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ドライブ

作者: 緑矢グリーン

真夏の炎天下


クリーム色のユニフォームが


グラウンドに輝く


どうやら今年は優勝候補らしい


長い夏になりそうだ


これはおれの物語


その時の話をしよう




舟入ふないり商業高校野球部


広島では古豪と呼ばれ、並々ならぬ

伝統校の一つ。


通称「舟商ふなしょう


一本の電話が俺の運命を変えた。


「今週の土曜日、ワシントンホテルに来てほしい。

どうしても出てほしい会議があって。」


舟入商業の野球部長を務める松林まつばやしだった。


その時、俺は埼玉の県立高校、美女木びじょぎ高校で野球部の監督を務めていた。


スポーツにさほど力を入れている学校ではなくいわゆる県立の進学校である。


しかし監督就任からわずか1年で夏の埼玉県大会ベスト8まで登り詰めた。


推薦枠で有望な中学生を獲得出来るような土台はなく、来てくれた選手をどう育てるか。

そこは監督の手腕に懸かっていた。


頭を使い、フィジカルやポテンシャルに頼らない

野球で創部初の県大会ベスト8まで引き上げてきたのだ。


当然このまま数年監督をして夢の甲子園出場というところも学校の上層部は期待していたと思う。


俺自身もあと3年は続けて、チームの力を確固としたものにしていきたい気持ちがあった。


ただ、依頼を受けた舟入商業はなんといっても

俺の母校だ。


選手としても甲子園に出場し、俺の野球の基礎を作ってくれたのが「舟商野球ふなしょうやきゅう」と呼ばれる頭脳を使った緻密な野球スタイルだ。


いつかはこの母校、舟商で監督をしたいという夢があり古豪復活となる全国優勝を成し遂げるという野望は

ずっと持っていた。


その念願が遂にチャンスとして巡ってきたのだ。


ただ、その舟商野球部は近年、低迷していた。

過去11年間甲子園から遠さがっており

全国優勝においては30年も遠ざかっていた。


近年の高校野球においては強豪校というよりも

古豪という言葉がぴったりの高校となってしまっている。

その年の夏の県大会も、名もない高校相手に苦戦し


2回戦であっけなく姿を消していた。


弱体化する舟入商業を建て直す一歩として


俺に白羽の矢が立ったのだ。


会議出席後、数日して正式にオファーがあった。


俺は決心し、母校である舟入商業の再建に


力を尽くすことにした。


舟入商業は春の甲子園優勝1回、夏の甲子園優勝6回を誇る伝統校。


甲子園優勝が俺の最大のミッションではあるが


まずは甲子園出場というのが


クリアしなければいけない目の前のミッションとなる。


就任後、練習試合をいくつかこなす中で今のチームの大体の力量が見えてきた。


部員は1年生と2年生合わせて71人。


毎年、新入生は30人前後入部するということなので来年の春には100人規模となる。


県内で100人規模の野球部は稀で、そのどれもが強豪校だ。


まず俺が取り組んだのが各選手のポジションの適正を見ることだ。


ほとんどが自分の希望するポジションを守るが

チームのバランスや個々の特徴を見て

チームにとってよりベストなポジショニングになっているかどうか、確認していく必要があった。


数人の選手をコンバートさせたり

各ポジションの中で核になる選手も


俺なりにチェックしていった。


エースには右投げでコントロールの良い2年生

東澤ひがしさわを抜擢した。


この東澤という男は顔も良く男前だ。

チームの顔はやはりピッチャー。


華のある選手をどうしてもエースに置きたい

考えがあった。


そういう意味でこの東澤というピッチャーは


エースに適任だった。


キャッチャーはチームで一番肩の強い2年生

小野山おのやまを置いた。


