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群馬帝国国有鉄道に籍を持つ者  作者: Kanra
物語の始まり
6/66

死地

 高崎1機関区は、貨物列車を牽引する機関車の基地である。

 日本のJR貨物が委託した貨物列車を主に牽引するのが、EH200の役割だ。

 その中でも、神奈川からある地へ行く列車がある。

 群馬帝国国有鉄道の車両も、JR東日本の車両も役目を終えたら向かう場所。長野である。

 群馬帝国も、長野には手も足も出ない。

 鉄道で成り立つ群馬にとって、長野で自国の車両が解体されるというのは、死の場所を連想させる。

 だから、長野に行くと言う事を群馬帝国では「死地に赴く」と言われている。

 そして、死地に赴き、何もなく帰ってくるのならば良いのだが、帰って来た時に出発時とは人格、性格、その他大きな変化が現れてしまったら厄介である。このような者は「転生人」と言われ、一度死んだ後、この世に黄泉返った者とされるのだ。

 帰って来た時に出発時とは人格、性格、その他大きな変化が現れてしまった者がなぜ転生人となるのかは、群馬帝国国有鉄道も日本のJR東日本の鉄道車両も、多くの場合、最後の時を長野で迎える。長野総合車両センターは、群馬帝国国有鉄道も日本のJR東日本の鉄道車両が廃車となった後、解体される地であるのだが、中には改造を施され別の路線で第二の人生を歩み出す事もある。これは、廃車となり、一度死んだ車両が黄泉返ったという事を意味しており、鉄道で成り立つ群馬では、人も鉄道車両と同じように長野で人格、性格、その他大きな変化が現れてしまったら、その人はそれまでの人生を無き物とされ、新たな生命を宿して黄泉返ったとされるのだ。

 特に、三条神流のように群馬帝国国有鉄道と契約を結び、他の地へ行き列車の写真を撮ったり記録を取ったりする者は、長野へ行く事もあり、その度に転生人となる可能性が高い。

 だが、今までに、転生人となった者は群馬帝国国有鉄道に籍を持つ者には一人もいない。

 鉄道車両においても、転生人となった車両は無い。

 しかし、だからといってこれからもそのようなことは起きないとは言い切れない。

 6人の団体を組み、長野へ行くパーティーが、群馬帝国国有鉄道本部で編成されていた。その中に、三条神流の名前もあった。

 三条神流は6年前より、JR東日本の車両の最期を追うため、定期的に長野へ行っており、その都度、無傷で群馬に帰国していた。そのようなことから、今回のパーティーにも「居れば安心だろう」と言うことで加わることになったのだろう。

「三条は不死身だ。不死身の三条が居るのならば、安心だ。」

 と、内田弘史が言う。彼も2度、遠方地域への遠征部隊に加わったが長野には初めて行く。

「元が新潟であるから、例外的なのでは無いかね?」

 と言うのは安藤征爾。彼は初の遠征部隊参加が長野で不安になっている。

「大丈夫でしょう。自分も2度、長野に行き、内1回は三条さん無しでしたが何もありませんでした。」

 山崎一歩は単独遠征を行う前の三条神流の助手を勤めた経験を持つ。

「エンゼル艦隊の生き残りだぜ?三条神流を除く2人が消失した。」

 と、宇奈月正宏が言う。

 エンゼル艦隊。

 それは、三条神流が初めて参加した、と言うより群馬帝国が初めて実行した長野遠征作戦である。

 指田貴志、清野康人、三条神流の3人が群馬帝国国有鉄道で廃車となりJR東日本に譲渡したが直ぐに長野送りとなったDD13型ディーゼル機関車の所在を確認するため長野へ向かったが、その行程の途中で指田貴志と清野康人が消息不明となり、三条神流はDD13の所在を確認できなかった上、目的地の長野総合車両センターではなく松本からどういうルートを経たか解らないが群馬に帰還した。

 艦隊消失という前代未聞の事態に、三条神流は一時「転生人になったのでは」と疑われたが、赤城、榛名、妙義の上毛三山を訪れて見てもその兆しは無いと言う結果が現れた。特に、長野に最も近い位置にある妙義神社に置いても、その兆候が見られないとあれば「転生人」という答えは無いだろう。

 しかし、三条神流以外のエンゼル艦隊のメンバーが消息不明となった経緯は未だに謎で、三条神流も残りの2人が途中で別行動すると言って別れたきり戻らないと言う一点張りだった。


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