〜第18夜 真実〜
「伽代!!」
そこには伽代が立っていた。悲しそうな目で尚樹を見詰めている。
「ごめんなさい・・・私の妹のせいで・・・」
「妹?貴女は何者なの?」
「私は伽代。歌夜より先に生まれて先に消え、歌夜の中に存在する霊魂・・・。」
*
―今から22年前―
伽代は四条家の長女として生まれた。母は伽代を溺愛していたが、伽代は3歳で交通事故に遭い死んでしまった。
その翌年に生まれた子に母は伽代と同じ響きを持つ名をつけた。これが歌夜である。
母は歌夜を呼ぶたびに伽代を思い出し哀しんだ。
その結果、伽代の霊魂は、この世から離れられず、さ迷い続けた。
また、歌夜はそんな母を見て育ったため愛情を感じる事が出来ず、常に寂しさと孤独の中に居た。
歌夜は幼い頃から日常に満足できず、そのまま17歳まで育ち、あの日から長い眠りについた。
歌夜は夢の中で生と死を繰り返し、生きる意味を掴もうとしていた。
そして、そのために生み出した最初のもう一人の自分が伽代である。自分でもあり憎き姉でもある‘伽代’。
歌夜は伽代を殺し、自分の中から消し去ろうとしたが、それが逆効果だった。伽代という名は、この世をさ迷っていた伽代を捕え、伽代を歌夜の夢の中に封じ込めてしまったのだ。
その後、弥娜が夢に介入してきた。伽代は妹を庇い弥娜を夢から追い出していたが、弥娜に敵意が無い事を知り、妹の為にも状況の改善を望み、弥娜に協力するようになったのだった・・・
*
「そんな・・・歌夜の姉だなんて・・・」
「信じられないかもしれないけど私の精神は夢の中の伽代と融合し成長しているのも事実よ。」
尚樹が苦しそうに弥娜の名前を呼んだ。生きている。
「その子を貴女の実家に送りなさい。貴女のおばあさまなら何とか出来るかも・・・。」
弥娜は頷いた。
「一つだけ教えて。何故、貴女は私の事を色々と知ってるの?私の・・・」
伽代の姿が消えた。
「それは・・・全ての‘夢’は繋がっているから・・・。」
頭上から聞こえてくる声はとても優しかった。安心を齎す声・・・しかし嵐の前の静けさの様な・・・。
「お姉ちゃん・・・」
もう一度、尚樹が弥娜を呼んだ。