鉄砲肩で遠投109メートルを投げる

強肩が持ち味だ。


肩が強いというだけで

相手は勝手に盗塁を躊躇してくれる。


キャッチャーは肩が強いにこしたことはない。

すぐに外野手からコンバートさせた。


とにかく野球は守備で始まり守備で終わる。


バッティングは水ものであり

どんなに良い打者を揃えても

好投手にあたれば、全く手も足も出なくなるのが野球である。


個々のバッティングなんかに期待していたら

気が付いた時には点が入らず負けてしまっている。


それが野球だ。


来る日も来る日もノック

ノック、ノックの嵐だった。


とにかく基本的な練習を叩き込む。


ファインプレーは要らない。


自分のテリトリーに来た打球を処理する。


それだけで良いと口酸っぱく伝えながら


ノックを繰り返していった。


もちろん投内連携も徹底して行った。


バント処理やピッチャーが守備に関わる


連携は絶対的に数をこなしていないと


本番では成果が出ない。


投内連携で傷口を広がることの無いように


徹底して鍛え上げていった。




バッティング練習に割く時間はほとんど無かった。


むしろ俺はそれで良いと思っていた。


バッティングはある程度、選手に好きに打たせて


気持ちよく練習してもらうことを心掛けた。


内心、バッティングは頑張ったところで


どうせ打てないからという冷めた気持ちが俺にはあるからだ。


“バッティングは打てばラッキー。打てないのが通常運転〃


おれの格言と思っておいてほしい。




ただし、攻撃の中でも


バントだけは意味合いが違ってくる。


バント練習は日本一やろうと選手にも


伝えた。


どこの野球チーム、そして誰よりも俺たちのほうが


バント練習をやってきた。


そこは自信を持って言えるくらいやろうと伝え続けた。


バントを確実に成功することが出来るチームは脅威となる。


地味な攻撃ではあるが攻撃において


めちゃくちゃ効率の良い作戦だ。


試合ではバントを絶対失敗しないチームになろうと


言い続けた。



選手としての高校野球生活は非常に短い。


気が付いたらあっという間に


引退を迎えてしまうのが高校野球だ。


そんな限られた時間の中で


やるべき練習とやらなくていい練習を


ちゃんと区別して行うことに注力をした。



そんな中でバッティング練習に割く時間は


極めて短いながらも


『ホームラン打ち』と俺が勝手に名付けた


練習だけはバッティング練習に折り込むように


していた。


フリーバッティングの際


バッターがピッチャーに球種を要求して


それをスタンドまで放り込む練習だ。


ストレートも変化球も

どちらでもこれが出来るようにと選手には伝え


狙い球をホームランにする練習を意欲的に行った。


実験的な試みだったが


やり始めると最初はなかなかホームランに


することが出来なかったが


続けていくうちに


ポツポツと少しずつホームランが打てる


選手が出てくる。



俺としては必ず打てるようになるという自信は


あったが、実際に成果が出ると安心感が


出てくるものだ。


これも継続して行っていった。


野球においてホームランというのは


バッターにとって間違いなく1番嬉しい結果だ。


そしてホームランはチームの勝利においても


非常に大きなツールとなる。


相手バッテリーが緩んだ配球をしたときに


誰かがホームランを狙ってホームランを打つ。


その時を信じてこの練習を行っていく。


ホームランというのはたまたま打てるものではない。


ホームランを打つ練習をしてこそ


ホームランが打てるようになるものだ。


とは言っても半分は遊び感覚で


やってもらって問題無い。


そもそも俺はバッティングには期待していないから。



 

