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千の魔術に導かれて  作者: しろうとしろう
序章
8/26

主人公補正?

「さてと、登録がすんだしこれからどうするよ?」


「そうですね〜大会が始まるまでだいぶ期間がありますから、気長にこの町の観光でもしましょうか!」


「そう言えば、大会準備期間がなんで1ヶ月もあるんだ?」


「へ??」


 何を聞いていたのかと言う顔をするルーサー。


「いや、そんな"何をうちの父親から聞いていたんですか!このウスノロ!"みたいな顔をしないでもらえますか?ペンドラゴン」


「あー!ペンドラゴンって呼ばない約束ではありませんでしたか?ヤマダさん!」


「うるさい食いしん坊!」


「この脳筋!!」


 2人の幼稚な言い争いが始まる。

 ルーサーは自身のことを"ペンドラゴン"と呼ばれるのをひどく嫌う。その訳としては、自身の父親であるウーサー=ペンドラゴンにある。

 と言うのもルーサーの父ウーサー=ペンドラゴン氏はギリシアにおいて一二を争う実力を有した冒険者である。その彼の武勇伝はギリシアの北から辺境の南の地までに知れ渡っている。ルーサーその超有名人の娘である。

 つまり"ペンドラゴン"と呼ばれる時というのは、ルーサーのことを指しているのではなくウーサーのことを指しているのである。

 ルーサーは父ほど立派ではないし優秀でもない。それ故に"ペンドラゴン"と呼ばれることをひどく嫌うのだ。


 そんな幼稚な争いを猫人族のニーニャが沈める。


「いいですか?ご主人様?」


「この腹ペコるー…ん?何か言ったか?ニーニャ?」


「はい、ご主人様。なぜ準備期間が1ヶ月もあるのかというご説明を」


「ああ、そうか」


 ルーサーとの争いのせいでなんの説明をしてもらおうとしていたのかをすっかり忘れてしまっていた。


「はい、ご主人様。ここ〈ローマ〉で開かれる"武闘大会"はギリシア帝国において最も強く勇敢な戦士を決める舞台になっています。それ故に、優勝、準優勝者は皇帝陛下カエテイル=パルステ様との謁見が許される非常に素晴らしい栄誉と特別な地位が与えられます。そして、この誉れ高い大会に参加するには、基本的に奴隷を除く全身分の方々に参加権が与えられています。その中でも一部の方がには特別な参加権が付与されています。冒険者支部組合代表人、ゴールドランク以上の冒険者、名のある貴族の方々には、予選免除権が与えられています。この方々は文字通りの意味で、これから1ヶ月かけて行う一般の参加者の方々とは違い予選大会が免除されます。ご主人様はこの特別参加枠に入っていますので、これから1ヶ月かけて行われる予選大会に参加しなくていいのです」


「あーなるほどな。予選をやるための準備期間ってわけなのか。んで予選って何やるか知ってる?」


「すみませんご主人様。そこまでの知識がわたしにはありませんので計り兼ねますが、ものすごく過酷な試練が用意してあるらしく、生半可な覚悟では決して突破できないものだと聞いております」



 素晴らしい解説をしてくれたニーニャにご褒美をあとであげる約束をして、本選出場者…つまり予選免除権所持者が寝泊まりをする超高級な宿屋へと向かった。


 ギリシア帝国超高級旅館、ローマーニャ。

 現実世界において帝国ホテルに匹敵するレベルの超高級旅館。

 この旅館では武闘大会に参加される特別枠の方々が無料で大会終了日まで滞在することができ、食事、風呂、工房と言ったような通常の宿屋であればお金が取られるようなところでも自由に使用することができ、旅館内部にある資料室への出入りが自由という特権も手にしている。



 イサムは、〈パルム冒険者支部〉の代表者である為に高級な一室が用意されていた。ルーサーもそのお付きと言うことでイサムほど立派とは言えないが十分立派な一室が与えられていた。

