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〜第23夜 聖裁〜


弥娜はその場にガクリと膝をついた。目から涙が溢れ、零れ落ちる。

そんな弥娜を見下ろしながら花与はさらに追い討ちをかけるかのように言葉を続けた。


「世界は冷たいの・・・。私たちを簡単に捨てるわ。信じていいのは自分だけよ・・・?」


「・・・・・・」


「貴女も眠りなさい。闇の中で、自分だけの世界で生きるといいわ。」


「私は・・・」


「?」


「私は確かに独りかもしれない・・・けど、私は世界に捨てられても、私は世界を捨てない!!!」


「私が世界を捨てたんじゃない、世界が私を捨てたのよ・・・。」


花与の顔には怒りと、そして悲しみが表れていた。


「貴女も私も同じ立場・・・だったら貴女が目覚めてくれたら、私は独りではなくなるのに。」


弥娜の言葉に花与の表情に困惑の色が表れた。


「何故・・・?貴女といい姉といい何故なの?私を捨てた世界の一部のくせに!!!」




               *




「夢か・・・」


弥娜は目覚まし時計の音で目を覚ました。あわてて時計を止める。

ふと、手首に目をやると花与が掴んだ痕がくっきりと残っていた。

        



       *





深い闇の中に花与の死体があった。生まれては死ななければならない世の理。

花与の死体の側に一人の少女が立っていた。

17歳。四条歌夜。学生服を身に纏い、眠りについた時のまま。

歌夜はそっと花与の死体を抱き上げ、そして抱きしめた。


「結局・・・生と死を繰り返しても何も・・・生きる意味は分からなかった・・・」


花与の死体が手の中で消える。


「自分だけの世界は自分だけ・・・独りだもの。」


歌夜の足元には今までの“カヨ”達の死体が転がっていた。


「外の世界に出るのは辛いわ。けど・・・あの子なら信じていいかも・・・だから私は・・・。」


突然、歌夜の表情が変わった。


「人は裏切るのよ・・・信じていいのかしら?それに今さら外に出るなんて私のプライドが許さない!!」


もう一人のカヨ。歌夜は心の奥底から自分の望まないカタチでもう一人の自分を生み出してしまった。

・・・つまり歌夜は深い眠りの中で二重人格になってしまったのだ。


「死をもつて生きる意味を知りたいなんて・・・莫迦ね。」


もう一人のカヨは声をあげて笑った。


「私の邪魔をするなら、私自身でも許さない。」


カヨは手を上げ思い切り振り下ろした。


「消えなさい、誰もかれも!!」


暗闇にヒビが入り、歌夜の世界が崩れはじめた。

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