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レスティア物語  作者: マリア
第三章 遊行と躍進
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因縁の決着

 アレクシスの視線を受けたエゴールは、小馬鹿にしたように鼻で笑う。まるでアレクシスなど最初から眼中にないとでもいうように。

「アア、王子。あなたに話を持ち掛けタノハ、王族の中で一番使いやすそうだったからデスヨ。愚かで無能な王子、誰からも見放され期待されてイナイ。そんなアナタであれば、この計画に乗ってくれるカト」

「なっ、何だとっ! ぼ、僕を騙したのかっ!!」

「とんでもない。今でもあなたが王になレバいいと思っていますよ? ですが障害を排除スルことの方が先です。幸いあなたには弟がおりマスからね、あなたが死んでも代わりはいますカラ」


 アレクシスが最も恐れていたことであり、見ようとしてことなかったこと。クリストフを攻撃することで、どうにか自分の地位を守ってきた。しかし、最近その弟が自身の脅しや嫌味に屈しなくなっていた。

 それどころか、兄であるアレクシスをたしなめたり、強い目で見返すようになってきた。自分にとって代わる気かと尋ねても、アレクシスを支えるための力を付けているだけだと答えた。だが、アレクシスの不安は大きくなるばかりだった。

 このままでは、このままでは王になる道が断たれてしまうかもしれない。


 そう思ったからこそ、胸の内のたぎるような怒りをひとまず封じ色々と努力してみた。母に説教され、父に諭されたからだけではない。必要ない存在として切り捨てられることが怖かったからだ。勉強は相変わらず頭に入ってこないが、授業は受けるようになった。剣の腕は伸び悩むも毎日振るようになった。特に魔法には力を入れた。

 父に頼み込んで限られた者しか閲覧できないような書物だって読ませてもらったのだ。これでみんなが見てくれるなら、王になれるならと。それなのに、家族はその努力を当たり前のようにしか受け止めてくれなかった。


 アレクシスがあらゆる楽しみを我慢して努力したのに、誰も褒めてくれなかった。認めてくれなかった。それが、一度は封じた激情を呼び起こした。これ程努力しているのにアレクシスを認めてくれない、愛してくれない家族などもういらないと。

 自分から家族や愛するレイチェルを奪ったあの不届き者を許してはおかないと。王になれば権力を使って罪を着せるも処罰するも自由だ。もしもの時の切り札だって見つけた。これでようやくレイチェルを手に入れられると喜んでいたのに。


 味方であったはずの、友人であったはずのエゴールでさえアレクシスを代わりのきく部品としてしか見ていなかった。アレクシス自身に価値を見出したのではなかった。アレクシスの血筋と利用しやすいという理由で選ばれただけだったのだ。

 裏切っておきながら、裏切られたことに耐えがたい苦痛と恥辱、怒りを感じたアレクシスはエゴールを睨み付ける。魔人という自分よりはるかに強い相手に対しても、怒りが恐れを上回った。


「エゴール! 僕は、お前を許さない!」

「アハハハハハ、許さなければドウします? あなたに何がデキルというのですか? 勉強も魔法も剣の腕もまるで使い物にならないアナタニ何ができると?」

「うるさいっ! す、すぐにここに増援も来る! お前はおしまいだ!」

「ご自分デハ何もなさらないので? それに、騎士団は当分来マセンヨ」

「何っ!」

「今頃水に仕込んだ毒で全員がまともに戦えなくなってイルでしょう。レナード団長やバレリー副団長は少ない人員で魔物の対処に追われてイルダろうし。ああ、心配しなくても死ぬような毒は使ってイナイ。彼らには僕の手足になってもらわナイと」


 毒という言葉に顔色を変えたレイチェルにエゴールが笑みを向ける。騎士団長である父は昨日は当直であったはずだ。やけに動きがないと思っていればそれもまた裏切り者達の仕業であったのか。バレリーが解毒できても、彼の魔力量では回復できる人員は限られている。医療班も対応に追われるだろうし、その上魔物の迎撃をしなければならないのだ。

