名前も似てるよね
よろしくお願いします!
俺達は双子で有名。
兄の俺は公爵家の嫡男・ミカエル。
妹は公爵家の長女・ミシェル。社交界の華をしてる。職業みたいだな……。
使用人曰く、「お二人とも、美形でいらっしゃるからお仕え甲斐がある~!」
だそうだ。
俺は一応剣術をマスターしてるし、妹は一応公爵家として恥じないようなマナーを身に着けている。
ここからは、オフレコになるが……。
俺達はそれぞれのことが出来ない。
俺は領地経営ができない。代わりにミシェルが得意だからミシェルに頼む。
「ミシェルー。今月のこの資料なんだけど……?」
「ミカエルお兄様またですか?」
そう言いながら、ミシェルは満更でもない。
ミシェルはミシェルで領地経営が得意でなおかつ好きなんだろう。
「あ、ここの数字を直すと数パーセント変わりますね。そ・れ・と!問題なのは、この数値の変遷です。確か昨年の数値とあまり変わりません。おかしくありませんか?今年は天候にも恵まれているんですよ?領地で作物の収穫量が変わりないというのはありません。むしろ数パーセントの上昇が考えられます。昨年は天候にも恵まれませんでしたし」
「はぁ、なるほどな。そういう風に、会議で話すよ。まいどありがとう!」
「あら、お礼なら今すぐに!危機が迫ってますの!
もうすぐ、侯爵夫人主催のお茶会ですの。でも人物関係とかさーっぱりわかんなくて、ミカエルお兄様に助けてもらおうと思っていたところですの」
「えーと、テンキ侯爵夫人か……。うーん、行くの辞めとけば?いいウワサ聞かないぜ?使用人と不倫してるとか?出席者名簿はっと。うーん、このメンバー……。なんだ?不倫友達?その中にお前も入れば箔がつく。みたいな?」
「それなら欠席しようかしら。私は不倫などしたくありません!」
そう、俺・ミカエルは領地経営が苦手だが社交が得意(実技はしたことないけど)、妹・ミシェルはミシェルは社交が苦手だが領地経営が得意ということだ。
そのことはうちの両親も知らない。
俺が妹の部屋に行っても、「仲がいいなぁ」と思っているくらいだ。のん気だな……。
その実、領地経営について相談に行ってるんだが……。
あ、ミシェルの侍女・サラは知ってるな。幼馴染でもあるし。部屋にいるからな。
「お嬢様、領地経営ができることはいいことだと思います。ええ、ええ。で・も、社交が苦手ってどういうことですか?社交の方が領地経営よりも簡単じゃないですか?」
「「サラはきついなぁ」」
俺とミシェルは同時に言ってしまう。
「だって~、みんな同じ顔に見えるんだもん!」
「俺は数字見ると、書類の上で迷子になる。「あれ?1行抜かした?」みたいな?」
「はぁ、お二人とも相変わらずですね。成長してください」
「「は~い」」
まぁ、サラが言う事ももっともなんだよなぁ。
俺とミシェルはいつかは離れて暮らすことになるわけだし。独立しないといけないってのはわかる。でも……数字の羅列を見ると、正直気分が悪くなるんだよな。いっその事もう隠居したい!できないけどさ。公爵家の跡取りいないから。
ミシェルも嫁に行くだろうし、そこで今みたいな社交能力だと死んでしまう。死なないにしても、評判は死ぬだろうな。今がいいだけに。俺が評判上げたんだけどさ。
**********
俺は会議に臨んだ。あぁ、さっきミシェルに相談した資料についてだ。
「この数値の変遷です。確か昨年の数値とあまり変わりません。おかしくありませんか?今年は天候にも恵まれているんですよ?領地で作物の収穫量が変わりないというのはありません。むしろ数パーセントの上昇が考えられます。昨年は天候にも恵まれませんでしたし」
一言一句、違わない。
「いやぁ、さすが若君!そうですなぁ、ここの数値はおかしい!」
「よく見つけたな、ミカエル。で、どう思う?」
うお、アドリブは困った。なんてことを言うんだ親父!
「横領とか?」
苦し紛れに言ってみた。横領ってもっと巧妙にするもんだと思っている。あり得ないだろう?
「うん。そうだな、俺も思う」
ふぇ?正解?横領ってこんなわかりやすいの?いや、暴いたのはミシェルだけど……。小説とかだともっと巧妙に隠してるもんだろ?なんで俺の勘で??
「サム!大至急、領地に出向く!この管理人と話をつける。この帳簿はどういうことだとな?ついては、俺が留守の間はミカエルが屋敷の主人として動くように!以上!解散!」
はぁ、会議が終わったけど……。俺が主人とかありえねー!!
