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〜第13夜 異常〜


弥娜はホテルの一室に居た。このホテルは研究所が手配してくれたものだ。それなりに高級な部屋であるが、代金は研究所が負担している。

弥娜はベットに座り、そして、ため息をついた。

不便な暮らしではないのだが、弥娜は何かが満たされていなかった。


「姉ちゃん・・・どうしたの?」


「尚樹・・・」


浮かない顔の弥娜に、弟の尚樹が声をかけた。

尚樹は、まだ小学五年生である。そして‘夢見の力’を持っていない。

本来、‘夢見の力’というものは夢見沢一族の女のみが継承するものであり、男にはその力は与えられないのだ。


「何でもないの・・・大丈夫。」


心配そうな顔をする尚樹の頭を撫でながら弥娜は答えた。


「姉ちゃん、いつもそうやって無理するんだから。俺に隠さなくてもいい・・・言ってくれよ!俺も姉ちゃんの力になりたいんだよ!」


目を涙で潤ませながら自分を心配してくれる尚樹を弥娜は優しく抱きしめた。


「尚樹は・・・友達とか先生とかと離れちゃって寂しい?」


「うん・・・少しだけ・・・」


「帰りたい?」


「ううん。姉ちゃんが一緒じゃなきゃ嫌だ。」


「それは無理よ・・・。」


「じゃあ俺もここに残る。」


尚樹の返答を聞くたびに、弥娜の目も潤んでいった。


「私は・・・私はね尚樹が幸せならそれでいいの。」


「俺も姉ちゃんが幸せならそれでいい。だから・・・そんな悲しそうな顔はしないでほしいんだ。」


「・・・ごめんね。心配かけちゃって・・・」


弥娜は笑顔でこたえてみせた。尚樹は少し安心したようだった。


・・・と、その時、弥娜の携帯電話が鳴った。


「はい、もしもし。」

「弥娜さんですか?山下です。」


電話のむこうの山下は慌てている様子だった。


「どうかしたんですか?」


「それが、またポルターガイストなんです!」


「!!!」


「歌夜の体の周りの気温が異常に高くて・・・それに煙も!」


「煙?!」


「ですから、すぐ来て夢に潜ってもらいたいんです!」


「わかりました・・・。すぐに行きます。」


そう言って弥娜は電話をきった。すぐに支度を始める。


「姉ちゃん・・・」


「大丈夫。すぐに戻るから。」


心配する尚樹を残し、弥娜は部屋を後にした。

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