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幼馴染×ヤンデレ=の方程式  作者: 漆黒の堕天使
第1章 幸せの鐘
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4話 ハジマリ

「あのね、しょーちゃん…私、しょうちゃんのことが好き、世界で誰よりも大好きなの…」


「えっ?お前いきなり何言ってんだよ…」


「だから私を、しょーちゃんの彼女にして欲しいんだけど…ダメかな?」


「か、彼女!?」


リリとの出会いは幼稚園からで、当時リリは女の子の集団から毎日のようにいじめを受けていた。それを助けたのがこの俺。

その一件以来、リリは俺にくっつくようになって、今現在に至る。


付き合いは誰よりも長く、家族みたいな存在だ。その為、リリに全くと言っていいほど恋愛感情というものは生まれず、兄妹のように接してきた。

そんなリリに俺は今、告白をされた。思ってみれば遅すぎる告白だったのかも知れない。俺はリリの好意には既に気づいていたからだ。

けれど、認めたくなかった、関係が変わるのが怖かった。


「しょ、しょーちゃん?」


俺だってリリのことは嫌いでもないし、何度もリリに救われたこともある。考えてみれば、恋愛感情が湧かないと言っていたが、実際リリは普通に可愛いし、性格だって申し分ない。そんな子から告白なんて…


ただ俺が、正直になれていないからかもしれない。


「お、俺でいいのか?」


「しょーちゃんじゃなきゃダメなの」


リリのまっすぐな瞳が心に突き刺さる。それと同時に起こる、その瞳を守りたいという俺の本能みたいなものが心を動かせる。

俺はこの子を、もう泣かせたりしない。


そして最後に、自分に正直になるんだ…!!


「わかった…俺たち、付き合おう」


「ほ、ほんとう!?ありがとう、ありがとう…しょーちゃーん!!!!」


リリが俺に抱きつく。


泣かせてはいけないと誓った矢先、既に号泣しているリリ。どれだけ嬉しかったんだ?

まぁ俺も人のことは言えないけど。


「リリ、ごめんな。俺がもっと早く…」


「ううん、いいの、グスッ、やっと私の夢が叶ったから…」


俺はリリを抱きしめ返す。


リリってこんなに小さかったっけ?

