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White -in eternal winter, you slept for years-  作者: 浜坂摩耶
1.In eternal winter, you slept for years.
14/89

1-3 3つに練られし魂の設計図/Infiltration of core 202X/2048(3)

 僕らは、正体もろくに分からない協力者によって、この無駄に大きい書庫を出た。気に食わないが、奴の思い通りに動いてしまっている。こんなことをどうして他人などに任せるのだろうか、というより誰なんだよ、あとなんでノアなんだよ頼りなさすぎるだろうが。

 そんな愚痴をこぼしたいのだが、ノアが機嫌悪くなるのもかなり面倒くさい。ここは最善の選択をしようと思う。


「なあ、ここ後どれくらい登らなきゃならないんだ…?」


「知らないわよ。上に行けって書いてあるんだから登るだけよ」


「うへえ…」


リックがこうなってしまうのも無理はない。この場所は無駄に高く上まで続いている塔であるため、階段もそれなりに長く続いている。ただただ果てしない。正直、こうなることを分かっていたため、あらかじめ多めに水と食べ物を用意していたかいがあった(なお、半ば強制的に来られた密かな仕返しとしてノアとリックには教えていない)。


「しかし、こうも同じ光景ばかりだと飽きてくるなあ…」


「ユウちゃんうるさい」


「ってことはノアも飽きているのか」


「…」


「ユウ、コイツ図星って顔してる…イデデデデデデデデデデデ!!!!」


「なにか、言った!?」


「なんでもないでずずずずzzz」


「リック、ノアが飽きている訳ないだろ、我慢強いご立派お嬢様だぞ。」


「あっ、てめぇ卑怯だぞ痛えええええ!!!」


「ふんッッッッッ!!!!!」


 すげえ、あの筋肉野郎の腕を反対側に折り曲げようとしているぞ。



 どれくらい階段を上がっただろうか。なんだかんだしていたら、ターニングポイント的な所に辿り着いた。正直、屋上までずっと続くのではないかと不安だったのだが、流石にそれはないらしい。ここで休憩するのが吉と見た。

