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White -in eternal winter, you slept for years-  作者: 浜坂摩耶
1.In eternal winter, you slept for years.
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1-4 加速する世界と揺がぬ才能/one of truth, diverge its fates 202X/2048(8)

 もう、いつのことだったか私はもう思い出せない。ただあの時は、何か私の中で感じていたことがあったような気がする。

 そもそも、私にはこの世界がどうしても非現実にしか思えないのだ。それは私が、こことは違うどこかにいたからなのだと思う。どこかとは?それが私には思い出せない。

 そして気づいた時には私はこんな力を持っていた。それでもって頭に流れてきたAの文字。そしてAccessという力。刻印は右脚に浮かんでいた。

 そこで私は、声を聞いた。私にしか聞こえない、そんな声。


 望むなら、壊せ。そして受け入れよ。


 さっぱりだ。なにを言っているか分からなかったよ。でも、なんか納得した。多分これは私じゃなく、私のAが反応しているからなんだと悟った。そして私はその声のままに、


 壊す。


  壊す。


   壊す!!!!!!!


 建物の破片が散らばる。粉の一粒一粒が私の頬を掠っていく。その度に私に力が溜まっていくことにも気づいた。


 これが力…これが進化…!!!!


 夢が近づいている感覚がしたよ。ああ、こんなにも、こんなにも素晴らしい感覚なのかってさ!!!!!理想が私に近づいていく。望んだものが段々と近づいていく。そして私はようやくあの日の先を見ることができるんだって!!!!!


 夢なら良かったのにって、思った。


 私はいつかの記憶を思い出した。本当に唐突だった。でも私が見た記憶の私は、常に真っ白な空間の中を、永遠と、ずっと歩いている感覚。そしてそれはまた、夢の中だった。

 私はさらに記憶を欲した。もっと、もっと。そしてあの日に近づいた。


 それは、誰かが私の心臓を止めた音。


 恨んだよ。ああ恨んださ。つまり私ってのは今までずっと寝ていたことになるって!!!そして私は知らず知らずのうちに家族も友達も死んでしまった時代の先にいることが分かった。


 愛した時代は、もう遠く。


 私だけがひとりぼっち。


 永遠とも言える冬の時代に、


 私はただずっと、ずっとずっと眠っていた。


 白の時代が到来する。私はもうどうでもよくなった。ああ、私が欲したものがないのなら、もう私は、ここに用はない。

 だから私は、今日も壊していく。快楽のまま、ただ壊す。そうしたら、この力はもっと強くなった。今はこれがただの楽しみ。力は無くならないからいい。私の中にべっとりと張り付いている。

 最後に私は絞りをつけた。この場所は、まさに中心核。壊せば、どんな力が得られるのか?そんなワクワクが私を襲った。そして今、私はここにいるのさ。そしてそれはいよいよ達成される。全部が潰れる感覚を、私は欲し


「そんなんがお前を救う訳ないだろ!!!」


《2048.07》


「は…??ナニ言ってんだ??」


 俺は。声をあげる。


「壊してしまえば気持ちがいい、なにもかも消してしまえば気持ちがいい。そんなただの破壊衝動に、何も残らねえっつてんだよ!!!」


 段々と頭が冷めていく感覚がする。


「情けないな、テメェ。何も得ようとしない癖に。全部消してしまうのかよ。過去に縋ってばっかの、本当にただの子供かよ。」


 奴は意外にもちっぽけだった。


「そして俺も本当に情けねえ。こんなよく分からない理由で弱音を吐く奴に恐怖とか感じてたのか。はは、笑える。」


 奴の顔が歪む。


「でもおかげで、お前なんかに恐怖みたいなのは感じなくなった。ありがとう。」


 宣言しよう。


「そしてお前は、俺が倒す。今ならいける。」


 俺は後ろの二人にも声をかける。


「で、いいか?」


 二人は納得した顔をしていた。本当に、いい友人たちを持ったものだ。


「「ああ!!やっちまえ!!!」」


《to : 202X.05》


 Accelに宿った者が、語りを終えた。そして、誰かと喋っていたようだった。


「…なるほど。そうか。」


 私は悟った。


「向こうに、何かと敵対しているな??」


 これは大きなアドバンテージを得た。ようやく、完璧な勝ち筋を組み立てられる。


「さあ、勝負をしようではないか。私の組み立てた結論で、完膚なきまでに、叩きのめすとしよう。」


 もはや、恐れることはない。


「私を相手にしてしまったことを後悔させてやることにしよう。」


 情けなど不要。本当の最終戦が始まる。



「「………」」


「佐紀ねえ、なんかアイツが美味しい所取っている気がするんだけど気のせい?」


「都合がいいからそっとしときましょ。軽く支援しながらでも。」


「いいね、それ。私たくさん持ってるよ〜」


「じゃあ、こっちも始めますか!!!」



 懐かしい声がした気がした。


 俺がずっと求めていた声だ。


 でもその姿は見えないまま。


 でも、もし本当にアイツであるのなら。


 俺は、俺は。



 様々な思いが交差する。そしてそれは時代を超えていく。

 本当の最終戦が始まり、そして長い戦いが終わりを告げようとしている。

 標的はA。それぞれの時代に生きる者達の、精一杯の足掻きと、その結末。


 さあ、開幕せよ。


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