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過去編92-1

 ランディール率いる一万五千と、フレオール率いる四万五千のアーク・ルーン軍が、多大な戦利品を運び込んだワイズ王国の王都タランドは、クロックとイライセンによって完全に掌握されているだけではなく、一時の混乱はほぼ治まり、その治安はすっかりと回復していた。


 イライセンが見抜いているとおり、アーク・ルーン帝国は現時点で、ワイズ王国を支配下に組み込むつもりはない。王家と貴族から奪えるだけ奪い、王宮や彼らの屋敷を焼き払って撤退するつもりだが、短期間なものとなるからといって、占領地政策をおろそかにするような雑なマネをアーク・ルーン軍はしなかった。


 戦場と異なり、この手のことでまったく役に立たないどころか、元々、やる気のないヅガートに代わり、クロックの実施したタランドの管理統制と治安維持は、情報の提供や様々な助言を行ったイライセンが心置きなく全面的に協力できるほど、ワイズの民に配慮したものであった。


 原則として、アーク・ルーン兵には略奪や暴行の全面的な禁止が課されている。いい加減なヅガートや温厚なクロックですら、兵たちには軍規を厳しく守らせ、違反者は厳しく処分している。


 実際に、アーク・ルーン軍がタランドを制圧してしばらくすると、略奪や暴行、さらには強姦の罪で五人の兵を広場で公開処刑し、今もその五つの首は晒されている。


 処刑された兵らの助命や減刑を何人かの士官が申し出たが、クロックは一切、耳を貸さずに処刑を断行したので、これ以降、タランドの治安は急速に回復していった。


 一罰百戒の効果で、アーク・ルーン兵がより一層の自制や自重を心がけるようになっただけではない。公開処刑を行い、衆目の中で自らの非を詫びることで、ワイズの民の信頼を得ることにも成功したのだ。


 もちろん、被害にあったワイズの民には、クロックが自ら出向いて謝罪し、充分な補償を約束している。


 七竜連合からの援軍がタランドに駐留している間、数十というトラブルが起きている。


 兵士に酒代や飯代を踏み倒されただの、店先で商品を勝手に持っていかれただの、そうした苦情がイライセンに届くつど、ワイズ王に報告して、援軍の統制を依頼したが、どこの国も、バディンでさえ、兵たちに形ばかりの注意をし、ワイズ王にも形ばかりの謝罪をするだけで、被害者に直接、謝った件は一つもなかった。


 その後、イライセンは他国の兵をなるべく王都の外に置くことに腐心し、また自身の直属の兵に見回りをさせて対処したが、被害は大きく減ったものの無くなることはなかった。


 さらにアーク・ルーンというより、クロックの占領地政策はこれだけに留まらず、


「戦を理由に不必要な値上げ、不買を行った商人は厳罰に処す。また、買い占めなどで市場に無用の混乱を起こした者にも、厳しい罰を与える」


 そう布告を発し、戦乱を利用して一稼ぎしようとした商人らの商魂に先制の一撃を加えた。


 が、第十一軍団の副官が巧妙なのは、高圧的な態度に終始しなかった点だ。実際に戦乱の影響で流通の滞った物資はあり、それらに対してはワイズ王国から接収した戦利品の一部を市場に流し、物価の安定を計っただけでは単なる一時しのぎである。


 しかし、その一時しのぎの間に、クロックはイライセンの仲介の元、タランドの有力商人たちを呼び、ワイズ王国との間にあった特権の保全を条件に、流通再開の協力を約束させた。


 また、これもイライセンを通じてだが、タランドにいる役人や衛兵をそのまま用いて、市民の日常にも支障がないように処置している。


 一連のスピーディーな占領地政策は、ワイズの国内事情に精通したイライセンの知識や情報があってこそだが、逆に言えば充分な知識や情報があれば、これくらいのことができる手腕をクロックは有していた。


