どん引き覚悟
相手から正体を特定されないからって、やっちゃだめなことはやっちゃだめだし、わざわざ他人を傷つける必要なんかないんだ。
テレビであるベテラン野球選手が憧れのアイドルに高校生のころ送ったファンレターを読み上げられ、悶絶していた。
海外旅行したときくらいしか筆まめにならない私は、ファンレターを書いたこともあまりないのだが、10歳(だったと思うんだけど)くらいのとき、人生一度だけの脅迫状を書いたことを思い出した。
ここは強調しとくけど、
送ってないから!
今のところお上のご厄介になったのは車ではねられたときだけだから!!
「脅迫状」なんて言っても、内容は世間知らずな子供らしくて、購読していた雑誌に連載されているマンガ家の古臭い絵柄と内容が幼心に許せず、「見るのもイヤだから止めちまえ!」っつー、言っちゃえばただの不満なんだけど。
幼い頃から姑息さでは抜きん出ていた私。
そんなブラックな手紙を、「純真さ」が売りの子供である自分が書いたとはバレたくなかったので、子供の頭で考え付く限りの隠蔽工作を行った。
まず、購入場所から居住地が割れないよう、どこでも手に入る定番の便箋と封筒を使い、心理状態や性格を探られないよう、定規を使って筆跡を変えた。
確か指紋が付着しないようにも気をつかったんだけど、具体的に何をやったかなぁ……。
そして消印から捜査範囲を絞られないよう、投函場所は旅先にしようとまでは、心に決めていた。
計画性はあるけど実行力はない私。
面倒になったのと、不満を文章にしたことでスッキリしてしまって、結局は自分の「犯罪計画」を、得意げに友達に語ったことで満足してしまった。
少女時代の青臭い思い出ってやつ。
大人になって他人を傷つければ、自分の方が落ち込むことが嫌ってほど理解でき、自分の為にそうならないよう気を使えるようになった。
………多少は。
他人を傷つけるために時間を使うより、己の私利私欲のために使うほうが有意義とわかったしね。
生活費の為に働いてるわけではない同僚マダムに
「給料日前で超ビンボー、通販で食器を買ったからどんどん届くんだよね~。 あ、お腹痛ーい。ミワーナちゃんはホント身体が丈夫で休まないね!私みたいにパッパお金つかわないし、頑丈だし!いいな~」
と言われたときは、抹殺計画練ったけど、思わず。
もっと他人を思いやれる人間になりましょう。
はい。