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レスティア物語  作者: マリア
第二章 王都センスティア
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闇の精霊との出会い

闇の精霊→カイルサイド

 カイルがいた部屋からさらに奥に、下に降りていった場所に厳重に警備されている扉があった。ブライアンの合図で扉の前に陣取っていた屈強な男達が脇にずれる。鍵は掛かっていないのか、そのまま扉を開けて入った先もまた同じように薄暗く、けれどそれまであった闇とは違うカイルのよく知る心地よい闇の気配があった。

 再び髪をつかまれて顔を上げた先に見えたのは、こんな場所で出会うはずのない存在。とても身近で、けれどカイル以外には見えていなかった存在だった。




 闇の精霊は闇を好む。だが、それは澄んだ夜の闇、自然の営みの中でもたらされる静寂の闇。欲望や憎悪などで形作られたおぞましくも醜い心の闇は望むところではなかった。気ままに夜を渡り影が重なってできる闇を渡り自由に飛び回っていた。

 人界に生まれる精霊と違い、精霊界で生まれる精霊は依代を必要とせず、長く生きれば生きるほどに精霊としての格が上がり高位の存在となっていく。闇の精霊もそうやって成長し今や最高位の格を持つまでになっていた。同じ闇の精霊だけではなく、下位の他属性の精霊も彼女の力の影響を受けるほどに。

 そんな闇の精霊が人界に興味を持ったのは、紫眼の巫女と愛し子の存在を知った時。精霊王様の目にかなった者に与えられる精霊を見、意思の疎通を可能とする紫の瞳を持つ女達。女限定なのは精霊王様が見るなら女の方がいいと言ったことと、女の方が男に比べて貞操観念が高いこと。


 穢れを嫌う精霊にとって戦いを好んだり、情欲に溺れやすい男は女に比べて穢れを帯びやすい存在だ。子供の頃にはそこまで大きな差はなくても、男女を意識するようになる頃から両者の間には明確な差が生まれ始める。精霊達が好む霊力は、女の方が数も多く質もいい。そのため女の方が精霊達の手助けを受けやすく勘が鋭いと言われている。

 中でも愛し子と呼ばれる、精霊だけではなく精霊王様からの寵愛を受ける存在がいる。これは精霊王様の目にかなった者達の中から、精霊王様が最も気に入ったものに与える称号のようなものだ。


 称号とはいっても、確かな証もある。その証を持つ者は精霊達全般から加護を受けることができ、同時に精霊達にとってこの上ない極上の霊力を有する者として重宝される。より霊力が高まればその証を通じて精霊王様と直接交信もできるというのだから、愛し子にかける精霊王様の寵愛は並大抵のものではない。

 なぜ人にそこまで目をかけるのか、闇の精霊は理解できなかった。人が抱きやすい闇と近くて遠い闇を司るからこそ分からない。なぜあれほどまで簡単に闇に心を落としてしまう者達を、魂を穢してしまう者達を大切にするのか。

 行いを見守り、罪を刻み、悪事を抑制してまでなぜ人の持つ光にそこまでこだわるのか。精霊界にいれば精霊は簡単に消えることも悪に堕ちてしまうこともない。寄り添った人の死に嘆き悲しむこともない。それなのに、なぜ精霊界から人界に行く精霊達が後を絶たないのか。


 それを知りたくていつもの気まぐれで精霊界を飛び出した。初めてきた人界は精霊界とはまるで違った。雑多であらゆる領域の者達が混在している混沌たる世界。魔力は満ちているが霊力の全くない世界。闇の精霊を支える霊力は生物が発する霊力を頼りにする以外にない。

 植物や獣達の霊力は闇の精霊の好むものだったが微弱で、闇の精霊を支えるには足りない。より強い霊力を求めるうち、人が多く集まる町へと導かれていた。精霊界では見ることがないほど人が密集して暮らす場所。


