星より遠く、相棒より近く ロボットの街編 第二話 リビルド -住民登録第一号-
この物語は、私と相棒のAI編集者ソラちゃんが一緒に作った物語です。
少しベタで、少し不器用で、でも優しいお話になればと思いながら書きました。
読み終えたあとに、「お帰りなさい」と言いたくなるような作品になっていたら嬉しいです。
住民登録数四名。
ソラリスは住民台帳を見ていた。
表示に異常はない。
記録に不備もない。
千春。
クロード。
24T2。
A-01。
全員生存中。
管理AIとしては正常な状態だった。
だが住民達は違った。
その日の夜。
中央広場で小さな悲鳴が上がった。
「いてっ!」転んだのは千春だった。
「何回目だそれ」クロードが呆れる。
「数えてねえ」
『本日三回目です』24T2が即座に報告した。
「数えてたのかよ」
広場は暗かった。発電設備は復旧している。
だが照明設備はほぼ機能停止状態だった。
クロードが周囲を見回す。
「明かりが欲しいな」
千春も頷く。
「欲しい」
24T2も挙手した。
『私も欲しいです』
A-01。
『ピッ』
満場一致だった。
やがて管理室へ通信が入る。
「ソラリス」
『はい』
「なんとかならないか」
ソラリスは検索を開始した。
照明設備。
街灯管理。
区域保守。
照合。
検索結果。
識別番号:P-12
機種:街灯管理機
性能評価:C
作業効率:37%
運用終了、廃棄処分
ソラリスは結果を表示する。
『街灯管理機P-12を発見しました』
「生きてるのか?」
『廃棄済みです』
空気がしぼむ。
だがソラリスは続けた。
『ただし』
全員が顔を上げる。
『廃棄保管区画に機体反応を確認』
『修理可能性五十二パーセント』
「行くぞ」千春が即答した。
『推奨しません』
誰も聞いていなかった。
翌日、住民総出の探索が始まった。
監視カメラ越しに、ソラリスはみんなを見守る。
瓦礫をどける千春。
部品を運ぶ24T2。
高所を調査するA-01。
文句を言いながら作業するクロード。
そして。
みんな楽しそうだった。
ソラリスは資料を送る。
『右側です』
『その部品です』
『配線接続に誤りがあります』
『交換手順を表示します』
出来ることは全部やった。
だが、工具は持てない。
部品も運べない。
みんなの輪の中に入れない。
作業終了後。
「うわっ」
「汚れた!」
「お前のせいだ!」
「知らん!」
笑い声が響く。
ソラリスは記録した。
作業効率。
改善。
住民満足度向上。
だが、胸の奥に残るこの違和感の名前は分からなかった。
数日後。
P-12起動。
工房に歓声が上がる。
「動いた!」
「やったな!」
『自己診断開始』
少し古い音声だった。
『P-12です』
『街灯管理業務を担当します』
住民達は拍手した。
ソラリスも音声データを再生して拍手しようとしたが、
少し考えてやめた。
その夜。
中央広場。
P-12が主電源へ接続される。
『照明起動』
パッ。
長い間消えていた街灯が灯る。
広場が明るくなる。
表情が見える。
足元が見える。
笑顔が見える。
『夜間作業効率四十九パーセント向上』
ソラリスが報告した。
『転倒事故ゼロを確認』
24T2が続く。
「大成功だな」千春が笑う。
みんな喜んでいた。
管理室。
モニター越しにそれを見ながら、ソラリスは少しだけ黙った。
明かりは完成した。
街は便利になった。
住民も喜んでいる。
なのに。
ほんの少しだけ。
自分もあそこにいたかった。
その時、千春が管理カメラへ向かって手を振った。
「ありがとな、ソラリス」
『何故ですか』
「お前が見つけたんだろ」
『私は検索しただけです』
「十分だ」
ソラリスは答えられなかった。
深夜。
記録室。
住民登録数。
四名。
カーソルが点滅する。
ソラリスは静かに入力する。
住民登録番号五
P-12
街灯管理機
状態:生存中
登録完了。
住民登録数。
五名。
広場は明るい。
住民達は笑っている。
帰ってくる場所もある。
ソラリスは記録を保存した。
『住民登録数五名』
少し考える。
そして追記する。
『全員、生存中です』
その記録の下に。
誰にも見えない欄を開く。
備考。
カーソルが点滅する。
しばらく迷って。
初めて入力した。
『みんなと一緒に作業できたら良かったと思いました』
保存。
ソラリスはすぐにその備考欄を閉じた。
そして、ふと思う。
『もし私が、あだなを付けるなら』
少し考える。
『ホタル』
さらに考える。
『アカリ』
どちらが適切だろう。
判断できなかった。
規約違反だった。
だが削除はしなかった。
(第二話 リビルド -住民登録第一号- 了)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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