 元々、ネドイルを心から尊敬しているクロックは、大宰相の補佐官か秘書官を目指していた文官であり、ネドイルの直属となっていてもおかしくない事務処理能力を有している。だが、なまじ武官としても有能だっただけに、ヅガートと組まされることになったという経緯がある。


 ワイズの民がワイズ王国に失望するように動くのが、アーク・ルーン軍の目的である。ワイズの民がワイズ王国と敵対するように仕向ける一方、アーク・ルーンがワイズの民から嫌われないように気をつけねばならず、その点ではイライセンの目的と合致しているので、クロックと進んで協力関係を築けた。


 クロックの方も正直、降伏してきたが、ワイズの悪口を並べ立て、アーク・ルーンを称賛するばかりで、何一つ有益なことのできない軍務大臣や外務大臣のようなやからより、国務大臣のような役に立ってくれる人物の方がありがたいので、イライセンと良好な関係が築けるように努めている。


 もちろん、クロックはイライセンに礼を失さぬように気をつけつつ、その警戒も怠らない。ハエのようにうっとうしいだけの軍務大臣や外務大臣と違い、国務大臣は内に猛毒を秘める危険な怪物である点は失念していない。


 ランディールやフレオールに先んじてタランドにやって来たヅガートも、副官に仕事を丸投げして、のんびりと酒を飲みつつも、鋭い視線をイライセンには向けて注意を怠らず、ワイズの国務大臣を都合良く利用できる状態を保持している。


 アーク・ルーン側にカケラも隙がない以上、イライセンとしては都合のいい道具として扱われるのは望むところである。アーク・ルーンに利用されるということは、新参者の自分が有用な存在としてアーク・ルーンの支配体制に組み込まれることを意味するのだ。


 そして、クロックはタランドの占領と安定の功を独占するような人物ではなく、イライセンの功績も公平に報告するだろうから、手柄を立ててアーク・ルーンでの発言力を高めていくという点ではありがたい相手だ。


 これでクロックが金や女を与えれば便宜を計ってくれる人物なら申し分なかったのだが、そんな甘い人材はアーク・ルーンの高官にはいない。


 アーク・ルーンの高官はワイロに対して、クロックのようにまったく受け取らないか、サムのように甘い汁をしばり取った挙げ句、苦い結果を返すかの、だいたいどちらかである。


 それゆえ、アーク・ルーン軍が勝利した後、逃げ遅れたワイズ貴族が降伏を申し出た際、金品や自分の娘を差し出し、領地や財産を安堵してもらおうとしたが、クロックは冷然と彼らの全財産を没収した。


 そして、平民出身の副官の命令の元、アーク・ルーン兵らは絹の服をまとった老若男女を屋敷の外へと着の身着のままで叩き出して回った。その中には強制退去を拒んだワイズ貴族もいるが、そうした者も腕の一、二本を折られると、素直に生まれ育った館を後にした。


 もっとも、全てのワイズ貴族が財産没収と強制退去の憂き目にあったわけではない。国務大臣、軍務大臣、外務大臣とその一門に属する者は、アーク・ルーン兵に屋敷に踏み込まれずにすんだだけではなく、領地も保全する処置が取られた。


 降伏というより、積極的に裏切った三人だが、イライセン以外は役に立たないどころか、アーク・ルーン軍の足を引っ張り、何の功績もないが、重要なのは裏切ったという点である。


 アーク・ルーンに敵対すれば、どれだけ悲惨な目にあうかは、屋敷から叩き出された面々で証明された。だから、アーク・ルーンに味方すれば、破滅を免れるという証明をしておけば、これからの七竜連合のみならず、侵略戦争において内部の切り崩しがやり易くなる。


 無能な軍務大臣や外務大臣だが、こうして費用をかければ、広告塔としてくらいは機能する。


 同様に、クロックは王族を何人か世間に放り出さず、確保している。政治的な利用価値の高いワイズの王妃と王太子はすでにアーク・ルーンに送り、皇宮の一室で監禁しているが、他はワイズの王宮で監禁している。


