処罰と釈放
カイル→キリルサイド
「この子に罪はないだろう? 働いて稼いだ金をとり返そうとしただけだ」
「ふんっ、貴様らなどが仕事をしようなどと。まして金をもらえるなんて思いあがるなよ」
「じゃあ、どうしろって言うんだ! 盗んだり奪ったりせずに生きていくためには働くしかないだろう!」
「それが思い上がりだというんだ! 貴様らなど、ゴミ漁りでもしていればいい。いや、貴様らなど必要ない存在だ。消えてしまえばいい」
あんまりといえばあんまりな言葉に、カイルは言葉が出てこない。
「身寄りを亡くした子供には、家を失った者には……死ねと、言っているのか?」
「そうとも。必要ないだろう、そんな奴らは」
「あんたらの子供が同じような境遇になってもか!」
警備隊は少なからず危険を伴う。そうなれば子供が残されるということだってある。その子達も同じように消えればいいと考えているのだろうか。
「馬鹿か、貴様は。俺達の子供とお前達が同じはずがないだろう? 俺達が死んでも子供達は国が面倒を見てくれる。当然だろう。俺達は国のために命を懸けているんだからな」
「たとえ国に雇われていなくても、それでも民として国にも貢献しながら生きてる。それでも、か」
「貴様ら一般市民など、何の役にも立たない。まして、親を失えばただのゴミだ」
「そうかよ……役人はみんな、そう思ってるのか……」
「そうとも。俺達はお前らとは違う。俺達がいなければお前らなど生活していくことさえできない。ならばせいぜい俺達の役に立つ努力をすべきだろう?」
「あんたらの食事や着ている服や使う武器を作っているのはその一般市民だ。そうやって貢献するのが当然だと?」
「分かっているじゃないか。その通りだ。貴様らは黙って我々に奉仕していればいい。いや、ゴミは掃除した方がいいのか」
男の言葉に他の警備隊の面々も大声で笑う。身をすくませ震えてしがみついてくるフィリップを抱きしめながら、カイルはようやく自分が行わなければならない革新の最大の障壁を見つけた。国王の威光を受け、国の運営に携わる彼らが皆この調子なのでは、いつまでたっても孤児や流れ者の処遇は変わらない。
ならば、変えていくべきはそこだ。それも、かなり根が深い。選民意識に凝り固まった彼らにどうすれば孤児も流れ者も同じ人間なのだと認めさせられるのだろうか。
「それより、そのガキを引き渡してもらおうか? まだ尋問の途中だ」
「尋問? 処罰によって無理矢理罪を認めさせようとしているだけだろう!」
カイルの言葉を聞いて男は歪んだ笑みを浮かべる。
「どうせ放っておけばそいつはまた罪を犯す。今度はもっとひどい罪をな。なら、その前に処分することの何が悪い?」
「処分? 俺達を殺すことが、か?」
「ゴミは処分するものだろう?」
カイルはその言葉で悟った。どれだけ言葉を交わそうと、どれだけ正論をぶつけようと彼らには届かないことを。そもそも同じテーブルについていない。彼らは見下すだけだ。足元の塵芥を蹴散らすように、カイル達の命なんて何とも思っていない。心底それを実感できた。
「それとも、貴様が代わりに罰を受けるか? そうすれば、そうだな、その子供は釈放してやってもいい」
「何?」
カイルは腕の中で不安そうに見上げてくるフィリップを見る。罰を肩代わりするということは、半ばフィリップの罪を認めるということだ。だが、もし断ればフィリップはまたあのような罰を受けて瀕死の重傷を負う。それに、本当に釈放してくれるのか。
「本当に、釈放するのか?」
「くくくっ、ああ、してやろう。ただし、貴様に罰を与えるのを見せてからだ。そうすれば、理解するだろう? 身の程知らずの末路を」
