか。
もちろん文学が趣味であること自体は良いのですが、その人が凡人であった場合、面白く作れる可能性のあるテンプレは、「本ばかり読んでる人の物語のテンプレ」です。
「本ばかり読んでいる人」の作品で面白い作品だととある異世界転生モノが思い浮かびますが、あれは作者が「図書館問題研究会が発行する雑誌でエッセイを書けるくらい図書館に思い入れがある」のが下敷きになっているからこそ面白いのです。
または「本ばかり読んでいる人を周囲がどう思うか」を客観的に見れているから面白く読めるのであって、ただ雑多に本を読むだけの人のテンプレを作っても恐らく一発ネタにもならないでしょう。
改めて、「人生で大した経験はしていない凡人が、ネット小説でそこそこ面白い物語を描ける可能性があるテンプレ」として「異世界転生ナーロッパ」は優秀だと感じます。
主人公の思想や体験以外は写実的に描く必要がないため、自宅ひきこもりニートでも妄想だけで物語を描くことが出来ますから。
何かしらのメッセージ性がある場合でも、異世界ナーロッパでそれを描くために高い教養や奥深い体験談なんて必要ありません。「異世界ではこれが正義」と書いておけばそれで言いたいことは伝わります。
「ぼくがおもう最高のせかいかん」を構築しても良いし、おおむね共通認識になってる部分はもう他作品と同じ世界観ですよと説明を省いてしまってもよい。というより、大して面白くない人間が考える設定は何かしらの事故でもない限りやはり大して面白くないはずなので、優秀なテンプレートを借りてしまった方が早い。
ただ、最近は行き過ぎるくらいにテンプレを意識してしまい、没個性の主人公となってしまっているのでは?という作品が多いと感じています。
作者自身が興味深い人生を過ごしていたりまたは高い執筆能力があるなら話は別ですが、そうでない場合は作者に近い存在のコピーを異世界転生させた方が面白くなる可能性は高いのではないでしょうか。
配信モノ現代ファンタジーはかなり集客力高いと思いますが、作者コピーが主人公として活躍する系の異世界ナーロッパも末永く生き残って欲しいところです。