好きって言ったじゃない
本作は短編『やっぱり幼馴染とは付き合えない』の続編となっております。
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私には、俊樹と言う幼馴染がいる。としきって読むから、私は彼のことをいつもトシと呼んでいた。
そんなトシは鈍感で私の気持ちにちっとも気付いてくれない。だから私はトシに彼氏ができたって嘘をついた。そして私は何度も嘘の彼氏――嘘カレを作った。
でも、トシは私に何もしてくれなかった。私に告白をしてくれなかった。とうとう私は我慢できなくなって、自分から告白した。
トシはOKしてくれた。してくれたのだけれど……。
「ファーストキスは一人目の嘘カレの早瀬くんとしたよ。初体験は二人目の宮田くん。ああ、それとエッチは四人目の笹川くんが一番上手だったかなあ」
私はトシをからかってしまった。私としては今までの仕返しのつもりだった。
普通に考えれば嘘カレとそんなことするわけがない。エッチだってキスだって私は未経験だ。
けど、トシの顔は青ざめていった。私はすぐに嘘だと言おうとしたら――。
「ごめん、付き合うのやっぱ無理」
それからトシは話をしてくれなくなった。すれ違っても目も合わせてくれない。
何度も声をかけ、ようやくトシは私の話を聞いてくれた。なのに……。
「トシ……あの事なんだけど……全部嘘なの」
「そうか、俺のことが好きってことも嘘だったんだな」
「違う! 違うの!」
「茉依子の気持ちはわかってる。俺をからかいたかったんだろ?」
「そうじゃない! そうじゃなくて……」
「それじゃ」
トシは私の前から立ち去ってしまった。私に背を向けたまま、トシは振り返ることはなかった。
トシの誤解を解けないまま、半年が経った――。
友達と駅前で遊んでいた時、私は見た。見てしまった。
「あれって……」
トシが女の子と手を繋いでホテルから出てくるのを。
女の子は腕も足も細くて、それでいて背が高い。まるでモデルみたいだ。何より、私じゃ足元にも及ばないくらい綺麗な子だった。
トシ……なんで……なんでなの?
私のこと好きって言ったじゃない。
最後まで読んで頂きありがとうございました。