角
軽く読める小説です。平和な気持ち、暖かい気持ちに
なってもらえたらなと思います。
今、アナタに好きな人はいますか?
アナタの好きな人はどんなタイプの人ですか?
人それぞれ好みのタイプは違うけど、私の好きなタイプは――。
私は三島裕子。高校一年生。
「ゆっこぉ〜、おっはよう」
そして私に向かって明るく挨拶をする、ツインテールの髪型がトレードマークの幸恵。あだなはさっちん。私達は小学校以来の親友だ。
「ねぇねぇゆっこぉ。知ってる? 今日転校生が来るらしいよ」
転校生。男の子かな女の子かな。
「男の子だったらいいなぁ〜。ジャニーズ系のイケメン! そういえば、ゆっこはどんな男の子がタイプなの?」
「私? 私はもちろん立派な角が生えている人よ」
「そっかー。……え?」
さっちんがなんか驚いたような引いてるような微妙な顔をしている。どうしたんだろう。
「角って……もしかして下ネタ?」
「何言ってんのさっちん、角は角でしょー。頭に生えてる角よ」
本当にさっちんは下ネタばっかりだ。
「……あはは、冗談ばっかり〜」
さっちんは苦笑いしていた。
そして朝のホームルーム。噂通り、転校生はやってきた。
「えっ!!」
転校生の姿を見てさっちんが大声を上げる。
「ちょっとさっちん、どうしたのよいきなり」
私は小声でさっちんに聞く。
「え、だ、だって……つ、角が」
現れた転校生。それは男の子だった。そして頭には立派な角。
「やばい、タイプかも」
「え!? な、なに言ってんのゆっこ!? 角よ角! 人間に角が――」
「こら、幸恵! うるさいぞ!」
先生が騒ぐ幸恵を注意する。全く幸恵には困ったものだ。
「えぇ!? せ、先生! 角ですよ!? なんで? ちょっと、なんでクラスのみんなもそんな普通にしてるのよっ!」
さっちん一人が異様に興奮している。一体どうしたというのだろう。
「はぁ……、満君、確か保険委員だったな。幸恵さんを保健室に連れて行ってあげなさい」
「はい」
先生はさっちんの様子のおかしさを悟り、保険委員でイケメンの満君に保健室に連れて行くように促す。すると、さっちんは
「あ、み、満君。あ、あの、どうも」
「うん、行こう」
まんざらでもない顔だった。ははーん、さっちんめ。これを狙っていたんだな。
「よーし、じゃー改めて紹介するぞー。今日からお前らの仲間になる角田 角次郎君だ。ちなみに長男だ」
「ご紹介を受けました、角次郎です。皆さん宜しくお願いします。ちなみに長男です」
か、かっこいい。なんて立派な角なんだろう。白く鋭く尖っていて、硬くておっきぃ……。ジュンとしちゃう。
「よし、じゃあ角次郎君の席は……。お、三島のとなりの席が空いてるな」
えっ! 私のとなり!? やったーっ!
「三島さん、よろしく」
「は、はいっ!」
角田君は、爽やかな笑顔で私に挨拶すると、となりの席に座った。
はぁ……はぁ……なんて素敵な角なんだろう。こんな角見た事ない。これは運命の出会いだわ。絶対、そうに違いない。私は食い入るように角田君を見続けた。
授業中。角田君はたびたび角を両手でさすっていた。なんてさわり心地の良さそうな角なんだろう。
昼食の時間。私は角田君と保健室から帰ってきたさっちんと一緒に机をくっつけてお弁当を食べる。
「ね、ねぇ。その角って本物なの?」
さっちんがおそるおそる失礼な事を言っている。
「あはは、幸子さんって面白い人だね」
む、角田君が笑っている。さっちんめ、いくら友達でも私の恋する相手を奪うなんて許さないからね。
昼食も終わって、昼休み。角田君は机に向かって角をこすりつけていた。一体何をしているのだろう。
「くっ! ふっ! このっ!」
なんか戦っているみたいだ。
「ふぅ……勝った」
勝ったみたいだ。
「おめでとう」
「ありがとう」
私達は握手をする。
「ふふふ」
「あはは」
幸せな笑い声が教室中に響き渡った。
そして五年後、私達は結婚した。
了