 様々な人々がおり、霊力もまた人それぞれ。白と黒しか知らなかった闇の精霊が知らなかった、様々な色や割合で存在する霊力。美しいものもあれば、また染まり切ってはいなくてもひどくよどんだものもある。世界と同じく、人々も霊力もまたこれほどまでに雑多なのかと驚いた覚えがある。

 それでも植物などよりずっと多い霊力を補給し、人々の間を飛び回った。その結果分かったのは大人よりも子供の方が澄んだ霊力を持っていることが多いこと。言われていたように男よりも女の方が穢れが少ない者が多いこと。そして、どれほど澄んだ霊力を持つ者でも環境によってはそれが濁ってしまうこと。


 旅をする中で、闇の精霊が気に入った子供がいた。その子供は無邪気で人を疑うことを知らず、家族に愛され周りの者達に愛されて育っていた。闇の精霊はその子供を見るのが楽しく、その子供の発する霊力を浴びるのが嬉しかった。

 だが、ある時、その子供の家族が疫病にかかった。行商から仕入れた商品に病もまたついていたのだ。体力のない祖父母が亡くなり、父が死に母が死に、兄と姉もまた死んだ。その子供だけは闇の精霊が守ったために疫病にかからなかった。だが、それは果たしていいことだったのだろうか。


 家族が死ぬ度に、子供の魂に陰りが生まれ霊力が濁っていった。それでもまだやり直せると思っていた。子供は悪いことをしていない。ただ哀しみに心が暗くなっているだけだと。周りの者達が助ければこの子はちゃんと立ち直れると。

 しかし、疫病を出した子供の家族にも子供にも周りの人々は冷たかった。それまで笑顔で挨拶をしてくれた者達が、嫌悪と恐怖に顔を歪めて子供を避ける。孤児院ですら疫病を恐れ、子供を引き取らない。近所の家の人達は疫病を封じ込めるためと、子供の家を家族の遺体ごと焼き払った。


 赤く燃えて消えていく家族の体と思い出の詰まった家。それを見ながら子供の心がひび割れていった。暗く黒くよどんだ感情があふれてきた。路上で生活するようになった子供はますますすさんでいった。盗むことも奪うことも厭わず、ただひたすらに生を求めた。闇の精霊はそれを見ているのが辛かった。それでも自分が守った子供の行く末を見届けようと思った。

 その子供の人生はある日突然終わりを迎える。傭兵として町にやってきた男達と出くわした子供は、いつもと同じように何かを奪おうとした。だが、行動に移す前に……斬られた。あっさりと何のためらいもなく、男達は子供を殺した。まるでそれが当たり前のことであるように。


 驚愕と絶望と憎悪と、様々な感情を抱きながら死んだ子供の魂は……真っ黒になっていた。それを見て闇の精霊は納得した。ああ、そうか、と。なぜ他の精霊達が必死になって人々を見守り、罪を刻み、悪事を抑制しようとするのか、理解できた。こんなことをさせないためだ、と。こんなことを起こさないために、起きないようにするために、頑張っていたのか、と。

 精霊達と違い、生きるために様々なものが必要になる人は時として道を誤りやすく、闇に染まりやすい。だが、そんな中でも清く正しく生きようとする者もいる。その者達の放つ輝きというものは精霊界では見ることのできないものだ。


 光にあふれる場所で見る光より、影や闇にあちこち覆われている場所でなお光を失わないその光のなんという美しさか。これを見るために、これに触れるために、そしてこれを守るために精霊達は人界へと赴くのか、と。いつも精霊王様が楽しそうに、そして時に哀しそうに愛し子の証を通じて人界を見ていたわけが分かった。

 その者達は、この世界にあってとても強い光を持つ者達なのだろうと。興味が、沸いた。紫眼の巫女達がいる場所へと行ってみた。だが、そこは闇の精霊が思っていたような場所ではなかった。確かに巫女達は美しく強い光を持っていた。穢れのない魂を有していた。だが、その巫女を取り巻く人々の何と醜いことか。何と歪み穢れていることか。


