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魔奏楽章

作者: 背徳の魔王
掲載日:2013/05/16

この作品ゎ中学生の頃、書いた物を、少し書き直した物です。拙い物語ですが、懐かしく、思わず載せてみました、背徳の魔王が贈る。始まりの小説。閲覧されることを祈って。

━━プロローグ



世界は、魔族の猛攻により、大陸の半数が、奪われた、そして人間は、魔族の奴隷とされる。



暗黒の時代━━



大陸から、遠く離れた島がある。ほんの小さな島国は、神代の時代から、竜に護られ、竜と共に生きる島がある。それがトレノと呼ばれる島国である。



子供の頃━━、



窓から見る世界が、全てだった……、狭い世界から、大きな世界を見ると。

元気に走り回る。同じくらいのお友達が、羨ましかった……、

気管支が弱い僕のため、東大陸よりも、魔力の濃い、トレノ火山島に移り住んで数年……、大陸にいたときより、楽になった気がする。大陸の殆どは━━、魔族の飼う、魔獣が吐き出す。魔気により、大気が汚染され、多くの人が死んだ……、イオリは、東の大陸から、両親に連れられ、トレノに移り住んだ、理由はイオリの母が、トレノの竜騎士だったから、父は魔法使いだったが、吟遊詩人として生計を立ててた、父が身体の弱いイオリの為。リュートを教え、


歌を歌わせたのは━━

今なら判る━━。


……僕の事を思って………、


ただただ僕は、嬉しくて、自分にも出来ることがあると知り、暇を見つけては、夢中で、リュートを奏で、歌う日々が続いた、


そんなある日━━。

「素敵な、お歌ね」

窓越しに、赤毛のお下げが跳ねた、イオリはびっくりしながら、窓の外を見ると、鳶色の目が、優しく笑いかけていた、胸がきゅっと、締め付けられ、僕の心臓が、壊れたのかと錯覚した。

「……………」

息すら止めて、彼女を見詰めていた……、僕の大切な幼なじみ……エルノア、初めての出逢いだ。


エルノアは、母の生徒として、竜騎士を夢見る。見習いの1人だった……。母はトレノの生まれで、優秀な竜騎士だった、魔族大戦の怪我で、竜から降りた、死にかけた間際。イオリを授かり、飛ぶことで、命を失うことが、怖かったと母は涙した、この時━━僕が、母から聞いたのは………、

怪我が原因で、飛ばなくなったと言ったのだ、本当の事を知らなかった僕は、素直に聞いていた……、

母はとても優しい先生だった、窓の外から、何時も笑顔があったから、羨ましい。いつも思ってた、僕の世界は、窓の内側だけ、悲しそうな顔を、僕はしてたのかな?、父さんは生徒が、来てる日に、僕に新しい歌や物語を聞かせてくれた、いつしか僕は淋しさより、

リュートを奏でながら、みんなを見てることが、好きになっていった……。

だけど……僕の身体は、普通の子より弱いから、あんな風に、走ったり、遊べたらな……、毎日夢想しては、歌を紡いだ。



瞬く間に、12年の歳月が過ぎ去った……。

母と父は、数年前。相次いで他界した……、大戦で受けた魔素が原因だったのだ、母は、僕と少しでも過ごしたいから、竜騎士を辞めたと……、デニスさんから聞いた、両親が残したこの家と、母の愛、僅かな財産、そして父のリュートが残った……。




━━第1楽章━━




軽やかな調べ。

指は、まるで絵画を描くように。音は紡がれ、様々な情景、勇壮な勇者の物語、悲恋……。



そして胸踊る。冒険の数々。トレノにある。小さな街の酒場から、様々な楽器の音楽が流れる。

日々の生活の疲れ。仕事帰りに一杯、楽しい一時を過ごせる場所。そんな酒場で、演奏するのは、トレノで指折りの天才吟遊詩人イオリ・サカモトである。流れるような、指先は音楽に、命を与え。愛されてると錯覚させ。甘く優しい声に、聴き手は魅了され。癒される。


すらりとした細面。色白で、トレノでは珍しい黒髪。甘い歌声と、同じく切れ長の眼差しに見つめられ、自給の女性が頬を染めた、とても繊細に、弦を鳴らす。



イオリに纏わる逸話がある。


一夜一曲……。


疲れた日、悲しい時。仕事後に、イオリの歌を聞きたくなるのだ。何度聞いても飽きることはない、老練と言えない歳ながら、イオリは世界中を旅した父から、水を得た魚の如く、大陸中の物語を教わった、身体が弱く。家にいることが多かったイオリは、父の語る。世界中の物語、伝承、冒険箪、悲恋の物語だけが、寂しさ、辛さを慰めたのだ、そんなイオリだからこそ、聞く者の為。心を込めて歌った━━。

イオリはその若さで、知らぬ物語は無い。そう言わしめる。語り部であり、


例え毎日━━、


一年通ったとして、同じ歌が聞けるとは限らない、深いこだわりがイオリにはあるためで、トレノに住む吟遊詩人の多くは、イオリのこだわりを認め。彼ほど、物語に愛された語り部はいないと。公言する。



17年前━━起こった大戦……。



魔族の王率いる。軍勢は、突如現れ、世界中の国々を、混乱と戦乱に落とした……、


僅か半年で、世界は魔族の放った、兵器により。人の住めぬ。汚染された土地を、産み出した……、


その日……、



多くの人間が死んだ、作物も育たぬ……。死の土地を前に、生き残った人々は、絶望した━━、


しかし英雄王と呼ばれた、王だけは、頭を垂れず。諦めることなく、前を向き突き進んだ、かの英雄王の元、生き残った力ある。魔法使いは集まり。そして………。


魔族の住まう汚染された土地を、隔離することに成功した、後に……、人々は魔族大戦と言う。災害である。


東の大陸含め。南に位置する。僅かな大陸だけが、人間の住む大陸である。

トレノは東の大陸から、船で5日程度離れた。世界の境界に、最も近い場所にある火山島━━


それが……。竜の国トレノである。


竜の国と呼ばれる由縁は、竜の巣が、島中に存在して、全ての属性の竜王が、居を構え。住み着いていると言われていた。知ある竜が、不思議とトレノに多く、トレノで生まれた人間は、生まれた瞬間から。竜に選ばれる運命に、あると言われている。竜には、目的があるのだと初代トレノ王は、残しているが、竜は語ることはない……。

世界の運命を背負う残された人々。竜騎士は、人々を守るため現在は存在している。それがトレノに生まれ。育った者の宿命━━悲しい宿命である。


隔離された世界で、未だ現れる。魔族と戦う力を持つ竜を従えし者。敬意を込めて、竜騎士と人々は呼んだ、残された世界では、竜騎士を育て、隔離から抜けた魔族と戦う軍事力を有する。トレノの竜騎士は、残された大陸中を守ると言われた、絶対的な守護者である。


夜半、イオリは仕事を終え。白ばみ始めた空を見ながら、帰路についた━━━、


あれはそう……。イオリの運命を、変えたのは、両親が死んで間もなくのこと、今日のような明け方だ━━━、

……控え目なノックの音、微睡みにいたイオリはフッと、目を覚ました、気になったのだ、肌寒さを感じる夜明け前。戸を開けると、不安そうな顔、今にも泣きそうな顔をした、幼なじみエルノアが、立ち竦んでた。イオリは不安を覚えた、聞いてはいけない。そんな予感を覚えたが、不安に押し潰されそうな、大切なエルノアを放って置くなんて、出来る筈がなかった、だから部屋に招き、ホットミルクを入れて。

「どうしたエル?」マグを手渡しながら、なるべく軽い口調で尋ねた。クシャリ……泣き笑いのような顔……、エルノアは言った、

今も忘れることなんて、出来やしない。大切で、大好きなエルノア━━。

彼女の美しい顔を、 見とれない日は、無かったから、

「竜に選ばれた━━━」

とくん。


脈打つ心臓。エルノアの言葉。話……。全て、何処か遠くの話のように……、信じたくない、虚ろに聞いていた、力なく……、


エルノアは翌朝━━。王宮に呼ばれた。エルノアを選んだ竜とは……、神竜王バウゼル。5の竜王を統べる。神のごとき竜。長きトレノの歴史で、神竜王バウゼルに選ばれたのは、初代国王以来である。王宮は、蒼然となった、



そして………、



レイ・トレノ皇子と婚約が、発表された……、


悪夢………、そうとしか思えない、でも現実。エルノアは僕の為に、神竜の騎士になることを選んだ、エルノアはあの日以来……、


イオリの前から消えた。エルノアの両親は、喜び勇み、街の人々は祝福した、遠く、遠く、疎外されたように感じた……、


そして数日後。言葉を交わすことなく。王宮のある。港街に、エルノアは両親と移り住んだ……、


あの日の━━。悲しみを持ってイオリは、見送った、自分の不甲斐なさを噛み締めて……、



二年の歳月━━。



イオリは17となり。吟遊詩人としてデビューを果たす。風の噂で、エルノアは東大陸の魔族の群れを一掃。たちまち神竜王バウゼルの乗り手の名は、知れ渡る。


上着の洗濯を済ませ、朝食に近い、夕食を取り、今日は休むことにした。明日は……、街で一番大きな酒場に行くことになっている。


昼近い時間に目覚め、顔を洗い。手早く食事を済ませ。麻の袋から、リュートを出して、手入れを行う。今夜は大きな舞台に立つから、痛みの出てる。弦を、新しく張り直して、慣れた様子で、調律を済ませる。


さらに木箱を出して、母の形見のチェロを大事に磨いて、そっと木箱に仕舞い。麻の袋に入れる。イオリは、語りと、歌、音楽で、楽器を使い分けるのだ、チェロは、セッションする可能性がある。大きな店に行くとき持ち歩く。月に二度、街で一番大きな酒場に呼ばれるのだが、それだけ他の酒場で演奏するより実入りが、格段に違う。切り詰めた生活をするイオリには、とても有り難く。助かっていた、


何せ竜の国で、竜に関わらず。生きるのは、とても大変で、なるべく。両親の残した金銭に、手をつけたくない、何があるか解らない情勢。いずれトレノから旅立つことも視野にいれたら、腕を磨かなければ、生きていけない。金をいくら節約して、生活するのも仕方ないのである。


いつの間にか、夕方になり、店に向かう時間が迫った、外に出ると路面が、濡れてる。雨が降ったのか?、まるで気付かなかった、両親が死んで、自分の足で、歩くようになってから、窓を、開けることはなくなった、気付かなかったようだ、西日で、束の間日差しが強くなるにつれ。徐々に、暑さを感じる。溜め息が出る。


いくら火山島でも、一年中暑い訳ではない、初夏が近い。もうそんな季節か……。トレノは竜騎士の国として有名だが、温泉目的に、沢山の将兵が、毎年訪れる。竜の温泉は、怪我に抜群の効果があり、わりと有名で、港街から馬車も出ている。火山に近い湯治場では、様々な国の将兵が、見受けられるほど、


火山島トレノ=東大陸間。月に二度、船がやってくる。王宮のある港街は、イオリが住む、東の街からかなり離れていた、さらに街の東にある。ここからも丘の上に。見える灯台があって、彼処に海竜の巣がある。あの灯台は、船のためにあるのではなく、夜目が、利かない。飛行竜のための。目印とされている。


トレノ火山、西にある。竜の塔、灯台を三角形の先端に、地竜騎士の駐屯地がある。それらを目印に、夜間飛行の訓練は、なされてる。鳥かっと?、夜空を見上げてると、見間違いするが、夜飛ぶのは、わりと竜の場合がある。住人にとって見慣れた光景だ、


竜種は、大きく二種に分類される。翼竜種と飛竜種である。翼竜種は、長時間の飛行に優れ、知ある竜が多いが。気難しい気性だ、母の受け売りだけど……、


飛竜種は、長時間の飛行に向かないが、身体は大きく、攻撃的で、乗り難しいが、一度主と竜が認めれば、従順であるため、竜騎士の多くが、飛竜種に乗っている。ここから見える灯台。あの下には、岸壁に囲まれた、海岸と竜の産卵場があるが、入り組んだ洞窟が、岸壁と波間にあって、入江と繋がっている。それは飛竜種ながら、海中を得意にしてる竜がいる。海竜と呼ばれる珍しい竜で、飛行も可能だが、海中での戦いを得意にしてる。竜に都合がよい場所だ、あの灯台は、珍しく数も少ない海竜の騎士が詰める。駐屯所になっていて、こじんまりして見えるが、海側から見ると。岸壁に見えるが、ちょっとした要塞になっている。母の竜は、翼竜種で、西の竜の塔に、いまもいるはずだ…………。イオリは母に内緒で、母の竜の元に、何度も行って、遊んだ事があった……、もっとも……、冒険と証したエルノアに引きずられてが、正解だけど、


トレノの国では、10歳になると竜騎士に連れられ。竜の産卵場を巡る。5つある産卵だが、人間が足を運べる産卵場は3つだけで、残り2つは、何処にあるのかすら、知られていない。母に連れられ、イオリも海竜の産卵場を、訪れた事がある。身体の弱いイオリは、一ヶ所だけだったが、別の日。


