第一章 三十一話 『保健室にて』
ん。
ここは...?
視界に映ったのは見たことのない天井。
端には靡く白いカーテン。
...どういう状況?
オレなにしてたんだっけ。
まだ呆けた頭で体を持ち上げる。
なんだか怠いなぁ。
それにクラクラする。
「あら、大丈夫?かなり消耗してた様子だったけど」
シャッと音を立ててカーテンを開ける白衣を着た女性。
黒紫の長い髪に艶やかな口元にはほくろ。
いかにも大人の女性という感じだ。
「...あの?」
「ん~。まだ頭が働いて無いようね。貴女、シューカ先生が運んでくれたのよ」
「シューカ先生......」
!
そうだ!
思い出した!
オレ、シューカ先生と戦っていたんだった。
でも、途中までしか覚えてない。
お父様の魔力を使ってそれで...。
ああ、そうか。
「ここは、保健室ですか?」
「そうよ~。ケガは無いようだったけど、気を失っててね。二時間くらい寝ていたのよ」
「そうだったんですね...」
やっぱりか。
強かったなぁ、シューカ先生。
流石に魔力専校の教師だよな。オレ程度の戦力じゃあ敵うわけない。
「ふふ。そんなにしょげなくてもいいんじゃない?」
「え?」
「顔に思いっきり出てたわよ。負けちゃった、悔しいって」
「い、いやそんなことは...」
「貴女、見た目によらず好戦的なのね。私としては好きよそういう向上心のある子は」
オレが好戦的?
どちらかといえば平穏に暮らしたい平和主義なんだが?
それに別に悔しいとは思ってないんだけど。
そんな顔してた?
「シューカ先生も嬉しがってたわよ。ここまで私を追い詰めた生徒は娘以外では初めてだって」
む。
それはなんか悔しい気がする。
「ムスッとしちゃって。かわいい娘ね貴女。やっぱり悔しいんじゃない?」
ニヤニヤしながら問い詰めてくる保健室の先生。
「なんか、楽しんでません?」
「あたりまえでしょ。貴女、自分でわかっていないようだけど、熾天召喚したシューカ先生は魔力専校でも屈指の実力よ。それに喰らいついた生徒なんて本当に娘さんのラフィーネアちゃんくらいだもの。まぁ、あの子は規格外だったけどね。あっという間に四聖賢に上り詰めて二年生の春から王都の筆頭魔術技師になっちゃったもの」
あの魔法少女そんなに凄かったんだな。
「それに、魔力専校を出るときシューカ先生と本気の喧嘩になっちゃったらしくて戦った挙句、先生の方が手も足も出せず負けちゃったらしいわ。流石に実の娘を死地に送り出すようなものだから妥協できなかったんでしょうね。本来先生としては、王都の魔術研究所の教授にしたかった様だから、戦いとは無縁のところでしょうし」
聞けば聞くほどヤバい娘だった。
シューカ先生に勝つなんて、今は全く想像がつかない。
「ちょっといいかしら?」
ぐわしっ、と保健室の先生の肩を後ろから握る手が見える。
視線を上に移すと怒りの表情のシューカ先生が立っていた。
「あ、あら…?」
「人の家庭事情をあんまり語るものじゃないですよ?パーネ先生?」
「そ、そうですね。申し訳ないわ、シューカ先生。テヘヘ」
テヘヘって…。
「まぁいいわ。アルさんはもう大丈夫?」
「あ、はい。まだクラクラしますけど、それくらいです」
「それなら良かった。多分クラクラするのは魔力の消耗が原因だと思うから、その内回復するわ。今日はゆっくり休んで。午後の授業も終わっちゃったから、授業内容まとめたプリントを後で渡すから寮に戻ったら目を通しておいて」
「ありがとうございます。倒れちゃってすみません」
「そんなこと無いわ!私こそごめんね。でも、おかげで貴女の実力が知れたし、魔術クラスに魔闘演武の出場枠を一つ頂ける事になったわ!」
!
「え、でもそれって四聖賢の推薦が必要とか言ってなかったですか?」
「ええ。それがどういうわけか四聖賢からの要望でね、今年の魔闘演武には一年生の三クラス全てに一人ずつ代表を出場させて欲しいときたのよ」
「へぇ…」
「今の状況だとアルさんが推薦されるべきでしょうけど、開催まであと三ヶ月程あるし本人次第で生徒の成績がどう変動するか分からないから、アルさんも追い抜かれないようにしっかり鍛錬しましょうね」
それはそうなんだけど。
なんか含んだ言い方じゃない?
「ふふ。どうやら私とアルさんの演習を見たクラスの子達がね、すごい気合い入っちゃったみたいなのよ。私たちもあのくらい戦えるようになりたいって」
よく分からないけど、感化されちゃったみたい。
「今まで魔術クラスで劣等感を感じていて授業を聞き流していたような子達も、どうしたらもっと強くなれますかって聞きにきたりとかね!まるで絵物語を読んだ子供みたいに目を輝かせてね。私も気合い入っちゃうわ!」
シューカ先生の目も輝いてますよ〜。
「ちなみに、出場者はどうやって決めるのでしょうか?」
「魔闘演武の日付に近くなったらクラス内でまた演習をする予定なの。その成績で出場者を決めるからそれまで頑張ってね。期待しているわ」
「これは、保健室は平年以上に忙しくなりそうですね…」
パーネ先生が冷や汗を滲ませている。
そうだよな、多分大会までどんどん演習などの戦闘訓練が増えるだろうし。
しかし、三ヶ月もあったらより強くなるには十分な時間がある。
ディエン君とかイリーから抜かれて魔闘演武出場の出場枠を奪われかねない。
こりゃあ、オレも頑張らないといけないな。
ただ、オレには一つ不安要素がある。
魔力の補填どうしよう…。
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