行間1-3
後輩君の様子がおかしかった。なんだか、妙なのだ。とはいえ彼とは部活ぐらいしか顔を合わせることがないので、部活以外での様子は分からない。今日は調子がいいのかな?と思っていると。
「あの…先輩?」
あの後輩君と同じクラスである女の子の後輩ちゃんが私に寄ってきた。
「どうしたの?」
「はい…多分、先輩も気づいていると思うんですが…」
どうやらクラスでも同じような様子だったらしい。しかも数日前から奇妙な感じだったと言うのだ。その時の彼は確か、体調が優れていないとかで部活を休んでいた時期だ。
確かに変わらないといえば変わらない。むしろ、元気に戻ってきたとは思っている。ただ、ふとした瞬間に妙なにやけをみせるのだ。かと思えばすぐに元の後輩君に戻る。嬉しさから来たにやけならまだいいのだ。ただ、問題なのがそれ以外だった場合である。総合的に言うとすれば、恐らく、あの休みの間に何かあったのだろう。
と、後輩君の番が来た。今は100m走の記録である。彼にとっては復帰後にいきなり測るものだから運が悪いことのはずだ。私でもそのタイミングでの記録は嫌になってしまう。
だが、等の彼はその様子を見せない。それどころか、にやけがさらに深くなる。明らかにおかしい。
一応、後輩君に確認を取ることにする。
「ほ、本当に大丈夫…?」
「全然平気です。むしろ期待してください。」
「え?」
期待…?休んでいたのに…?余計に不思議な気持ちになる。まさかだとは思うが、隠れて練習をしていたの…?そんな風に思った矢先、始まりの銃声がグラウンドに響き渡る。
そしてその時、私はそれを目にした。
「…え?」
※
きっと、これが始まりで終わりだったのだろう。少なくとも、今私がこうして行動しているのは、あの時のことが大きかったからなのだ。そのことに、後悔なんてない。だからまずは、
「中心を、落とす」
繋がっていないようで、これは奇妙に繋がっている。白い霧のように、何かよって隠されていて気づかなかったが、きっと、そういうことなのだ。だから、だからこそ、この腕時計にはこう書かれている。
2048、と。