エルノア達を連れた母は、帰宅するなり、興奮したように、エルノアを自慢して、イオリは話を聞いた、彼女は火山の麓にある竜の産卵場。灯台の海竜の産卵場、竜の塔にある。産卵場の三ヶ所を訪れ。エルノアが入るなり、一斉に、若い竜が注目して。母は驚いたと言う、興奮したと言ってよい。イオリが入ったときは、小さな幼竜が、やたら甘えてきたが、それだけで、竜になつかれるのは、母の騎竜から、予想はついてた、他の生徒達も、若い竜に興味を持たれたと、嬉しそうに笑ってた。


━━大通りに出る。今までと、人でが違った……、夜になれば、客層が、変わって来るだろう、店に夕闇の中。明かりが、次々に灯る。


顔見知りの店員に挨拶して、裏から、楽屋に入るなり。隣の楽屋から賑やかな笑い声が聞こえた、今日は、評判の歌手が、呼ばれてるのかな?、常駐してる。顔見知りの演奏家と。挨拶を交わして、イオリは今日呼ばれた5人の内。3番目の順番となると説明を受けた。


街一番の酒場、竜の息吹亭は、テーブル席から、奥の舞台を、見るような造りになっている。この店は、舞台上の演奏や、芸人のパフォーマンスを見聞きしながら、高価な酒、流行りの東大陸の最新料理を、食べる事が出来る。高級酒場である。


テーブルは全部で、20もない、会員制で、客の多くは、羽振りの良い商人や、街の有力者の子女、子息、両親に連れられ、興奮気味に、待ってる姿がちらほら。


娯楽の少ない島では、わりと目にする光景である。各20席のテーブルは、フカフカのソファーが、横並びに半円状に並び、舞台を見ながら。異国の料理を堪能。する。パーティー会場と若い支配人は、笑いながら語っていた、まだ晩餐には早く。今少し開演まで時間があるから、食事は、比較的軽くつまめる物と、連れと会話を楽しんでる様子だ、

舞台袖から、二階にの客の顔は見えないが、2席の特別室。個室が用意されている。舞台の正面の特等席であるため。

非常に高額である。一晩楽しむだけで、楽に一般人が、数ヶ月暮らせる金額がするのだが、埋まってるようだ……、恐らく……貴族、それに準ずる。地位にある特別な客なのだろう、それだけの特別室だから、現金で払うことはまずなく。予約した貴族なり準ずる。屋敷に使用料を請求するシステムがとられている。今日も満席の様子に安堵して、イオリは着替えに楽屋に戻る。そこにイオリを見つけ、声を掛けて来たのは、

「やあイオリ、今日はよろしくお願いするよ」

「こちらこそ、盛況でなにより」

にこやかに挨拶を交わした相手。

この酒場の若き支配人……、イオリの幼馴染みであり。数少ない友人のユノ・ロイベルトは、くすんだブロンドを後ろに撫で付け、貴族の好むゆったりしたシャツを。わざと着崩して、胸元を半ばまで開けて、細いズボンで押さえる。フッとベルトに目が行く。竜革のなめした光沢のある。火竜の赤革が、アクセントに精緻な、銀細工の翼竜が、小さくあしらわれ。ユノのセンスの良さが伺えた。お互い、作ったように、挨拶を交わして、小さく笑う。ユノの鼻がピクピク。笑いたくて仕方ないのだろう、見掛けはミステリアスな美男なのに……、


極度の笑い上戸。仕事の場だけ、演奏家と雇い主を演じることにした。子供の頃から、見た目は良いのに……、残念なユノそう言われている。女の子からは残念ゆえに、あまりモテない。悲惨な幼少期を過ごしたのだが、打たれ強い、タフな性格で、

ユノ曰く。ピエロになりたかったと言う、変わり者だ、他の実演者と挨拶を交わしてる様子を横目に、着替えるため楽屋に戻った━━。


舞台に立つため。派手な、出で立ちの衣装に着替え。舞台袖で待つ合間、新人歌姫のステージを観覧した、


━━蠱惑的な際どい。胸も露になりそうな衣装と、アップテンポの曲がマッチしていた。魅せると言う表現が、ピッタリくる。彼女のような新人は意外と多く。直ぐに飽きられるため。長続きしない。見目に騙される。パトロンを引っ掛け、直ぐに彼女も消えるかもな……、嘆息しながら見てれば、御曹司らしい、仕立ての良い服を着こなす。客が、彼女の狙いらしいな、呆れたように首を振りながら、彼女に興味を無くし出番を待った、



竜の息吹亭では、演目として、お抱えの熟練演奏家、パフォーマーを後半に回して、比較的新人を最初に回すことが多い、理由は、名が売れてるが、名前だけって場合がある。怖いのは……、実力がともわない場合。実力を知ってる。出演者を真ん中にして、新人が失敗したとしても、熟練した、歌い手ならば、挽回可能だからとの配慮で、イオリも熟練者として招かれているから、後半の演奏家とセッションも毎回頼まれる。その為。一回の出演料は、割増される。



━━━手品が終わって、程よく、熱が入ったような熱気の中。

竜の息吹亭の若き支配人である。ユノは、魔法のマイクと呼ばれる。風の魔法が使われたアイテムを手に、

「続きまして、我が国が誇る。若き天才と名高き、イオリ・サカモト。今夜は我が店に登場です」深々、舞台袖いるのに役者のような、絵になる一礼である。ざわめき……、

期待に満ちた人々の眼差し、徐々に小さくなる頃を見計らい、リュート鳴らす。静かに奏でる旋律。耳に、余韻が残るよう、心に染みる。不思議な感覚を、イオリは与える。お客の年齢。話をしてるか、料理を食べてるのか、ざっと見渡して判断したのは、舞台に注目してる客が、とても多いと言うこと、ならば……、

「時は、始まる……。剣の時代」

このフレーズから、入る物語は、12王の始まりの物語━━。誰もが一度は、耳にした有名な物語。それ故に。語り部の力量が、試される。



だから、目の肥えた客は、驚いた。



語り終わった瞬間。いつまでも拍手が鳴り止まない。イオリは若いが、凄まじい力量に、目の肥えた客も惜しみ無い賛辞を贈る。イオリは一礼して、舞台袖に下がった。

「続きまして、我が国が誇る姉妹。カロン&マリア嬢」

憂いを湛えた、泣きボクロが、とても印象的な姉のカロン、美しく伸びのある歌声を、披露した瞬間、妹のマリアが、情熱的なダンスで、情愛や悲しみ、怒り、喜びを表す。


後半の出番まで、時間があるので、喉を潤すのに、カウンターで、果実酒を頼む。

顔馴染みのバーテンは、一つ頷き、出演者用の。鉄製のマグに薄めの果実酒、炭酸水で割った物を好むのだが、バーテンはイオリの好みを覚えてくれてたようで、顔を綻ばす。

「ありがとう」礼を述べ。冷たい酒で、唇と喉を潤わせた、フッと目の端に、何人かの女性が、此方を見てきたので、出演者として、客に精一杯楽しんでもらいたいから、笑みを向ける。何故か黄色い悲鳴と、赤毛が印象的な女の子が、真っ赤になった、

どうしたのかな?首を傾げるイオリに、バーテンは訳知り顔で、呆れたように苦笑して、楽屋に戻るイオリを見送った。


後半の演奏が終わって、ユノが、沢山の袋を箱に入れ、出演者に手渡しで出演料を渡して行く。最後に、イオリの番で、ずしりと重い革袋、かなりの重さに……、目を丸くする。肩を竦めながらユノは、

「そろそろ考えたかい?」以前からユノには、専属の演奏家にならないかと、誘われていた、

「僕の力量では、まだ早いよユノ」

にこやかに、やんわりと断りを入れる。

これには、苦笑を隠しきれず。

「まったく……、自分のこと。知らないのはエルノアとどっこいだな」

嘆息され、何と無く馬鹿にされた気がして、憮然と口をつぐむ。

「はあ~やっぱりか、相変わらず世間とずれてるな君は」

大業に、役者のように嘆くユノ、なんとなく不安になった、「トレノで、神竜バウゼルの相棒、閃光の竜騎士エルノアなんて言われて。注目の的なの知ってるよな?」

それくらいは、噂話に疎いイオリだって知ってる。馬鹿にするなよ。と、膨れっ面で首肯した、

「お前が、エルノアの恋人だったと噂されてるのは知ってたか?」

今日の客の半分は、噂の元恋人を、一目見ようと、物見遊山な金持ちばかりで、来ていたのだが、イオリの見事な演奏に、パトロンになりたいと申し出があった、イオリには言わない、ユノの所で止めてる。本物の天才たるイオリは、パトロンに囲われたら、類い希なる才能を、駄目にされかねないから、うちの専属にならないかと、誘うのだ、長年付き合うユノだから、理解出来ることもある。


━━━本当はイオリの才能を守る。意味もあるのだがな……案の定。戸惑った顔を見て、

鈍いなこいつは……、昔っからな…、諦めたように吐息を吐いた、気付いていやがらないのだ、

「相変わらずだな~、お前は有名人なんだよ。知らなかったろ?」

俺の苦労も知らないのだろうな、つい真面目な性格なイオリを、虐めたくなる。素直で、人を信用し過ぎるイオリ、だからて訳じゃないが、からかうのは楽しい。コクコク頷いた、

「うちのバーテンから聞いたが、お前をやたら見てた、子女のグループ覚えてるか?」

「ああいたね」

覚えていた、別段珍しいことでないので、その程度の認識である。

「だぁ~、そこまでいくと、犯罪だぞイオリ」

頭抱え、身悶えするユノ。物珍しい。生き物を見るようなイオリに、殺意すら覚えたが、話が先に進まない。イライラするのを我慢して、

「あの子達の目的は、イオリお前だ、お前を見に来てるファンなんだよ」

いい加減気付け。鈍感、エルノアだってお前に気があったのに、気付かないのだ、鈍い程度は、男ならあるが、

「ちょっと酷いな……」

ユノは疲れてたのもあったから、フッと目の端から、舞台袖が見えた、先ほどの女の子達が、まだ出待ちしていた、噂のエルノアは、皇子と婚約してるが、あくまで婚約者の1人である。何人かいる候補にしか過ぎない。

「二人ともな~。ん?待てよ」

悪巧みを考え。それを熟考して、自分も楽しめるか、にやり不適に笑うと、早速行動に移した。

「イオリちょっと待ってろ」

「えっ?ユノ」帰り支度してたイオリを残して、出待ちしてる。彼女達の元に急いで、何やら話し込んでるのが見えた、時折━━チラチラこちらを伺い。

「ええ~それって、本当何ですか?」

「信じられません!」

なんて聞こえて来た。あの赤毛の女の子が、真っ赤になりながら、頷いた、何を話してるのやら、ユノが、意味ありげにウインクして、イオリを手まねく、訝しげに見てたが、何となく興味が持てた、だから素直に彼女達のテーブルに近寄ると。赤毛が、印象的な彼女と目が会う、すると彼女は、恥ずかしそうに、はにかむ姿が、目に入った、

「あっ、可愛い」

思わず。思ったことがぽろり。ますます赤くなりながら、嬉しそうに笑った顔が、とても印象的だった、



━━━気だるい。心地よい疲れ。人肌の温もりは、安心感を与え。深い眠りの底で、微睡んでいると、

むず痒い何かで、顔、鼻、喉、首筋をくすぐられる感覚があった、

「ん?」

目を開けると、藍色の美しい瞳、柔らかい赤毛が目に、柔らかな、胸元に目が行き、愛しさを覚えた、


彼女の裸体が目に入り。夕べの事が思いだされる━━━。


彼女達と近くの店で飲んだのだが、いつの間にか、彼女以外いなくなってて、酔っぱらった彼女を、残して帰る訳にはいかない。妙に律儀なとこがあったイオリは、彼女を送ることにしたのだが……、困った毎に。なかなか目覚めない、ようやく彼女の家についたのは、辺りが白ばみ始めて………、安堵したイオリは酔いもあり、足を滑らせ、ベッドに押し倒すような格好に……。それから……、


夕べの甘い一時が、思いだされ、そっと彼女を抱き寄せると、嬉しそうに、イオリの胸に頬を付け、求められるまま、彼女を求めた。


どの位……寝てたか?、カーテンの袖から、見える日差しで、だいたいの時間を予想する。

「夕方まで、間もないな」

小さな寝息が、腕の中から聞こえる。

彼女を起こさないように、枕にしてる。腕をそっと抜いて、下に落ちてた、衣服を身に付け、手紙をテーブルに残して、買い物に出た、

「ここは……」

彼女の住居から、一歩通りに出て、気付いた、彼女の住まいは、翼竜通りと呼ばれる。竜騎士の住む場所だ、

「では、彼女も竜騎士か?」

あまり馴染みのない、商家が並んで、イオリの住まいがある。灯台の商店より品揃えが良く、値も安い。魚を扱う店まであり、新鮮な魚を選んで、包んで貰う。

保存のよいチーズと焼きたてのパン屋を売る店で、パンとワインまで売られてた、何本か、買ってから、帰路に着いた、


翌日━━。


いつものよう、イオリのホーム。火山亭に顔を出すと、店の様子が、いつもと違っていた、

火山亭は、漁師や商店で働く近隣の住人が、毎日寄る。大きな店ではないが、良心的な価格の懐に優しい。地域のお店である。

「やっと来たのかいこの子は?」

どっしりした腰に、分厚い手を乗せ立つのは、火山亭の名物女主人デニス・ハウレイさん。母の友人で、同僚だった人だ、豪放楽々な、大雑把な性格で、火山亭の料理は、デニスさんの性格が、見事に反映された料理が多い。中でも壁にでかでか書かれたメニュー。肉、沢山肉、塊肉てメニューを、メニューと呼べるか、疑問である。好奇な、視線を感じ。そちらを見れば、場違いな女の子のグループを発見。最近見なくなったのだが……、

