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レスティア物語  作者: マリア
第五章 動き出す歴史
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宝玉の行方と第三の盟約

 それに、今カイルが有する力だって一朝一夕に身に付けたものではない。確かに現実的な時間では短いのかもしれない。けれど、費やしてきた時間はそう短いものではないのだから。

「俺はギルドに入るまで、自分の属性を知らなかったし、龍属性を満足に使いこなせるようになったのだって最近のことだ。それどころか、ギルドに入るまで、俺は生活魔法しか使えなかったんだぞ?」

「なっ……なんで、そんな……」

 いまだに疑っているシモンにそう告げれば絶句する。何を驚くことがあるのだろうか。路地裏にいる孤児が満足に教育を受けられるとでも思っているのか。


「驚くことないだろ? 基礎教育は六歳から十歳までの間に習う。文字の読み書きから計算、世の中の常識からルールに関しても、な。で、十歳になってギルド登録して魔力と属性を確かめて初めて魔法を習うことが出来る。五歳ん時から放浪生活してて、ギルド登録もできなかった俺が、満足に魔法を学べたとでも思うのか?」

 基礎教育は基本的な社会常識や読み書き、計算など生活していくうえで必要最低限の知識と教養を身に付けるため誰しもが受ける、いわば義務教育の一環だ。しかし、それは孤児には適応されない。少なくとも路地裏で生活しているような孤児には。

 魔法は精神に大きく影響を受けるうえ、習得のためには根気と努力、そして周囲の者達の助けも必要とするためある程度成長してから学ぶのが普通だった。


 だからこそ、ギルド登録して魔力があり属性が判明すると魔法ギルドで研修期間が設けられ、基礎魔法教育を受けることになる。そして、それが終了して以後、依頼を通じて少しずつ慣れていくのだから。

 その前提がない路地裏の孤児がどうやって魔法を学べというのか。そもそも、生活魔法を使えただけでも破格なのだ。常日頃から使うことの多かった生活魔法をジェーンが覚えていただけで僥倖と言えるだろう。

 普通、魔力を持たない者は魔法にあこがれはすれど興味を示すことはない。自分が使えないものに対する反発などもあって、呪文を覚えるなんてことは誰もしないのだから。

 カイルも無詠唱が使えると言っても、それは呪文の詠唱を覚え、使い続けることでその感覚をつかみ初めて可能になるのだ。呪文の詠唱も知らない魔法は、いくら魔力があっても使えない。


「……生活魔法…………。そうですか、あなたが例の生活魔法の応用を生み出した?」

「まぁ、そうだな。使えるのがそれだけなら、それでどうにかするしかないだろ? 幸い、魔力だけは多かったから色々試していくうちに、な」

 エグモントの問いに頷く。シモンはそれを聞いて余計眉間のしわが増えた。あの画期的な応用法が生み出され、武国でも魔法を見直す動きがあったのは確かだ。戦闘に使えるほどの魔力量や質がなくても、魔力を腐らせることなく役立てる方法でもあるのだから。

 現にシモンも探知サーチなどは重宝しているし、屋外で食事をする際に役に立つ魔法もたくさんあった。より強くなることを求め、魔法の強さと大きさばかりにこだわっていたシモンにとって、そんな魔法の使い方は衝撃だったのだ。

 しかも、その魔法を使いこなすためには繊細な魔力操作と魔法制御が求められることもあり、結果としてシモンの魔法の実力は向上したと言える。それがまさか、流れ者の孤児のなけなしの努力から生み出されたなどと誰が思うだろうか。


「んなもん、誰かに聞いて教えてもったらいいじゃねぇか……」

 ふてくされたように言うシモンだが、それが不可能なことは分かっていた。現にカイルも苦笑いを浮かべている。

「出来るわけないだろ? もしかしたら自分に向けられるかもしれないのに、誰が教えてくれるんだ? 下手に疑念を持たれたら殺されるだけだ。俺達は弱者じゃなけりゃ生き残れなかった。強くなきゃ生きていけないのに、強くなることは許されない。だからみんな死んでった。俺が生きてたのは運がよかったのと、精霊達がいつも助けてくれてたからだ」