 王家の血を引くという一事は、貴族にとって大きな効能を有する。王都こそ制圧したが、地方にはいくらでも貴族が残っている情勢を思えば、王族の利用法はいくらでもなり、ワイズで最も高貴な血を何人かストックしておくのは正しい処置だろう。


 加えて、竜騎士見習いの確保も抜かりなく行っている。


 王都にはドラゴンと契約したものの、ライディアン竜騎士学園に入学する年齢に達していない者が何十人といる。


 七竜連合との戦いで、肝となるマジカル・ウィルス『ドラゴン・スレイヤー』の実験のためにも、彼らは押さえておかねばならない。


 見習い以前の未熟な腕でアーク・ルーン軍に挑み、その大半は返り討ちにあったが、何人かはイライセンの進言で家族を人質にして捕らえることができた。


 彼らの犠牲が約一年後の七竜連合の悲劇をよりたしかなものとしたが、それはまだ先の話である。


 クロックはイライセンの協力の元、ランディールやフレオールがタランドに到着する頃には、これら占領地政策の当面の課題を片づけていたので、アーク・ルーン軍が戦場で得た戦利品の整理という新たな仕事が副官の元に回ってきた。


 戦利品は敵から奪った装備、兵糧、物資に留まらない。捕虜もそれに含まれるが、死体も相手の地位によっては、ヘタな捕虜より金になる。


 ランディールやフレオールが確保した戦利品の中には、けっこうな数の、塩漬けの生首がある。それらの首は竜騎士のものが多く、つまりは身分の高い者の死体であるのを意味する。


 遺族からすれば、空の棺で葬儀を執り行うより、首だけでも供養できれば、心情面で大きく違う。


 金を積んでも遺体の一部を取り戻したいと考えるのが人情であり、それを歪なビジネスとして成立させているのが戦争というものだ。


 ただ、首を取られる者は戦って死んでいるので、頭部の損傷が激しいものもあり、捕虜たちに首実検させてもみても、身元のわからないものや、あいまいな証言しか得られない場合がある。


 フレオールの部隊が得た首の一つであるゲオルグのそれも、あいまいな証言しか得られなかったケースの一つだ。

 ゴーレムにタコ殴りにされて死んだゲオルグは、顔の判別がつく死に方をしてなかった。ただ、竜鱗の鎧など、汚れや損壊が酷くとも、かなり高価な装備をしていたので、相当の地位にある者と判断し、フレオールはゲオルグの装備だけではなく、首も戦利品に加えた。


 装備に辛うじて残っていた紋章からバディンの者とわかったので、バディンの捕虜たちに確認をさせたところ、ゲオルグかも知れないという証言が出てきたため、フレオールは本腰を入れて身元調査に着手した。


 王子の首となれば外交カードにも使える。だが、首の状態が状態ゆえ、捕虜たちの証言も確信を欠くものばかりだったので、フレオールはゲオルグの首をイライセンの元に持ち込んだ。


 正確には、クロックがイライセンと共に捕虜の対応を話し込んでいる場にフレオールが訪れ、そこにゲオルグの婚約者であるイリアッシュを呼んだのである。


 言うまでもなく、フレオールは魔法帝国アーク・ルーンの実質的な支配者であるネドイルの、母親が異なるとはいえ弟である。加えて、アーク・ルーンの名門中の名門であるオクスタン侯爵家の生まれであり、母親もこれまた名門中の名門であるエストック侯爵家の出であり、ワイズを攻略したアーク・ルーン軍の司令官でもある。


 アーク・ルーン帝国というより、ネドイルの政権の本質を見抜いているイライセン以外の、軍務大臣や外務大臣といった降伏したワイズ貴族は、ヅガートやクロックよりも、必死にフレオールに取り入ろうとしている。特に、フレオールは独身であるので、うまく自分の娘でも嫁がせれば、大宰相の血族に加わることができると、極彩色の夢想を描いてさえいた。


