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7/7

謝罪会見は丸坊主で。国王陛下、ヘッドハンティングは「定時外」にお願いしますわ

 翌朝、午前七時十分。

 私は王都の目抜き通りにあるお洒落しゃれなテラス席で、焼き立てのクロワッサンを頬張ほおばっていた。

 手元の魔導端末(PC)には、予約投稿の成功を知らせる『爆撃完了』の文字。


「ふふ、今朝もいい反応(魔力)ですわ。感想欄が『ゴーレムの乙女心に泣いた』という声であふれていますわね」


 そんな私の目の前、広場の巨大な魔導スクリーンが突如、生中継に切り替わった。

 画面に映し出されたのは、ススまみれのまま、震えながらひざまずくステイシア。


 そしてその隣には……かつての傲慢ごうまんな面影も失せ、磨き上げられた魔導具のように、見事に「丸坊主」になった元婚約者、レナード・エル・フォークス。


『……我らの不手際により、守護ゴーレムが一時沈黙。隣国に付け入る隙を与え、国家存亡の危機を招いたこと、誠意(丸坊主)をもって謝罪いたします……ッ!』


 レナードが、ツルツルの頭を地面にこすりつける。

 ステイシアも、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で絶叫した。


『私が、私が責任を取りますからぁ! 一生、大公家の魔力炉で、奴隷どれいのように働きますからぁ!!』


 魔導カメラのフラッシュが、容赦ようしゃなく二人の無様な姿を王国中に配信する。

 視聴者(国民)からの弾幕コメントは、もはやお祭り騒ぎだ。


『正社員(笑)になれてよかったね!』

『一生、その現場から出るなよ!』


(……あら。レナード様、金髪の時より、今のほうがよっぽど輝いていますわ。……物理的に)


 私がハーブティーを一口すすった、その時だ。

 スクリーンの映像が乱れ、黄金のローブをまとった威厳いげんのある男性——国王陛下が画面に乱入した。


『もはや、その者たちの醜態しゅうたいはどうでもよい。余が今、言葉を交わしたいのは……一撃でゴーレムを鎮めた、特級派遣・ユリカ嬢。そなただ!』


 突如、街中の浮遊カメラが一斉に旋回し、私のテラス席をフォーカスした。

 王国中の魔導スクリーンに、ジャムを口元につけた私の顔がアップで映し出される。


『ユリカ嬢よ。そなたの力、もはや一介の派遣に留めておくには惜しすぎる。……余の直属として、王宮魔導師長(正社員の頂点)の座を用意した。年俸は一億魔石……どうだ、余の右腕にならぬか!?』


 全読者……もとい、全国民が固唾かたずを呑んで見守る中、私は優雅にナプキンで口を拭った。


 そして、カメラのレンズ越しに、慈愛に満ちた微笑みを向けた。


「陛下。……大変光栄ですが、お断りさせていただきますわ」


『な、何……!? 一億魔石だぞ!?』


「私は『派遣』ですので。……責任の重い正社員の座は、あちらで丸坊主になっていらっしゃるレナード様や、志の高いステイシア様にお譲りいたします。……あ、それから」


 私は、カチリと魔導端末を閉じ、かばんを肩にかけた。


「現在、午前七時二十分。……まだ『定時外』ですので、ヘッドハンティング等の公務に関するご相談は、九時以降にギルドを通していただけますかしら?(棒)」



 王国中の時間が止まった。

 国王の勧誘を「定時外」の一言で切り捨てた派遣聖女。


 私は、呆然とする国王と、丸坊主のレナード、そして絶叫するステイシアの三分割画面を背に、再び『不夜城』へと向かうために席を立った。


「さて。今日はどんな『バグ』が、私を待っているのかしら?」



(完)

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!


 現場の理不尽をハタキ一つで修正していくユリカの物語、これにて一区切りとなります。

 レナード様の丸坊主が、いつかどこかの現場の「希望の光」となることを願いつつ(笑)。


 もし「定時外の断り、最高!」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援いただけると、作者の時給(執筆意欲)が爆上がりします!


 また別の現場(作品)でお会いしましょう!

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