〜第12夜 決断〜
弥娜の家、夢見沢一族は代々、‘夢占’や‘予知夢’、‘夢潜り’などを行い影ながら人々を支えてきた。
一族には昔からの掟がある。それは“自ら名のるべからず、必要とされしとき赴け”というものだった。
普段は普通の人々と同じ生活を送り、必要となった時は人々のために動けという意味だ。
しかし、ここ何十年も“夢見の力”は必要とされていなかった。
弥娜にとって、この科学技術の発達した時代に自分が必要とされるなど、覚悟はしていたが、意外なことだった。
「貴女に夢に潜ってもらい、どんな夢を見ているか、見てきてもらいたいんです。もしかしたら眠り続ける原因がわかるかも知れない。」
「でも・・・彼女はそれを嫌がっているんですよ?」
「何ですって?!」
「ここに来た時、『来ナイデ・・・邪魔シナイデ・・・』っていう念波が伝わってきて・・・」
その時、応接間の扉が勢いよく開いた。そして、弥娜のみたことの無い男性が入ってきた。
「だったら、夢を壊しちまえばいいんじゃねえのか?」
「岩乃・・・聞いていたの?」
「ああ。彼女は夢の中に誰かが入ってくるのを嫌がってる。だったら、そこの小娘が彼女の夢に潜って、彼女の夢を壊せばショックで目覚めるだろうよ。」
岩乃とよばれた男は弥娜を睨みながらそう言った。
「夢を壊すなど、一族の掟に反します!!」
弥娜も負けてはいなかった。岩乃を強く睨み返す。
「ふん。目覚めるならいいだろうが。ケッ、これだからガキは。」
「やめなさい、岩乃。でないと・・・」
「はいはい。研究長。分かりましたよ。でないと、クビにされちまいますからね。」
そう言って岩乃は部屋を出ていった。
「ごめんなさいね・・・でも私たちは、貴女の一族の掟に反する事をさせるつもりは無いわ。」
ゾフィは優しく弥娜の肩をたたいた。
「どう?協力してくれるかしら?」
弥娜はコクンと頷いた。弥娜の目にはまだ、不安の色が浮かんでいた。
「今日は、潜れるかしら?」
「いえ。今日はちょっと・・・無理です。明日なら・・・。それに弟が待ってると思うんで今日は帰らせてもらえませんか?」