 部屋は、☆5つ相当の高級なロイヤルスイートルームで本当になんでも備わっている部屋であった。


 その部屋のベットの感触を確かめて少し楽しむ。

 現実の世界ではこんな生活望んでもすることができないようなことが異世界ではできてしまい、叶ってしまう。

 そして、夜は1人寂しく寝るのではなく、猫耳美少女奴隷を抱いて寝ることができる幸せがさらに付いてくる。


「ニーニャ…ちょっとおいで」


 ニーニャをベットへと呼び寄せる。


「はい、ご主人様」


 荷物の整理をしていたニーニャがご主人様であるイサムの元へと向かう。

 イサムは擦り寄ってきたニーニャを撫でる。

 すりすり…すりすり…


(可愛い…可愛い…可愛すぎるよこの娘…やっぱり!!)


「ご、ご主人様っ、まだお日も高いですよ…そんなに…あっ」


 耳を触られて愛らしい声を上げるニーニャ。恥じらう姿がまたなんとも可愛い。さらに尻尾が、くねくね…ぴょん!と言うの動きを繰り返していてたまらない。


 コンコン、コンコン。


「「…!?」」


 ノックの音にびっくりして2人は距離をおく。


『もしもーし!イサムくーーん!ちょっといいー?』


 2人の素晴らしい空間を邪魔したのは、黙ってれば美人なルーサーであった。

 イサムは、ニーニャとお楽しみをするつもりでいたのだがそれがちょっと先に伸びしてしまったと残念に思いながらも、ルーサーを招き入れる。


「どうした?ルーサー部屋なら別にあるだろ?」


「いやー部屋には問題はないんだけどさ、部屋が広すぎて…落ち着かないというか……だから、一緒の部屋でもいい?」


 上目遣いでお願いするルーサー。狙いすぎてて可愛いさというのはまるでない。一応ニーニャに確認を取ろうとしてニーニャを見ると、顔を真っ赤にしており思考回路がショートしているようでそれどころではなかった。おそらく、さっきの行為に対して思考回路が焼き切れてしまったのだろう。

 いつまでも初心な反応をしてくれるのは見ているこっちとしてはありがたいものである。


「まぁ…いいよルーサー。お前がちょっとだけ価値もあるしな」


「さっすが!わたしの案内人っ!!」


「やっぱ、でてけ!!」


「ひっどーいっ!」


 こうしてルーサーを招き入れた事によって、ニーニャとの夜の営みができない事に気付くのは夜が更けてからであった。



 @



 何もすることがないというのは至極暇である。

 ウーサーに言われ超絶早めにこの〈ローマ〉に入ったのだが、特にすることがない。

 こっちに来てからの1週間というのは"都市観光"と言うそこそこ楽しいことがあったが、ある程度見て回れば特に何かあるわけではない。

 本当であれば、予選がどんな事をやっているのか見たいのだが、その予選がどうやら闘技場(コロッセオ)の地下で行われているようで観戦をすることはできないようだ。

 任務(クエスト)も受けようと思えば受けられるのだが、正直いまそんな面倒臭いことはしたくないし、もしものことがあったらたまったもんじゃない。

 俺は怠惰に1ヶ月を過ごすのも悪くないなーとも思ったのだが、さすがに1ヶ月も怠けてしまえば腕が鈍ってしまう、それを避ける為にも帝都の郊外にあった開けた場所でニーニャとともに模擬戦を行うことにする。



 イサムとニーニャは少し重たい木刀を構える。


「いくぞ!ニーニャ!!」


「はい、ご主人様!」


 模擬戦を行う2人の実力はほぼ同等と言ったところである、若干イサムの方が有利なように見える。

 それもそうであるイサムはなんと言ったて異世界から召喚されたチーターなのだから、有利なのは当然である。

 しかし、そのチーターを相手にほぼ互角で渡り合うニーニャもニーニャでかなりの実力の持ち主である。


「ていやっ!!」


「はぅっ!!」


 イサムの一本が決まって尻餅をつくニーニャ。


「ニーニャ…腕上がったなー」


「はい、ご主人様に追いつかなければいけませんからっ!」


 イサムの手を借りながら立ち上がる。


「ご主人様。少し気になったことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


「ん?」


「ご主人様の剣の流れって…」


「あーやっぱり気付く?」


「はい!もちろんですっ!」


 えっへん。と胸を張るニーニャ。このニーニャの指摘は正しい。

 イサムは異世界から召喚された。その為に剣技における型というのが存在しない。唯一型と呼べるものがあるとすればVRゲームでやったシステムに乗っかった型ぐらいでその他にはない。

