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群馬帝国国有鉄道に籍を持つ者  作者: Kanra
日常、そして非日常経由、新日常へ
15/66

勤務

 日本から見れば時が止まったかのような異世界に見える群馬帝国だが、もう三条神流には慣れっこである。

 倉賀野駅の近くにある貨物ヤードを突っ切る国内線貨物列車や燃料輸送列車も見慣れた。

 火気厳禁故、蒸気機関車が入れずDE10が牽引する貨物列車の積荷は、石油や日用製品、飼料、セメント、その他工業製品。そして、軍需物資である。

 倉賀野方面行きの路線バスに勤務していると、この列車に遭遇する事がある。

 別名、鉄道帝国とも言われる群馬帝国を最も象徴する風景が、貨物ヤードの先にある軍事基地へ行く貨物列車が、河岸段丘から鉄橋を通り平地へ田畑の上を進んで平地へ降りてくるという風景であると三条神流は思っている。

 いすゞBX340ボンネットバスを運転していると、前方をDE10に牽引される軍事列車が鉄橋を渡って高崎方面へ行くのが見えた。

 ワム9000が4両とチキ6000が2両。カバーをかけた装甲車のような物を載せている。そして、人員輸送用の客車が続く。

 ここから、郊外の演習場にでも行くのだろう。

 倉賀野地区を周回するバスの勤務は、三条神流のお気に入りである。

 鉄道帝国とも言われる群馬帝国を最も象徴する風景を見る事が出来るからである。

 午前中の勤務も終盤に近付く。

 最後の勤務は、前橋本社車庫への回送も兼ねた倉賀野駅発、高崎経由前橋行き急行バスだ。

 終着は前橋の総統府で、そこから車庫までは回送となるが、やはり総統府の置かれる前橋に行くバスだから乗客は多い。

 総統府に着く直前、松田彩香の実家の前を通過する。

 彼女の実家は老舗菓子屋だ。その前にあるバス停が、総統府行き急行バスの最後の停留所だ。ここを出れば、総統府は目の前だ。

 無事に、総統府に着き旅客が皆降りて居るのを確認すると、メーター機器の隅に南条美穂の写真を置き、最後の回送運用を行う。

 車庫に着いたら、洗車や給油、アルコールチェックをして勤務終了。

 この後は午後の勤務だ。

 午後は、大学と前橋駅の間を走るピストン輸送のバスだ。

 楽ではあるが、同じ区間を往復するのであまり楽しみがない。

 昼食は乗務員の食堂。

 日替わり定食から麺類まで、なんでもある。

 今日は金曜日。

 三条神流の金曜日の昼食は決まっていた。カレーライスである。

 これは、週休3日とは言え土曜日曜関係なく勤務するため、曜日感覚が解らなくなるのを防ぐためだ。ちなみに、金曜日の昼食がカレーライスなのは、日本の海上自衛隊や旧日本海軍が海の上で長期間勤務するため曜日感覚が解らなくなるのを防ぐために金曜日にカレーを食べる事に因んでいる。

 外の世界で三条神流が学んだ数少ない事である。

 三条神流にとっては、群馬帝国で学んだ事や群馬帝国から見た世界のほうが広く見える。国土は日本と比べると明らかに小さいが、人間として過ごせる範囲は日本より広い。

 午後の勤務が終わり、自宅に帰る。

 前橋の新移民が住むアパートが、三条神流の住まいだ。

 亡命者と言う理由で家賃は格安。

 2LDKでかなり新しいアパートが家賃1万5千円で住めるのだ。

 自転車で前橋の町を走る。

 途中で、松田彩香の実家の前で止まる。

「アヤ!焼きまんじゅう1つ!」

 と、松田彩香に言う。

「まったく。まさか夕食これだけじゃないでしょうね?ちゃんと食べなさいよ。」

「分かっているよ。」

 松田彩香と三条神流の今日の会話はこれだけだった。

(転生人となっても、生活に何ら代わりはないな。)

 と、三条神流は溜め息をついた。


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