カイルはギリっと歯をかみしめる。罰というのは案外受けているよりも、受けているところを見る方が鮮烈な印象を残す。まして、それが自分のせいでとなればなおさら。フィリップの心を傷つけてカイルのこれまでの行いを無為に返そうというのか。
確かに生活を変えるきっかけになったカイルが罰を受ければ、それは孤児達の歩みを止め恐怖を抱かせることになる。実際に目撃したフィリップの証言があればなおさら。
カイルは目を閉じて決断する。そしてフィリップを抱きしめると耳元で囁く。
「フィリップ、悪い」
カイルの言葉にフィリップは体を震わせる。それは、これから罰を受けるのだという恐怖を思い出させた。だが、続く言葉にさらに衝撃を受ける。
「でも、何を見ても折れるな。お前は、俺達は正しいことをしてる。お前の無実は晴らせないかもしれない、でも俺は知ってる。お前は間違ってない。だから、耐えろよ」
カイルが罰を受け、それをフィリップが見る。警備隊隊は是が非でもカイルの活動を止めたいと思っている。ならば、きっとフィリップを釈放する言葉に嘘はない。どれだけ恐怖を植え付けようとそれが広まらなければ話にならない。ならば、必ずそのための一手を打つ。だが、それを利用すればフィリップだけでもここから逃がすことができる。
フィリップがそれからどうするかはフィリップ次第だ。助けまでは期待しない、ただ強く生きてほしい。自分がしたことを誇りに思ってほしい。正しく人らしく生きようとしたことを後悔してほしくない。
「……分かった。俺が代わりに罰を受ける。だから、フィリップを……」
「いいだろう。連れていけ!」
牢の中に入ってきた警備隊達によりカイルとフィリップは引き離される。フィリップは声を上げようとしたが、カイルの目線で止められて目に涙を浮かべる。ずっと暗闇を生きてきたフィリップ達にとってカイルは英雄だった。
孤児でも、流れ者でもちゃんと生きていけるのだということを教えてくれた。そのための方法を授けてくれて、そのために必要な道を示してくれた。だからフィリップも一歩を踏み出せた。それなのに、自分のせいでカイルが謂われなき罰を受けようとしている。それも、フィリップを逃がすために。
崩れ落ちてしまいそうなフィリップの心を支えているのは、先ほどのカイルの言葉だ。英雄が、フィリップに授けてくれた言葉。それだけが頼りだった。
カイル達は半ば引きずられるようにしてさらに奥へと連れていかれる。ここには重罪人の拷問や刑罰を与えるための部屋がある。フィリップは知らずに体がこわばる。気を失うまで打たれた鞭の痛みがよみがえってくる。
中に入ると、カイルは鞭打ちのための器具に枷と鎖でつながれる。小さなテーブルのような台に腹ばいになり、両手は台を抱え込むようにして下に回され繋がれる。膝も固定され、足首も枷と鎖で地面に繋がれる。逃げることも身をよじることもできない。
準備ができると、フィリップも壁に固定されている鎖につながれた。
「よく見ていろ。目を背けることは許さない。しっかりと見て、心に刻んで、同じゴミどもに伝えろ。これが、愚か者の末路だとな!」
男はフィリップに言い聞かせるように声を上げると、腕を振り上げカイルの背中に向けて鞭を振り下ろす。バシィンという聞き覚えがある音が響き、カイルが声にならない悲鳴を上げる。上半身の服は脱がされており、背中に目を背けたくなるような傷が刻まれる。
「お前達は、ゴミだ! 町の、不要な、存在だ! 生きる、価値も、意味も、ない! ゴミらしく、みじめに、死んでいればいい!」
絶え間なく響く鞭の音と、歯を食いしばって耐えていても漏れる苦痛の声にフィリップは枷でつながれているのも忘れて耳をふさぎたくなった。
自分がされている時には、そのことだけで頭がいっぱいで、耐えることに必死でこんなにも苦しくてひどいことをされているなんて自覚がなかった。だが、こうやって見ていると分かる。どれだけこれがひどい罰なのかということが。どれだけ、理不尽な扱いなのかということが。