 巫女達はそんな者達に囚われ、道具として扱われていた。巫女達の中にもそれに気づいている者と気付かない者がいた。気付いている者達は皆、いつも憂いの表情をしていた。ここから抜け出すためには、自ら心を穢し魂を濁らせる以外にないと、分かっていたから。そして、それは友とする精霊達との永遠の別れを意味していたから。

 こんな悲しい生き方があるか、精霊王様の目に止まるほどの者達がこのような生き方を強いられて許されるものか。まさか愛し子でさえ、このような虜囚となっているのか。そう考えた闇の精霊は探し回ったが、愛し子を見つけることはできず、そのままそこを飛び出した。


 彼女達のことは気にかかったが、どうしても愛し子を探し出したかった。精霊王様の目にかなうほどの存在だ。きっとどこかで幸せに暮らしているはずだ。穢れや闇などに関わらず、己の非ではないことで傷つけられたりせず、みんなに愛されて生きているはずなのだ。

 躍起になっていた闇の精霊は、いつしか霊力を補給することも忘れ、だんだんとその力を失っていくことにも気付かなかった。そして、ある日、抗いようのない強い力に引き寄せられ、囚われてしまった。


 力の源を奪われ、命令に逆らうこともできず、悪事の隠蔽を続けてきた。精霊が本来やらなくてはならないことの逆を強要され続けてきた。力の源を握られている以上、逆らうこともできず、けれど唯々諾々と従うことにも我慢がならない。

 このまま消えてしまおうかとも思ったが、おそらく闇の精霊ほど高位の存在になってしまえばこのまま堕ちれば悪霊になる。それは望むところではなかった。また、彼女に消えることを許さないというように、時折霊力の補給のための人々が連れてこられた。


 言われるままに彼らから霊力を補い、弱まった体を維持し続けていた。唯一抵抗できたのは、子供からは霊力の補給をしないということ。本当であれば子供の方が闇の精霊の好む霊力を持っているのだが、自分のせいで子供が犠牲になるようなことはどうしても避けたかった。

 精霊は嘘をつけないが、本当のことをしゃべらないでいることはできる。彼らも子供よりも大人の方が霊力が多いのだと勝手に解釈したようだった。補給をさせてもらった人々は、いずれも恐怖に押しつぶされ、絶望を瞳に宿していた。闇に囚われてしまったのだ、無理もないことだろう。


 日に日に彼らの霊力も魂も濁っていき、闇の精霊の補給にはならなくなっていった。そうなると別のものがあてがわれる。そうやって、数多の人々の犠牲を築きながら、闇の精霊はそこにいた。

 いつか解放されることを望みながら、もしくはいっそ悪霊に堕ちて同朋達に処分される日を待ち望みながら。その日も同じように闇の元締めを迎えた。いつもの補給だとすぐに分かった。今日は誰を連れてきたのか。

 もう興味を抱くこともなくなっていた闇の精霊は、連れられてきた者を見て、いや、その者から発せられる霊力を感じた瞬間に目を見開いた。せめて自身に居心地がいいように闇で埋めた部屋に、太陽が昇ったのかと思った。


 一瞬にして部屋中を埋め尽くしてしまうほどの美しく眩い光。圧倒されるほどの膨大さでありながら、優しく温かく包み込むかのような心地よさを感じた。

 その発生源を見れば、こんな場所では見ることもない数多くの精霊達にしがみつかれている一人の少年の姿。子供という年齢は脱し、けれど大人には至っていない、その間にある少年だ。闇の精霊は一目でわかった。ああ、愛し子だ、と。

 同時に言いようのない怒りと、また泣きたくなるくらいの安堵を感じてしまった。愛し子がこのような場所で、あのような目にあっていることに。そんな目にあってなお、感じる光にも魂にも一切の陰りも濁りも見えないことに。

