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落竜編シャーウ7

「また狼煙ですの?」


 金目の物を目の色を変えて追い回すフォーリスも、さすがに押し入ったコノート貴族の館が五軒目となると、何度も上がる狼煙の存在に気づいていた。


 正確には狼煙のことに気づいたのは同行するフレオールであり、ゆえにこの狼煙が自分たちの居場所を報せるものであるのはすぐにわかった。


 何しろ、襲撃した町はもちろん、飛び去った背後に何度も狼煙を見れば、その目的は明白だ。その見解にはフォーリスも同意している。


「ですが、何か問題がありまして?」


 ただ、フォーリスは自分の位置を報せる狼煙について問題視しておらず、それはフレオールも否定できない点であった。


 竜騎士の動きに合わせて狼煙を上げられるということは、国内の各所、少なくとも西の国境一帯にはかなりの数の狼煙台を事前に設置していたことになる。


 それで確かに竜騎士の動きを素早く知ることはできるが、それだけでは意味がない。位置が把握できても、対応ができねば数多の狼煙台は無用の長物と化す。


 フレオールの考案した竜騎士の遊撃戦の対処で、最も難しいのがその捕捉だ。


 竜騎士というより、ドラゴンはその巨体ゆえに発見するのは容易だ。だが、発見してその竜騎士に有効な戦力を差し向けようにも、歩兵では足の遅いアース・ドラゴンやアイス・ドラゴンに追いつくのも難しく、騎兵でも飛行能力のあるドラゴンを追えるものではない。


 フォーリスの駆るブラックシューターが空を飛び、道なき道を行けばどれだけ騎兵を繰り出そうがカンタンにまける。それを否定する意見がないので、コノート王国の監視網に引っかかっているにも関わらず、フレオールは略奪の続行を容認しているのだ。


 理屈や理論はフォーリスの正しさを認めつつ、しかし何か引っかかるものを感じているフレオールは、より周りに注意を払っていたため、先に接近するその存在に気づいた。


「……フレイム・ドラゴン! 竜騎士が来ているぞっ!」


「な、何ですって!」


 予想外の追っ手の登場に、フォーリスは大いに慌てる。


 彼女の駆るダーク・ドラゴンとフレイム・ドラゴンでは速力に大差がなく、まくことはできないが、


「……大丈夫ですわ。例えもう二騎いましても、追い払えばいいだけですわ」


 後方から迫る竜騎士を、マヴァル帝国に亡命した一騎と考えた場合、フォーリスの発言は決して虚勢ではない。


 この場でガーランドやゼラントの竜騎士二騎とドッグ・ファイトになったところで、フレオールたちがいる自分が勝つとのフォーリスの計算は間違ってはいないのだ。


 だが、マヴァルに亡命したガーランドたちがコノートにいることが腑に落ちないフレオールは、首を傾げたまましばし後方を睨みすえ、


「……違うぞ! ドラゴンの背中を良く見てみろ!」


 言われて、乗竜の背の上で背後を振り返ると、フォーリスの顔が驚愕の色に見える。


 フレオールには三つの人影にしか見えなかったが、竜騎士たるフォーリスの強化した視線には、


「……な、な、何であなたがここにいますの! ウィルトニア!」



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