 自分達を害する恐れのある者に力を授けようなどと考える者がいるわけがない。ただ、生きるために強くなりたくても、用途を疑われれば始末される。そんな中でどうやって力を他者から授けてもらえるというのか。

 それが出来るくらいなら、路地裏にくすぶる孤児達などいない。闇に堕ちて凶行に手を染める者などいないのだ。


「精霊……やはり、その眼は?」

 カイルはその言葉に、初めてそちらに視線を向ける。国主達の一団とは違う。誰もが白いローブを身にまとう者達。一見して質素にも見えるが、袖や裾、胸元には豪奢な刺繍がされており、布の質も相当いいことが分かる。

 彼らの胸元に刻まれているのは宝玉と、それを掲げる巫女の横顔。そして、彼らが知っているのかどうかわからないが精霊言語で綴られた文字だ。

 ぐるりと円を描くようにして書かれている言葉の意味を少しでも考えることができたのならば、彼らは今すぐにそのローブを脱ぎ、己の行いを省みるべきだろう。

 『精霊と共に、心に光を灯し、闇に打ち勝つ導となれ』。生き物の魂が発する霊力に寄り添う精霊達。彼らは何よりも人のあるべき行動の指針を示してくれる。


 そんな精霊達の姿を見聞きし、常人には見えない両者の仲を取り持つことが出来る紫眼の巫女。彼女達の役割は、本来広く人々に精霊達の意思を伝えることだったはずだ。

 そのために彼女達を守る必要はあれど、一か所に集め閉じ込めておく必要などない。穢れを知らないことは、無垢であることは美しい。けれど、ひどく儚く脆くもあるのだから。

 彼女達はしっかりと自らの足で地に立つべきなのだ。そして人の闇も光も穢れも美しさも、全てを理解した上で、精霊と共に生きていくべきだ。

「……ああ、そうだ。この眼は本物だ。俺は生まれた時から、精霊が見えてた。その声を聞き、時に力を貸してもらってた。母さんから宝玉を受け継いで、加護もあったから。でも、それが異質なことは分かってた。これが露見したら、母さんと同じように囚われの身になるだろうことも。だから、余計父さんは俺の存在を隠したがってた」


 カイルの言葉に、白いローブの集団の中でも地位が高そうなものが表情を変える。そして、信じがたいとばかりに反論する。

「宝玉の巫女が現れなかったのは、もうすでに受け継いでいたものがいたからかっ。やはり、見捨てられてなどいなかった。そ、それに、囚われの身などとっ! わ、我々は巫女が健全な生活を送れるようにと……」

「なら、母さんが父さんと一緒になるために逃げだす必要なんてなかっただろ? 母さんはあそこにいる限り、父さんとは一緒になれないと分かってた。だから、ヒルダさんの手を借りて、あの場所から飛び出したんだ」

 どれだけ虚弱であろうと、宝玉の巫女であったカレナを彼らが手放すことなどなかっただろう。死ぬまで飼い殺されていた。死ぬまで精霊神教の象徴として生きることを余儀なくされたのだろうから。


「なっ、なんと。自らに与えられた使命を投げ出し、色恋に走っただけではないかっ! そ、そんな不義理を働いたから、罰が当たり早死にしたのだっ! い、いや、子供など産める体ではなかったはずだっ。そ、そんなことをすれば……」

