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鉄人ホームレス  作者: kurogane
1/1

1話

都内某所

暗がりの夜道



カダンゴトンガダンゴトン



「ひッく....ちょっと飲み過ぎちゃったかしら?」



今日の終電が通りすぎる音が響く暗がりの夜道、ホロ酔い加減で気分よく帰宅する20代のOLがいた

おぼつかない足取りで歩く女性に人影が近づいてきた



「おい!」


乱暴な口調で明らかに柄の悪い10代の若者

女性は若者に声をかけられるが、平然としながら若者の呼び止めを無視した



「おい!待てよ!」



問いかけにふてくさるように振り向くと、若者の背後に4、5人の同じような仲間を従えていた



「まじか…」



小声で力なくつぶやく女性

若者はゆっくりと歩みより肩に腕をかけた



「姉ちゃん!言わなくてもわかるよな?んっ?」



「....」



ゴクッ



女性は唾を飲み込むと言葉の意味をすぐに理解した

そっと手を差し出す若者に思わず、財布を渡してしまいそうであった



「はは」



ニッコリと笑う女性にニッコリと笑い返す若者の周りを、群がるように若者の仲間たちが囲もうと歩みを進めていた



ガッ



女性はとっさに若者を手で押し倒し振り切ると、思わず走り出した



「いっ!おい!追え!追え!」



尻餅をつく若者が仲間に指示すると凄まじい勢いで女性を追い始めた



ダダダ ダダダ ダダダダ



カツンカツンカツン


終電も過ぎ女性の履くヒールの音が響く中、人影のない夜道を必死に逃げた



「おら!」



「待てや!」



先ほどまでのホロ酔い加減が嘘のような俊敏んさを見せる女性を必要に追い回す若者たち

道をまがり線路の下の長いトンネルに差しかかった女性は、背後を気にしながらトンネルを駆け抜けた



「おい。回り込め」


小声で段取りを組む若者たちは二手に別れた


「はあはあ」


ズコッ


無理が祟ったのか、女性は足がもつれ思わずその場にこけた



「いたた...」



走って重くなった体に鞭を打つように立ち上がると再び走り始めた



「おら!」


「あきらめろ」



女性の逃げる先には、すでに若者の仲間たちがうまく回り込んでいた

少し退きながら背後を見ると先ほどの若者が仲間を連れて近づいていた


ガシッ



たじろぐ女性を若者の仲間の1人が掴むと、トンネルの壁に押し付けた



「いい加減金だせよ!!」



「やっやめて!暴力はやめて、暴力は」



気づくと若者たちに取り囲まれた彼女はまさに絶体絶命であった



ガサゴソ ガサゴソ



「んんっ」


妙な物音に若者たちが気づくと、音の先に目を向けた

そこにはダンボールが無造作に重ねられており、ふと見るとゴミとしか思えないほどの小汚なさ、だがそこから人の声がしたようにも思えた


バサ バサ



重ねられたダンボールから小汚い格好をした30代後半の男性が現れた

その男性は明らかにホームレスにしか見えなかった



「うるせえな!人の寝ているとこを邪魔すんな」



「あぁ!ホームレスが!生意気いうじゃねぇか!」



空気が読めないとはまさにこの男、思わず若者も声を荒げた



「助けて!!お願い!」



「え...?やだよ」


あまりの即答にもびっくりする余裕すら今の彼女にはなかった



「お願い助けて!」



「はは!傑作だ!ホームレスにすがるか?姉ちゃん」



カチン



若者の言葉を聞いてホームレスの顔が少し強張った

するとあたりにいような緊張感が漂った



「口の悪い糞ガキだな。ちょっと教育が必要だな」



「なに!」


「ホームレスが生意気言うじゃねぇか!!!」



若者たちはホームレスに向かって声を荒げた

すると若者の仲間の1人がホームレスに近づいてきた



「ホームレス風情が!すっこんでろ!」



罵声を浴びせられるとホームレスはゆっくりとその仲間の1人の額に指を構えた


パチーン


デコピン。デコピン一発で仲間の1人は少し宙を舞ったように見えるほど綺麗に倒れた

デコピンをくらった若者は気絶して動かなかった


「はぁ!!?」



あたりの若者たちは驚愕したが若者たちも引き下がる訳にはいかなかった

若者の仲間たちは一斉にホームレスを取り囲み襲いかかった



「......つよ」



若者は声を荒げ、女性は驚愕した

次々と向かって行く若者の仲間を、簡単に打ちのめすホームレスに清々しさすら感じた

それほど実力の差を感じさせた



「おい!クソガキ!」



気づくとあっという間に若者の仲間たちは打ちのめされてしまった



「ひぃぃ」



若者はその光景を見て崩れ落ちるように腰を抜かした

ホームレスは若者に近づくと、しゃがみ込み若者と目線を合わせた



「今お前が感じている恐怖感を彼女に与えた事を覚えとけ...」



「わわ...わかりました。」




そう言って情けなく逃げて行った。



「あ...あのー」



女性がホームレスに声をかけた



「ごはんおごります」





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