 つまり、実戦で扱えるような型は持ち合わせていないのだ。

 幸いな事にニーニャはイサムに引き取られる以前から冒険者の奴隷として迷宮(ダンジョン)に入っていたことがあるので、実践的な型を所持している。

 イサムはその型を真似て、VRの時にあった知識をうまく活用してその型を自分のオリジナルなものへと変更していま使っているのである。


「元はニーニャの型だけど、ちょっと手を加えてあるけど…ダメだったか?」


「いえ、そんなことはありません。わたしもご主人様の型を参考にしてもよろしいでしょうか?」


「もちろんだよ。ニーニャ」


「はい!」


 イサムは自分のオリジナルにアレンジした型をニーニャに手取り足取り教え込むのであった。




 手取り足取り(ゲス顏)で教え込んでいるといつの間にか日が落ちかけていた。現代のように日が落ちても辺りが明るいということは一切ないため、"イサム流剣技"の師範を途中であるが切り上げて旅館へと引き上げる。


 旅館について自室へ向かおうとした時、


「おうおう、あんちゃんが〈パルムの迷宮〉で迷宮主を1人で倒したっていうイサムか?」


 後ろから2mくらいはありそうなゴリマッチョが上から覗き込んでいた。


「…ん?そうだが、なにかようか?」


「そうか!そうか!!いい男だなー全く!」


 イサムの肩を「ガハッハッハ」と笑ながら叩く。


「いやースマンスマン。急に話しかけて悪いな。まーこんなところでもなんだ、一杯どうか?」


 クイ、クイ。と飲みに行こうぜアピールをするゴリマッチョ。

 OKと返事を返そうとすると、ニーニャが袖を引っ張る。


「ご主人様、この方かなりの実力者です…気をつけてください。」


 小声で忠告をする。


「??どうしてだ?」


「何やら…ものすごく嫌な…気を感じます」


 ニーニャが何かを感じ取ってイサムに警戒を促す。

 基本的にニーニャの野生の勘は非常に優秀である。そのニーニャが"警戒をしろ"と言うのだ最大級の警戒をしてこいつの後についていく事にする。

 ゴリマッチョの兄ちゃんが先頭で行きつけの酒場まで先導する。その間にイサムは【詳細鑑定(ディテクト)】を利用して男の情報を引き出す。


(名前は、ルーマッシュ=マクラーゲン。レベルは37か…俺の2倍あるのかよ……。ステータスは、あんまりたいしたことないな。スキルも【隠蔽 C】ってのがあるだけだし)


 あの旅館から10分行ったところにルーマッシュと言うゴリマッチョの行きつけの酒場があった。

 中はバーのような静かな雰囲気でどんちゃん騒ぎが起きるような感じではなかったので少し安心した。


「よう、ママさん!」


「あらー、ルーシュじゃないのー!久しぶりねー。何?大会の為に帰ってきたの!」


 この酒場のマスターらしきおばさんがルーマッシュと挨拶(ハグ)をする。


「それで?そちらさんの顔つきのいい少年と……猫っころは?」


 ニーニャを呼ぶ時にイサムとは違う怒気のようなものを含んだ声でルーマッシュに聞く。


「あーそうだ。俺の連れだ。いつものを頼むよ。2つ」


「あいよ」


 俺はルーマッシュに促されるように席につく。

 一応礼儀としては名乗っておくのが普通であろう。


「あの、俺の名前はイサム・ヤマダでこっちが…」


「イサム様の奴隷のニーニャと申します」


「ふん、猫っころ風情が…名前があるなんてね…」


 小声で言っているようだが聞こえている。

 この手の亜人への対応へも慣れてきたのだが、ニーニャの事を言われると少しムカっと


「ママ、聞こえてんぞ」


「聞こえるように言ってるんだよっ!ほれ」


 ママさんは慣れた手つきで2杯のウイスキーのようなものを出してきた。

 それをルーマッシュはグイッと一飲みする。


「ほれ、お前さんも飲んでみ」


 お酒は二十歳になってからの法則があるがここは異世界であって、日本ではないので少しだけ飲んでみる。


「ーーっ!???」


(か、からっ〜〜〜)