 ちなみに、リックとノアはなんだかぐったりとしている。イチャコラしていたらそりゃこうなるに決まっている。ざまあみろ。


「ほら、多分中間みたいな所に出たぞ、少し休憩するか?」


「ぜえ…はあ…そうするわ…」


「おげっ、やっとかよ、っぷ」


「吐くなよリック。」


「吐きやしないさおげえ!!!」


「寸前じゃないのぼぼぼぼぼぼ!!!」


「…」


 水、飲ませよう。



「「ぷはあ~落ち着いた~」」


「これに懲りたら変な所で体力を使うんじゃないよ。ほらこれ菓子パン」


「ここにきての糖分はすごいありがてえ…」


「ええ…ありがとうユウちゃん…」


「だからユウちゃん言うな。」


とにかく、これで全員体力もある程度は回復した。


「それじゃあ、とりあえずここで一旦整理しよう。」


「そうだな。」


「そうね。とりあえず手紙を出すわ。」


「例の協力者のヤツか。」


「まあ、そんなところ。」


「で、なにが書かれているんだ?」


「ええと、『一度広い場所に着いたら、上に登る階段を探すべし。』ですって。至ってシンプルね。」


「それだけか?」


「まあ、そうね。」


「シンプルでいいじゃねえか。考えるのは好きじゃねえんだ。」


「お前には最初から頭脳的な所を期待なんてしてねえよ。」


しかし、上に登る階段を探せと来たか。


「これはあくまで僕の予想だけど、多分探すのに時間が掛かるタイプのヤツだね。な~るほど~クソ面倒くさい。」


「本当に時々口汚くなるよねユウって。」


「俺もそう思う。」


「口が悪くてごめんなさいね!!」


「まあ、とりあえず探すしかないわね。」


「畜生、また無駄な時間を掛けてしまうのかよ…」


「まあ、かの有名なセントラルコアだし、そうなるかもしれないとは思っていたけどな。」


「それは私も思っていたわ。」


「こればっかりはしゃーないか。クソ、筋肉がムズムズしてるぜ…」


「ここで腕立てでもしとけば?」


「だから無駄な体力は使うなって言っているだろ。」


 リックは間違いなく限界まで追い込むタイプだ。そんなことさせたら、この筋肉の為に余計な時間を割いてしまうことになる。本当にやめてほしい。

 なんてことを思っていた矢先、リックは突如こんなことを言い始めた。


「…いや、これ、やっぱ変だ。」


「「は?」」


「いやなんでそんな信じられねえって反応しているんだよ。だから、なんか嫌な予感がするというかなんというか…」


 …まさか。


「頭おかしくなった?」


 いや、これは予感だ。


「ノアだけには言われたくねえよ!」


「はあ!?筋肉がナニ私に逆らっているの!?」


 それも、確かな。

 だから、勘が告げている。

 来る、と。


「ああ!?俺の事はいいが、筋肉になんてこと言っているん…」


その突如、目の前の壁が爆発した。


「「「!!!」」」


 僕を含めた3人が、臨時体制に入る。どうやら、敵襲とやらが出たらしい。

 しかし、敵か。

 なるほど、確かに。

 テンションが上がってきた。

 顔がややニヤつく。


「…なあ、今日はどうする?」


「おうよユウ、久々に暴れたいのか?」


「ホント、こういうのにはノリノリよねユウって。」


 壁から、防護システムらしき機械が出てくる。武器はどうやらチャージガンのようだ。


「なあノア、何体だ?」


「うんとね、…5体くらい?かしら。」


「少ねえな。満足できるか?」


「まあ、ここでこれが出てくるってことはこの先も出てくるだろうよ。だから、これはウォーミングアップって所かな?」


「そうね」


「だな」


「…よし、BURN :αで行こう。」


「「了解」」


 そしてそれは起動する。僕の作った、いわば魔改造アーマーってヤツだ。我ながら、とんでも工作をしたものである。

 名称はAdam。理系界隈における、文系界隈への対抗装置、NAS(Normal Assist System)の改造版である。元々NASには、超能力とほぼ同等の性能を備え、さらには超能力を受けた際の様々な影響を75-95%緩和する力を持っている。そこに僕が様々なものを仕込んだ物、それがAdamだ。

 まず、Adamは通常のNASにはない、手の平サイズでの小型化を搭載した。そして、起動した際には、従来のNASのサイズに戻る。我ながらよくできた技術だ。

 装着のゴツゴツ感もほぼ軽減した。例えるなら、モビルスーツ、いやヒーロースーツの方が分かりやすいか。従来は巨大ロボットの小型版みたいな感じであるので、なかなかに革新的だ。


 しかし、このAdamの本質はそこではない。


「「「燃えてしまえ!!!」」」


 今使っているのは、超能力で言うところのBurnである。かなり初歩的な能力ではあるのだが、Adamを通じて使用すると、その威力は底上げされる。鉄まで溶かすことができるほどの熱だ。

 よって、今放った火炎放射は、現在進行形で、防衛装置を溶かしている。そう、この「溶かす」が重要だ。溶かすほどの威力であれば、派手な爆発も起きる事がなく、他者に自分達の存在を認識されない。

 …ヘマをしなければ。


「やべえ!!!調整間違えた!!!爆発する!!!」


「相変わらずお前はあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


「早く!!!巻き込まれるわよ!!!」


 そして派手に爆発した。



 それは急に発生した。何せ、爆発など予想していなかったのだから。これにより、完全に洒落にならない展開になってしまう可能性が出てきた。

 というより、本当にトラブルが発生するとは思ってもいなかった。アイツら、そこまでして私達を陥れたいのか。

 

「隊長、外部部隊から、能力使用許可の通達です。」


「…へ?なんで?」


「こっちが聞きたいですよ、使用許可だなんて、余程の事態ですよこれ。」


 どういう訳か、外でも想定外の事態らしい。つまり、かなり慌てている。

 何か引っかかる所もあるが、取り敢えずは指示通り動く他あるまい。何より、許可は降りた。こちらはこちらの方法で動くとしよう。

 

