1-4 加速する世界と揺がぬ才能/one of truth, diverge its fates 202X/2048(2)
「はあ…はあ…」
クソッ、クソクソクソッッッ!!!!
「なんだよアイツ…古臭い人間の分際で…」
俺は誰よりも速い。誰よりも頂点だ。あの日からトップなはずだ。そのはずだ。
だからこんな仕事なんて単純にこなせる。容易なタスクだ。ただ殺す。そして奪う。それだけのこと。
それなのに。なんだ、あの眼鏡は?なんだあの余裕は?
『たかが速いだけでよく偉そうなことが言えたものだ。』
「ガリ勉が透かしてんじゃねえよ…」
だが現実はどうだ?片目がずっと機能していない。何かがおかしい。あり得ない。何故ならこの力は間違いなく異次元であるはずだ。
「だから俺は誰よりも頂点だ…そうだ…これはただの偶然だ…」
「どうした?」
突如。後ろから声を掛けられた。というか、急に現れた。それは、背の小さな髪の長い少女。しかし目には、Jの文字。そして、極限までに高められた、力の本流。そして、提供者。
「!?な、何故貴方が…!?」
「偶然見かけたから声を掛けたんだ。しっかし、ほお、やられたのか?まさか?」
「あ、いや」
「なーんにも変わってねえなAccel。やっぱただ速いだけか?お前の力ってのはそんなもんか?ああ?」
「そんなこと、ある訳……」
「ないか。はあ。頭がまだダブってんな。やっぱ浸透速度はそこまでないみてぇだな。」
「へ?な、なんで?」
「弱いからだ」
そう告げた途端、彼女はどこからか注射器を取り出した。中には既に透明の液体。
「まだ足りないみたいだから、打ってもいいな?」
「!!それを使えば、さらに高みを目指せるのか!?なあ!?」
彼女はニヤついていた。それはどういう感情かは俺には分からない。興味がない。
「ああ、強くなるさ。」
彼女はただシンプルに告げた。嘘ではなさそうだ。
「じゃあ、打ってやろう。今回は俺直々だ。有り難く思え。」
「ああ…ありがとう…ございます…」
こんなに嬉しいことがあるか。どうやら俺はまた強くなれるみたいだ。ああ、なんていい心地だ……
しかし。先程から無駄に強く腕を固められているような気がする。まるで、逃がさないよつにしているかのような。
逃がさないような。…逃がさない?
「な、なあ」
「なんだ」
「まさかだと思うが、副作用はあるのか…?」
「ん?ああ、言っていなかったな。」
逃げろ。
何故か、自分の心の中から聞こえた気がした。
そして、最悪の予感は的中する。
「お前、理性なくなるから。単純に言えば…俺の奴隷だ。そこら辺の犬みてえな感じだ。だからお前、人間やめよっか?」
瞬間。走馬灯が見えたような気がした。だがもう、逃げられない。何故なら、掴まれているから。
つまり。俺はもう、ここまでという訳であって、
もう、戻れやしない。
「あ、そんな、待っ
そこで記憶は途絶えた。
…
…
…
「おい、Accel。さっさと、取ってこい。」
「ぐがががががががががばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば
「うるせえんだよ殺すぞ」
「ぐこぎばばばばばばががががばばぎぎぎぎぎぎぎぎががががががががががががかあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
…
…
…
「ちっ。ようやく行ったか。…ただ、アイツの目を抉ったってのは、一体誰だ?」
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