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千の魔術に導かれて  作者: しろうとしろう
序章
5/26

光天使の槍

文章が下手くそすぎてすみません。

上手くなるように努力します。

 夜はまだ始まったばかりである。



「頭っ!!全3隻準備できましたっ!」


「よし、そうか…。帆を貼れ!!ヤードを回せ野郎どもォオ!全艦、目標〈ギラメ総督府〉」



 髑髏の旗(ジョリー・ロジャー)を掲げた3隻の船が行く。



 @



 アルトリアたちの一行は〈フェン〉の村の人たちの体調が快復するのを待ち〈ギラメ〉へと旅立っていった。

 村の人たちが黒死病から完全快復するのに要した時間は3日。これは異常な快復速度である。

 通常であれば、死にかけている状態から人間が快復するのには最低でも1ヶ月…さらには黒死病ということも鑑みればもっとかかったはずだ。

 これはアルトリア自身が驚いていた。


 この村での黒死病の再発を防ぐ為にも対策を打たねばならない。そこで活躍するのが古代魔術。

 古代魔術と現代魔術の最大の差としては、信仰心の有無にある。

 現代の魔術師と言うのは基本的に自身の父親もしくは母親、師と言ったような神に精通していない一般の人物。

 それに対して、古代魔術は神による信仰を絶対的なものとする。そのため現代魔術と比べ物にらならいほどの威力を発揮する。

 一度サラが<ヒール>と言う回復呪文を行使していた。あの<ヒール>をもしアルトリアが使えるのであれば、サラの回復量を1とするとアルトリアの回復量はその十分の一程度の回復力しか発揮しない。

 これが古代と現代の最大級の差である。


 故に、アルトリアはサラにおそらく習得しているであろう"浄化の魔術"に頼る。


 "浄化の魔術"…神への絶対的な信仰心とともに得られる魔術の一つ。父親がイギリスに行った時に持ち帰った古文書に"黄金の林檎"と"浄化の実"と言う記述があったのをよく覚えている。

 その記述には『ありとあらゆる災難を取りはらえることができる』と言う風に表記がなされていた。



「え?"浄化の魔術"ですか?」


「持ち合わせてはいませんか?サラ?」


「…持ち合わせてはいますが……なぜそんな低級魔法を?」


「この村にかけて欲しいのです…さすればこの村はもう二度とあんな被害にはならないでしょうから」


「アルトリアちゃんが言うのであればやりましょう!」


 グッと拳を握ってできる子アピールをするサラ。


(なんと言うか…ちゃん付けはやめて欲しいですね)


 慣れないちゃん付けに苦しめられていた。あの後自分の正体がばれて以来、パットとカインを除く2人以外はちゃん付けで呼ぶようになっていた。

 ちゃんをつけて呼ぶ理由は「可愛いから」だそうだ。

 自身の容姿は自身で見るのは得難く、さらに元男だったと言うところを踏まえると自身が可愛いなどととは到底思えないでいたのである。



「我が師…我が神。 我が精神は、我が神マーリンの身旗にありて、その忠誠を示す。汝が我が主神であるのであれば、我が呼び声に応えよう!<浄化(アヴァロン)>!!」


 サラが呪文を唱えた途端に村一帯は光に包まれいく。

 このサラの活躍によっておそらくは黒死病の菌は死滅したはずである。


 これでこの村には用はなくなったので、心置きなく〈ギラメ〉へと向かうことができる。




(それにしても…なぜ一斉に村の人らへと黒死病が広まったのでしょうか、子供は抵抗力が低いので理解はできますが、大の大人があんな簡単に黒死病に負けてしまうでしょうか…いいえ、通常ではありえません!さらに、村の人の話を聞く限りだと昨日までは皆ぴんぴんとしていたと言う話ではありませんか……それに感染ルートが謎すぎます)


「ーーリアちゃん!アルトリアちゃん!!ってば!!」


「ーーはい…なんでしょうか?サラさん?」


「どうしちゃったの怖い顔して、可愛い顔が台無しだよ」


「すみません。少し考え事をしていました。それより、どうかしましたか?」


「うんっとね、着いたよ…〈ギラメ〉の街に!!」



 馬車の外を見るとそこには大きな港にある活気にあふれている街が目に入ってきた。




 〈ギラメの街〉

 ギラメはギリシア帝国内で2番目に帝都から遠い位置に位置している。

 そしてこの〈ギラメの街〉は、四季を通して非常に過ごしやすい気候になっている。そのためなのか人が多く集まりやすくなっている。

 そのおかげもあり〈ギラメの街〉の流通は盛んになっていき、海に面していたと言うこともありこの〈ギラメ〉に冒険者組合(ギルド)組合長(ギルドマスター)であるジーク氏が港を開港して現在の貿易港として海運の中継ポイントとして有名になったのである。