***********
「助かったよ、ミシェル」
「お礼なら庶民中で美味と噂のあいすくりーむというもので構いませんよ?」
そういう噂は速いな。その情報取集力を社交で使って欲しいものだ。
「でさー、親父が言うには親父が留守の間俺が屋敷の主人なんだと。無理じゃねー?そういうわけで、全面的に補助してくれよ。あいすくりーむなら買ってこさせるからさ」
「あいすくりーむにはいろんな味があるようですので、各種少しづつとかできるのかしら?」
「はぁ、わかった。全味を用意すればいいんですね、お嬢様。そういうわけで、頼んだ」
「それにしても横領とはねぇ?」
おい!ミシェルはうすうすわかってたんじゃねーか?顔がちょっと笑ってるんだけど?
「さようですね、お嬢様」
サラまで言うか……。
「俺は会議中緊張で大変だったんだからな!俺が労ってもらいたいもんだ」
「「具体的には?」」
そうだなぁ?思いつかないけど、見返りの要求ナシでミシェルに俺を助けて欲しい。口にはだせないな。なんだか、兄としての威厳というものがない気がする。気のせいか?
**********
親父が留守だというのに……王宮主催でパーティーの招待状が届いた。
「急な話ですね?」
「俺もそう思う。王宮主催だし、ドレスとか準備をしたいものだろ?」
「ええ、大抵の令嬢はそのように準備をなさいます」
「え?そうなの?」
「そうなんだよ!!」
ご機嫌にあいすくりーむを食べるミシェルを俺とサラはじっとした目で見てしまう。
「んー、あいすくりーむ。美味しいんだけど、一気に食べると頭がキーンとなりますわ。医者を呼んだ方がいいかしら?」
「お嬢様、それは正常な反応です。急いで食べすぎです」
「だって、溶けちゃうんですもの」
「そういう食べ物です」
「ミシェル、今日はこの味。明日はこの味……とかにすればいいじゃないか?」
「そうすればいいですね。使用人たちが間違って食べちゃったりしないかしら?」
「使用人たちには伝えておこう。特に、厨房勤務だとあいすくりーむを体が欲するかもなぁ」
「??何で??」
「甘いものは疲れてるといいだろ?厨房勤務は疲れるし。火元で動いてるから熱い時に冷たいものを体に入れるとスッキリするだろ?」
「はぁ、ミカエルお兄様はそう言う事に頭が回るのですね」
「ん?使用人たちに通達しなくてもいいんだが?」
「いいえぇ、優秀なお兄様には是非ともそのままで!」
「うむ」
「はぁ、あなた方の補助をしていると疲れます」
「サラもあいすくりーむ食べるー?」
「あ、パーティーの準備の話だった。ミシェルはドレスとか持ってるよな、お茶会とか顔出すし。俺がちらっとリメイクするか?」
「「りめいく?」」
「最近の流行になるように古くなったドレスを変えるんだよ。裁縫技術をもってして!まぁ、俺の腕の見せ所ってやつ?」
「そんなことよりも、ミカエル様はスーツの一つも作ってください」
「あー、採寸して……かぁ」
「そうですよ!すでに、仕立て屋を手配しています。明日には採寸していただきます」
「手際がいいなぁ。ミシェルの方はどうなってんの?」
「ミカエル様とお揃いで宝飾品など用意をしております故ご心配なさらぬよう」
「はぁ、ミシェル!お前も見習え!この手際の良さとか」
「何よ!ミカエルお兄様なんてスーツの価値もわからないクセにー!」
「まあまあ、お二人とも。あいすくりーむが溶けてしまったじゃありませんか!」
「あら、いけない」
「なぁ……コレ、買いなおすのか?」
「いいわよ、溶けちゃったんだもん。サラー、もう一回固めたらダメかしら?」
「多分大丈夫かと……」
話はほぼあいすくりーむの話だった。俺が屋敷の主人をしなくてはならなくなったという話をしにミシェルの部屋に行ったはずだったんだけどなぁ。
「あいすくりーむならば容器に名前を書いておけばいいでしょう。あと、俺が使用人に言っておくから……。えーと、俺が屋敷の主人をしなきゃいけなくなったんだけどどうしよう?」
「どうしようもこうしようもないですわ、頑張れー!」
応援だけか……。
「うん。具体的な案がないならば使用人にはあいすくりーむのこと言わなくてもいいかな?疲れてるだろうし、甘いものも必要だよな」
「あーっ!!お兄様!何かあれば私に相談してください。きっと役に立ちますわ。ええ」
必死だな。そんなにあいすくりーむのことが重要なのか……。
「あと、舞踏会はどうしよう?」
「ミカエル様がミシェル様のそばを離れずに、社交情報をミシェル様に供給し続ければいいのでは?」
「お兄様、お願いしてもいいでしょうか?」
「代わりにミシェルは俺が屋敷の主人をする際に手伝ってくれよ!」
「わかりました」
「はぁ、お二人は昔からこういう関係なんですよね」
**********
サラ目線~