「まずは、原因不明の爆発の調査に入りなさい!それから、一応能力者の察知も並行して!」


「それならもう既に出来てます!爆発は防衛装置と、…なんだこれ?乗組員情報不在のNASを3体確認?いや、NAS…じゃない…?それと、…え」


「どうしたの!?」


 何か、次から次へと予想だにしない報告が回る。予想外の爆発、乗組員不在のNASらしき機械。さらに何があると言うのか。


「…alphabeterです。それも、爆発が発生した場所より、というか現在進行形で、その場所に向かってます…」


「…は、alphabeter???なんで…???」



「alphabeterを引き寄せろとまでは言っていないぞ!!!一体どうなっているんだ!!!」


 あまりに予想外なことが起きた。よりにもよってかの化物中の化物がやって来るとは。あの秘匿された連中は暴れ回ってもらうとこちらの身分も危うくなってしまう。折角のナンバー2の席だと言うのに。不在のトップの代わりとして君臨しているというのに。


「いえ、私達もalphabeterまでは…」


「私の身分が変われば、お前らもおしまいなんだぞ!!早くなんとかしろ!!」


「ですがこれはどう足掻いても…」


「使うしかないでしょうな。彼らを。」


「ネガロク大尉!!」


 ネガロク大尉。軍のナンバー4にあたる人物である。序列としては私の2つ下という位置に居ながらも、虎視眈々と私の席を奪おうとしている厄介者だ。


「ほお。これはこれはネガロク。何やらこの"ナンバー2"に用があるかと思えば。しかし、『監獄』を動かすとは。これまた貴方も落ちる所まで落ちましたなあ!!!」


「この状況、この収集。全ては彼ら、もとい彼女を我が手にしようとしているのが見え見えなもので、ついエルメス様に皮肉を言ってしまったのですよ。そんな事も分からないのですか?」


「なに?」


「それに。もしここで情報漏洩を防ごうとしても、完全に貴方の不手際になりますな。何せここはセントラルコア。全てを司るこの施設の前では何もかも敵わない。何故、ここの調査を緊急でやったのかは知りませんが、間違いなく貴方から調べられるでしょうね。まあ、かのご立派なエルメス様なので、そんな事はないのでしょうが。」


「くっ…」


 私は仕方なく、セントラルコア内の連中に超能力使用許可の命令を出した。悔しいが、ここは退き際だろう。


「…これで充分か?」


「ええ。…しかし、alphabeterですか。まさか貴方の差し金ではないでしょうね?」


「そればかりは誤解だ!!!何故あんな物騒な奴らを、それもよりにもよって私の近くに近づけさせなければならないのだ!!!」


「そればかりは?」


「あっ」


「……まあ、何も問題はなさそうなのでいいとしましょう。」


「……」


「それと、エルメス様。勝手にするのはいいですが、やるなら派手にやって下さいね。」


「やかましいわ」


 ネガロクお得意の皮肉である。私というフィルターを介して先程の発言を訳すと、『派手にやって私に報告させてくれ。そしてお前を引き摺り下ろしてやる』だ。なかなかに腹黒い。大尉クラスになるとこのくらいの連中がほぼ全員である。

 だからこそ、あんな連中にやられてしまうなどあってはならない。そんなのは私のプライドが許さない。

 そしてこれは、おおよそ、ほとんどの大尉が思っている事であろう。



「へえ、なるほど。」


 ちょうど良さそうな獲物がいるなと思っていたけど、これはこれは。


「なーんて骨のあるクソガキ。ちょっと大人に近づいたって感じで調子乗って侵入しちゃった感じかな〜???」


 クソガキには、制裁を。子供の未来?若者の未来?笑わせるなよ流され連中のクソ思考。


「これくらいが丁度いい…うん、やっぱあのクソガキだね。」


 ただセントラルコアでもハッキングしちゃおうかなと思ったけど、こっちの方がスリルあるしいいよね。…いや、両方の方がもっと、もっと、スリルがある。


「私にAccessできないものはない。ホント、私はこんなにも最恐アーンド最強。」


 じゃあ、もう本格的に行こうか。


「それと、あんた達にもちょっかい出しとかないとね。」


 機械の宝庫は、私にとっては都合がいいのだから。当然、万全に、丁寧に。


「さあ、ひれ伏しなさい。」


《2048.7》


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