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〜第3夜 夢路〜

目が覚めた時、そこには見知らぬ光景が広がっていた。

いや、知っていたのかもしれない。ずっと昔から、自分はそこにいた気がした。

枕元に手をやると、鈴のようなものが手に触れた。懐かしい感触。しかし、いつもどおりの気がする。


―これで、舞を舞うんだっけ・・・?―


その時だった。


「巫女様〜。」


外から声がした。歌夜を呼ぶ声。歌夜は簾を上げ、外に出た。目の前に小さな少女が立っていた。


「おはよう、沙苗。」


口から自然と言葉が出た。まるで自分の言葉ではないようだった。少女・・・沙苗から視線を逸らし、顔をあげて改めて周りを見渡した。そこには、とても美しいとは言えない光景が広がっていた。

木々は枯れ果て、畑の土は水分を失いひび割れている。行き場を失った動物の死骸。不作のため着物の下から肋が見える村人達・・・。


「行こう。巫女様。‘龍神の滝’の舞台へ!」


歌夜は思い出した。そう、全ては雨乞いのために。この、悪しき状況を取り除くために。

歌夜は巫女としての一歩を踏み出した。


 滝には、すでに舞台が用意され、村人達が集まり始めていた。歌夜は急いで禊を行った。穢れを祓い、神聖な儀へと赴くために。

歌夜は舞台へと上がった。舞台の後ろは、水を失い滝とは言えない様な滝だった。


―私は失った水を取り戻すために・・・―


「高天原に坐し坐して天と地に御働きを現し給う龍王は・・・」


歌夜は祝詞を唱え始めた。と、同時に神楽を舞う。鈴の音が静寂の中響きわたる。


「・・・龍王神なる尊みを敬いて・・・」


―これが私の与えられた役・・・―


「愚かなる心の数々を戒め給いて・・・」


―これが私生きがい―


「萬物の病災も立所に祓い清め給い・・・」


鈴の音と共に舞は激しさを増す。


「祈願奉ることの由をきこしめて・・・」


―私は・・・私は・・・!―


「六根の内に念じ申す大願を成就なさし給えと恐み恐み白す」


―私はここに存在している!!―


舞は終わり、静寂の中に鈴の余韻だけが残っていた。

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