秋の大会前の練習試合も終盤に差し掛かり

少しずつであったが俺の考えもチームに浸透し

方向性としてもある程度統一出来つつあった。


守備面にかなりの時間を費やして練習してきたし

バント練習も数は充分にこなしてきた。


何度も言うようにバッティングは水ものなので

正直どうでも良いというくらいの練習量ではあったが


こだわった「ホームラン打ち」については

各選手ある程度こなせるようになっていた。


俺としては

春の選抜甲子園大会に繋がるこの秋の大会

なかなかの調整具合の中で臨める大会になるという

自信を持っていた。


そして始まった

秋の県大会出場を懸けた西地区の公式戦は3試合全てコールド勝ちを収めた。


まだまだ技術的にも足りない部分は多いが、この地区大会の試合を見て、県大会でも良い戦いが出来るレベルにあることは確信した。


エース右腕の東澤はスピードは135キロ前後で特段速球派というわけではないが、制球力に長け、マウンドで表情を変えない強いハートの持ち主だ。


そして、何度も言うように

顔が良く、華がある。


変化球もスライダー、ツーシーム、カーブ、チェンジアップを操り、クレバーな投球が持ち味のピッチャーだ。

選抜甲子園出場への道は、東澤の活躍が必須であった。


キャッチャーの小野山おのやまはチーム1の強肩で

遠投は109メートルというプロレベルの肩を持つ。

足も速く、身体能力もチーム1だ。

キャッチャーに関しては肩さえ強ければ、良いキャッチャーにさせられる自信はあった。

俺もキャッチャー出身だ。


そして迎えた秋の県大会。


投打がしっかり噛み合い、格下相手の試合は、危なげなく勝ち進んでいった。

俺もベンチで特に慌てることなく、淡々と指揮を取った。

むしろ、特に俺の出番はないくらい、しっかり守って、しっかり打ってくれた。


準決勝の相手は、安佐あさ高校だった。

舟商と安佐と言えば広島ではライバル校として知られ、歴史ある対決だ。

近年では安佐の突出と、舟商の低迷でライバル校にふさわしくない状況となっているのは歯がゆいところだ。

安佐のピッチャーは140キロを超える速球が持ち味の本格派だ。

簡単に点を取れないのは目に見えていた。

俺はとにかく球数を投げさせることに徹した。

全て球種を張って打つように指示した。

ラストバッターでピッチャーの東澤がバットで期待に応えてくれた。

2ボールからのストレートを見事にレフトスタンドに放り込んだ。


まさに練習でこだわってやり続けた『ホームラン打ち』の成果をこの東澤という男がやってのけてくれた。


投げても東澤がこの1点を守り抜き、完封で決勝進出を決めた。

同時に中国大会への切符も掴んだ。


決勝は、山県やまがた高校との対戦だった。

俺の高校時代の監督で恩師である湯元ゆもと監督が指揮を執る、前年の選抜甲子園出場校だ。


湯元監督らしい、ピッチャーを中心とした守り勝つ野球が特徴だ。


悩んだが、先発ピッチャーには東澤ではなく、2番手の2年生の染谷そめやを選んだ。


山県には中国大会で再度当たる可能性がある。

俺はここで東澤を見せるリスクを回避した。



山県は強かった。

5対0で完封負けを喫した。


近年の県内の高校野球を引っ張るだけはある。


スマートな野球で効率的に点を加え、エース左腕の桐島きりしまの力のある真っ直ぐに抑え込まれた。


とは言うものの、舟商は5年ぶりの中国大会出場で、選抜甲子園出場の可能性を含むこととなった。


県大会で準優勝という成績を収めたものの、決勝で敗れた山県についてはかなりの強敵となる。


決勝の戦いで、うちの弱い部分が見えてきた。


ファーストを守る村山の守備範囲の狭さだ。


バッティングを買って村山を起用していたが、お世辞にも守備は上手いとは言えなかった。


ファーストというポジションは一見、守備の上手い下手はあまり影響ないように感じるが、実は違う。


ファーストに守備力の高い選手を置くと、チームの守備力は劇的に上がる。


そこで、ショートの2番手でバッティングはいまいちだが、守備力はチームでもトップクラスの松井をファーストにコンバートした。


この作戦は功を奏した。


中国大会前の高知の強豪、浦ノうらのうち高校との試合で、松井はことごとくチームのピンチを救った。