「ああ、そうだな。母さんは俺を産んだから死んだ。そうじゃなかったらもう少し長生きできてたかもな」

「そうだろうっ! 巫女の誇りである処女を穢し、純潔を捨てたから命を縮めたのだっ! 自業自得ではないかっ!」

 カイルの言葉に憤って喚き散らしていた大神官だったが、不意に言葉を途切れさせる。いや、それ以上話すことが出来なかったというべきか。


 離れた場所に立っていたはずのカイルが、いつの間にか大神官の側に現れてその首をつかむと片腕で持ち上げたのだから。

「……黙れよ? 俺が、俺や精霊達がお前達が何をしてきたのか知らないとでも思うなよ? 本当ならお前など八つ裂きにしてやりたいところだ。何が処女、何が純潔だっ! お前にそれを語る資格があるとでも思うのかっ! お前が、宝玉の巫女になる前の母さんに何をしたのか、言えるものなら言ってみろっ!!」

 カイルはそう吐き捨てると、大神官を床に投げ捨てる。尻餅をついたまま、顔面を蒼白にする大神官を見下ろすカイルの眼は冷たい。

「覚えておけ。紫眼の巫女に求められる処女と純潔は肉体的なものに付随しない。なにものにも犯されることのない心の処女性と何があろうと穢されることのない魂の純潔。それこそが巫女の条件であり資質だ。精霊は生きて行く上で必要な営みで、人を見放すことなどない」


 決勝戦でカイルが見せたのと同質の怒りを向けられた神官達は言葉を発することもできずに震えていた。その様を、そして彼らにまとわりつくような気持ち悪い気配を感じてカイルは顔をしかめる。

 こうなると分かっていたから見たくなどなかったのに。同じ部屋にいるだけで感じる気持ち悪さ。距離が近いほど大きくなるのに、直接触れてしまったことで無視できないレベルにまで達してしまった。

 怒りの感情で無理矢理押さえ込んでいたが、これ以上は無理だ。カイルは彼らから距離を取るようにして後ずさると、口元を押さえ崩れるようにしてしゃがみ込む。

「カイル君っ!?」

「カイルっ!」

 トレバースのレイチェルの叫び声が重なる。だが、カイルは顔を上げることもできないほどの気持ち悪さと戦っていた。


 トラウマを克服しようとした時に感じたのと似たような、けれどそれよりもはるかに嫌悪を伴う吐き気。頭がズキズキと痛み、体の震えが抑えられない。

 あのような者達がそばにいて、神殿都市の巫女達はよくぞ無事でいられると思う。それとも、もうみんなどこかおかしくなってしまっているのだろうか。

 カイルは彼女達の救済のために神殿都市に向かってもらったヒルダ達の安否を気遣う。恐らくはこの気配を感じられるのも影響を受けるのも紫眼の巫女の力を持つ者だけなのだろう。そうでなければ、カイル以外の面々が平然としていられるわけがない。

 こんなにも痛ましくおぞましい存在をカイルは知らない。普段カイルが彼らに感じている温かさや穏やかさ、頼もしさとはまるで正反対のもの。冷たく荒々しく、魂をも凍らせてしまうほどの恐ろしい怨嗟。これが、悪霊の気配なのだと教えられなくても分かった。


『カイルっ! もうっ、だから言ったでしょう。近付いちゃ駄目よって。悪霊はアタシ達はもちろん、巫女としての力が強いほど影響を受けちゃうんだから』

 レイチェルがカイルに駆け寄るよりも早く、中空から現れた存在があった。十六・七の姿をした少女。黒い髪に黒い眼、そして黒い服をまとった人ならぬ存在だ。

「あ……なっ、あなたは……よもや精霊様では?」

 シェイドの登場に、カイルの変調のせいで威圧から逃れた神官の一人が思わずといった調子で声を上げる。だが、その神官を見返すシェイドの視線は厳しい。その視線に止められ、歩みだそうとした一歩が止まった。

『そうよ。アタシは闇の大精霊シェイド、カイルの専属精霊よ。それよりも、アタシ達の愛し子に近付かないでちょうだい。そんなにも濃密な悪霊の気配を身にまとったあんた達は愛し子にとって猛毒も同じよ!』