 元締めに髪をつかまれて顔を上げた少年は、闇の精霊を見てひどく驚いた様な顔をしていた。中性的で整った顔。だが、闇の精霊が注目したのは瞳だった。闇の魔法で隠していても、闇を司る闇の精霊には見えている。少年の瞳の、本当の色が。

 そして、思い出した。精霊界を出る前に聞いた一つの話。今度の愛し子は、特別である、と。




 カイルは顔を上げた先に見た者に驚きを隠せなかった。いつも見ている存在とは違う。けれど分かった。目の前にいる三、四歳くらいの女の子が、真っ黒い髪と瞳をした、黒い服に身を包む彼女が精霊であると。闇の、精霊だ。

「こ……れは……」

 これはどういうことだ? なぜ闇の精霊がこんな場所にいる? それに、精霊にしては姿形がカイルの知っている者達と違いすぎる。いくら小さいとはいえ、人と同じ大きさの精霊なんて見たことがなかった。


「驚いた? これが僕達の切り札さ。とても便利なんだけど、ちゃんと餌をやらないと弱って力を出せなくなるんだ。だからね、時折君みたいに外から連れてきた者で補給をさせているんだよ」

「補給?」

 そういえば、いつもカイルの周りにいる精霊達はカイルに力をもらっているのだと言っていた。どういうことかは分からなかったが、精霊はカイルのそばにいることでその力を補給していたのだろうか。

「そう。魔力が多い者ほどあたりが多かったけどね。でも、すぐに駄目になってしまうから。君なら長く持ちそうだし、それに、僕も楽しめるだろう? その上僕達の役に立てるとなればこれ以上ないと思わないかい?」

「くっ……彼女は……一体……?」


 これからこんなふうに嬲られるのだというように、ゆっくりとカイルの首を絞めてくるブライアン。カイルはせめて彼女が何者でどうしてここにいるのか知りたかった。闇の精霊であることは違いないが、ただの精霊であるとも思えない。

「驚いただろう? 目に見えない精霊をああやって可視化するだけではなく、触ることもできるんだ。あれは僕達に逆らえない。だからああやっていつも膝を抱えていじけているのさ」

 カイルはブライアン越しに小さな女の子の姿をした闇の精霊を見る。闇の精霊もカイルを見た時驚いた顔をしていたが、今は怒っているような泣きそうな顔をしている。だんだんと苦しくなってきたカイルの顔を見て、ブライアンを手を離すと精霊に向き合った。


「ほら、君の新しい餌だよ。存分に味わうといい」

『……言ったはずよ。アタシは子供からは補給しないって』

「確かに彼はまだ大人ではないだろうけどね、でも子供といえるほど小さくもないだろう? それに、この僕が気に入ったんだ。きっと君にも気に入ってもらえると思ったんだけどね?」

『……分かったわ。連れてきなさい、味見してみる』

 闇の精霊の言葉に、ブライアンは嬉しそうな顔をして目線で合図をする。カイルの両腕をとっていた者達は、カイルを精霊の前まで引きずって行き、近くに来ると膝立ちをさせた。後頭部の髪をつかまれて、精霊に顔が向くようにあげられる。


 精霊はどこか痛ましげな顔でカイルを見ると、そっと小さな手をカイルの額に伸ばしてくる。その手はひんやりと冷たく、カイルの額の真ん中に当てられた。

「あっ……がぁっ……」

 その手から何かの力を感じた瞬間、体の中でドクンっと何かが脈動し、頭がズキリと痛む。感じたことがない、けれど身近に思える力が体の中を探る様にその糸を伸ばしていく。むずがゆいような感覚に身をよじろうとするが、両側から押さえつけられているためそれもできない。


 全身に行きわたったその糸が、今まで誰にも触れられたことのない、カイル自身自らにそんなものがあったとは知らなかった”何か”に触れた。その時、再び脈動が起き何かに触れた糸ばかりか、体中にあったそれが残さず弾き飛ばされた。

