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落竜編シャーウ10

 一人でウィルトニアに加え、モニカとその乗竜を相手にせねばならぬフォーリスだが、対処法がまったくないわけではない。


「ハアアアッ!」


「ハアアアッ!」


 モニカの接近を阻まんと、フォーリスは後先を考えずにドラゴニック・オーラを放ち、それをウィルトニアもドラゴニック・オーラを放って迎撃する。


 ライディアン竜騎士学園に入学以来、何度も手合わせしてきた二人の元王女だが、戦績はフォーリスの全敗という惨憺たるありさまだ。


 だが、一方で何度も手合わせしたからこそ、フォーリスはウィルトニアのウィークポイントも理解している。


 レイドもそうであるが、ウィルトニアも遠距離攻撃の手段が乏しく、かつてフレオールと戦った際には石ころを蹴り飛ばすなどの変則的な芸当を用いたほどだ。


 シィルエールやナターシャ辺りには劣るが、ドラゴニック・オーラの量はウィルトニアよりフォーリスの方が勝る。理論上、終始、射撃戦に持ち込めば、フォーリスに軍配が上がるのだが、それを許さなかったからこそ、ウィルトニアに軍配が上がり続けたのだ。


 スカイブローの発した咆哮は、三人の耳にも届いている。だから、必死になって時間を稼ごうとするフォーリスの動きを冷静に観察し、


「……モニカ!」


「ハアアアッ!」


 ウィルトニアの呼びかけ、合図と同時にモニカは脇に置いてあった槍をブラックシューターへと投じる。


 当然、投げ放たれた槍には、モニカのドラゴニック・オーラが込められているが、それだけならフォーリスも対処できただろう。


 だが、意識と攻撃がウィルトニアの方に傾いていたタイミングでのモニカの投擲は、ブラックシューターの腹部に深々と突き刺さった。


 ウィルトニアの方とて、伊達に何度も手合わせはしておらず、フォーリスの悪いクセ、格下の相手を軽視しがちであるのを知っている。


 レイドが跳び出した直後は、モニカを多少は警戒していたが、それも長い間ではなく、ウィルトニアとの射撃戦に没頭するようになってしまい、こうして不意打ちを食らうことになった。


「ハアアアッ!」


 見くびって軽視、否、無視した相手から強かな一撃を食らったフォーリスは、すかさず反撃を行う。


「バカ! ウィルトニアの方への牽制を止めるな!」


 スカイブローの背の上で、思わずフレオールが叫んだとおり、フォーリスの放ったドラゴニック・オーラはモニカ程度では防げず、彼女のまとう竜鱗の鎧の一部が碎け散り、胸を押さえて乗竜の背の上でうずくまる。


 だが、それで照準から外れたウィルトニアは、一気にフレイム・ドラゴンの首を駆け上がり、頭部を踏み台に跳び上がり、ブラックシューターの右後ろ足にしがみつく。


「ブ、ブラックシューター! 振り落としなさい!」


「だから、もう一方にも注意を払え!」


 これまたフレオールの叫ぶとおり、躍起になってウィルトニアを振り落とそうとする間に、うずくまるモニカが乗竜を上昇させ、ブラックシューターへの接近に成功した上、その長い首に牙を突き立てる。


 フォーリスの悪いところ、激しやすく、怒ると冷静さを欠き、さらに焦るとイージー・ミスをしてしまうことも知っているウィルトニアは、ブラックシューターから離れてフレイム・ドラゴンへと跳び移り、赤い鱗の上を素早く移動して、再び首の上を駆けて頭を踏み台に、今度は黒い鱗の上に着地する。


 フォーリスから十歩あまりの距離に。



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