1、2塁間を抜けそうなゴロを飛びついてタイムリーヒットを防いだ。


ショートからのショートバウンドの難しい送球もハンブルせずしっかりとグローブに吸い込ませた。


これで一気に守備の不安は解消された。



選抜甲子園を懸けた中国大会。

決勝まで行けばほぼ確実に甲子園出場が決まる。

ベスト4であれば残り1校が行ける可能性がある。


決勝まで行くには3回勝つことが条件だ。



1回戦は島根1位の黒川くろかわ高校との対戦。


先発は東澤で挑み、4番、浅宮、1番、喜多島のホームラン2本を含む10安打7得点の猛攻で7対3で勝利を収めた。


2回戦は岡山1位の西崎にしざき高校との対戦だった。


非常に強い強豪校で今大会の優勝候補である。


岡山県大会の映像と中国大会の映像を部長の松林に直ぐに用意してもらった。


松林は野球関係者の人脈が極めて広い。


仕事の早さと選手への人間教育は一任している。


勝つ為にはこういったパートナーは最重要だろう。


徹底的に西崎の映像を研究し、ピッチャーの牽制球が2球以上は無いこと。


ピッチャーは2ボール、又は3ボールから変化球を投げないという傾向が分かった。


これを試合前に選手に伝え、牽制球を2球もらったら次はヤマカンスチール(ピッチャーが動作した瞬間スタート)。


2ボール、3ボールの次の球はストレート狙いで『ホームラン打ち』を全選手に命じた。


とは言っても、相手は岡山1位の強豪校。


ピッチャーもスピードがあり、変化球も素晴らしい好投手だ。

なかなか点は取れなかった。


8回まで投手戦が続いていた。


0対0で9回表の舟商の攻撃を迎えた。


1アウトから6番の佐々木が四球で出塁した。


1球、2球と牽制球が続いた。


「次は無い。」


次の球で佐々木は抜群のスタートを切り、盗塁を成功させた。


7番の神谷かみやは1ストライクからの2球目にプッシュバントを試みた。


ファーストとセカンドの間に綺麗に転がった。


一瞬判断に迷ったファーストが処理して1塁ベースカバーに入ったピッチャーに送ったが、神谷の足が一瞬上回った。


1アウト1,3塁にチャンスは広がった。


終盤の息詰まる展開時のバント攻撃は我ながら本当にしびれる。

練習していて良かったと思った。


9回表。0対0。


1アウト1,3塁ということで相手の内野手は前進守備を余儀なくされた。


初球、すかさず神谷は盗塁。


1アウト2,3塁を作った。


バッターは8番、松井。


カウントは1ボール。相手は完全にスクイズ警戒といった様子だ。


次のボールはスクイズをするフリのエバース(バントの構えをして見送る)のサインを送った。


相手はバントの構えを見てボールを外した。

2ボール。


もう一度エバース。


またも、相手バッテリーは外した。

3ボール。


次のボールは相手は満塁策で歩かせるか、または満塁策は取らず、松井を打ち取りに来るか。


後者だとしたら間違いなく変化球はない。


この場面で3ボールから打ちに行くのはセオリーではないからだ。


ストレート狙いの『ホームラン打ち』のサインを送った。


案の定、置きに来たストレートが来た。


松井はフルスイングした。


浅めに守っていた外野の頭を越え、左中間に抜けて行った。


走者2人を返すタイムリー2ベースとなった。


その裏、東澤はしっかりと抑え、2対0で西崎高校を降した。



準決勝は予想通り、山県高校との対戦となった。


これに勝てば選抜甲子園への出場がほぼ確実となる。


先発には県大会決勝の対戦では温存した、エースの東澤を送った。


山県は前回同様、エース左腕の桐島が先発だ。


大方の予想通り、投手戦となった。


お互い得点を与えないまま試合は進行していったが、7回表にスクイズで山県に先制を許した。


この試合は攻撃では全球、配球を読んで打つよう指示していた。


配球は自分で考えて、自信がない場合は俺がベンチから球種のサインを出した。


2ストライクでも配球を読ませていたので7回までに舟商の三振数は12個を数えた。


8回に4番の浅宮が打席に立った。


初球、外の真っ直ぐを見送った後の1ボールからの2球目に、浅宮はベンチの俺の方を見た。

〈絶対スライダーだ、狙え。〉


俺は強く浅宮にアイコンタクトを送った。