 レイチェルが敵わずともレナードであればエゴールを倒すことは可能かもしれない。しかし、それを読んで先に潰していたのだ。レイチェルはアミルが時間を稼いでいる間に魔法具で回復した体に気合を入れる。

 もう何度も魔法具は使えない。ここで食い止め、倒せずとも時間を稼ぐことが今のレイチェルに出来る最善だ。それに、心のどこかで期待している。この窮地に駆け付けてくれるかもしれない存在のことを。誰よりも愛おしい人のことを。

 レイチェルはエゴールに顔を向けると剣を握りしめた。




 空間扉ゲートを潜り抜けたカイル達の目に飛び込んできたのは壮絶な戦闘の跡だ。無残に崩れた塔のふもと、王宮までの通路は滅茶苦茶に荒らされていた。通路の屋根を支える柱は何本も折れ、そのせいで屋根を支えきれずに崩落している。

 アミルは地面に横倒しになり、あちこち傷を負いながらも体を起こそうとしていた。その後ろでは聖剣を握りしめたアレクシスが、ただ一人無傷で震えている。そして、変わり果てた姿となってもエゴールと分かる魔人が傷だらけでぐったりしたレイチェルの首をつかんで持ち上げていた。

 それを見た瞬間、カイルは自身が意識するよりも早く体が動いていた。地面が爆発するほどの踏み込みの跡を残し、刹那の間にエゴールに迫る。突然の乱入に驚いたエゴールだったが、カイルが振り切った剣が自身の腕を落とす前にレイチェルを手放し空に舞い上がる。


 カイルはエゴールを追わず空中でレイチェルを受け止めるとすぐさま回復魔法を発動させて距離を取った。アミルが倒れている側にレイチェルを寝かせると、アミルにも回復魔法を使う。どうやらアミルは魔力切れになっているらしく息が荒い。

「気を、付けてくださいませ。あの者、は、他者の苦痛を、力とするよう……ですわ」

 とぎれとぎれに伝えられた情報にカイルは眉根をひそめる。姿形もそうだが、その性質さえも魔人のそれと同質になっているというのか。魔力回復薬を渡しながら空に浮かぶエゴールに視線を向ける。


「クロ、人が魔人になるって聞いたことあるか?」

『我の知る限りではなかったように思うがな。だが、あやつの魔力、すでに人のものではないな。魔人としては中位の下と言ったところか』

 ほとんど移動することなどなかったとはいえ、魔界で千年生きたクロでさえ知らない下法。それによりエゴールは人を越える、いや人の道を踏み外すほどの力を得たというのか。


「……クロ、あいつとは俺が戦う。やらせてくれないか?」

 クロが面倒事を引き受け、もしもの際にもエゴールの殺害を引き受けてくれる気でいたことは知っている。けれど、あのレイチェルの様を見て、王都の様子と傷ついたり亡くなった人達を見て戦いを預けるという選択をすることができなかった。クロの方が確実であろうし、危険もないのかもしれない。それでも、自分の手で決着を付けたかった。

『よかろう。我はそれ以外の雑事を片付けておこう』

 クロは十mほどの姿になると王都にしたのと同じように影を広げる。これで魔物も魔人としての力を得た騎士団達も影に触れたならば一網打尽に出来るだろう。


「カイル……父様達が……騎士団が…………それに、魔法師団の団長が黒幕と戦っているはずだ」

 傷は癒えても未だ立ち上がれないレイチェルが弱々しい声を出す。レイチェル達がエゴールと対峙し、塔が破壊された後、そこから飛び出していった人影が二つある。王宮の正門の方に向かっていったはずだ。

