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幼馴染×ヤンデレ=の方程式  作者: 漆黒の堕天使
最終章 幸せのその先に
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10話 ココロノササエ

リリはリビングに向かうと、途端に質問してきた。


「さて、しょーちゃん、なんで私の時はドアを開けてくれなかったの?」


今のリリに会いたくなかったなんて言えない…


「ちょ、ちょうど寝てて気づかなかったんだよ!」


「しょーちゃん、嘘が見え見えだよ?」


「う、嘘なんかじゃないよ!」


「まぁ、私にはしょーちゃんが寝ていなかったって確証があるんだけどね♪」


「な、なんだよそれ…」


「実はねしょーちゃん、


リリはそういうと、携帯を取り出した。


「け、携帯?」


「そう!しょーちゃんをこの携帯でずっと監視してました♡」


「監視!?」


俺はあたりを見渡す。どこかに監視カメラがあるはず…


「あははっ、しょーちゃん監視カメラとかじゃないよ?GPSだよ!」


「な、なんだ、焦っちゃったじゃねーか!」


「まぁ、次は監視カメラを仕掛けるのも悪くないかもね♪」


「勘弁してくれ…」


「とりあえず、しょーちゃん説明してくれる?」


リリは話を戻し、俺に問いかけてきた。


「説明ってなにをだよ」


「もう、しょーちゃんは寝ていたんでしょ?」


「そうだけど…」


「じゃあ、なんで私がインターホンを鳴らしたときに携帯のGPSは動いていたの?」


「っ!?」


「しょーちゃんの携帯は生きているの?勝手に歩いたりするの?」


迂闊だった、俺は常に携帯は持ち歩く主義で、ついインターホンの確認の時も持ち歩いてしまっていた。


「か、勝手に歩いたんじゃないか?」


俺は冗談交じりにリリに返答する。絶対に許してはくれないだろう…


「むぅ~、今日はそういうことにしてあげる」


「えっ?」


意外な返事が返ってきて、俺は少し戸惑ってしまった。


「けど、次同じことをしたら、その時は容赦しないからね?」


「わ、わかりました…」


「うん!それじゃ、本題にはいろっか!」


「え、さっきのことを話しに来たんじゃないのか?」


「違うよ、私は昨夜のことについて話しに来たんだよ」


わかってる、その話をすることはわかっていたけれど、今の俺にはショックが大きすぎて思い出したくもなかった…


「あの女は、私が責任をもって処分しといたから」


「しょ、処分ってどういう意味だ?」


「あ、言い方が悪かったね、ちゃんと家に帰して約束をしてきたってこと」


「約束って、昨夜のか?」


「そうだよ!」


約束とはリリが昨夜橘さんに言った一言で、橘さんはこの町から出ていき、二度と俺とリリの前に姿を現さないという内容だ。


「ふふっ、昨夜のあの女の顔を思い出すたびに笑いをこらえるのに必死で、今日の学校大変だったんだよ!」


「そ、それ本気で言ってるのか?」


「だって面白かったんだもん!しょーちゃんも面白かったよね?」


笑えない、笑えないに決まってるだろ!どうしちまったんだよ…ちょっと前のリリに戻ってくれよ!

もう、今のリリに付き合っているのも限界だ。俺には手が負えない…


「別れよう…」


「えっ…?」


「今のリリを幸せにできる自信がない…」


「じょ、冗談だよね?しょーちゃん冗談って言ってよ!!!」


リリは涙目で抱きついてきた。


「冗談なんかじゃない…俺は本気だ!」


「グスっ、な、なんでそんなこと言うの?」


「泣いても無駄だ、もうこの家から出て行ってくれ」


「ううっ、なにがいけなかったの?うっうっ、私直すから、だから別れるなんて言わないで!」


俺の心はもう揺るがない。決めたことだ、何を言われようと突き放すつもりでいた。


「じゃあ、リリ自身が変わったと自信をもって言える時が来るまで待つ」


「い、いつまで待ってくれるの?」


「それはわからない…」


「はっきり教えてよ!私もう生きていける自信がないよ!!」


「わからない、わからないけどこれだけは言える。俺はリリを嫌いになったわけじゃない、ただお前の行動についていけなかった、そして俺自身の中で拒否反応が出たんだ」


「しょーちゃん…」


「だから、俺の気持ちが落ち着くまで顔も出さないでほしい」


「わかったよ、それじゃ帰るね…」


「うん…」


「またねしょーちゃん…」


この日最後のリリの顔はとても寂しい顔をしていた。泣くことを無理やり我慢し、最後まで作り笑顔をして家を出て行った。


「ごめん、リリ…」


6月11日


俺はひとりで学校に向かった。そしてこの3ヶ月間の出来事を振り返っていた。


リリがとった行動は、俺に対する愛ゆえの想いということはもう分かっている。俺自身、リリの変化には一番敏感だったと自信を持って言える。しかし、対策というかリリの暴走を止める術までは浮かばなかったのは事実。だからリリがすべて悪いとは言えない…