「船が、昨日着いたそうだよ」訳知り顔のデニスさんは、エルノアの剣の師匠でもあった、 噂の竜騎士エルノアの事を知りたがる。夢見る子は、多い。

「腕っぷしが自慢の男は、全く……」

女の子グループに押しやられ、隅で小さくなる漁師達。女将に睨まれ小さく見えるから、いかに女の子達の勢いに、弱ってるか判る。この界隈で、デニスさんに、口答え出来る人間は希だ、国王ですら、デニスさんを苦手にしてる位だ、

「ほらイオリ、さっさと始めな!。一応あの子達も客だ、恋の歌でも聞かせて、さっさと帰しておくれ」

「はいはい、仰せのままに」

小さな店に、ステージや舞台はない、古びた使われないテーブルが、イオリの舞台で、壊れそうな椅子がステージである。椅子をずらして、テーブルに、チェロをしまった木箱を取り出して、デニスさんに目を向けると、懐かしそうに目を細めた、


チェロの伸びやかな旋律。浮わついてた女の子達は、戸惑った顔をしてたが、徐々に、息をつめイオリの演奏に、言葉を失っていた……、

場が、暖まったと見計って。リュートを手に、余韻に、我を忘れる女の子達の為━━。

「そは、歌う……、忘れ得ぬ彼女の名を、そして……、始まった」


その昔、大賢者イザノフが、ただ一度。愛を誓った女、彼女は……天から堕ちた、堕天使。悲しくも勇壮な誓い。彼女の為、イザノフは困難の旅に出た、


堕天使たる彼女を、自分たちに、置き換え。うっとり目を細め聞き入る。女の子達の惜しみ無い拍手は、吟遊詩人にとって誉れである。深々一礼して、

他の客のため、サーガを語る。イオリが最初に覚えた。草原の国マイズ。今は失われた大陸の初代国王の波乱に満ちた、始まりの物語。

かの王は、賢者イザノフの孫であり、重責に、何度も押し潰されそうになった苦労人だった、


酒場に寄る。労働者にとって、日常全て、苦労がある。忘れてはならない、彼等の見えない力こそ、宝と、かの王は、言った。

語り終わると、男達の啜り泣き、拍手が苦労を忍ばせた。


いつの間にか……、客が増えてきた。

「あっ………」

イオリの前のテーブル、赤毛の彼女が、小さく手を振っていた、昨日のこと、思い出して、ほんの赤くなる。無視する訳にはいけないから、思わず微笑しながら、小さく頷き合図した。手紙にこの店にいると伝えていた、何か思惑があった訳ではない、

次は、女の子達の1人から、リクエストが入る。

海に住む魔物にセイレーン、そんなセイレーンの王女が、人間の魔方使いに恋をした、種族を超えた悲恋をイオリは、時に歌い、物語を紡ぐ。


最後に、竜騎士見習いの、失敗談で、笑いを得て。前半の終わりとした。

デニスさん自ら、冷えた果実酒を届けにきて、上機嫌に笑う。

「ご苦労さん、良かったよイオリ」

「ありがとうデニスさん、嬉しいですが、父の域には、まだまだですよ」

喉を潤すイオリに、呆れ顔を隠さず。

「あんたは……、ミサカに似てきたわね」

それについて……、否定出来る自信がないかな……、父にも良く言われたから……、

「一休み終えたら、もう少し頼むよ」

デニスさんは、仕事に戻った




後半は、景気の良い。お祭りの歌を皮切りに、皆で歌える。暑気払いの童歌。そして……、魔族大戦で、英雄王と名高い、ヨシュアの傭兵だった頃の話。かの英雄王ヨシュアは、知ある氷の竜を使い魔にしてると、言われていて、竜の国トレノ以外で、竜騎士は存在しないが、ヨシュアだけは竜騎士と認められている。希代の英雄である。

割れんばかりの拍手、イオリは一礼して、満足感に包まれていた。酒蔵を預かる。初老のバーテンが、カウンターに寄ったイオリに、冷えたエールを出してくれた、喉の渇きに、ありがたく頂く。

「おや?あんた……確か」

「あっ、お久しぶりです教官」

近寄る。デニスさんに気付いた赤毛の彼女は、慌てて立ち上がる。

「そうだ……メリー、確かメリー・エルメアだったね?」

「はっはい!」

恐縮したメリーとデニスさんは知り合いなのか?、訴えるメリーの女の目に、ハハ~ンと納得した、

軽食の乗ったトレイをメリーに渡して、

「頑張んなメリー」

「はっ、はい」

恥ずかしそうな、それでいて、嬉しそうにイオリを見てきた、

「可愛い……」後で聞いたら、メリーは、母の生徒で、エルノアやユノと見習いの勉強してた仲間だったと知る。ユノは気付かなかったと肩を竦めてたが、イオリのことも前から、知ってたらしい……、

デニスさんは母と一緒に、武器の訓練を手伝ってたから、それで教官か……、

「イオリ帰ろ」

はにかむ彼女に、仕方なく、出された手を、拒む理由は、見付からない、


「帰ろっか」

「うん」

「おやおや熱いね~!あのメリーがね」

散々からかわれ赤くなる二人を、優しく見送る。


━━デニスは友人の子が、すっかり大きくなったことに。寂しさと嬉しさから、ようやくもう1人の母として、肩の荷を下ろしたのだ。

デニス・ハウレイ━━、

魔族大戦で、イオリの母ミサカ小隊、最後の隊員である。




━━━第2楽章━━━





イオリの生活は、変わった、メリーの仕事がない日は、イオリの仕事終わりの時間に、わざわざ迎えに、来るようになった。ユノ曰く。イオリもようやく恋愛出来るようになったか、楽しそうに笑うのだ……、むかつく奴だ、メリーの家に泊まる日もあるが、最近はイオリの家に、泊まる。


そこには……切実な理由があった………、メリーはそれなりに、家事をこなせるが、料理だけは、壊滅的にだめで、 彼女が、手料理振る舞うからと休日、お邪魔した時出されたのは……、溶岩のように赤い煮込みスープ、岩石並みの黒い物体、異臭のするスイーツ……、

「初めて作ったから、自信無いけど、食べて」

はにかむ彼女には、正直悪いが……、冷や汗が止まらない、これは本当に食べ物だろうか?。恐々……一口食べて、意識が遠退くイオリ、痙攣しながら、倒れた、



メリーは血相変えて医者を呼んで、診察受けたイオリの症状を見るなり、

「解毒が必要だね」

言わしめたのだ、彼女は涙ながら謝ってきた、危うく殺されかけたイオリだが、彼女が用意したのは、ごく普通の材料だった……、医者は戦き。

「君は、二度と料理しないように、いいね?」

「はっ、はい」

きつく医者に言われ、消え入りそうな声で、情けなさそうに恐縮する。まさか……彼女の手料理を食べると、命に関わると知ったイオリは、自分で作るようになり、道具の揃ってる自宅のが、より美味しい物がつくれるから、必然的に、イオリの自宅で、過ごすことが増えたのだ、戸惑うことが、とても新鮮で、1人でいることの寂しさを、イオリは忘れられた、



━━━竜の塔、



火山の西に位置していて、港街を、一望出来る。小さな山の山頂に作られた。竜の産卵場がある。


一年中……、季節風が通り抜ける。竜の塔は、風の属性が、最も強い場所である。翼竜の中でも、風を司る。長距離の飛行が得意とした、竜騎士が、在中していた、

「今週非番なんだけど……」付き合うようになって半年、甘える仕草で、お願いされたら、頷くしかない。

色々話した結果、二人は、湯治場の村アザンへ、行くことになった、


火山の麓━━━。


竜の産卵場から、アザンの村は、温泉をひいている。理由は、竜の使う温泉は、特別強い効能を得ると分かって。村中温泉を使った、硫黄の香り漂う、

訳は、村中にある。温泉を利用した施設にある。


村の入り口。

無料の足湯に、二人で並んで浸かる。アザンの村まで、馬車で来たのだが、すっかり固まった四肢を伸ばし、

「はあ~気持ちいねイオリ君♪」

ご満悦のメリーは、赤毛を後ろに束ね。鼻歌混じり。楽しそうで良かった、訳は聞かないが、メリーが配属されてるのは、飛行隊。風の竜王をパートナーとする。キロム・アインの配下で。軍務で何かあったかな……、心配になった、元気がないように思えたのだ、

以前母に聞いたのだが、竜騎士になるのは、それはそれは大変なことで、6歳になったら、素養がなくても行儀ならいとして、竜騎士に弟子入りしする。優秀な竜騎士は、人気が高く。見習いになることも大変だ、母のように竜から降りた騎士に、弟子入り出来ることはとても珍しい。魔族大戦を戦い抜き、生き残った竜騎士の数が少なかったからだ。次代の竜騎士を育てることを急務とした、トレノ王は、竜騎士に弟子入り出来る。制度を作った。


10歳になったら、竜の産卵場をめぐる。これは竜騎士になる素養は、幼少の時に、解るが、どの竜と相性が良いか、分かってないから、竜は素養ある子供の中から、親い属性の竜は興味を抱く性質がある。竜騎士は竜の反応で、見習いの資質を計る。どの竜と相性が判ると、見習いは、3つある。竜の産卵場で、竜の世話をしながら、竜について学ぶ。竜は見習いを見て、守る者を選ぶ。それが竜に選ばれたと言われている。人間側から、竜を選ぶことは出来ない。自分に合う竜とは、竜が認めた者だけが、竜騎士となれる。素養があっても竜に選ばれなければ、見習いのままである。

だから竜騎士の数は少ないのだ、


そう言えば……、無茶をするエルノアに、無理やり連れられ。あの火山に登ったことがあった……、黒煙を登らせる火山、あのマグマの海に、火の竜王ハウザーが眠っている。


━━父の語る物語に、トレノの王となるクレメント、彼の幼馴染みで、生涯の友、名は失われ。火竜の騎士の物語を聞いて、エルノアが、

「私の竜にする!」

興奮止まぬうちにイオリを連れ、火山のダンジョンに入り込んだことがあったな……、懐かしく目を細め、アンコたっぷり入った、薄皮の饅頭をがぶり、ズズッと苦味の強い、お茶を啜る。


当時、竜の産卵場で、モンスターのいるダンジョンがあることを知らなかった、イオリとエルノアは、大変な思い、下手をしたら死んでた……苦労の末。火竜の産卵場にたどり着いたのだ、火山の火口付近に。火竜の産卵場があって、まだ生まれたばかりの幼竜が、イオリを見つけると、嬉しそうにすりよって来た、若い竜は驚いた様子だ、でも火竜は、もともと数が少なく。火竜の騎士は、トレノに存在してない、気性が荒いが、火竜は子供に優しいと言われてる。最初こそ緊張してた二人も、愛らしい幼竜と仲良くなって、遊んだ、

「あっイオリ。あんたのせいで忘れてたじゃないの!」

「ええー僕のせいなの?」

我が儘なエルノアは、当たり前のように頷き、家来に命じるのだ、

「さあ行くわよ!、待ってなさい私の竜」

鼻息荒く、進む、幼竜が首を傾げ、行くの?てな感じで、寂しそうにしてるから、また来るね。約束してイオリはエルノアの後を追った、


━━━巨大な溶鉱炉、イオリは鍛冶場の仕事見てた、あの熱気。鍛冶場では、ほんの少しだった熱気は、肌を焼く凄まじい熱気となって、容赦なく、子供の体力を奪う。二人は脱水症状起こして、意識を失った、

「おやおやこんなとこに、人間の子供が」

呆れた口調の声が降ってきた、

「エル……ノアを、助けて…」

残された力を振り絞り、イオリは声の主に、助けを求めた、


驚いた金の瞳、小さな命の願い、我が身よりも……、懐かしそうに瞳を細めた、そっと二人をひと飲み出来そうな、口を開き、器用に二人を傷付けず。服に引っかけ、ひょいと背に投げると、優しく翼で、受け止め、背に乗せ、火竜の巣まで、運んだ。


