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White -in eternal winter, you slept for years-  作者: 浜坂摩耶
2. Seeking my heart, above the past.
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2-1 あらゆる準備は念入りに/is it true ? -- No. 202X/2048 (5)

 私は元々、トリプルチェーンの実験体だった。私がいた施設には何人もの未発達な人間、言ってしまえば子供が沢山いたの。脳をいじるのだから、基本的に脳が未発達な子供は正しく格好の的だった。

 子供の多くは、親に捨てられた人、あるいは売られた人が多かったわ。倫理法に引っかかるからね、比較的見破れにくい所から集めたって感じかしら。連れ去ることは基本的に無かったわ。それこそバレやすいからね、悪手には決して染めなかった。

 というか、むしろその施設は保護施設としての機能を持っていたの。どこの国だったかは覚えていないけど、そこの研究者達の人種は様々だったわ。

 厄介だったのはその場所。表でも裏でも限られた人しか知られていなくてね、ましてやどこの国からの支援なのかも分かりやしない。それもそのはず、その施設ってね、南極にあったのよ。

 寒くはなかったわ。というより、その施設自体が最先端技術の結晶だったみたいでね、色々な研究が行われていたみたい。その副産物ってことになるのかしら?まあ、そんな詳しいことは知らないんだけどね。データも消されたし。

 そこの研究で中心的に行われていたのは、脳開発、及びDNAの3重化。研究者達は施設を東西南北に分け、種類毎に超能力を開発しようとしたの。その中で私はその施設の中でも南エリアにいたわ。確か、テレパシー系能力の開発専門だったと思うわ。

 私は特別、人に恵まれていたわ。能力者とも、研究者とも。だからよく連絡役みたいなことをしていたわ。誰との?貴方が先日手に入れた、JOKERと呼ばれる連中の内の一人とよ。彼らは早くからこの施設を脱出、あるいは施設の実験体だった人達を解放しようとしていたわ。その為の情報収集に私は協力したわ。でもある時、元々協力していた一人がね、研究者に諜報活動がバレちゃって、そのまま殺されたわ。

 私もきっと殺される筈だったのだけど、ある研究者に好かれていたおかげでね、私は殺されるどころか脳を弄られることなくその施設を脱出することに成功したのよ。貴方をもっと分かりやすくお人好しにしたような人だったわね。

 私が裏の情報を持ち、今もなお収集し続けられているのはその時の賜物。お陰で生き続けることができているの。それがこの私、木下佐紀よ。

 ただ、それでも限界はある。例えば、現段階のJOKERの面々。憶測は出せるのだけど、それでも誰がやっていて、どんな能力を持っているかまでは掴めていないわ。この前のJだって、私は見たことがなかった。

 思えば、南極の時から彼らの殆どは正体を明かさなかった。たまたま一人だけ知ることができたけども、殺されてしまってもう誰も分からない。きっと代わりも見つけているかもしれないし、まだ探している段階なのかもしれない。

 だから私は貴方という存在に目をつけた。バックヤードも不明で、それでいて頭がキレる、そんな貴方に。寒冷化のことだって、すぐに貴方は見抜いた。ましてやこの前のAの件も難なくこなした。

 改めて協力に感謝するわ。



 裏があるとは思っていたが、やはり彼女は能力者側の人間であった。しかも、実験体と情報屋ときたものだ。中々にハードな人生を送っている。


「要領の良さはその時の経験もあるのか。」


「ん〜どうだろ。元々そこら辺は出来が良かったと思うから、生まれつきかも?」


「そうか、なら安心だ。」


「?どういう事?」


「相手は能力者だからテレパシーで情報漏洩する事だってあるだろ?その線もなさそうだと考えただけだ。」


 気付かずに脳を弄られていることも予想していたが、実験をされていないという証言と、元々要領は良かったという所を見ると、脳を介した情報の漏洩も可能性としては低そうだ。


「結構細かく注意するのね。」


「当たり前だ。先程も話したが、準備はするに越した事はない。あらゆる事象に対して、徹底的に構えておけば、いくらでも対処する事は可能だ。」


 予想外を作らない。常に自分が移動できる、操作できる立ち位置にいること。


「自分を優位に立たせる、それができれば後はいくらでも応用できる。上に立つということは、それだけの土台を作るということだ。」


「いい考え方ね。確かにその通りだわ。心に留めておくわ。」


「そうしておけ。」


 この考え方を知っているだけでも、今後何かに役立つ可能性はある。共有することに越した事はない。


「あ、そうだ。言い忘れていたけど。」


 ふと、彼女は言い忘れていたことを話す。


「私はまだ恵まれた方よ。多分、本当に重いものを持っているとしたら、それはこの子よ。」


 それは、金城由紀という人物に関してのことだった。


「あの子は、もう何もないの。」


《202X.06》

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