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プロローグ3

 ベダイル・フォン・フォールス。


 やや小柄な身体にやたら立派な漆黒のローブをまとう、いくらか赤みがかった金髪の、整っているが険のある顔立ちをした十八の若者は、アーク・ルーン帝国の大宰相ネドイルの異母弟の一人だが、その魔術師の名は最高権力者たる異母兄がいなくても、アーク・ルーンの、否、魔道の歴史に刻まれることになっただろう。


 魔道戦艦と魔甲獣の開発者として。


 二大魔道兵器を初め、いくつもの魔道技術を進歩、革新に導いたベダイルは無位無官、爵位も領地も無い身。


 彼が望んだのは、自分用の研究施設と、莫大な研究資金であり、ネドイルも当人の希望に応じた報酬を与えた。


 ベダイルは魔道アドバイザーの肩書きで、異母兄の覇道に協力し、その協力費を使った二人の少女が、彼の前で片膝を突いている。


 共に十六、七ぐらい、一人は長い銀髪を結い上げ、キレイな顔立ちをしており、もう一人は濃い茶色の髪を肩の辺りで切り揃え、愛らしい外見をしている。


 二人の、否、二つの作品にかしずかれるベダイルは、


「知ってのとおり、情けなくも我が弟が敗れた。まあ、武人だの何だのと、口先で喚くだけの下らんヤツだ。まったく、あんな傲慢で尊大で身のほど知らずが弟だと思うと、腹立たしくてたまらん。聞けば、去年の戦いで得た捕虜、何をカン違いしたか、名目だけの指揮権を振りかざして、解放したとも聞く。捕虜ひとりひとりが、ヅガート将軍と兵たちが奮闘した成果であるのもわからんのか。だいたい、ヤツは昔から……」


「あのう、ベダイル様……」


 たった一人の異母弟を悪しざまに延々と罵り出し、それがいつも通り終わりそうになかったので、二人の少女は口を揃えて止めにかかる。


「あ? ああ、すまん。つい興奮した。さて、どこまで話したか。たしか、我が弟が情けなくも、とことん惨めに、どうしようもなく不甲斐なく、負け犬も恥じるほど哀れに敗れた。その辺りか。まあ、身のほどもわきまえず、大した実力もないくせに、武人だの何だのと、口先だけで尊大で傲慢に振る舞うヤツだ。あんなグズが勝てる道理もないだろうから、当然の結果だ。が、さりとて、どれだけ忌々しくも、あのグズでクソな大バカ者が、我が弟である以上、オレも黙ってはいられん。わかるか、我が気持ちが?」


「……わかっております。ベダイル様に代わり、そのお言葉、フレオール様にお伝えしましょう」


「……ベダイル様のお心もわかっております。わたくしにちゃんとできるかわかりませんが、我が役目を果たせるよう、精一杯、努めさせてもらいます」


「ああ、頼むぞ。まったく、すまん話だが、オレも兄として、どうしても放っておくわけにはいかん。あんな遠くにオマエたちを行かせるのは心苦しいが、あのグズでクソが身のほどをわきまえず、愚かにも勝てもしない決闘なぞやって、惨めに敗れたのだ。負け犬に成り果てた姿、見てみたかったが、そんな見物が見れなかった。まったく、それだけでも腹立たしい。だいたい、あのバカでクソでグズは、昔からそうだったのだ。身のほどもわきまえず、武人だのと自分に酔って……」


 再び、否、これまで何度も繰り返された悪口のオンパレードを始めた魔術師に、その作品である二人、魔戦姫となり、人間でなくなった二体は、顔を見合わせ、そっと揃って嘆息した。



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