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森の少女の冒険

作者: はっか

昔々、あるところに、好奇心旺盛で活発な少女が一人いました。

少女は、一人で、森の中の小さな小屋に住んでいました。

その森は、あまり人が通らないので、少女はまだ人に会ったことがありません。

だから、少女の友達は、森の動物たちでした。

その森は、とてもきれいなところで、少女は毎日楽しく暮らしていました。


ある時、少女が森を歩いているときに、ふと思い立って、いつもは引き返すところを、もう少し歩いて行ってみることにしました。

小さなころから森に住んでいる少女は、行ったことがあるところの景色はすべて知り尽くしていたので、進むごとにいつもと違う場所に行っているようで、まるで冒険をしているときのようにわくわくしながら歩きました。

毎日少し進んで引き返し、次の日にもう少し先へ行って引き戻し、と繰り返し、冒険を始めてから10日ほどで、少女は森とは違う、開けたところに出ました。


少女 「ここは…村?」


そう、少女が森の先に見つけたのは、小さな村でした。

好奇心旺盛な少女は、今すぐに村へ行って人と会ってみたいと思いましたが、そろそろ暗くなってきて、家に帰ることにしました。

その日ベッドで横になっても、少女はなかなか眠れず、明日を楽しみにしていました。


次の日、少女はいつもよりもずっと早く起きて、といっても9時ですが、急いで支度をし、村へ向かいました。


少女 「鳥さん、おはよう。」

鳥  「おはよー。今日はいつもより早いけど、どこかへ行くの?」

少女 「そうなの、今日は村へ行ってみるの。楽しみだわ。」

鳥  「へえ、そうなんだ。いってらっしゃい。」

少女 「うさぎさん、おはよう。」

うさぎ「おはよう。どうしてそんなに急いでいるの?それに楽しそうだね。」

少女 「うん、今から村に行ってみるんだ。」

うさぎ「村?村へ行くのかい?何をしに?」

少女 「人に会いに!」

うさぎ「やめておいたほうがいいよ。やつらは石を投げてくるんだぞ。」

少女 「気をつけるわ。」


少女は森の動物たちと会話をしながら村へ向かっていきました。

そして、村へつきました。

昨日村を見つけた時は、夕方だったので人が少なかったのですが、今はお昼。

昨日よりも活気があります。


少女 「すごく楽しそう!よし、村へ行って、誰かに話しかけてみよう!」


少女は上機嫌で村へ近づいていき、人のほうへ近寄って行きます。ところが。


少女 「すみません、すみません。」

少年 「なんだよ。お前何言ってんだ?意味わかんねえんだけど。」

少女 「え?えっと、その、もう一度言ってくれませんか?」

少年 「ほんとに何言ってるんだよ。お前外の人間だろ?お前みたいなやつ見たことないし。」

少女 「えっと、その…?」


なんと、少女と少年は会話が通じませんでした。

いえ、少女はその村の言葉が話せなかったのです!


