珈琲老人
「「どうも~、珈琲老人です~。お願いします~」」
「ああ、ありがとうございます! 今、お客様からおせち料理についてるちっちゃな金色の扇子を頂きました。こんなんなんぼあってもいいですからね」
「ありがとうございます~。ところでな、うちのオカンが殺人事件を推理してるらしいんやけどもね、怪しい容疑者はおるけど確証がもてんらしくてね」
「どうなってんねん。でもまあ、事件の犯人なんて、陰のある美人か陰のある美青年ぐらいでしょ、そんなもんは」
「いや、違うらしいねん。いろいろ聞くんやけど、全然分からへんねん」
「分からへんの? ほな、俺が一緒に考えてあげるから、容疑者にどんな特徴があるって言うてたか教えてみてよ」
「全身上から下まで黒づくめの奴やっていうねんな」
「あ~、その特徴は犯人で決まりやないか。事件現場に全身黒づくめがおったら、それはもう犯人ですって名刺渡して自己紹介してるのと同じなんやから」
「でもちょっと分からへんねんな」
「何が分からへんのよ?」
「俺も犯人で決まりやと思ってんけどね、オカンが言うには、一発ギャグが得意なムードメーカーらしいねんな」
「ほな絶対犯人とちゃうやないかい。一発ギャグが得意な陽キャが人を殺せる訳ないんやから。包丁持ってもバール持っても物ボケの道具としてしか使われへんのよ。もうちょっと詳しく教えてくれる?」
「事件の後、落ちない……落ちない……ってブツブツ呟きながらずっと手を洗い続けてるらしいねんな」
「犯人で決まりやないか。返り血の幻覚が見えて手を洗い続けるのは犯人の鉄板あるあるなんやから」
「でもちょっと分からへんねんな。俺も犯人できまりやと思ってんけどね、オカンが言うには、聞いたことのないちょっと不気味な歌詞のわらべ歌を口ずさんでるらしいねんな」
「ほな絶対犯人とちゃうやないかい。それは、後々その歌詞に見立てて連続殺人が行われていることに気付くヒントを提供してくれてる村人AとかBの特徴なんやから。もうちょっと他になんか言うてなかった?」
「これはオカン自身の話なんやけど、事件当夜の記憶が全くないらしいねんな」
「…………他になんか言うてなかった?」
「その夜のことを思い出そうとすると激しい頭痛に襲われるらしいねんな」
「…………もっと他になんか言うてなかったか?」
「目が覚めたら着てる服に見覚えのない赤黒い染みがたくさん付いてたらしいねんな」
「…………他には?」
「あと右手に血塗れの包丁を握ってたらしいねんな」
「どう考えてもオカンが犯人やないか。犯人の条件全部満たしてもうてるのよ。怪しい容疑者について色々わけわからんこと言うてたのも捜査をかく乱するためなんやないかって気がしてきたがな」
「でもオカンが言うにはな」
「おう」
「私は犯人ではないって」
「それも犯人が絶対言うやつやから。犯人はオカンで決まりや。とにかく君のオカンに早く自首するように勧めるしかないがな」
「オトンが言うにはな」
「オトン?」
「オカンには悪いことをしたって」
「ほなオトンが真犯人やないかい! もうええわ! いや、良くないわ!」
「「ありがとうございました~」」