第八話 杏仁豆腐
現役学生で自炊する筆者がレシピをメモるついでに書いたものです。
「はぁ...」
美味のため息は、養花天に吸い込まれて消えていった。
季節は春を迎えた。三寒四温、出会いと別れ、様々の変化の時期だ。人々はせわしない世界にもまれて思い悩み、喜び悲しみ、そして新たな年度を迎える。
その例に漏れない一人はだんだん薄暗くなる日暮れに向かってぼんやりと不安を反芻してはため息として吐き出していた。
「こんな時は甘いものでも食べたいな」
そういえばゼリーを作ろうと買って余っているゼラチンとみかんの缶詰があったはずだ。気分を変えるためにも冷やして固めるだけのゼリーなら楽に作れるしちょうどいいだろう。
「あ、そういえばこの前の動画で見た中華屋さんの杏仁豆腐がおいしそうだったなー」
いつぞやに見た動画のことを思い出して杏仁の口になった美味は冷蔵庫から牛乳を取り出した。
「これでどうにかできないかな?」
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【(なんちゃって)杏仁豆腐】
食材:牛乳 砂糖 ゼラチン フルーツ缶 おやつで買ったミックスナッツのアーモンド
1.少しの水と砂糖を入れた鍋を温めて砂糖を溶かし、沸騰する前くらいにその3倍の牛乳を追加して混ぜながら温める。沸かすと牛乳が吹きこぼれるから弱火で。砂糖は大体200ccで大さじ1くらいかな。
2.温めているうちに規定量のゼラチンを水に溶かしておいてさっきの鍋に加えて混ぜる。生クリームとかあったらここで入れるとおいしそう。ぜいたく~。
3.器に入れて冷やしたら完成!私はそこにみかんの缶詰と心ばかりの杏仁要素としてアーモンドを乗せたよ。
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「もう日が暮れてる、あっという間だ」
杏仁作りで少しリフレッシュし、PCをひらいて細々したタスクを進めていたが、今日は終わりにしよう。お風呂に入って簡単にご飯を食べた。
「今日はご褒美、あるもんねー」
冷蔵庫を開けるとできあがった杏仁はしろくつるりとおいしそうに輝き、暗い気分は和らいで自然とほほは緩んでいく。みかん缶とアーモンドを乗せてシロップもかければ素敵なデザートの完成だ。スプーンですくいあげると、ぷるぷるとかわいく揺れている。そこを一口______。
「とろとろでやさしい甘さだぁ。癒されるぅ~」
滑らかなくちどけに牛乳の味が広がり、みかんの酸味とシロップの甘さが程よくバランスをとっている。アーモンドは思い付きだったがアクセントとして面白かったんじゃないだろうか。
残りの缶詰をタッパーに入れて杏仁と冷蔵庫にしまう。また次の日のお楽しみができた美味は少し元気を取り戻した。
「明日もいい日になればいいな」
部屋の電気を消すと不安だった朝はもう薄れており、穏やかに一日が終わっていくのだった。
今日はちょっぴりしんみり回でした。
お料理は心を豊かにしてくれますね。