きっとカイルは知っていた。カイルもフィリップと同じようにこの光景を見たことがあるのかもしれない。だから、フィリップに言葉をくれた。耐えろ、と。折れるな、と。
警備隊の男はいくら鞭を打っても、彼らが満足するような悲鳴を上げないカイルに業を煮やす。これでは罰にならない。これでは思い知らせるには足りない。絶対にこうはなりたくないと思わせるほどの衝撃が必要なのだ。そのためには、カイルに悲鳴をあげさせなければならない。鞭打ちだけでは足りない。
男は警備隊の一人に指示を出す。この中で唯一魔力を持ち魔法が使える男だった。一瞬眉をひそめた男だが、ためらうことなく指示を実行する。
「火よ、火種となれ『火玉』」
カイルは鞭が止まり、どうにか呼吸を整え痛みを受け流そうとしていたところに聞こえてきた魔法の詠唱にぎょっとなる。通常盗みの罰は鞭打ちだ。魔法を使っての罰はもっと重い罪で行われる。思ってもみなかった暴走とも呼べる処罰に、非難の声を上げることはできなかった。
散々鞭で打たれ、腫れあがり血を流す傷口を、火種程度の火力とはいえ火がなぶっていく。それがもたらす苦痛はカイルの想像を絶していた。鞭の傷とも火傷とも違う、言葉にしようもない激痛が駆け抜ける。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
許容範囲を超えた痛みはこらえることなどできず、喉の奥から悲鳴がほとばしる。そのまま意識を失う直前、フィリップの悲鳴を聞いた気がした。
そこからは地獄だった。何度意識を失っても、覚醒させられ。悲鳴を抑えきれない苦痛を与えらえる。カイルが悲鳴を上げれば上げるほど、彼らは嬉しそうな顔をしてカイルを責め続けた。フィリップもまた時折悲鳴を上げ、こらえきれずに涙を流しながらそれを見続けた。
そしてまたカイルが意識を失った時、ようやく罰は終わりを迎えた。満足したというより、そろそろ夕食の時間になったためだ。警備隊達は傷だらけでぐったりと意識を失っているカイルを器具から外すと引きずって連れていく。
フィリップも枷を外されて同じように連れていかれた。そして、拷問室に一番近い牢屋にカイルを放り込んだ警備隊は、真っ白な顔色で呆然としているフィリップに声をかける。
「分かったか? 貴様らが調子に乗るとこうなる」
だが、フィリップは聞こえていないかのように、ただ、牢の中で力なく横たわるカイルを見ていた。警備隊はそれが気に食わなかったのか、フィリップの頬を張る。フィリップは悲鳴も上げず、警備隊を見返した。その目のあまりにもの静かさに警備隊は若干気圧される。だが、すぐにそんな己を叱咤する。何を恐れることがあるのか、と。
「わかり……ました」
フィリップはすぐにうつむいて、力なく同意する。それを満足そうに見た警備隊は、フィリップを地下から連れ出す。そして、庁舎の裏門から路地に放り出した。まるでゴミでも捨てるかのように。
「ふん、所詮ゴミはゴミだ」
投げつけられた言葉も、放り出された時にぶつけた足の痛みもフィリップは気にならなかった。ただ、ずっと下を向いていた顔を上げた時、そこには決然とした表情があった。
「……そっか、フィリップは……」
誰もいなくなった地下で、カイルは冷たくて汚い地下牢に体を横たえながら、精霊達がフィリップの釈放を伝えてくれるのを聞いていた。
あの拷問の最中、彼らはカイルが死ぬことがないように何度もカイル自身に回復魔法を使わせた。そのせいでより長く、より苛烈な処罰が行われたのは間違いない。はたしてフィリップは大丈夫だろうか、と、自身に起きたことを他人ごとのように考えて他人を心配する。