二人が五歳の時、ミカエル様には嫡男として領地経営の手法を身に着けるための家庭教師がつきました。しかしながら、家庭教師の時間にはミシェルも同席。家庭教師の先生も『可愛い子供が増えた♡』くらいに考えたのか、咎める事もなく同席を許していました。
お二人のご両親は「二人とも仲がいいなぁ」と見守る程度でそのまま見ていました。
結果、ミシェル様に領地経営能力がつきました。
お二方は幼少期それはそれは微笑ましくも仲が良く、共にいたのです。
私も含めれば、所謂‘幼馴染’という感じです。
そんな生活をしていると、男子:女子の比率が女子の方が多く、ミカエル様の社交能力がつきました。
ミシェル様はミカエル様が社交能力がついているので、あえて友人の名前や交友関係・家柄など社交に必要なことを覚えようとしませんでした。
そんなように育ってきたので、現在、お二人は困っているんです。(多分)
少なくとも、二人がともに生活がしているうちは大丈夫でしょうね。でも、ミシェル様もいつかはどこかよい家に嫁ぐことでしょうし、そうなるとその家での社交に困ります。
ミカエル様はミシェル様がいないこの公爵家で領地経営はできるのでしょうか?伝統ある公爵家のこの先が思いやられます。大丈夫なんでしょうか?心配です。
**********
王家主催のパーティーにて、俺はちょっと楽しみだった。
知識のみで知っている貴族を見れるのだ!いったいどんな人物が、ウワサに上っているのだろうと考えると楽しい。知識と現実をすり合わせるのが楽しい。『そうか、あの噂の侯爵は容姿に優れていると思ってたんだけどなぁ。そうでもないなぁ。あれだと離婚まで近いな』など、頭の中で考えるのだ。
ミシェルに『ちょっと!ちゃんと貴族の情報を教えてくれないと大変なことになるのよ!』と言われる。確かに。
そうなんだよな。ミシェルのミスが我が公爵家の評判に直結する。こいつは俺も気が抜けないな。
「ミカエル様。私と踊ってくださいませんか?」
女性から誘うのは相当な根性だろう。男性から誘うのが定石だから。ミシェルを一人にするわけにいかないんだよな……。
「申し訳ありませんわ。お兄様は今日は私が独占していますの。その約束でこの場に連れてきているのよ、だからゴメンあそばせ」
こういう社交はできるんだよな……。野生のカンみたいな?危機管理能力?
「ミシェル嬢、私と1曲付き合っていただけませんか?」
あぁ、こいつはサイドン伯爵家の長男か……。結構モテるらしいな。俺は知らないけど?ミシェルに情報を与えたうえで。ミシェルはというと……
「ごめんなさい。私はこのように足首を痛めていて本日は舞踏会だというのにダンスの一つもできないのよ」
いつの間に、足首に包帯巻いてんだよ?すごい小細工だな。関心してしまう。
「そういうわけで、ごめんなさいね」
「おい、ミシェル。いつの間に足首痛めたんだ?」
「ほほほっ、こんなのは序の口よ?念のためだったんだけどね。情報助かったわ」
サラの入れ知恵かな?俺もミシェルもダンスはできるんだけどな、お互いに一人になってボロを出すとヤバいからな。
「ミシェルちゃん大丈夫?もうおうちに帰った方がいいんじゃない?」
母上は過保護だな。
「公爵夫人の言うとおりだわ。ミシェル様は帰ったほうがいいんじゃないんですか?」
ああ、これが所謂社交界の嘲りみたいな?
「それなら、俺も帰ろうかな?特にすることないし?」
令嬢たちが顔色変えるけど。おそらく、公爵夫人の座を狙ってたんだろ?あ、俺狙われてたのか。あぶねーな。他人を嘲るような心根が醜いような令嬢を娶りたくないけど?
「そうね、ミカエル君がミシェルちゃんと一緒なら安心だわ。家にはサラもいるし」
こうして、俺とミシェルは家に帰った。
**********
「はぁー、疲れたー!サラ、なんかお茶淹れてー!」
「かしこまりました。ではこちらで、世にも珍しい疲労回復のお茶を……」
「「そういう時はマズイお茶だ」」
ちっと舌打ちが聞こえた気がする。気のせいだと思おう。サラ……マズいお茶を俺らに飲ませたいのか?
「普通にカモミールです」
「これでいいのよ、あぁ最初からリクエストすればよかったわね。サラには悪いことしちゃった」
「サラ、ありがとう。舞踏会も恙なく終わったよ。……多分」
「サラ考案の足首に包帯っていうのも役に立ったし」
やっぱり仮病(?)だったか。
「そういえば、王家主催ってのに俺らは陛下の所に挨拶にいってないがよかったのか?」
「ご安心ください。恐らく、お二人のご両親がうまいことやっているはずです。腐っても公爵家」
うちは腐ってないと思うぞ。
*******
このように、うまいこと役割分担をして(途中サラの助けなども入りつつ)俺達は世間を渡っていったのです。
明日の事は明日考えよう!
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