〜第21夜 崩壊〜
尚樹が去ってから弥娜は研究所の一室を与えられ、そこで生活をするようになった。
狭くて殺風景な部屋には生活に必要最低限の物しか置いていない。
弥娜はベットに腰かけ、ため息をついた。
―足りない・・・―
部屋の中を見て弥娜はそう思った。弥娜にとって一番必要で、大切な存在である尚樹はもうここにはいない。唯一の心の支えである尚樹が居ない今、弥娜の心にはポッカリと穴が開いたように、物足りないと感じる様になっていた。
―歌夜はどのくらい深い絶望の中にいたんだろう・・・―
ふと、そんな事を考えながら弥娜は眠りについた。
*
「姉さん・・・居たの・・・?」
「えぇ。」
「なぜ・・・何故、私の中に?けし・・・消したはずなのに・・・イ・・・イヤ・・・」
「・・・・・・。」
「イヤッ・・・幻よ・・・こ・・・これは・・・」
ザンッ!!!
景色が赤く染まった。
*
「!!!!」
血なまぐさい夢を見て弥娜は目が覚めた。暗い部屋の中を時計の弱々しい光が照らしている。それでも部屋の中は暗い。
時計は午前2時をさしていた。弥娜は枕元に手をのばした。
―たしか、この辺に水さしとコップが・・・―
パシッ
突然、誰かに手を掴まれた。突然なことなので声も出ない。
「どう?独りになった気分は?」
そこには1人の少女が立っていた。
年は5〜6才くらいで、背は低く白いワンピースを着ている。何故かこの暗闇でその姿ははっきり見えた。
―生霊・・・なの?―
「貴女は・・・?」
「私はね、花与っていうの。どう?孤独の中にいる気分は・・・変える場所を失う気分は?あはっ♪」
「どういう事・・・?」
花与は弥娜の腕を思いっきり引張った。
「何にも知らないのね。みせてあげるわ。」




