プロローグ
ここに一つの世界がある。地の三界と呼ばれる人界・精霊界・獣界、天の三界と呼ばれる天界・魔界・冥界の六つの領域が合わさり存在する世界。名を『レスティア』という。
数多の種族と豊かな自然に恵まれたこの世界だが、その基盤となる人界において、ある時大陸全土を揺るがす争いが起こった。
のちに『第一次人界大戦』と呼ばれるそれは、地の三界を構成する精霊界や獣界をも巻き込み、こと人界において多大なる犠牲を生み出した。
消耗戦になるかと思われていた戦いだったが、戦火が飛び火した二界の助力もあり、わずか半年で収束する。敵対勢力に最も多大なるダメージを与えたのは、当時剣聖と呼ばれていた一人の男を中心とした混成部隊だ。
しかし、剣聖は最後の戦いにおいて、敵の主力を無効化するため、そして世界を守るために命を落とすことになった。剣聖の死をもって、世に再び平穏な日々が訪れた。
世界を救った英雄として剣聖の名が知れ渡り、誰もが賞賛と敬意と感謝を込めてその名をたたえた。勝利に沸き立ち、失われた命を悼む傍ら、傷ついた町や人々は少しずつ復興への道を歩み始めていた。
一方で、誰も知ることのない真実があった。この大戦が、たった一人の狂った男の思想から始まったということを。まだ、戦いは終わっていなかったのだということを。
物語は大戦の十二年後より始まる。地だけではなく、天の三界をも巻き込む大きな戦いとなって。