ひんやりした。冷たい感触。苦しそうだった二人の息が、安らかになった、安堵の熱気を吐いた、

「お主が、人間の世話をするなんて」

青み掛かった竜は、親しげに、数百年振りの邂逅を楽しんだ。

「済まぬな水竜よ、我の力は、こうしたことに疎い」

火の力は、燃やす。溶かす。熱風のブレスは使えるが、冷やす。凍らせる力は、属性が違う。

「なになに、良いかな良いかな、お互い人間を選ばぬ竜よ。こうした驚きならば、いつでもよいぞ」

かっかと笑いながら、青い竜は、自分の住みかに帰った。

「ん……、ん?」パチリ目を覚ました、人間の雌は、ぱちくり目をしばたき、きょとんと首を傾げたが、隣ですやすや寝てる雄に気付いて、安堵した顔をした。

「あっ、あんたが、火竜ハウザーね!」

ビシリっと。指を突きつけられ、鼻白むハウザー、助けたのを後悔したのは、僅か数分後……だった。


「ちょっとちょっと聞いてるの、私の竜になりなさい!私は美しく、最強の竜騎士になるの。だから超絶美少女の私の竜は、貴方に決めたわ」

あまりのしつこさに。辟易したハウザーは、そっぽ向いて、丸く寝息をたて始める。

「ちょっと聞いてるの!、私の竜になりなさい」

やれやれ、些か呆れながら、チラリ、ハウザーの尾っぽを枕に、安心して寝てる少年━━名をイオリと言うは、人間の温もりを尻尾に、感じながら、懐かしい気持ちになって、エルノアと言う少女を真っ直ぐ見つめ。

「お前でなく、彼が望むなら、考えよう」

チラリ、イオリを優しい眼差しでみやり、尻尾から落ちないよう気遣う、

「むむ……、イオリ?、イオリはだめ!私のだから」

急に、イオリの傍らに座り込むと、キッとハウザーをにらみ、フッと気弱そうな顔をしてたのに、イオリを愛しそうに見る。すると突然、強い決意した眼差しで、ハウザーを睨むのだ少女の気迫に、驚きを隠せない。

「エルノア?、どうしたの……、大丈夫、僕がいるから」

夢と混濁してる少年の言葉に、真っ赤になりながら、

「ばか……イオリの癖に」

嬉しそうに、笑う。そんな輝くような姿を、火竜は優しく見詰めていた、


翌日、すっかり元気になったイオリは、

「ハウザーさん、お世話になりました」

行儀よく。礼を述べる。イオリを不満気に、鼻を鳴らし少女が急かす。それから火竜を睨むのを忘れない。思わず苦笑しながら、

「早く行くわよイオリ、次は水竜の巣に行くよ。そして私の竜にするの!」

元気一杯、エルノアと言う、台風のような少女に、引きずられながらも。にこやかに手を、振る少年を、見送った。「ん?この匂いは……」

急ぐ少女を、慌てて追いかける少年の影から、懐かしい匂いがした、

「まさか……」

いつかまた出逢う……、そんな予感を覚えた、



火竜ハウザー。唯一の乗り手だった者は、騎士でも戦士でもない、ただ歌が好きな、優しい青年だった、彼は、リュート奏で、ハウザーを人間のように扱う、変わった人間だった、と言われていた、




━━━夕食まで、お風呂に入りながら、時間を潰しながら、「そう言えば……」

付き合い始めて間もない頃━━━。

メリーに頼まれ、着替えを届けて欲しいと懇願されたことがあった……、


メリーは、月に10日程、竜の塔に詰める。洗濯物は、いつも近所の同僚に、頼んでいたのだが、その同僚が、突如東大陸の任務に赴くことになって、着替えが……、本当に困った状況に陥る。イオリに悪いとおもいつつ、懇願したのだ、

イオリは気恥ずかしい思いしながら、着替えを袋に詰めて、竜の塔に向かった、イオリの住む街から、竜の塔まで、半日の道程、




━━━竜の塔の麓。



若い竜や見習いの、訓練場、竜舎、簡易宿泊施設がある。竜騎士が、小隊ごと、詰めている。門番の若い見習いに、メリーの着替えを持って来たと伝えるよう頼んでると、

「はい、聞いてます!、貴方が、イオリさんですね」そばかすの残る幼い顔立ちの少女が、憧憬の眼差しで、

「直ぐにメリー先輩呼んで来ます」

「あっちょっと……、まいったな、渡してくれたらそれで良かったのだが…」

残されたイオリは、所在無さげに、待ってたが、帰ってくり気配はない……、

懐かしさもあって、イオリは、施設の中を、ゆっくり歩きながら、見て回ることにした……、



木造の大きな厩舎の中で、訓練の無い竜は寝て過ごしている。急にそわそわしだした、大きな風竜は、懐かしい匂いに、鼻を鳴らした、あの子が来た……、大切な友の愛すべき子が……、あまり知られていないが、竜は、子や仲間をとても大切にする生き物で、一度家族と認めれば、子孫まで、守護した逸話が残る。義理堅い生き物である。そのため竜と竜騎士の絆は強い。

竜舎で、力ある竜はそれだけで同じ竜の尊敬を集める。竜の世話をする見習いが、急に起きて、外に向かう竜に驚き、慌てて、引き留めようと、

「どうしたのルージン?」

普段優しい竜が、まるで言うこと聞いてくれないから、困惑して、同僚のリーダーと見合い、

「竜騎士を呼ぶべきだ」

「そうね。早く先輩を呼んできて」

鼻で押しやられ、悲鳴混じりに懇願した、慌て駆け出す。

「どうしよ……」

泣きべそかく少女に、悪いと胸を痛めたが、家族が来てるのだ、今はそれを優先したい。

イオリは子供の頃以来となる。竜舎を前に、胸が一杯になった、

「きゃあぁあああだっだめ」

悲鳴がして、勢いよく、厩舎の扉を開けて、一頭の竜が現れた。辺りは騒然となった、イオリは、驚いた顔を竜に向け、すぐに笑みに変わる。

「ルージン!」

「キュー♪」

懐かしさのあまり、名を呼べば、ルージンは嬉しそうに、甘えた声を出して、イオリにすり寄っていた、



「ええー!あのルージンが」

慌てるような、聞き覚えのある声が、聞こえてきた、

「一般人が竜舎にいまして……」

なんて泣きべそかいた女の子と、一緒に現れたのは、やっぱりメリーだった、息を切らせながら。真っ青な見習い達の無事を確認して、ルージンを見れば、甘えた声を上げて、見覚えのある。男性……イオリが、懐かしそうにルージンの耳元を撫でていた、それはルージンの一番好きな場所で、信頼を竜は示す時。人のおでこに頭をくっつける。竜騎士に親愛を込めする。愛情表現を見ることがある。一般人のイオリにしたことに、メリーは驚きを隠せない。


のっそり大柄な、男が、メリーの隣に来て、チラリルージンとイオリを認め。口元に、静かに、笑みを浮かべ、

「竜が、騒いでると聞いて、見に来れば、イオリか、ならしかたないな」

「あっ、ルーニー隊長!」

惚けてたメリーは、慌てて敬礼する。何か言おうとするメリーに対して、軽く手で静止して、

「メリー、お前には言って無かったが、ルージンは、お前の先生だった、ミサカさんの竜でな……、イオリはよく竜舎で、ルージンと一緒に過ごしてた時期があるんだよ」

懐かしむルージンに、とても驚いたようなメリーだったが、「ルージンが、ミサカ先生の……、じゃ……」


ハッと理解の色を示す。うむと頷いた。竜と長く付き合えば、生態を深く知る。だから理解した、感動したように。色々な思いを込めて、

「家族なんですね……」

チラリ羨ましそうな目を、ルージンに向けた。メリーの様子で、ああと気付いた、噂は聞いていたが、

相手がイオリだったとはな、にやと愉しげに笑い、妹のように可愛がってた。メリーの成長を感じ嬉しくもあった、

「成る程、メリーは長年の片思いの彼を、物にしたと聞いたが、相手はイオリだったか」

ククク……人の悪い笑みの隊長に、真っ赤になった、

「たっ隊長……」

拗ねる姿は、まだまた妹のように、可愛らしい。クシャリ頭を撫でながら、膨れっ面のメリーを放って置いて、

「久しいなイオリ!」

破顔する。強面の大柄な男。イオリに見覚えがあって、

「ルーニーさん?」 大きくなった、イオリを眩しそうに、目をやってから、

「イオリ、ルージンは、新しい乗り手を選んだ」

驚いたイオリ、でも……それは仕方ないな、寂しそうに、でも心から、ルージンの頭に額を押し付け、

「ルージンおめでとう……」

竜は、人間の言葉を理解する。竜によるが、若い竜なら、4、5歳程度と言われる知能がある。ルージンは古竜に近い竜だ、聡明な優しい光を宿していた、優しくコツンと額を合わせる光景に、見習いの何人かが、感動して鼻を啜る。

ルーニーは、チラリ膨れっ面のメリーを見て、嘆息しながら、

「ルージンは、メリーを選んだよ」

驚いた顔のイオリ、あっと気付いたメリーは、とても嬉しい気持ちになった、だって………、

ルージンは、メリーを家族と認めた、でもルージンの家族は元々イオリで……、不思議な縁で結ばれてる気がしたのだ。ルージンは嬉しそうに、一声鳴いて、イオリの腰を押すのだ、メリーの方に……、思わずメリーは涙を浮かべ、

「諦めなくて良かった……」



━━━アザンで二人が、選んだ宿には、メリーのお目当てが、いると言う、たまたま散歩に出てると聞いて、残念そうだった、聞けばメリーは父と良くこの宿を、常宿にしてたそうだ。飛竜の爪亭、年老いた夫妻と数人の従業員で営む、少し裏通りにある。こじんまりとした宿である。風呂を堪能して、火照る身体を、眼下の源泉を冷やすため、地下水を汲み上げらる。滑車を見ていて厭きない、滑車が大きな風車を回す度に、ひんやりした風が送られてきて、とても気持ちいいのだ、

バウバウ♪


何やら動物の鳴き声が聞こえた、宿の入り口辺りか?、ここからでは、死角になっていて、伺いしれないな、部屋に戻る時、玄関を通るから、覚えてたら、確認しよう……、その程度の感慨である。


後からメリーと老夫妻に聞いて、そんなことあるのか、妙な感慨を覚えた、玄関付近で、黒い大柄のモンスターが、メリーにしがみつき、尻尾を振ってる姿を、見たときは胆を冷やした………。

「メリー!」

真っ青になるイオリ、当のメリーは、愉しげに笑いながら、腹を見せて撫でろと主張する。バウンドの腹を、ワシャワシャなで回す。その手を止めて、

「あっイオリ、上がったのね」にっこり笑みを向けるが、

バウバウ♪

もっととせがむハウンドに、笑みを向け、再びワシャワシャお腹をなで回すと、うっとり嬉しそうに、ペタペタ尻尾を振る。

あれ?………、

「どうなってるんだ……?」

怪訝な顔をする。

「ドドは、うちの看板犬ですじゃ」

「うわ」

気配がなかった、イオリのすぐ横から声がして、のけ反る。歯の掛けた前歯を見せるように、悪戯成功したと、楽しそうにからから笑う老人は、宿の主人で……、

「ドドは、わしらの家族ですじゃ」

バウバウ

名を呼ばれ、こちらに目を向けるハウンドと老人を交互にみやり、肩の力を抜いて、まあ~そんなこともあるか……、

「メリーちゃんから聞いたのじゃが、兄さんは、名うての吟遊詩人だそうじゃな?」

「名うてかは、分かりませんが、吟遊詩人ですよ」

目尻を下げなから、老主人は、語り部の心をくすぐる誘いに。

「冷たい物飲みながら、ドドの話を聞かれませんか?」

「喜んで、拝聴します」

ユノが、舞台でやる。大業な仕草な一礼を、いたく気に入ったようで、からから笑いながら、従業員や夫妻の住居になる。離れに案内された、


夫妻の部屋に入ると、お孫さんの物か、夫妻の似顔絵が飾られてる。イオリの視線に、老人は淋しげに笑う、

「大戦で、戦死した息子が、子供の頃書いた絵じゃ……」

なんとなく、デリケートなところを、部外者が聞いて良い所ではないと判断。イオリの気遣いに、老人は、小さく首肯して、冷たいお茶を頂きながら、ハウンドと老夫婦の出会いから、時は遡る。

━━今から8年前…。

ドドは、火山にあるダンジョンで生を受けた、ハウンドは、大型の犬の姿をしているモンスターで、群れを作り生活する。一つの群れに雄は一匹。ボスだけとされ。生まれたばかりの他の雄は、子供であれ、食い殺されるか、ダンジョンに捨てられる。

「ドドは、ボスにおそらく、源泉に投げ捨てられたのだろう……」

日も登らぬ未明のこと………。

客が、気持ち良く、温泉を使えるよう。掃除をしてるときのこと、小さな鳴き声が聞こえた、老人は空耳かと首を傾げたが、なんとなく胸騒ぎがして、老人は、懸命に探したと言う。日が登った頃。死にかけたドドをようやく見つけた、老人は、ハウンドの子供と直ぐに理解したが、助けた命に、違いはない……、それに…、