「俺は魔法師団の団長の方を援護すル。お前達はレイチェル達を連れて騎士団へ行った方がよさそうだナ」

 エドガーが冷静な判断を下す。ここはカイルとクロに任せ、懸案事項を解決するために動いた方がいいとの考えだ。


 トーマ達はカイルとクロを残していくことに逡巡するが、手負いで動けないレイチェル達がいれば余計に不利になると動き出す。そして、カイルがエゴールとにらみ合ったまま作り出した空間扉ゲートにそれぞれ入って姿を消した。エドガーは獣化して正門の方に走っていく。目印もなく、行ったこともない場所にはさすがに空間扉ゲートは開けない。

「……よかったのか、行かせても?」

「ふんっ、スグニ追えるさ。貴様を、殺した後でなぁっ!」

 実のところ、エゴールは魔人になったからこそカイルに付き従うクロの格というものを感じ取れるようになっていた。そのため動くに動けなかったというのが実情だが、それを隠すように声を上げると突進してくる。


 心は燃え滾るように熱いが、氷のような冷静さを保つ頭でカイルはエゴールを迎え撃つ。落下と飛翔の勢いをつけて振られた剣を、キリルに教わったやり方で円をかくように受け流す。相手の力をそのまま受け止めるのではなく利用する。がら空きになった胴に、相手の勢いも利用して肘打ちを叩き込んだ。

「がはっ!」

 くの字になって吹き飛ぼうとするエゴールを時属性が付属された光の網が捕え、皮膚を焼き焦がしながら動きを封じる。体から発せられる黒い魔力が打ち破ろうとするが、それより早くそこへさらに重力を持って物理的にも身動きをとれなくする。アミルとハンナに教わったことだ。


 爆発的な勢いで踏み込み、幾重にも動きを封じても剣を構えるエゴールが、カイルの姿を認識する前に両腕を肘から切り飛ばした。エゴールはポカンとした顔をしている。痛みを感じていないのか、それとも正しく認識できていないのか。

「あっ、ああ、あああああああああ!!」

 一拍遅れてエゴールの絶叫が響き渡る。レイチェルやレナードから仕込まれた踏み込みと抜刀術。相手が視認する頃にはすでに終わっている。傷口からはとめどなく黒い液体が吹き出し、絶叫を上げるエゴールは憎々し気な眼でカイルを見てくる。


 状況的に不利と判断したか、仕切り直すため翼を広げ飛び立とうとしたエゴールをトーマ仕込みの足払いで止める。鳥が飛び立つ時、翼だけではなく足による踏み込みが必要なように、足を払われたエゴールは空に逃げることもできず仰向けに転がった。

 その顔には、魔人になって以来初めて焦燥ともいえる表情が浮かんだ。正直、この国では騎士団団長であるレナード以外に自身を脅かす存在などいないと思っていた。まして、ついこの間まで自分の足元にも及ばなかった存在に追い込まれるなど予想外もいいところだ。

 ろくに攻撃を加えることもできず、一方的に攻め込まれている。混乱と困惑、何より見下ろしていた存在に見下ろされ屈辱に歯をかみしめる。

 そんなエゴールの心情を読み取りつつも、カイルはヒルダから教わった魔物達の核ともいえる魔石を魔力感知を用いて探し当てる。胸の中央、心臓と同じ位置に存在していた。


 魔物や魔人を倒す方法はいくつかある。致命傷を与えるか、魔石を破壊するかだ。破壊すれば当然その後の魔石回収は不可能になる。しかし、どれほどの強敵でも一撃で葬ることが出来る。人が魔人になった場合、それが当てはまるかどうか分からないが、少なくとも力をそぐことにはなるだろう。結果的に殺すことになったとしても、カイルは初めからエゴールを許す気はなかった。

 カイルはダリルから学んだ方法で、剣に光属性を付与するとそこからさらに魔力を収束させて光の刃を作り出す。ダリルはよく闇の刃を作り出していた。


「なっ、や、やめっ!」

 本能的に危険を悟ったか、手を伸ばし翼や全身を使って逃げようとするが、周囲に散らばった通路を支える柱がエゴールを拘束する鎖となって巻き付く。慌てて火の玉を打ちだそうとしたエゴールだったが、その前にカイルは真っ直ぐ心臓に、核に向けて光の剣を突き下ろした。