浅宮も覚悟を決めたような強い視線を、俺からマウンドの桐島に移した。


2球目、ボールからストライクゾーンに入ってくる外のスライダーが来た。


浅宮は左足を大きく踏み込んで、思い切りレフト方向へ引っ張った。


打球はフェンスに向かってぐんぐん伸びていく。


そして打球を追うレフトの頭上を飛び越えた。


浅宮の同点ホームランが飛び出した。


9回の山県の攻撃を無失点に抑え、9回裏を迎えた。


先頭の8番、松井が四球を選んだ。


次の東澤にはすぐさま送りバントをさせ、1アウト2塁のサヨナラのチャンスを作った。


次のバッターは1番、喜多島。


通常であればこの喜多島、続く2番の三島のバッティングに任せて1点を取りたいところだが、今日の桐島のピッチングを見ると、ヒットを期待するには分が悪すぎた。


俺は勝負に出た。 


何となくの勘だが、この回決められなければ負ける予感がした。


2塁ランナーを松井から、走塁のスペシャリストでベンチに入れていた2年生の菊川を送った。


菊川の走塁の感覚は非常に優れ、練習試合での盗塁成功率は群を抜いていた。


盗塁だけではなく、走塁に関してのセンスは俺も今までに見たことがないくらいの選手だ。


俺はベンチを出る前の喜多島と菊川に言った。


「真っ直ぐが来るタイミングでバントエンドランを出す。菊川は来れたら一気に帰ってこい。」

二人は静かに頷いた。


2塁からのバントエンドランは、2ランスクイズと合わせてこれまで何度も繰り返し練習してきた。


ここしかないという場面で使う。


本当に野球とは面白いスポーツだ。


俺は真っ直ぐが来るタイミングを読まないといけない。


スライダーだと桐島は左投げなので右バッターの喜多島の内側に入ってくることになる。


それを一塁方向にバントするのは至難の技だ。


初球はスライダーでボール。


2球目もスライダーでストライク。


3球目はスライダーでボール。


これまで見てきた桐島の映像によるデータでいくと、同じ球種を4球続けたことは一度もなかった。


ここしかない。


俺は2人にバントエンドランのサインを送った。


次の球はストレートだった。


喜多島はプッシュバントの形でファーストとセカンドのほぼ真ん中に強めのゴロを転がした。


スタートを切っている菊川は勢いよく3塁ベースへ向かっていく。


ファーストとセカンドが迷いながら、最終的にセカンドが捕りに行く。


セカンドが捕る瞬間に、菊川は3塁ベースを回ったところでセカンドを見ながらスピードを緩める仕草を見せる。


それを横目で確認したセカンドはベースカバーに入った桐島へ送球する。


送球しようとしたまさにその瞬間、一度スピードを緩めた菊川は再度、全速力でホームに突進した。


菊川に背を向けざるをえない桐島は、セカンドからの送球で1塁をアウトにした後、回りの「ホーム!」という声で、振り向きざまにホームに送球したが、その送球が少しホームから逸れた。


菊川が足から勢いよく滑り込む。


菊川のスライディングがキャッチャーのタッチより一瞬、早くホームベースに触れた。


「セーフ!!」


劇的なサヨナラ勝ちで、舟商が山県を降した。


そして舟商にとっては12年ぶり、春は14年ぶりの甲子園出場を決定的にした。


決勝は山口1位の際波きわなみ商業との対戦だったが、先発の染谷が打たれ、5対4で敗れて準優勝となった。


試合後の選手へのミーティングでは、俺は選手達をしっかりと褒めた。


「近年のうちの低迷の中、これで春の甲子園に出場出来る可能性が大きくなった。本当に君らはよくやった。甲子園というのは特別な場所だ。俺も現役時代に甲子園に出たが、甲子園に出たという結果は一生の宝物になる。甲子園までのこれからの期間は、当然ながら甲子園優勝を目指して練習をしていく。せっかく出場するからには、出て満足はしない。優勝しよう。充分に可能性はある。優勝したら人生も変わるぞ。必ず良い思い出になる。甲子園で優勝出来るようにこれから頑張っていこう。」


甲子園での舟商野球を全国にアピールして舟商の復活を全国の野球ファンに届けたい。


まだ時間はたくさんある。

これからどういう練習をしていこうか。


第一章 完


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