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南方編24

「は~い、皆さん。ちゃんと並んで下さいね」


 小さな三角旗のついた棒を振り、数百人を整列させるのは、魔法帝国アーク・ルーンの第六軍団の軍団長レミネイラであった。


 そのレミネイラの指示に従って、のろのろと整列を始める数百人の老若男女の表情が一様に暗いのは無理のないことだろう。


 精霊国家群。


 かつてはその総称で呼ばれていた国々は、今やアーク・ルーンの広大な領土の一部となり、もはや存在しない。


 だが、七竜連合がそうであるように、祖国が滅びても王侯貴族も全て滅びておらず、生き残りは少なからずお目こぼししてもらっている。


 そして、七竜連合がそうであるように、抗戦の末に降伏した者たちへの扱いは今さら述べるまでもないだろう。


 負け犬を容赦なく棒で徹底的に打ちすえ、うつむいて生きるしかないと教え込むのがアーク・ルーンの調教法であり、レミネイラも基本的にそのやり方を敷いている。


 それゆえ、レミネイラの指示で整列する亡国の王侯貴族や精霊戦士たちは暗い表情でうつむいているが、内心では目の前の女将軍を八つ裂きにしてやりたいほど、憎悪をたぎらせていた。


 レミネイラ自身、武芸の心得はない。ただ、その身をマジック・アイテムで守り、不意打ちや暗殺への備えはしている。


 それでも精霊戦士ならば、最初の数撃は防がれようが、マジック・アイテムの守りを破り、レミネイラを殺すことは可能だろう。


 ただし、第三者の介入がなければ、だ。


 レミネイラの側にはいつものようにクマぞう、ブタきち、サルべえがいるが、この先史文明の遺産らには何の戦闘力もない。ただ、今日に限り、彼女の側にはフレオール、フォーリス、シィルエール、ミリアーナの姿がある。


 無論、フレオールらはレミネイラ専属の護衛というわけではない。いつもは側に護衛などいないが、数百人の老若男女はベーヅェレの指揮の元、一万のアーク・ルーン兵に囲まれている。


 一万のアーク・ルーン兵に囲まれている者たちの家族は、インブリスの軍団の監視・管理下にある。なので、一人ないし数人が襲いかかってきても、


「この者をそちらで処理してください。家族のためにも」


 マジック・アイテムで守られている間に、レミネイラがそう命じれば、襲いかかった負け犬の牙は届かぬ内に、負け犬の牙で切り裂かれて処理されることになる。


 もちろん、レミネイラはそれで万全と考えるほど甘くない。内に渦巻く憎悪を絶望で塗り潰し、反抗心を完全にへし折るべく、彼女は今回のツアーを企画し、先導しているのだ。


「では、最初の処刑場の準備ができたみたいです。この辺りではなじみはありませんが、ミベルティン発祥の凌遅刑、それを特とご覧ください」


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