 一口つけてみただけで酔っ払いそうになるのと辛さが伝わってくる。


「ガァッハハッッハハハハ!!お前さん酒は初めてだったか!!!いやーびっくりだっ!!」


「ぐはっァ…ぐはっァ、悪いかよ」


「いや、全然悪くねーぞ!慣れてけばいいんだからよっ。そう言えや、まだ自己紹介してなかったなー。俺は帝都冒険者組合で主な活動をしている冒険者ルーマッシュ=マクラーゲン。ランクはダイアモンドだ。よろしくなイサム!」


「あ、ああ、よろしくな」


 同様しないように返したつもりだが、ルーマッシュの笑い方から見ておそらくこちらは驚いているのは丸わかりなのだろう。


「あー俺はそんなランクとかで人を見下したりなんかしねーから気にすんな!あーそうだ、あんちゃん〈パルムの迷宮〉のヌシってどんなやつだったんだ?教えてくれよっ!」


 若干酔いが回ってきているようで、ルーマッシュの事が2人に見えてきたのをグッとこらえて、〈パルムの迷宮〉の主を倒した時の話を始める。

 その後、どのくらいルーマッシュと話したのかは覚えていないが、ルーマッシュにかなりの量の酒を飲まされて有る事無い事全部ぶちまけたような気がする。


 そして、目が覚めてみれば…


「目の前におっぱいがあるなんて…最高の目覚めだな…」


 よく辺りを見渡してみると、そこは旅館の自室であった。

 そして、目の前のおっぱいはルーサーのものでものすごくだらしない格好をして寝ていた。

 こいつも昨日飲んでいたようだ。



「おはようございます、ご主人様」


 散らかっている部屋の掃除をしているニーニャが主人が目覚めたのを察して挨拶をしに来た。


「おはよう…ニーニャ。もしかして、ここまで運んでくれたのってニーニャ?」


「…はい……そうです…ご主人様…」


 顔を真っ赤にして答えるニーニャ。

 どうやら昨日飲み過ぎてニーニャに"何か"をしてしまったようだ。記憶がないのが残念でならない。

 にしてもだ。昨日あんなに飲んだのに二日酔いとかのダルさやめまいがしない。

 おそらく【超分解 A】のスキルが働いたのだろう。

 全く、便利なスキルである。



 今日も一日頑張ろうとベットから出て着替えようとした時、またノックがする。


 コンコン。


 ニーニャが来客を出迎えに向かう。

 ドアを開けた先には、騎士風の格好をして仮面をつけた男が3人いた。


「ここは、イサム・ヤマダの部屋では間違えないか?猫?」


「はい、イサム様は私のご主人様ですが…なにか?」


「猫には用はない。貴様だなイサム!」


 ズカズカと入り込んでくる騎士3人。


「俺が、イサムだが?なにかようですかい?騎士さん」


「ふむ、なら少し詰所まで来てもらいたい。お前ら、連行しろ!」


「「はっ!」」


 控えていた騎士達がイサムの元へと寄ってくる。


「ふぇ??な、なんで???」


 困惑するイサム。それもそうだ、特にいけないことは…していないはずだ……そう、してないはずだ。

 そして、一つ心当たりのある状況が思い浮かんでしまった。


(まさか…まさか…そんなまさか……)




「貴様には現在、ルーマッシュ=マクラーゲン氏の殺害容疑がかけらている。素直に詰所まで来てもらう!」

みなさん、お酒は二十歳になってから飲みましょうね。



作者が初めてお酒を飲んだのは、叔父の家に行った時に、水と日本酒を間違えてコップ1杯まるまる飲み干してぶっ倒れた記憶があります。

確か6歳の時でした。





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