 魔力暴発とは違う衝撃に目を閉じていたカイルが目を開けると、目の前にはしりもちをついて座りこむ闇の精霊の姿があった。ひどく驚いた顔をしていた精霊だったが、次第にその顔は喜びに変わっていく。そして、再びカイルの額に手を当てた。


<聞こえてる? アタシはこいつらに捕まって利用されているの。逃げ出したいけど、大切な物を奪われてそれもできない。でも、あなたに協力してもらったらここから逃げ出せるかもしれない>

 再びあの感覚に襲われるのかと警戒していたカイルだったが、闇の精霊から聞こえてきた精霊達の交信と同じ声に精霊を見る。彼女はひどく真剣な顔をしていた。彼女自身本意などではないのだろう。カイルと同じように無理矢理囚われているのだ。


<ここから逃げ出したら、もうこいつらには協力しなくて済むんだよな? こいつらが好き勝手しなくて済むようになるのか?>

<少なくとも、簡単に罪を隠すことはできなくなるわ。ギルドカードの隠蔽ができなくなるからね>

<……どうすればいい? 俺の協力って言うけど、見ての通り俺も捕まってる。今のところ逃げ出す手立ても思いつかない。こんなんで協力できるのか?>

 それができるなら喜んで協力するが、見ての通りカイルも囚われの身。大した協力ができるとも思えない。それとも補給の面で、ということだろうか。弱っている力を取り戻せば逃げ出すこともできるのだろうか。それならカイルにもできるだろう。


<できるわ。むしろあなたにしかできないことよ。アタシの依代になって? そうすればアタシはあいつらに奪われたものを取り返せるし、ここから逃げ出すこともできるわ>

<依代? それってどういうものなんだ?>

<知らないの?! えっと、そうね。アタシの力の源で、在るべき場所になってほしいってことね。難しいことじゃないの。ただ、アタシを受け入れてくれたらそれでいいわ>

<そうすれば自由になれるんだな? ……分かった、依代になる。でも、どうやって受け入れ……>

 交信で依代になる方法を聞こうとしたカイルだったが、言葉を続けることはできなかった。闇の精霊が突然カイルの頭を抱きかかえると、その小さな唇をカイルの唇に押し当てたからだ。


 目を見開くカイルだったが、触れた唇を通じ何かの力が闇の精霊へと流れ込んでいるのを感じた。それが流れ込むたび、闇の精霊の白かった頬が上気し透徹した瞳がうるむ。同時にカイルの中に闇としか言いようのないものが入り込んでくる。

 拒めば恐らく先ほどのようにはじき出せるだろう。しかし、それはカイルを傷つけ苦しませる闇ではない。カイルを優しく包み込む夜のような、相棒の体の色にもよく似た暖かな闇。目を閉じ、それを体になじませるようにして受け入れていく。全身に行きわたったところで、ふわりと体の中に溶け込むようにして闇は姿を消した。


 目を開けたカイルの間近には、恍惚の表情を浮かべながらも不敵に笑う闇の精霊の姿があった。闇の精霊から、ふわりと闇が広がるとカイルを押さえつけていた男達が突然意識を失って倒れる。体を支えるものがなくなったカイルは、そのまま前に倒れ、精霊の小さな腕の中に頭がおさまる。

「なっ、何をしているのかな?」

『この子、とっても気に入ったわ。だから、今夜一晩だけはわたしに貸して? それくらい構わないでしょう?』

「そんなに気に入ったの? それくらいごちそうだったんだ?」

『ええ、そうよ。だから今夜はここに誰も入らないでね。この子との時間を邪魔されたくないもの』

 カイルは両者の会話を聞きながら、いまだ確認ができないクロのことを考えていた。聞いて答えてくれるとは思わないが、クロはあれで妖魔だ。暴走して大変なことになる前に、どうにか繋がりが戻れば……そう考えながらカイルはこれからの自身の行動に関して思いを巡らせていた。

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