そうすることが、自らの心を守るための一つの方法なのだ。あとは精霊達の励ましの声を聞き、親しくしてくれた人たちの声や顔を思い出す。そうやって自分を見失わないようにしていた。
悲鳴を上げすぎた喉はつぶれ、かすれた声しか出てこない。どこが痛いのか判然とせず、頭の中もぼんやりとしている。だが、気力を振り絞って回復魔法を使う。そうしなければ、きっと肉が腐り落ちる。背中の感覚はほとんど麻痺しているが、それだけは理解できた。
おそらく、カイルが何を言おうと釈放されることはない。キリルがどうなったかは気になるが、それよりも親方達のことだ。カイルが連行されたまま帰らないとなると、警備隊庁舎に怒鳴り込んでくるのではないか。
町の人達はどう思っているのだろう。カミーユの言葉を信じて、カイルを非難しているのだろうか。せっかくうまくやっていけそうな予感がしていたのに、やはり孤児であることや流れ者であることが邪魔をする。
「……母さん…………父さん……俺は」
”俺は間違ったことなんてしていないよな?”カイルはこの世にいない両親に語り掛ける。立派ではなくても、有名ではなくても、それでも正しい道を歩んできたつもりだ。誇れる生き方を心がけてきたつもりだ。ちゃんと見ていてくれるだろうか。
カイルは、これから先の不安を押し殺すようにとりとめのないことばかりを考えながら瞼を閉じた。それだけで疲弊しきった体は、穴に落ちていくかのように眠りに落ちていった。
「それは、どういう意味だ?」
キリルは庁舎の二階で尋問を受けていた。ギルドカードはすでに提出し、精査を受けている。間もなく結果が出るだろうと言われていた。だが、それよりも問いかけられた言葉の意味がよく分からない。
「ですから、あなたのように有名な方がそのようなことをなさったのは、あのゴミ……失礼、カイルとかいう流れ者にそそのかされたからでしょう?」
カイルをゴミといった男をキリルが睨み付けたためか、言い直すがそこに込められた侮蔑の感情に何の変化もない。キリルは二つ名を与えられている高ランカーの一角だ。そのため対応は丁寧だったし、話もきちんと聞いてくれた。だが、その後に問いかけられたのがこれだ。
彼らは、カイルのせいでキリルが主に挑んだと考えているようだ。しかも、自作自演でキリルに恩を売ろうとしたとまで疑っている。
「いや、それは違う。俺が主を攻撃したのはカミーユに言われたからだ」
「ですがカミーユ様はそのようにはおっしゃいませんでした。人を襲う魔獣がいるからと、率先して討伐に向かわれたとか」
「率先? 後ろで見ていただけだ」
「大切な御身ですから。その代わりにあなたが戦われたのでしょう?」
彼らの中では、その魔獣の噂を流したのがカイルでそれを真に受けたカミーユが討伐に向かい、その護衛をしていたキリルが実際に戦ったのだと考えているようだ。何ともカミーユに都合のいい話だ。これではカイル一人に罪を負わせることになりかねない。ありもしない罪を。
「それに、カイルとやらがカミーユ様を傷つけるところをあなたも見ていたのでしょう?」
「主の寝床で騒ぎを起こし、不都合なことを言われたからと切りかかったのはカミーユの方だ。それに森で不用意に強い魔法を使った。カイルは身を守ったにすぎない。魔法だって被害がないように止めた。そもそもそ殺す気で来た相手を、殺さずに当身だけで済ませた」
本当ならカミーユはその場で切り殺されていても文句は言えなかった。兄弟かもしれないからと手心を加えてくれたカイルに感謝すべきだろう。それなのに、カミーユは待ち伏せして襲撃までした。
「それは、御身の危険を感じ先んじて排除しようとした結果ではないですか? あのようなドブネズミども、見逃したりしたら何をするか……」
