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深夜の現場は『お偉いさん』で大渋滞。私はお先に、温かい紅茶と執筆を

 深夜二時。

 特級技術者派遣ギルド『レッドライン』が用意してくれた専用宿舎の個室は、驚くほど静かだった。


「ふう……。やはり、最高級の魔導椅子は、腰への負担が違いますわね」


 私は、絹のパジャマに身を包み、れたてのハーブティーを一口すすった。


 窓の外には、遠くの方で赤黒く光る『不夜城ブラック・キャッスル』が見える。

 あそこでは今頃、地獄の光景が繰り広げられているはずだ。


(……想像するだけで、胃が痛くなりそうですわね。もっとも、責任を負わない私には関係のない話ですけれど)


 私は、魔導端末(PC)に向き直った。

 連載中の『派遣聖女は公表しない』の管理画面が開かれている。


「あら……。ブックマークがまた増えていますわ。感想欄も、『ユリカ様スカッとした!』『あの悪役令嬢、ざまぁ見ろ!』と、温かい魔力コメントあふれていますわね」


 読者様からの反応こそが、執筆者にとって最高の栄養剤。

 私は、今日現場で見た「ススまみれで絶叫するステイシア様」の顔を思い浮かべながら、指先を滑らせた。


「よし。ここの描写は、もう少しリアリティを足しましょう。『背後に立つ課長クラスの無言の圧力に、指先を震わせながら魔力を注ぎ込む悪役令嬢』……ふふ、筆が乗りますわ」


 カチカチ、と軽快なタイピング音が静かな部屋に響く。



 一方、その頃。

 灼熱しゃくねつの『不夜城』では、ステイシアが文字通り「詰んで」いた。


「おい、ステイシア! 出力がまた0.5パーセント低下したぞ! 正社員のお前が、ユリカ様の直した魔力回路を維持できなくてどうする!」


 背後で腕を組み、冷酷な視線を送るのは、本部の『魔導予算執行官(課長)』だ。

 横には『総括魔導監(工場長)』も並び、物理的な重圧をステイシアに浴びせている。


「ひっ……あ、ああ……! でも、魔力がもう……!」


「言い訳はいい! 責任を持って、夜明けまで出力を保持しろ! これが失敗すれば、我が大公家の今期の予算は水の泡だぞ!」


 ススと油にまみれ、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしたステイシア。


「あ、あああ……ユリカぁ……! なんで、なんでアンタは今頃寝てるのよぉ!!」


 ステイシアの絶叫は、轟々(ごうごう)とうなる魔力炉の音にかき消されていく。



 翌朝、07:10。

 私は優雅に目覚め、予約投稿の「爆撃」が成功したことを確認した。


「おはようございます、世界。……さあ、今日も定時まで、適当にお仕事をして差し上げましょうかしら」


 私は、ステイシア様の「その後」を特等席で眺めるために、再び『不夜城』へと向かう準備を始めた。

 第5話もお読みいただき、ありがとうございます!


 普段は見かけない「お偉いさん」がゾロゾロと集まってくるあの独特の空気感……。

 背後に立たれるだけで、いつもの作業が何倍も難しく感じるプレッシャーを、ステイシア様には存分に味わっていただきました(笑)。


 責任を負わされる正社員と、技術だけを提供して優雅に執筆を楽しむ派遣。

 物理的な温度差だけでなく、「心のゆとり」の格差も描いてみました。


 面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークで応援いただけると、次なる『爆撃(執筆)』への大きな活力になります!

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