実際に抱きしめると、そのとても小さい体がはっきりと分かる。そんな小さい体で、ずっと俺を見守ってくれてたんだよな…


「ありがとう…リリ」


改めて、俺とリリは付き合うことになった。本当に俺はリリを愛せるかはまだわからない。これもある意味、衝動的な選択なのかもしれない。


けれど今はそれでいい、今はそれで…


4月11日


俺とリリは相変わらず一緒に登校する。

けれど、雰囲気はいつもと全く違い、胸の鼓動が鳴り止まない。


「な、なぁリリ?」


「な、なにしょーちゃん?」


向こうも恐らく同じ気持ちなんだろう。

実際に付き合うと、顔を合わせるのも一苦労だ。


「手、繋ぐか?」


「う、うん…」


手を繋ぐのは校門の前までで、そのあとは、妙な距離を保ちつつ2人で教室に向かった。


「おはよー!しょーた君!」


「おはよう、橘さん」


「昨日は本当に助かりました!」


「あぁ、気にしないで!集まり自体はすぐ終わったし」


今日も橘さんとたわいのない会話する。そんな中、俺はリリに目を送っていた。


リリのやつ、1人でずっとニヤニヤしてるんだが…側から見たら気持ちが悪いぞ、リリよ。

まぁ俺からしたら可愛いから許すけど。


「ねぇ!聞いてるしょーた君?」


「えっ、あ、どうしたの橘さん?」


「もう!聞いてなかったの?」


「ごめんごめん!」


リリに夢中になりすぎて橘さんの話が入ってこなかった。俺ってこんなにリリのことが好きだったのかと、今更ながら実感する。


――キーンコーンカーンコーン


今はこのチャイムが幸せの鐘に聞こえるほど、俺の頭は幸せで溢れていた。


気がつけば午前が終わり、昼食の時間。こんなに時間が早く進むのも初めての体験だ。


「しょ、しょーちゃん。お弁当作ってきたんだけど…」


「ほ、本当か!?食べる食べる!」


リリは俺の為にお弁当を作ってきてくれた。いつもコンビニ飯の俺からしたら、とても豪華に感じる。しかも、おかずも俺が好きなものばかりで、将来の有望さに期待が湧く。


「えっ?えっ?お弁当作ってきたよって、2人もしかして…?」


橘さんが驚きの表情を浮かべながら聞いてきた。


「そうですけど、なにか?」


リリが淡白に答える。


「えー!?まじなの!?ちょーお似合いカップルの誕生なんですけど〜!」


「ちょっと、橘さん声が大きいよ!」


「当たり前でしょ?私としょーちゃんの相性はバッチリなんだから」


「ってことは、昨日付き合ったってこと?」


「そうだけど、あのさ?今はしょーちゃんと2人きりにしてもらえないかな?」


「えー!?ちょータイムリーなんですけど〜!2人の話もっと聞きたーい!」


「あんた聞いてるの?」


「まぁ、まぁ、リリ落ち着いて!それじゃ、ごめん橘さん!そういうことなんで、また後で!」


橘さんとの会話を流すようにその場を離れ、俺たちは屋上に向かった。


「チッ、あいつら付き合ったのかよ…にしてもあの女の対応はなに?人を下に見るかのような態度も気にくわないし…壊してやる…特に、皐月将太。お前だけは絶対に許さない…」


リリのお弁当は最高に美味しかった。こんなことが毎日続くと思うと、ついニヤついてしまう。


「しょーちゃん?」


「ん、なんだ?」


「私、世界で1番幸せ者かも♪」


「クスッ、急にどうしたんだよ」


「だって、幸せなんだもん♪」


「あはは、わけわかんねーよ」


数日前までは、まさかリリとこんな会話をするなんて想像もつかなかった。たった『好き』というひと言で、こんなにも人生が変わるなんて、もっと早く気づいていればなんて考えたりもする。


午後の授業もあっという間に終わり、下校の時間になっていた。


「しょーちゃん、一緒に帰ろ?」


「お、おう!」


朝の登校した時と同じように、俺はリリの手を握る。


「しょーちゃん?」


「なんだ?」


「ううん、なんでもない、ふふっ」


「ははっ、なんだそれ」


これが世間でいうバカップルというやつなのか。今まで、抑え込んできた自分の気持ちが爆発しているのだろう。

今、俺は本当に浮かれていると思う。


「おっ!チビ2人でお帰りか!」


「あ、えりねぇ!」


えりねぇが、ちょうど家を出る所に遭遇した。


「って、お前ら手繋いじゃってるじゃん!どうしたの?」


「あっ、それはその…」


俺が戸惑っている中、隣でリリが深く息を吸い、えりねぇに向け言葉を発した。


「私、しょーちゃんと正式にお付き合いすることになったので、よろしくお願いします」


「あははっ!そういうことだったのか!いいんじゃないか?お似合いだし!」


「そうかな?」


「あははっ!そうだって!将太も、もっと自分に自信持てよ!こんな可愛い彼女がいるんだから!あははっ!」


えりねぇは、いつもより笑っていた気がする。素直に応援してくれることはありがたいが、えりねぇがいつもより笑うときは大体、自分に都合が悪いときだと俺は知っている。

それにしても、なんで都合が悪いんだ?用事でもあるのかな?


「えりねぇはこれからお出かけなの?」


「あぁ、ちょっとな」


「そうか、それじゃ俺とリリはいくよ」


「あっ!ちょっと待って!すまねぇ、彼女さん…ちょっと将太借りていいか?」


「ちょっとだけならいいですけど…」


俺はえりねぇに呼ばれ、小さな声で話を始める。


「お前、昨日のあの後に付き合ったのか?」


「そうだけど」


「そっか〜、それじゃ、しっかりあの彼女さんを幸せにしないとな!」


「えりねぇ、何か無理してない?」


「え、え、えっ?そんなことないけど」


嘘だ。


「それならいいけど」


「てかお前がウチの心配してる場合じゃないだろ!?これからお前ん家で、お楽しみ会でも開くつもりだろ?」


「なっ!なに言ってんだよ!」


「まぁ、最初はキスぐらいにしとけよ〜、童貞くん!」


「からかうなよ!それだけか言いたいことは!」


「怒るなって!とりあえず、おめでとさんな!幸せになれよ!あははっ!」


「はいはい」


えりねぇは俺の肩を強く叩き、その場を離れていった。俺もリリの元に戻る。


「それじゃ、しょーちゃん…お家戻ろっか…」


リリの顔が真っ赤に染まっている。その顔に俺もつられて恥ずかしくなる。


「お、おう!行くか」


新学期が始まり、俺に彼女ができた。それは、小さく、とても可愛く、笑顔が素敵な彼女。


そんな彼女との、幸せ溢れる生活が始まるのだと、その時の俺は思っていた…

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