 〈ギラメの街〉に着いたパットら一行は街の入り口付近で商人たちとの契約が完了し、商人たちから報奨金をもらう。そこで別れて組合本部のある総督府を目指した。


 総督府を目指すその中にはアルトリアの姿もあった。

 これはアルトリアも冒険者になると言う事ではなく、アルトリアに身の危険を減らすための対策をジーク氏と相談するために向かったのであった。


 ギラメ冒険者組合長:ジーク=フリード氏。

 このギラメの街の開拓を一から手がけてここまで大きな街にした人物で、くるもの拒まず去るのも追わずの精神でこの街の安寧をはかってきた。



 パットは総督府の内部にある冒険者組合窓口で任務完了の報告をして、「急ぎの、さらには秘匿性の高い問題が発生したのでジーク氏と話がしたい」と言う事を窓口の女性に告げるとすぐさまジーク組合長と取り合ってもらえた。

 ジーク氏がいるのは総督府3階の海が見える一室であった。

 その部屋に入ると、30~40代ぐらいの少し小柄な男性が中央の椅子で何やら難しい書物を読んでいた。



「おお、パットきたかね…それで?なんだね?秘匿性の高い問題とは?」


 かけていた眼鏡を外しパットを覗き込むように見る。


「はい、問題とは言うのですね…こちらにいらっしゃるアルトリアさんの件なのですが…」


 全てを見透かすような瞳がアルトリアへと突き刺さる。


「…大丈夫よ。この人はそういう偏見を持ったひとではないから…」


 耳元でサラが囁く。

 つまり、信用に値するという人物なのだろう。

 アルトリアは覚悟を決めて付けていた仮面を取り、前へと出る。

 すると、ジーク氏の表情が一変する。


「はぁ…またかね。パット……それで?そちらの方がどうしたって?」


(また?また、とは一体??)


