〜第20夜 焦燥〜
ゾフィは、焦っていた。
研究の成果だって、もうすぐ出そうなのに、あんな事を誰かに知られるなんて考えたくなかった。彼女の能力は正直恐ろしかった。このままではバレるかもしれない、いつもそんな事を考えていた。
*
煙草を吸いながら屋上に居る岩乃。フェンスに寄りかかって此方を見ている・・・
「なぁ、研究長・・・やっぱりあの子の夢をぶち壊して早々とこの研究を終わりにした方がいいんじゃないッスか?」
「何を言ってるの?彼女の一族の掟に反するでしょ?」
それを聞いて岩乃はニヤリと笑った。
「研究長・・・本当はあのガキの掟やら何やらはどうでもいいんでしょ?」
「なっ・・・何を言っているの?」
「アンタは自分の研究の事しか考えてない・・・違うか?だって、そうだろ。あんな危険な現象が起きてるのに、この期に及んで人を呼ぶか?普通。」
「・・・・・・・・」
「それとも、これを期にあの一族の研究もするつもりか?」
「・・・・黙りなさい。」
「結局、研究第一ってことなんじゃねえのか?」
「黙れ!!!」
ゾフィの発した言葉は、何故か大きな力となってフェンスを捻じ曲げた。バランスを崩し落下しそうになる岩乃。それでも、落ちまいと必死にしがみついていた。
「うわぁぁぁぁ!」
「そうね・・・確かに私は研究の事しか考えてないわ。だけど、それが何?」
ゾフィの後ろに、あの少女が立っていた気がしたが、岩乃の思考は長くは持たなかった。
ズルッ
落下する岩乃。下から微かに声が聞こえた。
「あのガキも用が済んだら俺みたいにするのかよ・・・研究長・・・」
*
思い出したくもない忌まわしい過去。だけど彼女の能力は私の過去をも暴くかもしれない。
出来れば、研究が終わったと同時に彼女には、岩乃の様な不幸な事故で死んでほしかった・・・・