キリルはため息をつく。まるで話にならない。こうなってくると、カイルがどうなったか不安で仕方がない。カイルから聞いてはいたが、ここまでひどいとは思わなかった。知っていれば、どれほどカイルに止められようと、決して連行などさせなかったのに。
同時にカミーユのしたたかさと、己の至らなさに唇をかみしめる。ここまでやるとは思わなかった。それに、カイルがさらされてきた現実を甘く見た結果がこれだ。本当にどうしようもない状況で必死にあがいてきたのだと分かる。
「結果が出ました。キリル様がおっしゃっていた主の殺害未遂ですが……、ギルドカードにはそのような罪は刻まれておりません」
「なっ!」
キリルは驚いて立ち上がる。ギルドカードの罪状記録は完璧なはずだ。この世のどこにでもいる精霊達の目をごまかすことなんて、裏組織の、それも幹部級の者達でなければ不可能だ。それに、キリル自身が認めている。それなのに、ギルドカードに記載がないのはなぜなのか。
「ということは、精霊様があなたを無罪だと考えているということです。あのような者にまで慈悲を与えかばう姿勢はご立派ですが、しかし罪人にはふさわしい罰を与えるのが我々の役目です。本当のことを教えていただけませんか?」
「俺が言ったことは全て事実だ! カイルの無実も、カミーユの罪もすべて!」
信じられない結果にキリルも声を荒げる。しかし、警備隊の者達は首を振ってあきれるばかりだ。キリルもカイルも、またギルドカードを持つ大多数が知らないことでもあるが、ギルドカードに刻まれる罪状というものは、見ていた精霊の判断に任されているのだ。だからこそ、事実であっても精霊がそれを罪と認めなければ罪とは刻まれず、残らない。
つまり、キリルの行動を精霊達は罪だととらえなかったのだ。もし知らなかったとはいえ殺してしまえば刻まれていただろうが、それは未然に防がれた。それも、精霊達のお気に入りであるカイルによって。元々のキリルの性格を知る精霊達は、騙されていることなどとっくに承知だったのだ。そこは反省すべきだが、罪に問うほどではないと判断した。
だがこの場合、それが仇になる。本人が罪だと認めているのに、正確無比であるはずのギルドカードには記録がない。逆のパターンはよくあるが、この場合も偽証しているのはキリルということになってしまう。ギルドカードの方を疑ってしまえば、根本が成り立たなくなる。所有者に裏との繋がりがない限りは、ギルドカードは唯一絶対の証拠となるのだ。
「ならば、カイルのギルドカードは調べたのか! それを見ればカイルが無罪だと分かるはずだ」
このままではキリルは無罪として釈放されるだろう。だが、カイルはどうなるのか。
「あれは駄目ですよ。あれは裏とつながりがある。なら、ギルドカードはあてになりません。あいつらは、精霊様の目を欺く術を持っていますから」
キリルは顔をしかめて呻く。本当なら身の証を立てるための物なのに、立場や境遇がそれを邪魔する。裏との繋がりなんてなくても、その可能性があるとみられるだけで信じてはもらえない。これではいくらカイルが弁明しようとも潔白を証明できない。
「最悪だな……」
「ええ、あいつらは最悪の存在です。ようやくあなたも理解できたようですね。では、釈放の手続きをしてまいります。これからは不用意にあのような者達と関わらないことをお勧めしますよ」
一方的にそう言い切ると、男は部屋を出ていく。キリルは頭を抱えたままそれを見送った。最悪の展開だ。せっかくカイルを生きて連れ戻せたというのに、キリルのせいでカイルにとっての地獄に連れ込むことになってしまった。
どうすれば救い出せるのか、いい考えが浮かばないままキリルは釈放されて庁舎から出される。閉じられていく門が立てる音が、キリルの耳には悲鳴のように聞こえた。