「あの…前回同様にかくまってあげられないでしょうか?」


「出来ないことはない…がしかし、お主はこの街に来るたび亜人を拾ってくるのだな〜わかっているだろうに、彼女たちがどんな対象で見られているのか」


「わかっていますとも!!ええ、わかっています」


「お前の正義感が理解できないわけではないが、これで三度目だぞ!!三度!!いい加減バレるかバレないかの狭間でヒヤヒヤする俺の気持ちにもなってみろっ」


 怒っているのか呆れているのかよくわからないジーク氏。

 本当に信用しても問題はないようである。


「わかった。わかった。好きにしろっ。ったく、貴様らは!!」


「よかったなアルトリアちゃん!」


 コルコが私の肩を叩いて、その部屋を後にする。


「ありがとうございます。それでは…」


 そうしてパットたちのパーティが全員部屋を後にする。


「ふぅ〜。私の名はジーク=フリードだ、ここの街のトップにいる人間だ。さて、アルトリアさんと言ったな…」


「はい…そうですが…」


 男と2人っきりということもあり少しばかり警戒する。


「ああ、そんな緊張せんでくれ。おーい、リーフィー」


 ジーク氏が呼ぶと、メイド服を着た使用人が奥の部屋から現れる。


「リーフィー。こちらは狐尾族のアルトリア氏。そして、アルトリアさん、こちらが猫人族のリーフィー氏だ」


 リーフィーと紹介されたメイド服を着込んだ少女はどっからどう見ても人間族であった。

 つまり、このリーフィーもアルトリアと同じく"幻惑魔術"のかかっている物を身につけているのである。


「よろしくにゃーアルトリアさん」


 お辞儀をしてくるリーフィー。


「あ、あの…少し待っーー」


 アルトリアの言葉はジークによって遮られる。


「リーフィー。アルトリアさんを空いている部屋まで案内してやってくれ」


「ハイにゃ!了解にゃっ!」


 リーフィーは強引に私の腕を引っ張ってくる。


「あ、あのっ!少し待ってくださいっ!!」


 あまりにも展開が急であったので、何が起きているのか理解に苦しむアルトリア。


「あーすまんかった。何も言わずに急にポンポン話を進めてしまって、パットのやつからアルトリアさんの安全を確保するように言われてしまったからなぁ」


「パットさんとは何かあったんで……ってそういう事を聞きたいのではなくっ!今何をしようとしているのか、と」


 あれ?聞いていなかったの?と言う顔をするジーク。


「簡単なことだにゃー、私たちのことを守ってくれるんだにゃー」


「いえ、それは理解できますが…どうしてそのようなことをなさるのですか?」


「……どうしてか、か〜。久しく聞かなかったな〜。リーフィーの時はほぼ即決だったからな〜」


「私は、報いた恩を介しているだけにゃっ!ミネも同じにゃっ!」


「そうだな…リーフィー。"どうしてか"と言う質問に対する答えを教えよう。 なーに、簡単なことだ"そうしたいから、そうするだけなんだよ"アルトリアさん」


 にこやかに微笑むジーク。


「そのジーク氏の考え方は、とても理解できます。私もそう思って旅に出ましたから…」


「そうだったのか…アルトリアさん。アルトリアさんは旅をしているのか。 いや、申し訳なかったな、こちらの早とちりで」


 グハハハと笑い飛ばすジーク。

 何か微妙に話が噛み合っていないような気もする。


「して、アルトリアさん。あなたは何を望むのかい?自身の身の安全かい?それなら私が用意するが?」


「私が望むものを用意していただけるのですか?」


「ああ、できる限りのものはこちらで用意しよう」


「…そうですか。私は今、旅の物書きをやっております。それ故にどこか大きな街に行きたいと思っております。その手配などはできないでしょうか?」


「ふむ、吟遊詩人と言う訳か…よかろう、帝都への船の手配をしてやる」


「ありがとうございます」


「ふむ、気にするでない。お主らではこの世界はさぞ行き難かろう…それを考えればこの程度のことは造作もない。何かあれば、俺のところへと来てくれれば、いつでも助けになってやる。 リーフィー、客室へお通ししろ」


「はい、かしこまりましたにゃ」


 リーフィーに連れられアルトリアは客室へと向かっていった。

 そして、この世界にも良い人はいるのだということを実感した。





 そして、その日、本当に安らげる場ができたのであった。




 しかし、安寧と言うのは望むほど長くは続かない。



 @



「頭っ!全艦配置につきました!!」


「そうか…そうか…いつでも行けるのだな?」


「はい、もちろんですとも!!」


 悪役のよくするような笑みを見せて告げる。


「よしっ!野郎どもっ!!この街に我らの旗を立てようぞ!!全艦、突撃ィ!」



「「うぉおおおおおおおおおおお!!!」」



 雄叫びと共に海賊どもが海を這う。





 久しぶりの安らかな時、こんなに安全で安心できる場はジャック邸以来のことである。


「ふぅ〜久しぶりにゆっくりでこますね」


 背伸びをして今まであった緊張の連続から力を抜く。

 月明かりが眩しく、彼女の金糸に反射して美しさを倍増させている。


 その静寂に包まれていた夜の空に砲声が鳴響く。



 ズドオオオオーーーン、ズドォォオーーン



「ーーな、なにごとですっ!??」


 砲声の爆音とともに総督府の最上部にある鐘がなる。


 カーンカーンカーン、カンカン!!


 砲声と鐘の音で耳が痛くなる。

 さらには、どこから打たれているのかわからない砲弾の雨が降り注ぐ!