『その通りです。カレナが去ってより二十年余り、精霊神教も地に落ちたものです。まさか、悪霊を囲っているとは……』


 さらに現れた存在に、今度こそ誰もが眼を見開いた。唐突に現れたことにではない、その存在を見知っていたからだ。かつて癒しの巫女と呼ばれたカレナの傍らに常にあった者だったから。

「まさか……シャイン様」

 大神官は懐かしくも信じがたいその姿に眼を見開くばかりだった。体が弱くとも強い意志を持っていたカレナ。彼女が契約した精霊は光の大精霊シャインだった。その彼はカレナと共に去ったはずだった。それが、今こうして目の前にいることが何を意味しているのか。

『ええ、わたしは光の大精霊シャイン。シェイドと同じくカイルの専属精霊になりました。故に宣言しておきましょう。もし、あなた方が私欲を持ってカイルを傷つけるならば、光の精霊は皆あなた方の敵になるでしょう』

『もちろん、闇の精霊もよ。アタシ達の目をかいくぐれるなんて思わないことね!』


「契約精霊が二体……それも、どちらも大精霊とは……」

 エグモントはカイルを守るようにして立つ二体の精霊をまじまじと見る。人と変わらぬ姿形を取り、司る属性の精霊全てを従える大精霊。一体との契約だけでも前代未聞だったというのに、二体同時などとは。

『フフフッ、アタシ達の愛し子はすごいんだからっ。あんた達も出てきなさいよ』

 胸を張るシェイドの言葉に答えるようにして、カイルの体から四色の光の球が現れると、各々姿を取る。

『なぜあなたが自慢げなのか理解に苦しみますね。ああ、わたくしは水の大精霊ウンディーネです』

『あははっ、まあ、シェイドらしいけどね。僕は風の大精霊シルフだよ』

『全く、もう少し威厳を持ったらどうなのかのぅ。いい歳じゃろうに。儂は土の大精霊ノームじゃ』

『俺は火の大精霊イフリートだ! よろしくなっ!』


「…………カイル君?」

「ああ、みんな俺の契約精霊だよ。……早く終わらせよう。気分が悪い……」

 カイルは若干ふらつきながらも立ち上がる。そして六体の精霊に囲まれたまま第三の楔を打ち込む準備をする。使うのは魔力ではない。六体の大精霊と契約しうる自らの膨大だと言わしめる霊力だ。

「聖なる大樹によって育まれし命あるものの心と魂の導き手よ、今こそ盟約によりてその真価を発揮せよ。霊力を礎に我が名と血と時を持ちてこの地に楔を穿つ。『精霊の福音スピリットソング』」

 カイルの詠唱と共に大精霊達の力によってその効力が広げられていく。それはこの部屋や都市だけではない。世界中に存在する精霊達によって人界全土に届けられていく。


 魔力を使った時とは違う、魂というか命そのものが疲弊したような感覚を覚えるが耐える。そして目の前で胸を押さえて苦悶の表情を浮かべる神官達を見た。

 やはりかという思いと、こんな者達が母をはじめとした巫女達の側にいたのかと思いが複雑に絡み合って眉を顰める。

「なっ、なんだ、これはっ! なんだというのだっ!」

「それは呪印だ。精霊達によって付けられた、罪の証。罪を償わない限り、決して消えることはなく苦しみがなくなることもない。罪を償ったことを精霊達が見届け許さない限り、消えることのない印だ」

「なっ!」


 大神官をはじめとして、呪印が付けられた神官達が唖然とした顔をする。まさか、あれだけのことをしておいて許されるとでも思っているのだろうか。精霊達が何もしなかったのはそれが出来なかったからに他ならないというのに。

「自分達の罪やどう償うのかは精霊達が教えてくれる。良かったじゃないか、あれほど恋い焦がれていた精霊達の存在を常に感じることが出来るんだ。ああ、それと、その呪印がある限りあんた達は紫眼の巫女に近付くことは出来ない」