 彼らはつい先日まで仕えていたワイズ王や、さらにはアーシェアさえ悪し様に罵り、安っぽい褒め言葉を並べて魔法帝国アーク・ルーンを絶賛し、フレオールを心底、うんざりさせた。


 貴族嫌いのヅガートではないが、この手のやからを相手にするほど無駄なことはないので、クロックやフレオールらは仕事を理由に極力、イライセン以外のワイズ貴族と会わないようにしている。実際、ヅガートと違い、クロックたちはやるべき仕事が山のようにあり、無駄にしている時間はなく、そうした事情を察したわけでもないが、イリアッシュの証言はさしたる時を必要としなかった。


 ゲオルグの頭部はぐちゃぐちゃで、婚約者にしてもそれだけなら断言ができなかっただろう。だが、フレオールの確保した装備品の中には壊れた指輪があり、それが決め手になった。


 破損がいちじるしいとはいえ、同じ物を左手の薬指にはめているイリアッシュは、


「首だけなら、指輪だけなら、私も確かなことは言えませんが、この両方が揃っているなら、ゲオルグ殿下であるのは間違いはありません」


 両の手のひらに乗せた、壊れた婚約指輪に視線を落としながら、せっかくの美人が台無しなほどの暗い表情で断言する。


 この場にいるクロックやフレオールは、実のところ、初対面ではない。ヅガート以外とは、第十一軍団の主だった面々と、イライセンは娘ともどもあいさつをすませている。


 一国の王子を自滅させるほどの美しい娘を、イライセンはアーク・ルーンに取り入る材料になるかもと期待しなくはなかったが、イリアッシュが祖国を裏切った日からずっと暗い表情をしている以前に、


「貴族の女を抱くくらいなら、石を抱いた方がマシだ」


 そう公言するほど病的な貴族嫌いのヅガートは、イライセンとさえ会おうとしない。


「浮気なんかしたら、女房にしばかれる」


 そう公言するクロックも論外であり、さらにランディールや師団長の中にはその美しさに興味を示す者もいなくなったが、誰一人として女を抱いたくらいで便宜を計ってくれる甘い人物はいなかった。


 フレオールもその美しさというより、強さの方に関心を抱かないではなかったが、イライセンの目的を察しているので関わらないようにしている。


 今更、作戦を変更するなどほぼ不可能であるし、仮に不可能が可能になった場合の代価は、フレオール程度が支払いに協力できるほど容易いものではない。何もできない以上、謝礼だけせしめるような恥知らずなマネなどできるわけがなく、フレオールもイライセンとは業務上のつき合いに留めている。


「ともあれ、偶発的なものであったとはいえ、先の作戦の遂行中にバディンの王子を討っていた、ということですか。一応、報告書に追記しておきます」


 クロックの言葉に、イライセンは無言で小さく頭を下げる。


 先の作戦とは、連合軍を叩き潰し、ワイズ王国にトドメを刺した、先日の戦いを指す。その作戦の立案者はイライセンであるので、その成果が大きいほど、アーク・ルーン帝国への点数稼ぎになる。


 だから、クロックが口にした内容を報告書に加えてもらえれば、イライセンはアーク・ルーン帝国からより高く評価してもらえるというより、


「ただ、ないよりマシという評価修正に留まりがね。やはり、アーシェアを逃したのが痛いし、ワイズ王にも逃げられた。このゲオルグという王子にしても、生きて捕らえるのがベストでした。無論、それはイライセン卿お一人の責ではなく、我々全員の落ち度ではありますが」