「その日は息子の命日で……、息子に頼まれた気がしたんじゃ」

老人は、笑顔の夫妻の絵を、寂しそうに笑った、


随分と周りから止められながら、老人はハウンドを育てる決意をした、ハウンドは炎を吐く能力を持っている。それは……人の命を、脅かしきれない恐怖を与える。たまたま竜を見る。医者が、湯治に訪れていて、老人の宿に泊まった、それがドドの命を救った……、

殺すべきだと論争が、決着を見せ始めた頃、夫妻は青ざめオロオロしていた、そんな夫妻を哀れと思い、声を掛けたのか、今となって、解らないが……、

「それは可笑しいですね?」

異を唱えたのだ、医者は言った。ハウンドは生まれつき炎を吐く能力があって、雄はその力が強く。本当にバウンドの雄なら、夫妻は死んでるはずだと、

「どうでしょうか?良かったら、私が見ましょうか」

医者の申し出に、一二にもなく。すがったのは言うまでもない、困惑した近隣の住人も医者の言うことを無下に出来ず。お願いすることになった……、


そこでわかったことは、竜の源泉に長く浸かり、死にかけた影響か、炎を吐く力を失っていると言う事実だった、正式に国に報告され、ドドは今しばらく、育てることを許された……、


夫妻にとって喜ばしいことだったが、近隣の住人に、白い目を向けられる。それは未知なモンスターによる。不安に駆られた者による。誹謗中傷から始まった……、一時は、宿を続けられないと、廃業まで考えたと言う……。


━━それを救ったのは、ドドだった……、ドド(始まりと終わりの音譜)洒落た名に、学者が食い付き、謎に包まれた、ハウンドの生態を調べる名目で、お客が増えたのだ、さらに大人いドドは、夫妻に従順で、子供好きと物珍しさから、徐々に認知され始めただ、


転機が訪れたのは、竜の医者である。メリーの父が、1人娘のメリーを連れ、宿に泊まった日に起こる。引っ込み思案なメリーだったが、優しいドドをすっかり気に入り、日がな1日ドドと遊んでる姿を目にした住人は、メリーに誘われ、恐々ドドに触れ、

「温かいね!」

無垢な少女の言葉に、胸を突かれた、やがて1人、2人と住人も理解を示して行った、少しずつ……、少しずつ……、笑顔が広がる。ドドは住人に、受け入れられたのだ、

「わしらの家族ですじゃ」

誇らしそうに、照れたように笑う、イオリは今まで、知らなかった素晴らしい話を、

「ご主人……、良かったら、ドドの物語をつむぎたいのですが」

老人は、クシャリ顔を歪ませ、是非お願いします。イオリの手をシワシワの手で、握り返した、

すっかり話し込んで、時間が過ぎたのに、メリーとドドは楽しそうに戯れる。イオリは先入観の悪い部分を恥じ入り。幼竜に構うような面持ちで、ドドの頭を撫でる。大きく尻尾を振るドドは、優しい目をしていた、


翌朝━━、ドドの物語を頭の中で、紡いでは、替えて、試行錯誤しながら、朝靄でなく、湯煙けぶる。早朝の散歩を楽しむイオリ、ドドはイオリについて散歩する。夫妻の話では、毎日朝と夕。散歩を欠かさないと言う。驚く旅人に、村人は笑みを持って、ドドは村を守るためああして、見回りしてると伝えると、感心を示した。

「イオリ?」

戸惑ったような声、懐かしさを覚えて、イオリは驚きながら、顔を上げた、

「エレノア……久しぶり」固い声が出て、イオリは自嘲気味に、苦笑してから、改めて元気そうな様子に、安堵しながら、戸惑いは隠せない、

「ハウンド?」

同じように、固い表情のエルノア、ドドは呼んだ?とばかり首を傾げた、

「看板ハウンドのドド、客の僕が、迷わないように、案内してくれてるんだ」

我ながら、なかなか面白い解釈だと、膝を叩きたくなった、

「ああ~噂のハウンドね」

納得した顔をする。

「活躍、聞いてるよエルノア」

懐かしさを噛み締め、目を細めるイオリの賛辞に、照れたように、赤くなるエレノアは、誤魔化すように、

「イオリも湯治に来たの?」

固さが少しずつほどけ、お互い笑みを深めた時。

「イオリ君!おはよう」息を切らせ。メリーが慌てたように、駆けてくる。

「メリー?」

驚きにのあまり目を見張る。そしてエルノアの目は、そっとイオリの裾を掴む、メリーの手を、見ていた……、あまりのことに衝撃を受け━━、急に固い表情をして、

「私急ぐから、またねイオリ」

足早に離れてくエレノアを、呆然と見送っていた、メリーに怒ったような、強い眼差しで睨まれ、ドドはメリーの様子に、尻尾を股に隠してイオリの背に隠れた、

「宿に戻ろイオリ君」

有無を言わせない迫力に、ただただ頷くしかないイオリだった、


日が登ってしばらく、メリーは固い顔のままだった、やれやれ頭を掻きながら、嘆息して、ドドの物語を作る所ではなくなった、原因はエレノアかな?、多分気にしてるのとか、イオリが言えば、余計拗ねかねない、このままでは……、老夫妻まで心配させかねないか、色々迷ったが、

「ねえメリー、僕の友達が近くに住んでるんだけど、会いに行かないか?」

誘うことにした、



火山洞━━━、

火竜の産卵場がある。竜騎士の見習いが、ほとんど訪れることがない場所である。火口まで昇る険しいダンジョン、炎のモンスターも多く、危険な場所に指定されていて、入山は規制されていた、イオリに連れられ、まさかって顔をしたメリーと、規制された、火山洞ではなく。


湯治場まで、源泉をひいた。竜泉場と呼ばれる滅多に、村人ですら近付かない場所である。洞窟に入った二人は、

「イオリ君?こんな所に友人がいるの」

不審そうなメリーの言いたい事は解る。でもね……悪戯子のように目を輝かせ、メリーに、ウインクして話そうとしないイオリに、

むむと眉を、悩むように、ハの字にしたが、大人しく付いていく……。


源泉の洞窟は小さな洞窟で。一番奥まで源泉の湧き出る場所以外、何も無い場所である、ペタペタ壁を触りながら、何かを探しだして、

「あったあった、替えて無いようで良かった」

最近使われた様子は無いようだけど……、

岩と岩の間に窪みがあって、知らない者は気がつかない、僅かな違い、イオリが、窪みの石を力一杯押し込むと、ガコン、仕掛けが作動する音がして、メリーの横にある。岩が、大きな入り口となって現れた、

「これは……」

呆気にとられるメリーを意味ありげに見ながら、

「僕の友達、火竜ハウザーの家にようこそ」





━━━第3楽章━━



あれから何年たったのかな?、イオリは懐かしさを噛み締めながら、火竜ハウザーの巣で過ごした日を、思い出した、



━━━エレノアに連れ回された日から、数年……、ハウザーから教えてもらった、仕掛けを使って、イオリは、何度も何度も通ってることを、エレノアは知らない、


初めて、ハウザーに教わった精霊魔法が使えた日、エレノアが正式に竜騎士見習いになった日、母が死んだ日、父が後を追うように死んだ日、


そして……、


エレノアが、神竜王バウゼルに選ばれた日を最後に、訪れてなかった……、もう1人の親友で、イオリの家族……。


大きな寝息が、二人にも聞こえてきた、匂いに敏感な竜は、ゆっくり目覚め、懐かしい匂いと知らぬ匂いに、目を開けた。程なく……、ハウザーは成長した、幼き友が、青年となった姿に、感慨深く感心した吐息をついた、

「久しいなイオリ」 優しい眼差しをイオリに向ける。

「そちらの人間から、竜の匂いがする。竜騎士であるか?」

知ある竜……、メリーが所属する。小隊の隊長も知ある竜で、一度だけ声を聞いた、メリーが知る限り多弁な竜は、珍しい、驚きを隠せないメリーに、優しい目を細めるながら問われ、「はっはい、竜の塔に所属してます」

大きな首を伸ばして、すんっと匂いをかぎ分けた、

「うむ……、微かにガルーダの奴の香りがする。奴は元気であるか?」

「はっはい、隊長と話してる姿は見ますが……」

さもありなん、苦笑浮かべる。豊かな表情の竜に、戸惑いを浮かべる。

「驚くのも無理はない、あまり人前に出ぬようにしておるからな、我ら知ある竜は」

皮肉気に、嘆息した、火竜ハウザーは、やたら人間臭かった、竜と共に、生きる竜騎士は、5体の竜王を敬う。それだけ竜王の乗り手に、選ばれることは、名誉である……。



葛藤するメリーを横目に。


小さく笑いながら、麻の袋から、リュートを出して、調律を始めた、ハウザーは小さく笑み、楽しみに胸を膨らませる。イオリはハウザーに、歌を聞かせる為に、会いに来る。人間誰もが欲望はある。悪いことではない、時に、力を貸すことがある。イオリは決して力を求めず。友として、ただ話を聞いて貰うことを望んだ。そのような人間……、イオリと奴だけだ、ロベルト・カインただ1人、背に乗ることを許した人間……。


懐かしさを噛みしめ、耳を傾ける。


━━━イオリは語る。ハウザーも知らぬ。ハウンドの数奇な物語を━━━。



「ほう……」

感嘆たる思いを、吐息に混ぜた、ハウンドの運命と、人間の優しさ、周りの反応、排斥、苦痛……、ちらつく破滅、そして……現れた光明……、藁にもすがる情感が、浮かぶようだ……、イオリの吟遊詩人としての実力は、僅か数年で、格段に上がっていた、


「そうだイオリ、頼みがある」

余韻に浸る間を惜しむ、だが、こればかりは……、ハウザーでは不可能なこともある。

「ハウザー、僕に、出来ることなら、言ってよ」

イオリの言葉に、感謝しながら、

「実は……ヘウリーの事なのだ…」


━━━水竜王ヘウリー━、

賢竜の2つ名で、呼ばれる竜は、灯台のある。入江に住んでいる。イオリの住む街から、灯台は近い。ヘウリーは子供好きな竜と有名であり、近隣の漁師の子供達が、興味本意で訪れた、

優しく出迎えたのだ━━、恐らく……、常駐してる。海竜騎士すら知らない話。それ故。子供達と秘密を共有した、喜びは、ハウザーにも理解出来る。

「ここ最近、子供達が、遊びに来なくなったのだ、ヘウリーの奴は、心配しておる」

同じ……竜で、無ければ解らぬ苦悩…。人間はとても弱く。成長も早い。故に……失う悲しみは、強い……、何故だと苦悩する。辛い別れがあると分かっていても、それでも……、ヘウリーは子供が大好きなのだ……。

「わかった、調べてみる」

快諾した。


━━━アザンの湯治場から戻った翌日。メリーは、東大陸の兵役に着いて、イオリは1人、近隣の漁師の家を周ることに。メリーは兵役の間、イオリが、浮気しないか不安だったと言われ、頭を掻いた、それとなく子供のこと調べて回りながら。漁師から。最初不審がられたが、イオリが、吟遊詩人と知り、様々な話を集めてると告げると、成る程と理解を示した。

漁師の船が置いてある。漁場は、灯台の入江から、海水浴場に使われる。珊瑚礁の白い砂浜に近い、話を聞いた限りでは、漁師の集落は、かなりの数あった、これでは調べるのが大変だ、イオリは、初夏の日差しに目を細めながら、椰子の木の林を抜け、海竜騎士の駐屯する。灯台をグルリ遠回りした、子供達が見つけたと言う、小さな岩の切れ目があった。誰にも気付かれず。水竜王ヘウリーの巣に。潜り込める秘密の入り口らしい……、

「これは僕には無理かな……」

子供と一口に言っても、漁師の子供は沢山いる。集落だって数があった、ちょっと調査に行き詰まった、ハウザーの話だけでは、子供の特徴まで分からないから、ヘウリーに直接聞くことにしたのだ。


そこで子供達が使ってる。秘密の入り口に来たのだが、大人では通り抜けること、出来そうにない……、


イオリは嘆息して、麻の袋から、リュートを出した、イオリが使う精霊魔法は、リュートを用いる為、音楽をもって語りかける。


イオリの願いに答え。水の精霊(ウインディーネ)が、姿を現した。早速水の精霊に、助力を求める。


メリーから洞窟が幾つかあると。メリーから聞いたので、イオリは水の精霊の助けで、海の上を歩きながら、入り込めそうな、洞窟を探した、


ほどなく入江から四角になってる。洞窟が見付かり……、安堵した、普段魔法など使わないイオリ。ちょっとした魔法でも、精神力を磨耗する。


━━━清廉な空間、優しい水面が、潮騒となり、不思議な音楽を奏でる。まるで鼓動のようだと……、イオリには思えた。反射された陽光で、幻想的な様相を与える洞窟。間もなく、足が届く深さになったから、水の精霊に礼を述べて、魔法を解いた、ぱしゃ……、脛までで足が届くのを確認して、洞窟の奥を目指した。