「何だとっ、それはどういう……」

 逆上してカイルに歩み寄ろうとした大神官だったが、見えない何かの力によってカイルとは正反対の方向に吹き飛ばされ壁に叩き付けられる。

 大神官は何が起きたか分からず、ただ背中に感じる確かな痛みに眼を白黒させていた。それは残された神官達も、部屋にいた者達も同じだ。


「それは印であり、許可証でもある。その印を持つ者に対しては、精霊達の自己判断で実力行使が許されている。これは精霊達の総意であり、精霊王様からの最終警告だ。精霊王様からの言葉を伝えておこう。『よくぞ、今までわたしの愛すべき巫女達に無体を働いてくれた。これより後はその穢れた手で触れることは許さぬ』だ、そうだ」

 精霊王は厚顔不遜で、唯我独尊な人物だったが巫女達に対する深い愛情は確かだった。最初はカイルが男であることに不満げな顔をしていたが、接していくうちに少々寒気のする執着を見せ始めていた。

 だが、説得のかいもあってこうして巫女達の安全とそれを脅かす者達に対する対抗策をとれるようになったと思えば、やすいこと、だったのだろうか。


「これはあんた達だけじゃない、裏社会の住人、後デリウスの構成員の多くにも刻まれてるだろうな。そして、それがある限り、常に精霊の監視下にある。罪を犯そうとすれば精霊が止める」

「……それが本当なら、裏社会やデリウスの暗躍を抑えられる、と?」

「……少なくとも犠牲者は減るだろうな。それと、紫眼の巫女達はデリウスとの決着が付くまで、精霊界で預かってもらうことになってる。そこできちんと学んで、そこからどうするかは彼女達次第だ。もう何者も彼女達の行動を縛ることは出来ない。偏った価値観と使命に生きるんじゃない、彼女達もまた人として生きていく権利がある。今まで十分貢献してきた、もう彼女達は自由になるべきだ」

「だが、力の使い方はっ!」

「それこそ、精霊に教えてもらえばいいだけの話だ。俺だって誰に教えられたわけでもないけど、精霊達との付き合い方は彼らから学んだ。そして、魔法何てものは他の人と同じように学んだところで何の問題もない。隔離する意味がないだろう?」


 巫女としての在り方など、精霊と付き合っていくうちに自然と身について行くものだ。そして、高い魔力を持っているというだけで魔法の使い方など他の人と変わらない。わざわざ別々に学ぶ必要など本来はないのだ。

「誰がっ、誰が巫女を悪意から守ってきたと……」

「そんなのは、あんた達が決めることでもやることでもない。誰しもが生きていく上で自分自身、あるいは自分が紡いだ絆によって悪意をはねのけられる強さを身に付ける。あんたらがいる限り巫女が本当の意味で強くなることはない。巫女の行く末より、自分自身の身の振り方を考えろ。それが分かったら出て行ってくれるか? あんたらを見ているだけで……殺したくなってくる」

「なぁっ、巫女が……巫女が殺しなど…………」

「俺が人を殺さないで生きてこられたと思っているのか? 言っただろ? 人が生きていく上で必要とされる行為で巫女の力が失われることはないって。俺は宝玉を持ってる。でも、歴代の巫女の中で誰よりも血と泥にまみれて生きてきた。それでも俺は巫女の力を失っていないし宝玉も移動しなかった。それが精霊達と精霊王様の答えだろう?」


 反論できなくなった神官達は顔を赤くさせたり青くさせたりしながらも、悔しそうな顔をして未だ立ち上がれない大神官を連れて部屋を飛び出していった。

 カイルはそれを見届けると結界を少し細工し、呪印を持つ者を通さないように設定する。そこでようやく一息つく。大きな力の行使の連続に今すぐベッドに飛び込んで寝たい気分だ。

 先ほどの気持ち悪さもあって、カイルはトレバースの近くに戻ってくると、神官達がいなくなって空いた椅子を持ってきて座り込む。もちろん座る前に念入りに浄化したのは言うまでもないが。

 もの言いたげな視線が集中していたが、押し寄せる気だるさにしばし目を閉じて体を休めることにした。

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