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〜第16夜 境界〜



 岩乃は屋上から転落して死んだらしい。屋上にあるフェンスは岩乃が転落した所だけ何故か変形していた。岩乃がやったのだろうか・・・いや、一人の人間が出来るものではない。もっと他の何かが・・・。

そのフェンスの傍にはタバコの吸殻が落ちていた。その事と、岩乃の性格からして自殺というのは考えられない。


―やっぱり歌夜が・・・?―


その後、一人ホテルに戻った弥娜は色々と考え、そして悩んでいた。

ゾフィにはもう一度、夢に潜ってほしいと頼まれたが、死者が出ている為に、自分や弟に被害が及ぶ可能性もある。尚樹の安らかな寝顔を見て、弥娜は、ため息をついた。その時、


「お姉ちゃん・・・」


尚樹が弥娜の名前を呼んだ。寝言だと思いながら弥娜はもう一度、尚樹の顔を見た。それは確かに寝言だったが、どこか様子が変だ。尚樹は寝たまま、更に喋り続けた。


「嫌がってるから・・・潜っちゃいけない・・・やめて・・・」


「尚樹・・・?」


「何を悩んでいるの?潜らないでと・・・言ったはずよね?」


弥娜の背後で声がした。弥娜が振り向くと、そこには、あの時出会った少女が立っていた。


「伽代なの・・・?イ・・・ヤ・・・駄目!弟には・・・尚樹には手を出さないで!!」


伽代は首を横に振った。


「私じゃないわ・・・多分、華世がやってるのよ。私は様子を見に来ただけだもの・・・。」


「華・・・世・・・?だったら止めてよ!やめさせて!!」


「無理よ。それは歌夜自信の意志だもの。」


「そんな・・・でも貴女は・・・!」


「・・・ただ、一つだけ方法があるわ。その子の夢に潜るのよ。」


伽代の口から‘夢に潜る’という言葉を聞くのは弥娜にとって意外な事だった。それでも弥娜は弟を助けるために弟の手を握った。

夢に潜ろうとした時、伽代が弥娜に声をかけた。


「その子の夢は今、歌夜とつながっているわ。だから私も簡単に来れた。それと華世は、甘くないわ。油断しない事ね。」


「何故・・・貴女は私に色々な事を教えてくれるの?貴女は・・・」


「さぁ、何ででしょうね。でも歌夜は・・・貴女の事を・・・」


そう言って伽代は消えた。まるで何か別の力に掻き消された様だった。そして、弥娜も引きずり込まれる様に尚樹の夢に潜っていった。

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