 パキン、という何かが砕ける音と共にエゴールの姿が魔人から人に戻っていく。同時に、心臓を破壊されたエゴールは口から血を吐き出し、充血した眼でカイルを見ていた。カイルは冷徹な眼でそれを見返す。


「なぜ、僕が……僕は、あのレイチェルよりも……」

「俺だって小細工なしじゃレイチェルに勝てないさ。それに、道具に頼って自らを高めることを怠ったお前なんかよりレイチェルの方がずっと強い」

 気付いていなかったようだが、時属性の加速アクセル減速ダウンを自他に使っていたし、気功に身体強化ブーストの重ね掛けをしていた。その状態であればレナードとも互角に戦えるのだ。

 元々エゴールは魔力がなかったためか、魔法を力まかせにしか使っていなかった。接近戦で魔法を使うという発想はなかったようだ。そのあたりは、やはり元騎士というべきなのか。もしくは、大きな力を得たからと立ち止まってしまい、持ちうる力を使いこなす努力を怠った結果なのか。

 レイチェルが負けたのだって、魔力がないという大きなハンデを背負った結果だ。これから先も研鑽を続ければいつか生身で今のエゴールを越えられるはずだ。


「こんな、バカな……こと、が。この、僕が……ドブネズミなんかに……」

「なめるなって言ったろ? 申し開きは、冥界でするんだな!」

 このまま放置しても助からないだろう。だが、後顧の憂いを断つためにも、とどめを刺す。エゴールがしたことを思えば一思いに殺すのもしゃくだろうが、今は時間もない。カイルは心臓部に刺さったままの剣をねじってから抜き距離を取った。剣を教えてくれることのなかった父が、剣を託した時に授けてくれた唯一の教え。確実に相手の命を奪う方法だ。

 それまで栓をされた形になっていた傷口から血が噴き出し、すぐに治まる。目を見開き、驚愕の表情を浮かべたままこと切れているエゴールを一度だけ見ると、カイルは踵を返した。


 クロはすでに一仕事終えていたのか、どこか気遣うような眼を向けてくる。カイルはそれに苦笑して、剣の血を浄化すると鞘に納めた。奇しくもかつてやられそうになったことをやり返した形になってしまった。

 因縁に決着は付けられたが、謎は多い。レイチェルの言った黒幕がいるのであれば、色々と聞き出さなければならないだろう。

 エゴールもその人物の駒として使われている可能性が高い。あるいは実験台だろうか。人を魔人化させる、少なくとも魔力がなかった者に魔力を与える技術があるということなのだから。


 カイルは連続して空間魔法を使ったために消費した魔力を補うべく魔力回復薬を口にする。短距離間の移動でも空間扉ゲートは魔力消費が激しい。だが、そのおかげで間に合ったと思えば両親やアミル達に感謝しかない。

『どちらに向かうのだ? 騎士団か、黒幕か……』

「騎士団の方も気になるけど、生きてはいるみたいだし黒幕の方に向かおう。これを企んだ相手を逃がしたほうが厄介そうだ」

『ふむ、そうだな。そやつも空を飛んでおるのかうまく影をつかめなんだ。行ってとらえるのが良いだろう』


 カイルはいつの間にかクロがエドガーの影に仕込んでおいた目印を参考に空間扉ゲートを開く。つながった空間越しに覗いても、なかなかに熾烈な争いが繰り広げられているようだった。

 素早く空間扉ゲートをくぐると、見る影もなく荒れ果てた庭と、そこを飛び交う獅子に二人の人影が目に入る。この国でもトップレベルの二人を相手にしているというのに、フードをかぶった男はどうにか渡り合っているようだ。