それは……、小さな屋敷なら、すっぽり入る。ドーム状の開けた場所で、一段高い場所があって、上から小さな穴があるのか、複数の光を浴びる。青い竜が、寝そべる姿があった、寝息は止まり、長い首をくいっと伸ばして、イオリを認める。

「おや?君には見覚えがあるね」

女性の声。ヘウリーは雌の竜である。思案する水竜王ヘウリーに、

「以前、ハウザーのところではないですか?」

「ああ~♪、そうそうあの時の子供だ、大きくなったね」

懐かしそうに目を細める。

「その節は、お世話になりました、今日はハウザーに頼まれ、子供達のこと、聞きに来たんですよ」

「ほっ本当かい!?」

がばり、音がしそうな勢いで、巨大な頭が迫る。仰け反って、イオリは足を滑らせ、盛大に水にハマった。

「良かった……、風の精霊に、頼んどいて……」

一緒に落ちた。麻の袋は、水に濡れてないことに安堵した、

「ああ~済まない」慌てるヘウリーに、手で、何もしないでと静止しした、


先が、思いやられる。そんな予感がした、イオリは知らなかったが、水竜王ヘウリーはドシッ子、天然、甘えん坊と三拍子揃った竜だとハウザーは言ってた、5竜の知ある竜の中で、ヘウリーは年下である。波長のあう子供が、大好きなのだと、聞かされて、成る程と案外その通りなのかも……、

二度ほど、興奮したヘウリーに、水を掛けられたり、散々な目に遇わされたからだ、

ようやく話を聞き終え。洞窟からでたのだが……、

これでは泳いで来ても、変わらなかったな。下着まで海水でびしょびしょに……、

町まで戻る道で、服は乾きそうだが、風呂と着替が先かな、それから楽器を見なければ、それだけが心配である。




翌朝━━日の昇らぬ早朝。


イオリの姿は、ヘウリーから聞いた、漁師の住まいがある。島の反対側近い。船着き場にあった、この辺りは、町からかなり離れていて、ヘウリーから、聞かなければ、住人が要るなど、今まで知らない所である。10棟程度の漁師住まいが、確かにあった、



━━━漁師の朝は早い……、

イオリは仕事終えた足で、かなりの時間歩き通しでたどり着いた、だが━━いくらなんでも静かすぎる……。嫌な予感がした、イオリは手近な家の扉を叩いた、が……、反応が無い、失礼と思ったが、入った……、

「うっ……」

凄まじいすえた臭いに、顔をしかめた、ハンカチを取り出して、鼻と口を押さえ、入り口に掛かってたランタンを見つけ、火を点けて、改めて、辺りを照らし出した、

「これは……?」

小さな土間、今まで漁師達が、鍋を囲みながら、料理を食べてた、そんな感じである。飲みかけの酒は蒸発して、欠けた茶碗だけが転がり、鍋の中身は腐り、悪臭の元となっていた、イオリは、ひとまず外に出て、新鮮な空気を、貪って、青ざめながら、他の家も見て回った、

結果……、同じような今まで人がいた、痕跡はある。

「人間だけ……、消えた……?」

ただ事ではない、何か良からぬ事が、起こってる。

「まさかモンスターに?」

言ってて、それはあり得ないと、辺りの地面を照らし出した、争った後が、ないのだ、

「まるで魔法……、魔法?、魔法なら出来るか?、それだけの魔法を使えるとした……」

魔族……、まさか、竜の国に?、否定したいのに、段々嫌な予感が、強くなってきた、ポロン……、 「ん?、音が聞こえる」

ポロンポロン、認識出来るか出来ないか、微かな音……、

ざわざわ、皮膚が泡立つ、

「いけない!これは呪歌」イオリはリュートを取り出して、風の精霊に加護を頼む。

精霊を視認出来るようになって、イオリは魔力の流れを見た、謎の音は、この周辺を覆うように、響いている。

「多分……『マリオネッタ』の呪歌」

誰が、呪歌を、ただ事ではない、イオリは水竜王ヘウリーに、ことを知らせ。竜騎士に、調査を頼むことも考える。


━━明け方……、


灯台の海竜騎士の駐屯所で、ヘウリーのことは伏せ、用があって集落を訪れたら、漁師達が消えてたと伝えると、慌てたように、調査を開始するから。イオリはしばらく待つよう言われたので、見習いが訓練に戻ったのを見計らい。労せず。ヘウリーの巣に向かった……。

長い首を、くいっと伸ばして、驚きに目を見張るヘウリーだったが、ハッと息を飲み。

「何故、私は忘れてたのだ?」

唐突に、オロオロし出したヘウリーを、訝し気に、眉ねを寄せた。

「あれは……、半月前の夜。入江に船を着けたもの達がいたのだ………」

イオリは昨夜聞いた呪歌を思い出して、呪歌に確か……、『忘却』があった、とても強力な呪歌であるが、歌い手の力量では、失わせたい記憶だけを消すと言う……、しかし……、魔力の塊である竜に、その中でも竜王の名で知られる。知ある竜に、呪歌を聞かせ。掛けるだけの力量のある歌い手など、聞いたことがない……、賢竜ヘウリーも同じ考えに至ったようだが、何か心辺りがある様子だ、「強い精霊の力を、感じた、イオリの聞いた歌が、呪い歌ならば……、精霊の楽器が、使われた可能性が高いね」

聞いたことがない、困った顔のイオリの為、精霊の力を宿す。楽器について語る。


精霊の力を宿す楽器は、幾つかあって、大地の太鼓、炎のフルート、風のハープ、水のシンバル。闇のバイオリン、

「有名な、精霊の楽器はこの5つ」

ふっと思い出したのは、楽器の音、それがハープの音であったと、

「風のハープ!、なるほどそれなら、私に、利いた理由が分かる」

鼻息荒く、眼前に迫るのは、遠慮してほしい……、近い、

「イオリ!みんなを助けて」まだ解らぬ事件だけど、元から、そのつもりである。





━━━第4楽章━━




トレノに住む竜には、属性がある。水竜王ヘウリーは水、火竜ハウザーは炎と、他に、地、風、光、闇の属性竜がいる。生命力が強く、強靭な四肢、属性のブレスを使い分ける。竜だが、決して最強ではない。弱点の一つが相対する属性と言われてる。水の属性なら地に弱く、火に強い、だがもう一つ、隣り合った属性と相性が良く、例えば、火に風、風に水、水に地、地に火の属性を組み合わせた魔法がある。水竜だったから、隣り合った属性の風のハープを用いた、呪歌の効果が、断片的にあったのだろうと、ヘウリーは解析した、もしもイオリが、漁師の集落を訪れなかったら……、ヘウリーは思い出すことはなかった、内に秘めた強大な魔力を持った竜だったから、ちょっとしたキーワードで、記憶の封印が、解けたのだろう……、

「上が騒がしい、イオリあの子達のこと頼む……」

ヘウリーに別れを告げ、気付かれないよう、待たされた部屋に戻り、間もなく。


慌てるような足音。女性が入ってきた。確か……、

「カエデさんでしたよね?」

鋭い眼差しを細め、美人なのに勿体ない内心思うイオリを、険のある顔で、近付いて来て、いきなり胸ぐらを掴まれる。

「漁師達を何処にやった!」

イオリは、訳も解らず、きょとんと首を傾げていた、


怒りに真っ赤なカエデは、頭に血が登ってるように見受けるが、イオリに見に覚えがない、

「カエデ!、何をやってるんです」

騒ぎを聞きつけ、急を報せた。海竜騎士の男性が慌てて引き留める。

「離せ、こいつを締め上げて、漁師達のを何処に監禁してるか、吐かすのだから!」

呆気に取られ、イオリが問うように、カエデの同僚を見ると、顔をしかめ、頭を抱えながら、

「彼が、報せてくれたんだ……」

呆れながら、カエデの勘違いを正した、

「はっ?、犯人を捕まえてるて………」

狼狽えながら、確かめるようなカエデに、大きく嘆息しながら、

「もう一度言うぞカエデ……、漁師の集落を訪れたイオリが、先ほど我々に報せてくれた、我々は、イオリに言われたので、集落を探索、住人が消えたのを確認した、そこで我々だけでは、事件の真相が解らないから、もう一度イオリに詳しく話を聞いて、漁師達を探すと俺は言っただけだ」

一字一句ゆっくりと、カエデに聞かせたら、ボン音がする勢いで、真っ赤になった、

「理解したら、イオリに謝ることだな」 わなわな震えながら、凄い勢いで、ヘッドバットが迫る。紙一重でかわしたイオリに、おお!なんて歓声が上がる。

「ごめんなさい…」

さっきまでの勢い失い、蚊の鳴くような声である。

「済まんなイオリ、こいつも悪い子じゃないから、許せ」

「はい、それは構いませんが……」

イオリは名乗ってなかった、訝し気に男性の海竜騎士を見ていた、

「やっぱり忘れてやがったか、まあ~かみさんと違って、餓鬼の頃以来か」

何と無く、声に……、

「ああ!テトラさん、生きてたんですね」

正直な感想に、思わずばつが悪そうな顔をした、周りから、軽い笑いが起きた所で、テトラと視線を合わせる。小さく頷かれ、手掛かりがなかった事を知った。


━━━10日が過ぎて、メリーが、帰って来た、翼竜通りにある。メリーの家に泊まった翌朝。


朝市で、新鮮な魚を買って戻ったが、まだ寝てるようだな、眠気があるが、腹の虫が、抗議を上げてる。頑張って朝食を作るか……、

釜戸に火を入れ、フライパン乗せて、暖まるの待つ間。魚の下処理を済ませ。バターを敷いて、まんべんなく伸ばした、魚を三枚に下ろし塩胡椒、小麦粉をまぶしたら、こんがり両面焼く、皮面からしっかり焼くのが、美味しい魚料理のコツだ、


オーブンが温まるのを確認して、トマトを三等分にスライス、薄切りのチーズ乗せ鉄皿に並べ、塩胡椒して、から数分オーブンで焼く。


フライパンをおろして、皿二枚に、葉野菜のサラダを添えて、バケットには焼きたてのパンを並べ、作りたてのジャムの瓶をテーブルに置いた。小鍋で、お湯を沸かして、卵スープを作り、薬莢でお湯を沸かして、お茶の支度済ませてから、メリーの寝室に戻った、

こじんまりした寝室は、ベッドと小さなテーブル、鏡台が申し訳程度に、置かれていた、あまり女性らしい部屋ではない、唯一女性らしい趣味は、青を貴重した、可愛らしい竜をデフォルメされた、人形位である。メリーは、イオリが持たせた枕に抱きついたまま、幸せそうに寝ていた、そっと肩を揺らすが、眉を寄せる位で反応が悪い。

「ん?」

うっすら目を開けて、イオリと抱き着いてる枕を見比べ、そっと枕を離して、

「ん~~♪」

甘えたように、手を広げるメリー、イオリはそっと溜め息を吐いて、ベッドに腰掛け、メリーを抱き起こす。

「ん~ハグハグ、オパヨ~♪。チュ」口付けを交わすと、やっと満足して、大きく伸びをしたら、毛布が落ちて、健康的な裸体を晒した。

「イオリ君のエッチ」

メリーはほんのり赤くなって慌てて、毛布を羽織る。

「早く食べよイオリ君♪」

悪戯ぽく、言いながら、輝くように笑った、


「ん~♪、幸せ」 たっぷり用意した料理を1人でほとんど平らげ、予備にパンケーキと焼き菓子までペロリ。さすがに呆れたが、食後のお茶を啜り。満足そうに腹を擦る。

「このお茶。美味しいね」

香り高い、お茶にご満悦なようだ、

「ミルさんから、お裾分けだよ」

「ミル来てたの?」ミルさんは、メリーの同僚で、お隣さんだ、ただ変わった趣味があって、自宅でお茶を作ってる。メリーと同じく料理が苦手な、ミルに料理のお裾分けをすると、とても喜んでくれる。

「昨日、話の途中で、寝ちゃたけど、その話、私も詳しく知りたいから、今日付いてくね」

チラリイオリの横顔を見ながら、心配そうな顔をする。


昼を軽く済ませてから、灯台の海竜騎士の詰所を訪れた、 「イオリわざわざ済まんな……、ん?お前さんは……」 「お久しぶりですテトラさん、メリー・エルメアです」

合点が行ったようで膝を叩く、テトラ・ハウレイは、あのデニスさんの旦那さんである。今は喧嘩中で、数年ばかり、店に顔を出してない、もっとも……悪いのはテトラさんだから、まあ~仕方ない。

ある日突然。デニスさんに黙って、残された大陸を、探検するんだと、言い残して、国を出たのは、両親が死ぬ前の年である。ずっと音信不通で、死んだのでは?、なんて噂があった……。


それが昨年━━━。

ひょっこり帰ってきたのだ……、悪ビレもせずに………。

勿論デニスさんは、鬼神のごとく怒った、その後は、名物の大喧嘩である。ちょっといい加減な所はあるが、竜騎士としての腕は、かなりの物らしい……、

「おお~お前さんか、イオリの彼女。噂の美人さんか」

小指を立てるデニスさん、カエデが、露骨に嫌な顔を向ける。ちょっと潔癖症なカエデだ、いい加減な性格のテトラが、生理的に、合わないような気がするが、不幸なことに、同じ小隊なのだそうだ。