少女 「きっと、さっきのあの男の子がガキだったから、私の言葉が通じなかったんだわ。

    大人の人だったら、通じるかもしれない。」


少女は持ち前のポジティブ精神を生かして、めげずに他の村の人に話しかけてみます。

しかし、


少女 「すみません、あの…」

村人A「なんて言ったんです?もう一度言ってください。」

少女 「ここは村ですか?お話したいんですけど…」

村人A「外の人ですか?私は他の言葉がわからないので、他の人にところに行ってください。」


少女 「すみません、私の言葉、わかりませんか?」

村人B「すみません、急いでるんです。それに、そんなわけのわからない言葉、

    理解できませんよ。」

少女 「え、あの、その…あ、ちょっと待って…ああ、いっちゃった。」


なんど話しかけても、通じませんでした。

それでもまた、少女は自分の言葉は通じるはずだと自分を奮い立たせて、

再チャレンジをしに行きます。


少女 「そうだわ!今までのように人に逃げられたら、その人をずっと追いかければ

いいんだわ!そして捕まえて、とりあえず何かを聞き出すのよ!」


そして、人と接したことのない少女は、普通ではしないような、ぶっちゃけやられたら恐怖しか覚えないようなことを、思いついては実行し出しました。


少女 「すみません、すみません。」

村人C「なんですか、忙しいんですよ。後にしてください。」

少女 「あ、待って。…待ちなさい!追いかけるわよ!」

村人C「え?なんでおいかけてくんの?こわっ!」

少女 「ちっ。家の中に逃げられたか。次の作戦を決行するか。」


少女 「すみません、あの、話を聞いてください。」

村人D「ひっ!なんで手首つかむんですか!痛い痛い助けてっ!誰かっ!」

少女 「ちょ、暴れないで!あっ!なんでそこで逃げるの!また失敗かぁ…」


少女 「どうしてダメなのかなぁ…。人を追いかけまわしたり、手首つかんだり、

    それとか待ち伏せしたり、落とし穴作ったりしたことがダメだったのかなぁ…。」


人と接したことのない少女は、当たり前のことに気付きません。

よい子は少女の真似をしないでください。

そうこうしているうちに、夕方になって日が傾いてきたので、いったん森の家に変えることにしました。


その晩、少女はひとりでいろいろと考え事をしていました。


少女「どうして人と話せないんだろう?もう少しみんなやさしくしてくれてもいいのに…

   私がダメだったのかな…まあいいや。今日は寝よう。おやすみなさい。」


原因に一瞬気付いたようでしたが、その次の瞬間少女は一気に眠りに落ちていきました。


次の日。

少女 「おはよう、今日もいい天気だわ。今日は村の人もきっと私のことを分かってくれるはず!今日こそ絶対に成功させてやるわ!」


なぜか昨日以上に闘志を燃やしながら、村へと向かって行きました。

しかし、村に着いてみると、何か様子が変です。

昨日はにぎやかでたのしそうだった村が、今日はなぜか少しだけ静かです。

不思議に思って村のほうへ歩いて行ってみます。


少女 「おはようございます。いい朝ですね…って、あれ?」


なぜか村人は、少女を見た瞬間、目線を下げて少女から逃げていきます。

それはだれに声をかけても同じでした。


少女 「なんでなんだろう?」


そのまましばらく歩いてみます。

そうすると、道にいる人が、こちらを見てひそひそと話してます。

にこっと少女が笑いかけると、あわてて目線を下げ、いままでもそうしていたかのように、

仕事などをしはじめます。

それでも少女が何かあったんだな、程度に考えて、そのまま歩いていると、少年たちがやってきました。そして、少年たちは、少女を見るやいなや、


少年A「あ、あいつだ!やっつけろ!」


と、少女に向かって石を投げつけ始めました。

いきなりのことに少女はなにがなんだかわかりません。


少女 「もしかして、この村が昨日よりも静かなのは、私のせい…?」


少女がやっとで気づきました。そうです、昨日の少女のおかしな行動が村全体に広まり、村人全員が少女を警戒していたのです。

少女はすごく落ち込みました。


少女 「何がダメだったんだろう…私だからかな…私に友達は、一生できないのかな…」


そうして、少女はとぼとぼと家に帰ることにしました。

昨日は夕方に帰りましたが、今日はお昼です。持ってきていたご飯を、道端の木の影で食べることにしました。

一人でごはんを食べていると、少女の前に人が立ちました。

不思議に思って少女が見上げると、そこには少女よりも少し年上の、女の人がいました。


女の人「あなたが、噂の女の子ね?言葉も変、行動も変で不審者の。」

少女 「えっと?何を言っているかわからないんですけど…」

女の人「ほんとに違う言葉をしゃべるのね。もしよければ、うちにこない?」

少女 「えっと、手招きしてるってことは…ついて行っていいのかな?行ってみよう。」


初めての親切な人に、少女の気分はものすごくよくなりました。

二人は、歩きながら、そして家に着いてからも、ジェスチャーなどを使って、

互いのことを教え合いました。

女の人は、村の外れのほうの小さな家に、妹と二人で住んでいました。女の人の妹は、少女よりも年下で、女の人よりも人見知りでした。

それでも、少女になついてくれたみたいで、少女が家に帰ることには、とても仲良くなりました。


女の人「またよかったら明日も来てね。」

少女 「うん、また来るね!今日はありがとう。」

女の子「…また明日。」


その夜、少女はベッドに入っても、明日がすごく楽しみで、また友達が一度に二人もできて、嬉しくてなかなか寝付けませんでした。

少女は、次の日も、その次の日も姉妹のところへ行って、さらにさらに仲良くなって行きました。

あるとき、女の人が少女にこう言いました。


女の人「ねえ、もしよければ私たちの言葉を勉強しない?そうすればもっと話せるし、

村の人にもきっと受け入れられるよ。」

少女 「それがいいわ!じゃあ、私にあなたたちの言葉を教えて!私頑張る!」


そうして、女の人の妹も含めた三人で、勉強会を始めました。

少女は日ごとにうまくなり、普通に会話ができるまでになりました。

そして、村の姉妹のところに通い、言葉を覚えるにつれて、村の人たちとも話せるようになり、だんだんと受け入れてもらえるようになりました。

少女はやがて、村で暮らすようになり、幸せに毎日を過ごしましたとさ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 村の言葉を理解しない少女の、突拍子もない行動が面白かったです。また、笑いの影に、コミュニケーションについての本質や、異なる言語を話す人との心の壁といったテーマがあるようにも感じました。 […
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