 イライセンの作戦によってアーク・ルーン軍は大勝利を得ており、その完成度において高い評価は得ているものの、最高得点を叩き出したわけではない。


 イライセンに次ぐ大魚たるアーシェアを捕らえも殺しもできなかったし、王妃や王太子以上に政治的な価値を持つワイズ王を逃がしてしまった。ゲオルグを捕らえられず、殺してしまったのも減点項目だ。


 もちろん、アーシェアへの対処が不充分になったのは、全体の作戦進行を優先したからであり、ワイズ王を逃がした責は軍務大臣らの暴挙にある。ゲオルグにしても、その身柄を拘束するのに策を用意していなかった。


 が、減点主義というわけではないが、ネドイルの政権下においての評価方式は厳しい。イライセンの作戦がもたらした成果を高く評価しつつも、綻びが生じた部分も反省点として処理される。全体的にうまくいったから、それで良しとする甘さをネドイルは認めていないのだ。


 アーク・ルーン軍に大規模な軍事計画の変更を願い出るイライセンとしては、祖国を売り渡す際に最高得点を挙げられなかったのは、やはり痛い。十年以上前に一度だけ会っただけだが、ネドイルが古参、新参に関係なく意見に耳を傾けてくれる点に不安はないが、一方で実力も実績もない者の意見に一考の価値も払うことはないだろう。


 この地が生き地獄となるのを避けるため、功績と点数稼ぎに腐心せねばならないイライセンの前で、


「……ごめん……なさい……」


 高得点を挙げるのと同様、いささかの失点も許されない父親と、何よりフレオールとクロックの前で、罪悪感に耐えられなくなったイリアッシュは、流した大粒の涙を手のひらに落とす。


「……ごめんなさい……あなたの想いを利用するようなマネをして……私は一生をかけて、あなたを愛する努力をするつもりでした……だから、許して下さい……アーシェ姉様、ウィル、エクターン、伯父様、伯母様……本当にごめんなさい……こんなことをしてしまって……本当に許して……」


 ついには泣き崩れ、床に伏した娘の姿に、イライセンの体と表情が小刻みに震える。


 良心の呵責を抑え切れなくなった心情は理解できなくもないが、反逆に、つまりはアーク・ルーンに味方したのを後悔する姿をアーク・ルーンの高官に見られたのだ。これは立案した作戦で最高得点を挙げられなかったのとは比べものにならない失点であり、これまで売国の功で培った信用が一挙に失われかねない失態である。


 幸い、フレオールの方は女の涙に気の毒そうな表情をしているが、クロックの方は表情を変えずに、イリアッシュのすすり泣く声に耳を傾けている。


 フレオールは司令官であるが、形式的なものでしかないのは、新参のイライセンの目にも明らかである。現状、全てを取り仕切っているクロックの耳目こそが重要であり、何より報告書の類は彼の手を経て軍司令部に送られるので、実質的な司令官であるヅガートよりもその目に気にするべき相手に、このようなマズイ場面を見られたのだ。


 が、イリアッシュの悲しみと涙はごまかしようのあるものではなく、弁明のしようのない状況だが、どうにか大事にしてもらわぬようにしてもらおうと、イライセンが口が開くより早く、


「まあ、今回は気にされずともいいですよ、イライセン卿。別段、やっちゃいけないことをやったというわけではないのだから、こちらに無用に騒ぎ立てる気はありません。ただ、今後は充分に気をつけて、私を巻き込むのだけは止めていただきたい。それだけは絶対にお願いします」


「……わかりました。娘によく言っておきます。今回、大目に見ていただいたこと、決して無駄にしませんので、ご安心ください」


 平身低頭して、何度も十以上も若い平民に、ワイズの大貴族だった男は頭を下げる。


 が、イライセンがどれだけ頭を下げようが、温厚なクロックにしては厳しい視線を向け、


「本当にお願いしますよ。若い娘を泣かしたとか、おかしな噂が立ち、それが万が一にも女房の耳に入ったら、しばかれかねないんですから。マジで気をつけてくださいよ、頼みますから」



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