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White -in eternal winter, you slept for years-  作者: 浜坂摩耶
2. Seeking my heart, above the past.
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2-2 自己の透明化-第一段階-/only me, only one 202X/2048 (9)

 ノア・アスターの抹消計画。それを聞いた時、私はalphabeterに話し合いは通用しないものだと改めて理解した。そもそも分かり合えないからこそ警戒されているのに、何故それを忘れていたのだろうか。このままでは私はおろか、お兄様、さらには関係のない人達を死なせてしまう。そのため、私はさっさとこの場を打破するために立ち上がろうとした。


「………???」


「おや??どうしたんだいお嬢さん??まさか恐怖で腰が抜けたかい??」


 そう。体が椅子から離れないのだ。件のBの言う通り、腰を抜かしてしまったのだろうか。だとすれば、私はどれだけ弱い存在なのだろう。

 しかし、私はこの現象に思い当たる節があった。


(お兄……まさか能力を……??)


 この危機的状況ではあるが、そもそもこの異変に気づいているのはノア・アスターだけだ。それ以外には、本来あるはずだった中佐との見合いが続いていると認識されている。

 つまり、兄は妹が中佐相手に何かしでかさないように何か妙な能力で椅子に押さえつけていることになる。私が見合いに対しあまり良い印象を持っていないのを兄は当然把握した上での行動なのだろう。

 要するに、兄に信用されていない。


(…はは)


(親友にも見限られ、兄にも見限られるなんて)


(これじゃあ、もうどうしようも……)


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 突如、兄がそんな事を口にした。


「へえ。スメリ・アスターの話は風の噂で聞いてはいたが、確かに鋭い感覚だ。中佐を相手にしてもこの態度とは、お前さんのお兄ちゃんは怖いな。さぞ、息苦しかっただろ??」


 確かにお兄は人を見る目は人一倍に鋭い。さらには本質まで見抜くことができるのだから、中々に恐ろしい人物だと思う。

 だが、今の発言は恐らく、そういった意味でのものではない。


()()()()()()()()()()()()()()()()()


「全く、笑わせられるぜ……!!!そんな観察眼でも、俺の能力には敵わないんだからなあ!!!」


()()()()()()()()()()()()()()()()()


「どうせだし、死ぬ間際まで見てやろう。スメリという人間ってのをな。くくく……!!!」


 ああ、コイツはまるで持って分かっていない。お兄という人が一体どういう人物なのか。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「くははははは!!!!!!!………え??」


 突如、お兄と私以外の空間が歪む。


「……っな!!!!!!!」


 Bは早くも能力を解除し、この空間の維持にリソースを置き始めた。どうやら空間の維持が何かしらに関わる能力であるらしい。

 だが、そこにリソースを置いた事で、お兄に掛かっていた催眠が解かれた。

 そしてお兄は、ようやく今の状況を把握する。


「………なるほど。やはりそうか。」


「………テメェ、本当に面白いヤツだな。」


「観察眼は人一倍鋭いからね。alphabeterの君ですら、少し焦っているんじゃないかな。」


「………………」


「図星か。まあその程度だってことが分かっただけマシだね。」


 さらに空間が歪む。


「!!!!!!!!!!!!!」


「さて、そんなalphabeterの君に、もう一度質問だ。」


 いや、歪むだけではない。


「私の能力はなんでしょう???」


「な!!!!!!!圧縮だと!!!???」


 そう。お兄はこの空間を圧縮しようとしていた。空間の酸素、窒素、二酸化炭素等で構成される空気を、ただ一点に凝縮させている。その一点であるBへと向けて。

 だがやはりalphabeter。この圧縮に対して空気の反発を起こす。


「……はあ、はあ……」


「流石はalphabeterなだけはある。その力、私に分析させてほしいな。力の本流、その源。その本質を私は見抜きたい。」


「チィッッッッッッ!!!!!!!!!!」


 空気と空間が衝突する。alphabeterとアスター家の最高傑作。この64㎡の部屋で能力と能力が交差する。



「ぐすっ…ぐすっ…」


「ワタシ…ママから…産まなきゃよかったって……」


「ねえ……おにい……ワタシって……いらない子なの……???」


「………………」


…………………………


「「なっ!!!!????」」


「………つまらない親だな。何故私はこれに気づけなかったのだろうか。」


「スメリ……どういうことだ……どうして本家当主がお前に変わっている……!!!!!」


「そうよスメリ……アナタはまだ子供。だから私に当主を譲りなさい!!!!」


「何を言っている!!!!お前なんかに当主の座を渡す訳にはいかない!!!!」


「はあ!?失敗ばかりの貴方にそんなの渡すはずが……!!!」


「お前らに渡す訳ないだろ。」


「「!!!!????」」


「これはお祖父様から譲って頂いたものだ。先代がお前らではなく、私にくれた席だ。」


「何をふざけたことを!!!!現当主の私の許可なく、それも一度身を引いた先代がそんなことができる筈が」


「お祖父様はお前に当主の座を渡していない。」


「……は???」


「これがその証拠だ。」


「……な、なんだ、そのアクセサリは……??」


「代々アスター家当主が受け継いだものだ。」


「……ま、さか。そんなまさか!!!」


「ああ。そもそもお前がお祖父様に渡されたのは、地主の権利と、アスターの名前だけだ。」


「ふ、ふざけ……」


「そもそも、お前は試練に受かっていないはずだ。私はそれに合格しただけ。それだけのこと。それに、私はお前らなんかよりもビジネスや開発に成功している。それにアスター家が継いでいる能力の最高水準を叩き出したのだぞ??これだけ揃っていれば、私が当主であることに疑問などない。」


「……お前は、父や母に楯突くのか??」


「そ、そうよ!!!アナタは私がいなければ生まれなかったのよ!!!そんな恩知らず、許される筈がないわ!!!」


「子をお前らの損得で判断するなど、もはや親ではない!!!!!!!!!!!」


「現当主、スメリ・アスターが命ずる。現段階でもって、アスター家の名を剥奪。親権共に放棄すると共に、資産1000万の贈与。これを持ってこの家から出ていけ。」


「「な、ふざけ、!!!!!!!!!」」


「追い出せ。」


「「「「「了解しました。」」」」」


「「クソがああああああああ!!!!!!」」


……………


「……………」


「お兄??」


「…ノアか。どうした?」


「いや、パパとママは……??」


「…もう大丈夫だ。これでもう、お前は苦しまなくて済むんだ。」


「………???」


 ああ、そうさ。


 私はスメリ・アスター。


 アスター家の最高傑作。そして全ての運命を変える者。


 そして……


「後はお兄に任せろ。お前を不幸にはさせない。」

 

《2048.08》

スメリ・アスター

面倒くさいタイプのシスコン。

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