「海賊だ!!」「海賊だぞっ!!」「全員を避難させろっー!!」


 総督府、さらには街一帯に悲鳴やら叫び声が響く。

 総督府では、総督府で働いている職員が総督府で寝泊まりをしている人を地下へと避難させている。

 そして、街の方でも〈ギラメ〉の市民を海賊から守ろうとして、冒険者や総督府の職員が迅速な対応を取っていた。


 この様子を見るに何度かこのような襲来はあるのであろう。



 アルトリアは、月を見に海の見ることができる中庭にいた。


「アルトリアさん、こちらにいては危険です。どうぞ、あちらの地下へとお逃げください」


「それよりも、ジークさん。この砲声は一体?」


「おそらく、"青髭海賊団"のものでしょう…これから奴らを撃退しますので、お早く…地下へ!!」


「いえ、私なら大丈夫ですので、お早く、海賊の撃退を…」


 ジークはアルトリアの表情を見て、いくら言っても無駄であるということを理解したらしい。

 先程のあの件の後ならわかるのは当然と言えば当然である。


「おい!ビル!!ラム!!」


「「はい!ジーク組合長!!」」


 近くを通りかかっていた男2人が呼び止められる。


「このお方は、私の大切なお客様だ!命がけでお守りしろ!いいな!」


「了解しました!!」


 ビルとラムと言う私と身長が変わらないくらいの冒険者が護衛に着く。

 それを見届けると、ジークはどこかへと向かう。

 おそらく防衛のための指揮を取りに向かったのだろう。



 街の方では、接近した3隻の海賊船から小型艇を下ろしてどんどん海賊を街へと流し込んでいく。



「あの…そこのお嬢様。地下へと避難してはいただけないでしょうか?」

「そうしてもらわないと…俺たちが怒られてしまうので…」


 ゴマをすりながらアルトリアにお願いをする。


「あら?あなた方に課せられたのは私の護衛でしたよね?それでは行きましょうか」


 アルトリアは2人の忠告を無視して海が、海賊の見えるところまで移動する。

 その間も「危ない!危ない!」と再三忠告する。


 またもや、砲撃音が鳴響く。今度の音の大きさから見て一斉射をしたのであろう。

 幾つかの砲弾がこちらに飛んできているのがわかった。


「あ、あぶないですって!!」


 必死に止めにかかるビル&ラム。


「大丈夫ですよ…」


 っとアルトリアは2人に微笑み。飛んでくる砲弾を睨め付ける。

 そして、呟く。



金山羊の円環(プロト・アイギス)



 総督府に薄い膜のようなものが展開されて総督府を覆い尽くす。

 そして、その薄い膜に砲弾が直撃するが、ビクともしない。


 それと同じころ、街の方でも大きな雷鳴が響き砲弾で街が破壊されないように展開されている。



 その雷光を見てアルトリアはビルに尋ねる。


「あの雷はなんでしょうか?」


 少し震えた声でビルは答える。


「あ、あの雷ですか?あれはジーク組合長が使える魔法、『雷光』(ケラウノス)ですっ!!」

「あれぞ!我らが組合長の魔法なのだ!!って、それより…先程、使った魔法なのですか?お嬢様??」


「そうですか…」


『金山羊の円環』を展開したまま、ジークが使ったと言う魔術のことを考える。


(雷光ですか…アレは、確かゼウス神が所持していた武具の一つでした…しかし、あの時はジークさんは何も持っていなかった。ということは正真正銘の古代魔術…となると…試してみる価値はありそうですね)


「少々、失礼します。ビルさん。ラムさん」


「ええええ!??ちょっと!??お嬢さんどこへ!??」


 アルトリアは走り出し海賊船が見える位置まで移動して、あるものを顕現させる。

 それはダイスが持っていたのもと寸分違わない弓を顕現させる。

 大きく深呼吸をして矢も顕現させる。


光天使の槍(プロト・アテナ)付与(エンチャント)雷光(ケラウノス)


 顕現させた矢が光り始める。

 そして放つ。『無駄なしの弓』(フェイルノート・レプリカ)から光りの矢が放たれる。


 そして、その矢は海賊船の一隻に命中し船を爆破させる。



「ーなっ!??」「ーひゃぁっ!??」


 ビルとラムが驚きの声を出す。


「次…」


 抑揚のない声で次の矢を顕現させて、放つ。

 そしてまた船を沈める。


「ふぅ…あと1隻だというのに魔力が持ちませんね…仕方ありません」







 その頃、弓矢による爆撃さながらの攻撃を受けた海賊たちはと言うと……



「か、頭ぁ、アンリー号が……それにリード号まで……」


「クソォう……2隻を失っちまうなんて……やろうどもっ!引き上げるぞ!!」


「りょ、りょうかいでー!!」



 こうして、海賊"青髭海賊団"は〈ギラメ〉の街から退いて行ったのであった。

なんか毎回毎回戦闘をしている気がする。


出す情報と隠匿する情報の線引きが難しいすぎて若干置いてけぼりにしているような気が……


明日も投稿できればしたいと思います。



感想、誤字の指摘、評価などを頂ければうれしいです。

どうかよろしくお願いします!

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