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群馬帝国国有鉄道に籍を持つ者  作者: Kanra
物語の始まり
9/66

転生

 三条神流の通信が3日振りに復旧した。

 その間、群馬帝国国有鉄道は貨物列車の立往生と快速列車の暴走以外に混乱は無く、平常通りの運行を行っていた。

 貨物列車の件は、蒸気機関車の蒸気圧を再度上げ、平坦線まで下がって再引出しを行って復旧。

 快速列車も、ブレーキ故障と一時的なATSの不調であったため、マスコンを戻して惰性で走り、渋川駅に隣接する貨物線で自然停止した後、念のため機関車を交換して運転した。

 いずれの件でも、列車のダイヤが大幅に乱れたが人的被害は無かった。

 そして、三条神流が4日振りに群馬帝国に戻ってきた。

 怒鳴りつけようとする霧降を、宮野が制止し、直ぐに妙義神社に三条神流を連れて行こうとした。

 その時、怒鳴りつけようとした霧降が三条神流の異変に気付いた。

「お前、その左薬指の指輪は―。」

 それを聞いた者全員が、驚愕する。

「いや、でもこいつ、松田彩香のところに婿入りするはずじゃないか?だったら、出撃前に婚約したってことじゃ―。」

 内田が言うのに宮野が、

「違う!」

 と、怒鳴った。

「俺は確かに見た。出撃前、左薬指に指輪付けていなかったのを。そして、御祓いの翌日に出撃した。その間に、松田には会っていない。」

「では―。」

「分らない。だが―。」

 宮野に続き、その場にいた役人。そして、松田彩香が妙義神社を目指す。

 妙義神社の本殿で、三条神流は魔法で眠り、大規模な神事が始まった。

 眠っている三条神流を、巨大な魔方陣が囲む。

 役人達の隅に潜むように見守る松田彩香には、ショッキングな光景だった。

 宮司達も5人体制で、四隅で護摩焼きが行われ、4本の炎が三条神流の真上で合流。1本となって三条神流にぶつかる。

「うっ。」

 松田彩香は目を背ける。

「コノヨノオワリトオリスギタモノニササゲ!」

 宮野真樹が、大麻を振り落とす。

 炎が消え、魔方陣が消え、三条神流が目を覚ます。

「出遅れだ。」

 宮野真樹は顔を強ばらせる。

「どういうこと?宮野君。」

 松田彩香が誰よりも早く言った。

「三条神流は、一度死んでいる。そして、生まれ変わっている。どういうことか、解かるだろう?」

「そんな―。」

 松田の目から、涙が流れ出した。

 三条神流は目を覚ましたものの、神事でかなりの体力を奪われたのか、ショックを受けたのか、動けなかった。

 役人達がゾロゾロと、本殿を出ていく。

「転生。我々は彼に負荷を掛けすぎたのだろう。」

「国が傾きはしないだろうか。」

「転生は起こってしまえばもう、元には戻れない。」

 と、小声で言うのが聞こえる。

 本殿の中は、宮野真樹と松田彩香、そして、三条神流だけになった。

「松田。三条の近くにいたいのなら、居ても良い。布団も持ってきておくから、本殿で寝ても構わない。三条は強いショックで、今夜は動けないだろう。」 

 宮野が言った。

「宮野君。本当に三条君は―」

「残念だが、出遅れだ。」

 松田は泣き崩れる。

「霧降の馬鹿野郎め。」

 宮野が握り拳を握る。

「三条は転生人として、丁重に扱われるだろう。神に近き存在となってしまったのだから。」

 宮野は言いながら、別の宮司が持って来たせんべい布団を受け取る。

「この際言っておく。松田の傷に塩を塗ることになるだろうが、三条にそんな気無かった。だが、周りがそれで片付けていただけなのだ。その方が楽だからと言う理由で。周りの奴らは、既に知っていたかもしれない。いや、知っていて知らないふりをしていただけの方が正しいか。」

「もういいよ。宮野君。三条君と、二人にして。」

 と、松田は言った。


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