 いかにも魔法使いと言った格好の男性が魔法を浴びせ、時に接近戦を仕掛ける。獣化したエドガーも、人型の時以上の速さと力強さで攻撃を仕掛けていた。黒幕とみられる人物は、さすがに攻勢には出られないようだが、それでも致命傷を負うことなく対処している。


「クロ、鈍らせる。抑えられるか?」

『誰に物を言っているのだ? 一瞬だ』

 戦況も分からず、不意を付けるかもしれないということでカイルとクロは姿と気配を消したままここに来た。今も敵味方双方に認識されてはいないようだ。それを活かし、相手を捕える。

 カイルはクロがそばを離れたことを感じると、自身最高速を狙うつもりで重力魔法を発動させる。フードの人物が魔力の動きに気付いて視線を向けた時には、すでにその魔法にとらえられていた。


 空中でガクッと姿勢を崩したフードの人物の頭上に、突如としてクロが現れ、闇の縄で縛りあげると同時に前足で背中を押さえつけるとそのまま落下し地面に叩き付けた。

 そこでようやく戦っていたエドガー達もカイル達の存在に気付いたようだ。カイルは警戒を解くことなく、探知をしながらも近づいていく。そして、フードの人物もまたエゴールと同様人ならぬ気配をさせていることに気付いた。はたして根っからの魔人なのか、それとも元は人だったのか。


「ありゃりゃ、取られちゃったねぇ。噂はかねがね、僕は魔法師団団長ドミニク=バウアーだ。助力感謝するよ。できるならこの手で捕えたかったけどねぇ」

「おウ、いいタイミングだったナ。あの野郎、なかなかすばしっこくてナ。向こうは……」

「片付いた。一応遺体も持ってきてるけど……」

「そうカ……、まあ、無事で何よりダ」

 エドガーは少し気遣うような目線を向けてくる。そこへ、クロが割って入る。クロなりの気遣いなのだろう。

『ふむ、やはりこやつも似非魔人のようだな。似通っておっても、やはり魔の者とは魔力の質が違う』


「似非魔人? どういうことかな?」

 首を傾げるドミニクに、カイルは先ほどのエゴールの件を伝える。同時にその遺体も出しておいた。話を聞いて、ドミニクも顔をしかめる。それが事実であるなら思っていたよりも深刻な事態だ。魔物を召喚した魔法陣のこともある。魔人化させる技術を持つバックの存在は確実だ。そして、それがドミニクやテッドの想像通りならついに始まったというところだろうか。

 ドミニクはフード付きマントをはぎ取る。中年程度に見える男性だが、肌は浅黒く眼は赤い。そして額からは小さな角が二本生えていた。背中には小さいが羽が生えている。それでも空は飛べるようだ。


 魔人化してもフード付きマントをかぶっていれば人に紛れられるということで選ばれたのだろう。悔しげな顔で歯をかみしめているが顔色は悪い。クロに押さえつけられただけではなく、魔力切れになるまで魔力を奪われたことが原因だ。ついでに血も抜いたようで体がかすかに震えている。

「くっ……不覚だ、こんな化け物がいるとは聞いていない」

 そのせいで時間稼ぎもうまくいかず、こうして囚われてしまった。知っていれば少しはやりようもあったというのに。妖魔を使い魔にした者がいると聞いてはいた、敵対する可能性があることも。だが、まさか中位の上の実力を持つ自身よりも格が上だなどと思っていなかった。


『ふんっ、貴様のように歪な存在こそが化け物であろう。魔の者の体と力に醜い心、純然たる魔の者からすれば、貴様は許されざる存在よ』

 自らの命を、存在を冒涜するかのような手法。魂の在り方を歪めるということは理を歪めることにつながる。長年冥界の門を守護してきたクロにとって、許しがたい存在だった。ある意味純粋ともいえる魔の者からすれば、ひどくおぞましく見える。

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