そういえばこんな人だった、

「ごほんごほん、んん!」

カエデが、注意するように咳払いした、

「カエデ風邪か?、1人寝はまだ寒いからな~」

余計なことを言って、カエデの不興をわざわざ、正確にはわざと買う……、メリーは呆然と、僕は嘆息した、

このままでは話が進まないと、小隊長……この人が、一番の驚き、見習いと思ってた少女。

「リズ・ハーソン隊長。こう見えて三十路だ、見習いじゃないぞイオリ」

的確に、考えを読んできた、だから侮れないと母さんが言ってた、段々思い出してきた、

「誰が三十路か、私はまだ29!」

ドスドス痛そうな音させて、テトラの腰を蹴ったが、びくともしない、逆に痛かったのか、目の端に涙が浮かぶ、

そんなリズはどう見ても……、キッと睨まれ、

「今、失礼なこと考えたわね……」

「そんなことありませんよ」

なかなか鋭い、表面上は素知らぬ顔を、取り繕い。にこやかな対応を心がける。やや不審そうな眼差し、笑ったら負けだ僕!、

だって、一生懸命怖い顔作ってるが、見習い(10~14歳)が、無理して頑張って、作ってるように見えるから、テトラは遠慮なく、笑ってる。そんな部下に、不機嫌になったリズは、バシバシ怒りに任せ、背を叩くが、大木にそよ風と言った様相である。「掴みはOKってことで、イオリお前を呼んだのは、隠し事抜きで、知ってること教えてくれないかな?」

唐突にテトラは、今までの嫌みな顔をかなぐり捨て、老練な将兵の顔が表に出る。鋭いと言うより、全てを見透すような、眼差しである。イオリもテトラの性格を思い出してので、

「だと思いましたよ、いつ気づきました?」

戸惑うリズ、カエデを他所に、テトラならイオリが、今回の事件に、関係してる可能性を、考えるなら、イオリを泳がせてたと考えてた、あっさり認めたイオリに、意外そうな顔をして、

「随分あっさり認めたなイオリ?」

訝し気な顔をする。

「二人から、口止めはされてないし、僕の探索能力では、限界ですから」

肩を竦めた、イオリの反応に、ちょっと困った顔をして、

「お前さんも探してる口だったか……」

やっぱりか……、僕を疑ってたか、覚悟はしてた、思えばおかしな話だった、10日前……の、カエデの反応は、わざとカエデを焚き付け、イオリの反応を探った、そんなとこだろう……、時間を置いたのは、イオリを観察してた、

やれやれ嘆息するイオリに、苦虫噛み潰したようなテトラ、意味が解らない三人の女性は、顔を見合わせる。仕方ないとテトラが理由を話した瞬間、三人の顔色が露骨にに変わり。烈火の如く怒ったカエデ、静かに怒りを宿すメリーに至っては、ナイフを取り出そうとしてるから、慌てイオリが宥め。「テトラの癖に、また騙したわね!」

テトラさんを、げしげし蹴りだすのはご愛嬌。


落ち着いた所で、順を追って、イオリは説明した━━、

「お前さんが、火竜ハウザーと友達だったのは驚きだが、確かに水竜ヘウリーのねぐらに、漁師のガキンチョは来てたな……、言われて見れば、最近見掛けてねえ」

顎の無精髭をなぞりながら、テトラは思い出すように言うと、リズが眥を上げる。

「テトラ、その話私は知らないわよ……」

ムムムとお怒りである。同じように怒り出すかと思ったカエデは、目を游がせ、そっぽを向いた、辺りに集まった、他の小隊メンバー、見習いもカエデと同じような様子。案外知らなかったのリズ小隊長だけか?

「参った、あてが外れた……、あの日、海の方で、精霊魔法が使われたの感じた、翌日、お前さんが現れた、でお前さんが、言われた通り、集落を偵察したら、痕跡なく漁師達だけいなかった、で、魔法が使われたと思い集落を見たら、風の精霊が、止まってるのを見て、お前さんが犯人グループの1人か、何か知ってる人間だと睨んだんだが……」

やはり曲者だなこの人は、苦笑しながら、もうひとつ隠してる。犯人らしき人間達の目撃者、ヘウリーの話を聞かせた、場合によれば、海竜騎士全員が、『忘却』の呪歌を掛けられてる可能性を、考えて黙ってた、

「テトラ……もうひとつ、ヘウリーから言われてた事がある」

イオリはメリーに目配せして、辺りの反応を確かめて貰いつつ。

「犯人グループは、入江に、船でやって来た」

キーワードになり得る。言葉を発した瞬間、殺気がイオリに向けられた。

「なっなんだ……」 戸惑うテトラ以外、カエデ、リズも驚きながら、辺りの仲間だった海竜騎士の変貌に戸惑う、

「手短に言う、三人共、黙って聞いて、犯人は、風のハープと呼ばれる。精霊が作った楽器を所持してる。それを用いて、呪歌を使って、人間の記憶の改竄、さらに操る事が可能だった、だから僕は、メリーが戻るのを待って、来た訳さ、誰が操られ、歌を聞いたか、知らないから、ただヘウリーとワードとなる言葉は、調べていた、彼等は、操られてるだけ、『解呪歌』を歌う間、僕に近付かせないで!」

呆気にとられて、戸惑ってた三人は、急変に。即座に対応してくれた、室内で剣を振り回す同僚に、リズが椅子を投げつけたり、鬱憤たまってたのか、カエデは遠慮なしに、殴り飛ばしてた。仕方ないなとテトラは不敵に笑いながら、剣を振り上げた、同僚に音もなく迫り。腕を固め。あっさり取り押さえるや、手近にあった、ロープで動けなくした。あのデニスさんと素手でやり合う位だ、腕は立つのだろうと思ってたが、予想以上だ、イオリはリュートを構え、父から、

「母さんには、内緒だぞ?」

お茶目に、子供ぽく笑う優しい父は、呪歌を教えてくれた、1人残される息子が、もしも自分がいなくなったら……、

「お前を助けてやれない」

最期の時まで、笑ってた優しい父……、イオリは感謝を込めて、歌う……、イオリは、リュートを奏でる。


不思議な音域の音楽━━━。

人の耳では聞こえない音がある。特殊な訓練と、魔法の楽器だけが演奏可能な、通常の音階より数段高く、蝙蝠の使う超音波と同じく、聞こえない音。イオリは聞こえない歌を歌い、聞こえない音楽を奏でた、程なく……、メリー達だけが立っていて、他の小隊、見習いは、糸が切れたように、唐突と倒れていた、

「もう……大丈夫……、ごぼごぼ」人が出せない音域、精霊の力を借りて、無理やり歌ったのだ、咳き込み、血が混じった唾が、滴る。

「イオリ!」

座り込むイオリを、真っ青になってメリーが、気遣う、イオリは手で大丈夫と伝える。



一時は、どうなるかと思った……、

多少……。

怪我おった人は出た、みんな無事だった、


竜の火山亭に、カエデが、顔を出したのは、それから二日後━━のこと。


大きな事件である。重く見た、王宮は、直ちにイオリを呼んだのだ、事後処理も含め。他言しないよう。釘を刺された。

「やあ~カエデ、珍しいわね。あんたが来るなんて」

デニスさんと顔見知りなのは、予想がついた。おそらく吟遊詩人のイオリが、事件のこと、歌にしてないか、見張るよう言われたのだろう、顔に出やすい、カエデに向かない仕事だろうに、不機嫌そうな顔をしていた、とは言うものの、無事な海竜騎士小隊は、リズ含め、三人だけ、他の海竜騎士は、呪歌の影響が残ってるため、寺院の治療を受けている。人で不足の王宮としては、カエデにイオリを見張るよう、申し付けた、そんな所か、苦笑を噛み殺して、イオリは歌う、一時皆が楽しめるように………、




━━━第5楽章━━━




遥か昔………、竜が、魔獣と呼ばれた時代がある。竜と人間は、危うい均衡の上で、生活圏を別に、どうにか生きていた時代━━━。飢饉があった……、とても貧しく、とても弱い僅か数個の集落……、アザ(世捨て)と呼ばれた集落は、小さな国から、見捨てられていた……、村人は藁をも掴む思いで、孤児になった少女……、火山に住む。竜に、生け贄として……、差し出した……、

『赤き竜王様、何卒我が集落を、おすくいください。』

疲れはて……、精も、根も、尽き果てる様子の長に、火竜王ハウザーが求めたのは子供である。

……愚かな……、

愚かな…人間よ……、こんな人間等……、

『ん……、これは歌?』

澄んだ、とても綺麗な歌……、生け贄の筈の少女は、愉しげに歌う、

『何故お前は、楽しそうに歌うのだ?』困惑したハウザーは、疑問を投げ掛ける。『だって、集落のみんなは、自分たちが殺されるの承知で、私だけ生きさせようと、逃がしたの、私は、みんなのために歌うことしか出来ないわ、それも楽しくなる歌だけ……、本当は悲しいのに……』

ハウザーは衝撃を受けた、小さな集落は、流行り病が流行して、多くの子供が、死にかけている。看病する大人まで、病に掛かり……、無事なのは少女だけだと知った……、小さな国は、集落を見放し皆絶望の底にあったのだ、


ならば……、1人でも……と、長は最期の手段を取る毎にしたのだ、喩え自分たちが殺されようと、少女だけは、生きられる。


火竜ハウザーは我が身を恥じた、


そして……、


大地の雷竜ガウザー、水竜のヘウリーに助力を得て、火山の底から、温泉を掘り出して、村人に飲むよう少女に伝え、少女を帰した、

「夢か……、懐かしい思いで……」

少女は大きく、美しい娘となり、優しい夫と幸せに暮らした……、娘の子が、火山を訪れたのは、娘が死んで……、



数年後━━のこと……。



後に、ロベルト・カイン。優しき少年の素朴な顔が脳裏から離れない。

「イオリ……、あの時言ったのは、我の本心だった」

一目見たとき、衝撃を受けた。似ていたのだ……、竜に愛される素質は、ロベルトにそっくり、この世に現れる。1人の王がいる。竜の心を掴み、竜に愛された人間……、それはあくまでも言い伝え。神竜が、伝えたビジョン……、


ここ何日か、イオリの身辺を見張りながら、連日遅くまで、火山亭に顔を出してたカエデは、目の下に隈をこさえ、愚痴りながら、竜の世話をしてると、

「ご機嫌斜めだねカエデちゃん、うちのは元気かい?」

テトラの存在が嫌味に思えた。まったくこの忙しい時に、憎々しく睨む。

「毎日大変だね~、なんならイオリ君に手伝って貰えば?」

なんてこと言ってきたのだ、思わず何を考えてる?、怪訝に思ってると、

「イオリ君、竜騎士にならなかったけど、竜に選ばれてるの知ってた?」初耳である。イオリに関して報告書を見る限り、そのような記述はなかった、また嘘か……、相手にするだけ無駄と、自分の竜の世話に戻ろうとしたら、

「知らないのは仕方ない、イオリ君は、闇竜ロブノス、炎竜ハウザー、雷竜ガウザーから選ばれてる。これってどういうことか判る?」


カエデは今度こそ、バケツとブラシをテトラに叩き付け、

「そんな法螺話!、いい加減にしてください」

怒って、帰っていく、カエデの騎竜が、大丈夫?と心配そうに鼻を寄せて来た、

「ありがとう……、本当なんだがね。まあ~信じて貰えないよね」闇竜ロブノスの巣は、特殊で、人間が足を踏み入れることは、叶わない場所にある。雷竜ガウザーは地の竜ながら、風と雷の属性を併せ持つ特殊な竜で、空にある竜の巣、雷雲の中を、住まいにしていて、雨季だけその姿を見せる。

「イオリ君には、ここにいてもらった方が、助かるんだがね……」

どうにも嫌な予感がするのだ、嘆息しながら、仕方なさそうに、海水を汲んで、カエデの騎竜を磨いてやると、気持ち良さそうに。目を細めた、


翌日━━━カエデは結局。イオリに助けを求める毎になった……、


飛竜小隊が、トレノ近郊。境界付近で、魔族の侵入を捉えた、


海竜小隊、リズ達にまで、出撃名が下った、カエデはイオリのことをどうするか尋ねれば、

「イオリなら、ここに呼んで、竜の面倒を頼めばよい」


先日━━テトラが、言ってたこと、まるっきり同じこと言われ、戸惑うカエデに、命を伝えに来たエルノアは、赤毛を颯爽と翻して、

「イオリは竜騎士にならなかったけど、闇竜ロブノス、火竜ハウザー、雷竜ガウザーに選ばれし者、竜はイオリの言うことを聞くわ」

なんてこと言われて、戸惑うしかない、

「王宮の秘密に当たるから。他言無用でね」

同年代ながら、最前線で魔族と戦ってる者の凄みを感じて、ただただ頷くしかなかった……、

イオリには、ただ竜の世話を手伝いなさいと言い残して、カエデ達は、魔族が目撃された地域に急いだ、






━━━第6楽章━━




見習いに混じり、イオリが産卵場に足を踏み入れるや、幼竜が顔を出した、驚く見習い二人を他所に、幼竜は、テトテト歩いて来て、イオリを見上げ、甘えた声を上げるのだ。イオリは二匹を構いながら、掃除を手早く済ませて、魚を擂り潰した、魚団子を与え、しっかりゲッフさせてから、入江の洞窟に向かう、

