表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
507/551

大征編38

 ジドからの援軍要請だけならば、リョガンも無謀な出撃は自重できただろう。だが、主君からの勅命という形式を取られたのでは、否も応もない。


 それでもリョガンは最善を尽くすべく、手勢を三つに分けた。


 三つに分けた手勢の役割の一つは言うまでもなく、ヨージョの守り。充分な兵に守らせつつ、最初に城門を開いて出撃させたのは、数千の陽動部隊。


 出撃した陽動部隊はギガたちに向かって行き、激突する。


 そして、陽動部隊に攻撃が集中して、ギガたちの注意を引いてから、百余隻、ヨージョの戦船のほとんどを発進させ、東に、第十三軍団の背後を突くべく向かわせる。


 陽動部隊との交戦に気を取られ、ギガたちは戦船百余隻、一万以上の元味方に行動の自由を許してしまう。


 手持ちの戦船をほとんど投じて、勅命を何とか果たしたリョガンは、すぐに合図の銅鑼を鳴らさせ、陽動部隊に退却と撤収を伝える。


 が、陽動部隊はギガたちの注意を引き、足止めをするために、乱戦状態になっている。敵味方が入り乱れている状態では、退却を命じられてもカンタンに応じられるものではない。さりとて、乱戦状態がこのまま続けば、敵に降伏した味方の数からして、陽動部隊の壊滅は必至だ。


「北門に兵を集めよ! 救出に向かう!」


 すでに手持ちの戦船を全て投入している。北門、陸路から進んで裏切り者らに攻撃を加え、陽動部隊の撤退を援護する。


 リョガンは集結させた兵を自ら指揮するべく、北門へと向かうが、


「アーク・ルーン軍、北より来襲!」


 北門よりそのような報告を受ければ、もはや出撃できる状態ではない。


 ヨージョの北に姿を見せたのは、二十隻の魔道戦艦と三十騎の竜騎士。


 魔道戦艦からの援護射撃の元、竜騎士らは北の城壁、城門に接近し、突破を計るが、


「あの船に構うのは後だ! まずは怪物どもを叩き落とし、仕留めろっ!」


 リョガンは当然、ヨージョの守り、竜騎士や魔道戦艦の迎撃を優先せねばならないし、座視できるものではない。


 戦船のみならず、ソナンの技術力は全般的に高い。魔道戦艦からの砲撃にしても距離を置いてのものであれば、そうカンタンに打ち崩されることはない。


 そして、リョガンの指揮の元、城壁の上に並ぶソナン兵らから放たれる弩は、竜騎士らが跨がるドラゴンの翼を次々と傷つけていく。


 竜騎士たちも懸命に矢を防ぐが、北からの攻め手にはアーク・ルーン兵が一人もいない。ゆえにソナン兵は竜騎士の撃墜に専念できる。その集中射撃に竜騎士らの回避と防備が間に合わず、ついに一騎が射ち落とされ、もう一騎も落下していく。


 射ち落とされ、機動力の低下した竜騎士に対して、投石器や弩砲を持ち出し、ソナン兵も仕留めにかかる。


 ここで退ければ、射ち落とされた味方を庇いながらの撤退も可能であったが、今回、竜騎士らは強攻を命じられている。


 つまり、犠牲をいとわずに攻めるように命令、強要されているのだ。


 ギガたちが陽動部隊を皆殺しにするまで攻め続けねばならない竜騎士たちは、七騎が落とされ、その内の三騎が大小六つの骸と化す。


 無論、遮二無二に攻める竜騎士たちも一方的に討たれるだけではなく、ヨージョの堅固な城壁を何ヵ所を砕いてのけ、さらに多くのソナン兵も打ち倒す。


 リョガン率いるソナン兵らは必死の抵抗を見せ、ようやく北からの攻撃がおさまり、魔道戦艦と二十四騎に減った竜騎士が退いた時には、何ヵ所も崩れた北の城壁には多数の死骸が転がっていた。


 壊れた城壁は修復することはできる。しかし、全滅した陽動部隊を含め、約一万の手兵を失ったリョガンには、兵力を補充する術はなかった。


 もし、これで東に向かった兵らも戻って来ねば、ヨージョ城は兵の半分以上を失うことになる。


 ジド率いる援軍が撤退した先で、アーク・ルーン軍の強襲を受けたことを知らぬまま、東へと進むソナン兵らが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