結局その日はリリが学校に来ることなく1日を終えた。


そうだ、帰ったらえりねぇに今までのことを相談しよう。

そして俺は、帰宅するとすぐにえりねぇに電話した。


「もしもし、どうした将太?」


「あ、えりねぇこの前はごめんね」


「あぁ、気にすんなよ!それより、あの後どうなったんだ?」


「そ、そのことなんだけど――、


俺はこの前のこととは他に、この3ヶ月間の出来事を包み隠さずえりねぇに伝えた。


「そうか、お前ら別れたんだな」


「うん、俺どうしていいかわからなくて…」


「まぁ、それも一つの経験だろ!あの橘って女は少し可哀想だが、将太が気にすることではないだろ!」


「でも、俺がリリを止めてれば!」


「でもって言ってもな、過ぎちまったことはしょうがないんだよ!」


えりねぇの口調が変わっていくのがわかった。


「ウチはな、お前のそんなネガティブなところを見たくもないし、そもそも大っ嫌いだからよ!相談して来いって言っといて逆ギレするのもおかしいけど、この前のお前の顔を見てたらどうもイライラしてさ、あの頃の心強かったお前はどこ行っちまったんだよ」


「ごめん…」


「べつにウチに謝らなくていいって」


「えりねぇ?」


「ん、どうした?」


会いたい、なんて言えない。今の俺には言う資格なんてないんだ。実際、リリがいない学校なんてつまらなくて、虚しくて、とても1日が長く感じた。俺自身寂しがっているのがわかる、かといってえりねぇにこれ以上弱いところを見せてはいけない。そう、えりねぇに守ると誓ったあの頃の俺を貫き通すために。


「なんでもない!えりねぇのおかげで少しは元気出たかも」


「お、そうだ、それでこそウチが認めた男だ!」


「ふふっ、なにその言いかた、古くない?」


「笑うな!せっかくの決め台詞が台無しになるだろ?」


ありがとうえりねぇ。本当に助かったよ…


6月29日


もうリリが学校に来なくなってから1ヶ月が経った。そして今日、橘さんの転校が発表された。結局、事件後から学校には一回も登校しておらず、クラスメイトはみんな謎に包まれていた。担任さえも理由をちゃんと聞いていないらしい。


俺は、あれからリリのことを考えることを止めた。クラスメイトからは毎日のように、リリのことについて質問責めをされるが俺は知らないふりを装った。先生からも何度か問われたが、無視を続けていた。


えりねぇとはあの日をきっかけに、毎日のように電話をしている。なぜ会わないで電話だけしているかというと、実際にえりねぇと会っているところを今のリリに見られると厄介なことになると思ったからだ。

幸い、リリはGPS以外の細工はしていなかったためプライベートは守れた。今の俺の心の支えはえりねぇただ一人だけだから。


そんなことを思いながら帰宅していると、玄関に人が立っていることを確認できた。


「リリ…?」


「あっ、しょーちゃん久しぶり!」


1ヶ月ぶりに会ったリリは、とても痩せこけていて全然違う姿になっていた。


「お前、どうしたんだよ」


「えへへ、考え事ばっかりしてたから痩せちゃった♪」


目が虚ろになっている。そんなに自分を追い込んだのか?確かに長い期間、家から出ているのも確認できなかったのをみると体が弱ってしまうのも致し方ないことなのかもしれない。


「それで、リリは何しに来たんだ?」


「私、最近のことについて本気で考えたの…」


そうか、俺があの時に言ったことを真に受けてこんな姿に…


「私が間違ってたよ、しょーちゃんが嫌がるのもわかる。私は結局、自分のことしか考えていなかったんだなって」


「リリ…」


「だからね、橘さんにやったことを自分にもやったの」


えっ?それってつまり…


「ほら、見てしょーちゃん。爪全部はがしちゃった♪」


「な、なんで、そんなこと…」


「これが私のできる罪滅ぼしだったから。あと他にも、橘さん本人に謝ったり、転校の話を無くしてあげようともしたんだよ。結局、転校しちゃったけど」


そのリリの行動はただの不器用なのか、これも意図があってやっているのか今はわからないけれど、こんな弱ったリリを見過ごせるわけもなく、俺はリリに晩御飯を作ってあげることにした。


「ごちそうさまでした♪」


「お前、そんなになるまでよく倒れなかったな」


「実は、今日でついにダメかもと思って、最後にしょーちゃんの顔を見たくなって会いに来たの…」


「ごめん、俺があんな自分勝手でリリを突き放したから」


「ううん、私あのままだったら殺人鬼になっていたかもしれなかったし、良いきっかけになったよ」


「リリ…」


そしてリリはこの会わなかった期間の話しをいろいろとしてくれた。

それは聞いただけじゃ想像もつかないほどの日々だった。そんなリリを尻目に俺はなんてことをしていたんだ…


リリとは来週から学校に行くことを約束し、その日を終えた。

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