水幼竜は産毛が抜けてないから、長時間、水に浸けると体温が奪われ、危険だ、だから見習いに混じり、若い竜が、幼竜のお守りを行う、イオリを見詰める若い竜達は、緊張したように、静かに頭を下げる。見たことない竜の反応に、二人の見習いは顔を見合せた、


見習い二人が自宅に帰るのを見送り、太陽が、海に沈むような光景に目を細めながら、目を細めるイオリ。ちょいちょい服の裾を引いた幼竜に、優しい目を向け、イオリの影が長く伸びた、まるで竜のような姿の影が……、浮かび上がり、若い竜達は敬意を示すため。頭を下げる。闇竜ロブノス、またの名を影竜と呼ばれ、影の世界を巣とする。異世界の狭間に住まう竜である。

『イオリ……聞こました、あの子達の声が!』

突如イオリの頭の中に、声が響く。

「ヘウリー?」

驚くイオリに気付かないような声で、まるで熱に浮かされたような……、イオリは若い竜に、二匹を頼み、慌ただしく、ヘウリーの巣に向かう、嫌な予感がした、

「ヘウリー!どこにいる?」

何時ものお気に入りの場所に、ヘウリーはいない、

「これ……ん?、音楽?」

微かだが、海の沖合いから、潮騒に流れ、聞こえ……、

「水の中!」

頭からずぶり、海水に入れた途端、はっきりと音楽が、聞こえる。嫌な感じの音……、くらり……、一瞬意識に触れる力が、イオリを押しつつもうとした瞬間。イオリの影が、広がり、影から、暗色の竜が現れ。器用にイオリを爪で引っ掛け、水から引き揚げた、

「ありがとうロブノス……、助かった……」

少し鼻に入って、痛みに涙目になりながら、イオリは心配そうな、赤い目の闇竜ロブノスの首筋を叩いた、イオリにだけ聞こえる声で、

『我を、呼べ』

それだけ告げ。ロブノスはイオリの影に戻った、

不味いことになった……、イオリは若い竜達に留守を頼み。


竜の力を使う決意をした、

「ロブノス!僕をハウザーの元に」

力を借りて、影の世界を渡り、火口に飛んだ、



慌てる鼓動、上がる息、珍しい奴が、現れたな、ハウザーは目覚め、闇色の竜と目を合わせる。闇は竜の姿を失い、人間……、イオリを吐き出した。

「どうしたイオリ?、ロブノスの力を借りて」

真っ青な顔をしてるイオリは、海水でびしょびしょである。何かあったと理解する。

イオリの話を聞き終。鼻に皺を作り思わず唸る。「その様なことが……、イオリよ。相手は、ただの人間ではあるまい、魔族……それもかなり力ある者の仕業であろう……」

いかんせん……、ハウザー1人では荷が重い、ロブノスの力は、此度の相手が、予想通りならば……、

「イオリよ、覚悟はあるか?」

真摯な眼差しをイオリに向けた、いままでのような自由は、失うことになる。それほどの相手である。イオリの力を誤魔化して、倒せる相手ではあるまいな、

「ハウザー……僕の友達……、気遣いありがとう、もう此処に来たときから、覚悟は決まってる。だから、火竜ハウザーよ。僕は願う、我が騎竜になれ!」

ブルリ、身が震えるような喜びを噛み締める。

「承知!、ならばもう一騎の元に行こう」

闇竜ロブノスが、喜びの咆哮を上げる。イオリの影を通じて……、


ハウザーは数十年振りに、騎竜として、人間を背に乗せた、目指すは、遥か空の頂きに向かって翼をばたいた、



━━━火竜ハウザーの力を持っても、遥か上空にある。雷雨の竜の巣にたどり着くのは容易ではない、ましてや人間のイオリを乗せて行くのだ、凄まじい負担である。

「イオリよ。こうして人間を乗せ。飛ぶことは楽しいものだな」

万感の思いを、ハウザーは噛み締めた、最初の友を失って……、翼を広げ飛ぶことは、二度とないと思ってた、それがだ……、ハウザーは胸を張り、力強く、竜王の名に恥じない、威厳に満ちていた。


━━━雷鳴が、数十。数百、一瞬の閃光のように煌めく世界、巨大な、黒雲に創られた、神殿が鎮座する如く。竜種最大の竜は、懐かしい匂いに、ゆっくり目覚めた、岩のような、ゴツゴツした皮膚は無数にひび割れたように、そう……、幾千の落雷を身に受けたように、傷だらけであり、それが模様のように。稲光に栄えた。

ゆっくりゆっくり巨体を動かして、我が主たる少年と、戦友の到着を今しばらく待った、



━━━トレノ沖合い、凄まじい数の竜が集まり、壮絶な戦いが行われていた、


相手はたった一隻の船━━、そうたかをくくってた竜騎士達を。嘲笑うかの如く、船は、無数の魔物を吐き出して、近づいた竜を、操られた人間が、矢を放つ状況に、黄金とみまごう、美しい竜の背にいる。エルノアは、唇を噛んでいた、

「どうしたらいいの?」

操られた人間の中に、子供の姿を認め、戸惑うばかりである。人間の中に、おそらく操る者はいるはずなのだが、

「エルノア、ヘウリーの匂いがする」

鋭い眼差しを海中に向ける。神竜バウゼルは、

「いかん!ヘウリーは、操られた、皆を下がらせよ」

神竜バウゼルは、危機を知らせる咆哮を上げたが、一歩遅く、ヘウリーら海水を割るように現れ、、辺りにいた海竜を氷の魔法で、海竜に乗る騎士ごと、氷塊に変えたのだ、あまりのこと、誰もが言葉を失う、このままでは全滅しかねない……、退却の二文字が、頭を掠めた。

「エルノア!援軍が来た」

「えっ!?、そんなに早く」

バウゼルの見たのは、トレノのある火山島ではなく、遥か上空を見上げ、興奮したように、身震いしたがら、

「ついに立ったか!我らが王が」

「バウゼル?」

戸惑うエルノアを他所に、凄まじい烈風が、側を通り抜けた、その瞬間、魔物の群れが、爆発したように、海面に叩きつけられてゆく。そして現れたのは、全身傷だらけの灰色の竜……、

「グッアッハハハハ、久しいなバウゼルよ」

轟音を奏でる。雷鳴が落ちたよう。大声は、大気をビリビリ震わせた、

「久しいなガウザー、冬眠してた筈だが?」

「ああ~我が、王自ら、おいでくだされた、これで起きなきゃ竜ではないは、グッアッハハハハ」豪快に笑う竜に、竜騎士達は、呆気にとられた、

「おお!我らが王が、お出ましだ」

バウゼルに並んで、風竜ガールダが、興奮したように、

「珍しいな、ガルーダ」

同じ飛行竜小隊長である。キロムは、驚きの声を上げた、

二匹の竜が、見る先で、赤い騎影が、徐々に迫り、二匹を抜くと、二匹は赤い竜に追従して、ついてゆく。何が起こってるのか、顔を見合せる。キロムとエルノア二人を他所に。炎竜の背にのる。見覚えのある背中に、気が付いた、



まさか……、



そんな思いで、エルノアは唇を噛み締めた、

「ガウザーは、ヘウリーを引き剥がし押さえ付けろ。僕が戻す。ハウザーは皆の救出を、バウゼル、ガールダは、操られた人間の注意を惹いて、操る者を見極めろ」

「承知」

嬉々として、ガルーダとバウゼルが旋回を開始した、イオリはいきなり、バウザーの背を飛び降りた、

「あっ……」

驚くエルノアを他所に、バウザーは、イオリに見向きもしないまま、大きく息を吸い込み、凍って身動きが出来ない。みんなの、氷だけ溶かすかのように。炎のブレスを吐いた、


凍り付いたエルノアが、目を見張る。バウゼルの鬣を掴む指が白くなった、大切なイオリ……身体は、海に……、

「そんな……、私は、あれは……?」

イオリの身体は、着水する直前。闇に包まれ、突如消えたのだ、訳が解らない。

「何が起こってるのよ?」

息を飲むエルノア、そしてイオリが、次に現れたのは……、ガウザーが、上から押さえつけた、ヘウリーの背の上である。狐に摘ままれた気がした、

「闇竜ロブノスが、王の影に住み着いて。王の身を守る。心配無用だ」

エルノアの不安を感じとり、生真面目なバウゼルが、如舌に語る。


我を忘れ、ガウザーの手から逃げ出そうと、暴れるヘウリー、イオリは安定しない竜の背に座り。リュートを構え。精霊に助力を求めると、即座に風の精霊が現れ、イオリに力を貸し与えた、イオリは歌う、音の無い音楽を奏で、人間には聞こえない音域の歌を━━━、


暴れるヘウリー、我を忘れて、操られた人々。魔法で凍らされ、恐怖に死にかける命……、イオリは、ただただ無理やり、こんなことさせる者が、許せなかった、だから願い歌う、せめて、イオリの歌が、彼等に勇気を与えることを、



━━バキ……、



何か壊れた音が、イオリに微かに聞こえた、その瞬間、

ヘウリーが暴れるのを止めた、

「ガウザー、魔物の殲滅を」

「承知」

ヘウリーが目を覚ましたと理解した、ガウザーは、船が吐き出した、魔物の群目掛けて、轟音喧しく、翼無き地竜は、身体に、電気を集め、雷鳴のような、矢となり、解き放たれる。


ガウザー着弾。凄まじい衝撃波を産み出して、それに叩きつけられた魔物は、巨大なフライパンで、叩き落とされたように、海面に落ちた、

「グァアハハハハ」

ガウザーが、豪快に笑う、


イオリは戸惑うヘウリーの首に、身体を預けながら、

「ヘウリー力を貸して、みんなを子供達を守るために」

ハッと言い終わると、咳き込むイオリに、

「ごめんなさい…、イオリ私は……」 恐怖に震える子供、そんなイメージが、感じられた、イオリが優しくヘウリーの首に頭を付けると、ビクリ身を震わせる。

「大丈夫……、僕達が一緒に謝るから、ね?」

ゆっくり首を廻らして、円らな瞳をイオリに向けて、今にも泣きそうな顔をして、

「ありがとうイオリ、私頑張ってみるわ」

ゆっくりゆっくり船に首を向けて、決意を背から感じた、イオリはもう一度リュートを構え、ヘウリーの為、呪歌を歌う、『勇者の行進』

勇気を与える歌を、


……魔物の船の上、


突如砕けた、銀色のハーブを手に、驚きと怒りを浮かべた、魔族の王ガベルは、忌々しそうに舌打ちして、魔方陣を描き。魔王ガベルは、描き消えるように、消え失せた、


ヘウリーの活躍もあって、無事に漁師達を助け出して、魔物の船を破壊して、竜騎士が、壊れた船をくまなく探索したが、壊れたハーブを見つけただけであった……、



━━━最終楽章━━



東大陸で、トレノに、竜を統べる王がいると、噂され出したのは、大掛かりの事件がトレノで、あった直後のこと、兵役についてた、メリーが、久しぶりに帰宅したのは、事件があった日から、数日後である━━━、



何も知らないメリーが、火山亭に顔をだすと、いつもより混んでる店に、やや気後れしてると、

「こっち空いてるよメリーちゃん♪」

出入り禁止の筈である。テトラが、妙にご機嫌で、手をぱたぱた振ってきた、他にカエデとリズの姿があった、訝しく思ったが、女将のデニスが、何も言わないので、どうしたのか?、首を傾げながら、テーブルに着いた、

「お疲れ様でしたメリー、そちらも大変だったようですが、トレノでも色々ありました」

疲れはてた様子のカエデは、服の袖から包帯が見える。気が付けば、リズもテトラも包帯が巻かれている。

「どうしたんですか?」

呆気にとられるメリーに、情けなさそうにカエデが、顔を曇らせ、

「怪我の為、離脱中なんです」

「ま~全身霜焼けで、痒くて仕事にならんから、休みにしてるんだがな」

「テトラぶっちゃけしすぎよ」

うろんだ目のリズは、かなり飲んでるようだ……、牛乳?に見えた、



古いテーブル、壊れかけの椅子。イオリは、リュートを構え、歌い出した、何時ものように、絵画を描くように、音楽を紡ぐ、メリーは変わらぬ姿に目を細め、早くあの胸で眠りたいと願う。



━━トレノの街にある小さな酒場、誰もが訪れ、一時の安らぎを得る酒場に、



赤毛の髪を、肩で切り揃えた、美しい少女が、ゆっくり足を運ぶ、すると影が慌てたように集まり、影から竜は、顔を出して、退散した、


まるでこのあとの修羅場を暗示するように、


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