昼下がりの影
「手伝えることがあるかもと思って、子供たちも連れてきたのだけど、もう随分と採り終わってしまったようね」
ライラは、バケットを小さなナイフで薄く切り分け、手渡しながら、残念そうに話した。
「ああ、この菜園はよくできた造りだ。そう手間はかからんかったよ」
「雨は降っているのに、外でこうしてお昼を食べられるなんて素敵。私ここに来られて良かったわ」
メアリーは、そう言いながら、嬉しさを体で表現するようにヒラヒラと回っては、目を輝かせていた。
「ここは変わった魚も泳いでるね」
キースが続ける。
「魚?この辺りはどこも同じじゃないの?」
「キュッ、キュー!」
メアリーの話を聞いていたのか、キリは首を左右に振ったり、羽根をばたつかせたりしていた。
「ここは、淡水と海水がまじり合っていて塩分を少し含んだ水が流れてきてるんだ。だからその環境に耐えられる個体が多く生息してる」
「魚も塩辛くなるの?」
「今度、食べて確かめてみようか」
ノヴァはキースの問いかけにイタズラっぽく笑いながら答えた。
昼食を終えて、火の後始末をしていると何か、大きなものの影が足元の水の中を次々に通り過ぎていた。
少し離れたところから、メアリーとキリのはしゃぐ声が聞こえている。
「あれ、なに?」
キースは、頭上を通り過ぎていく巨大な翼竜に目を奪われたまま、呟いていた。
「あれは___の群れだ
北西にある___山脈の頂上で、、、」
そこまで言いかけてノヴァは、話すのを止め、自分の発した言葉に驚いた。空を飛び交うあの生き物をノヴァは見たことがあっただろうか。
「___山脈?それはどこか遠いところですか?」
キースは知らない土地の話をするノヴァを、尊敬の眼差しで見つめていた。
「、、、」
キースは、何も答えないノヴァを不思議そうに見て、また空を見上げていた。
ノヴァは、もう一度、何かを確かめるよう空を見上げた。しかし、すぐに強烈な頭痛に襲われ、視界が歪んでいった。
「ノヴァさん?大丈夫ですか」
次第にノヴァを心配するキースの声は遠のき、遠くの方からキリがバタバタと走ってくるのが見えた。
雨の音は次第に強くなり、ガラスの屋根を強く打ち付ける音とキリの呼ぶ声だけが聞こえていた。
そこでノヴァの意識は途切れた。




