表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
455/551

東征編28

 魔法帝国アーク・ルーンの侵略を受け、新たに頭を垂れたのはコノート王国だけではない。


 ロシルカシル王国と大国マヴァルもアーク・ルーンに降伏し、その歴史に幕を下ろした。


 王都近郊での決戦に大敗し、王都に立て籠って最後の抵抗を続けていたロシルカシル王国だったが、第五軍団に四方を封じられての籠城は短いもので終わった。


 まだ兵糧はあり、王都を守る程度の兵は残っている。だが、王都を包囲するアーク・ルーン軍を追い払う術はない。


 祖国の未来はないと判断した貴族や軍人が反乱を起こし、それが順次拡大していき、王宮のみならず、王都の市街でもロシルカシル人が激しく相争った結果、裏切り者たちはロシルカシル王国の王都の門を開け放ち、縛り上げたロシルカシル王とその一族をアーク・ルーン軍の前に突き出し、ロシルカシル王国は滅亡した。


 正確には、縄を解いたロシルカシル王が、助命を条件にアーク・ルーン帝国への降伏を承諾し、それを公文書として認めたのが、ロシルカシルの終わりとなるだろう。


 それとほぼ同時期、マヴァル帝国も裏切り者によってその幕を閉じることになった。


 マヴァル帝国は皇帝と重臣らが無気力状態に陥っていた。それゆえ、最後の抵抗を試みるレヴァンの意見はすんなりと通っていたのだが、それは裏切り者たちに暗躍の余地を与えることにもなった。


 レヴァンが出撃し、皇帝は現実逃避にふけるだけ。裏切り者たちが皇宮や帝都を掌握する難しいものではない。


 かくして、帝都の兵と皇帝の身柄を握った売国奴らは、密かにアーシェアの元に使者に送り、祖国を売り渡す交渉を重ねていた。


 不運だったのは、レヴァンに命じられ、アーク・ルーン軍を挟撃すべく、帝都の兵を率いるために赴いたダクワーズである。


 裏切り者たちの動きに気づかぬまま帝都の門をくぐったダクワーズは、捕らえられて牢屋に叩き込まれることになった。


 皮肉にもダクワーズを牢から出したのは、明け渡された帝都を制圧したアーク・ルーン軍であり、その際にレヴァンの自害、ノスルの戦死、そして祖国の滅亡を知らされた。


 アーク・ルーンからの帰順も助命も拒み、処刑を望んだダクワーズは首を落とされた後、その遺体は遺族に引き渡されている。


 ちなみにガーランドや元ゼラント王は、マヴァルが滅亡する前に東へと去っている。正確には、レヴァンに叩き出されたのだ。


 ガーランドは祖国での愚挙にこりず、悪魔ザナルハドドゥの甘言に従い、また外道な戦力強化を計ろうとした。


 亡命した当初、レヴァンが軍権を握っていた頃は、ザナルハドドゥの甘言に耳を貸すことはなかった。しかし、レヴァンが失脚すると、カーヅはザナルハドドゥの甘言に踊らされたが、バディン王国の王都であったベッペルのような悲劇が生じることはなかった。


 カーヅが殺され、復帰したレヴァンがその悪魔的な所業を知ると、ガーランドらを追放したからである。


 もっとも、そのおかげでガーランドらはマヴァル帝国の滅亡に巻き込まれずにすんだのだが。


 コノート、ロシルカシル、マヴァルを降し、アーク・ルーン軍の標的はさらに東のヴァーレ公国とスティス王国に移ったが、アーク・ルーン兵をすぐに差し向けるような愚行はおかさない。


 降伏したばかりの三国の地固めが優先であり、そのためにアーク・ルーン兵はいくらでもいる。ただ、侵攻の準備が整うまでヴァーレとスティスを放置するようなこともしない。


 マヴァル、ロシルカシルの敗残兵にヴァーレ、スティスを攻めさせ、両国に圧力を加えている。


 本来なら、ヴァーレ、スティス攻めにはコノート兵も加わるはずであったが、元コノート王であるエドアルドがそれを拒否し、それをリムディーヌが認めたからだ。


 スラックスとしてはこの甘い処置に不満であったが、攻略した地をどうするかは担当の将軍の裁量に委ねられ、他の将軍が口を挟めるものではなかった。


 それにリムディーヌの処置は甘いばかりのものではない。


 決戦に敗れて降伏したロシルカシル王国はさして難しい占領地ではないが、マヴァルとコノートは違う。


 カーヅの失策を煽り、マヴァル帝国を混迷させ、弱体化に成功したが、今度は混乱するマヴァルの地をアーク・ルーンが治めねばならなくなった。しかも、それを担当するのはまだ経験の浅いアーシェアだ。


 それだけで彼女にはいっぱいいっぱいだと言うのに、マヴァルの地にはもう一つ問題がある。


 孤軍となったコノート王国からの援軍だ。


 一万のコノート軍を刺激して頑強に抵抗されては面倒なことになるので、リムディーヌはあえて甘い処置を取ったのだ。


 リムディーヌの配慮は約九割のコノート兵には有効であったらしく、彼らは南へと転進した。


 だが、残る約一千は武器と誇りを捨てることはなく、命を捨てる覚悟で踏み留まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