第一章 二十九話 『vs ③』
(なんて威力なの…!?私のディフェンシング・スフィアにヒビが…!)
オレの攻撃を防いだスキルディフェンシング・スフィアの全面には拳大の凹みが生じ、そこから放射状にヒビが入りバラバラとチリのような光が宙に舞っていく。
「な、何だ…。今の…?」
観ていた男子生徒が唖然とながら話す。
「う、うん。ほとんど何にもわからないうちにシューカ先生が吹き飛ばされてる…」
見えなかったと男子生徒の隣の女子生徒が返答する。
「…アル・ガル・シアン嬢がとてつもないスピードで接近し、渾身のパンチをぶつけた。それに対しシューカ先生は咄嗟にガードスキルを発動させたみたいだが、スキルごと吹き飛ばされたんだ」
見えていたディエン君が戦いの展開を説明する。
「…ディフェンシング・スフィア。アレはそう簡単には破壊できない程の濃密な魔力の障壁だ。君達の知るディフェンシング・ウォールよりは強固では無いにしろ、攻撃を逸らすと言う意味では最適なスキルのはずだったのだが…」
額に汗を滲ませ生徒たちに解説しているセドル学年主任。
(今のは身体強化スキルだったのか…?いや、私にはそうは見えなかった。踏み込みの一歩目から最高速度であろう速さで接近していたし、その際に身体強化スキル特有の魔力の流れが無いように感じた。先程のイリーとディエンのスキルを吹き飛ばしたスキルについても解らない…。アル・ガル・シアン。お前は一体何をしているのだ…?)
「ふぅ…。良い攻撃だったわ。まさかこのスキルにヒビが入るなんて」
ディフェンシング・スフィアのスキルを解いて砂埃のついた服を手で払い落としながらオレの元へ近づいて来る。
「ありがとうございます。…でも、私の渾身の一撃だったのに無傷なんですね」
「またもや驚かされちゃったけど、あの程度ならまだまだ防ぎようがあったもの。…あら?肩で息をしている様だけど疲れちゃった?」
確かに、あの一撃にイリーとディエン君のスキルから吸収した魔力を全て注ぎ込んだ。
だからこれからは自分自身の魔力で戦わなければいけない。
本来、この世界に居る生物は生命力と共に魔力は日々の食事や呼吸などで空気中の魔力を取り入れて自分自身の身体から作り出される。
実を言うと、オレ自身魔力を生み出せない身体なのだ。
恐らく俺の身体は剣であり、生命体では無いのが理由だと思う。
代わりにオレには先天性スキルであるlead to perfect (リード・トゥ・パーフェクト)と後天性スキルの魔力解放を組み合わせて、外的な魔力を吸収し放出することができる。
これがお父様とオレで開発した“混合スキル”『リベンジ・エミテッド』であり、リベンジ・エミテッドには他に相手の攻撃スキルを吸収し、体内の魔力と相手スキルの魔力と混ざり合う一瞬のみ吸収された相手の攻撃限定で完全防御できる。
「…大丈夫です。問題ありません。続けましょう!」
「ふふっ。安心したわ。…じゃあ、行くわね!」
シューカ先生の目つきが変わる。
「宵闇に射す天啓の煌 ———」
!?
これって…
「我、シューカ・ユー・ノーライアーの名において御身の名を発す事をお許し下さい ———」
シューカ先生は言葉を紡ぐと共に、両手に持つ杖を天へと掲げる。
「暁天大皇『ウーシアス』」
名を発した刹那、天より舞い降りる“それ“はシューカ先生の眼前に降り立つ。
「…これが…」
「ええ。シューカ先生の先天性スキルであり、得意とするスキル『熾天召喚』。なかなかお目に掛かることの出来ないものだから生徒諸君は刮目するように」
「腰抜けぇ…!」
「あれを引き出したアル・ガル・シアンのポテンシャルには目を張るものがあるな」
(シューカ・ユー・ノーライアー。貴女の願い聞き届きました。さて、いかが致しましょうか?)
「ありがとうございます。貴女様のお力をお貸し下さい。あそこに居る少女の実力を測りたいのです」
どうやら、オレが思った通り召喚するスキルだったようだ。
希少なスキルでなかなか見れないらしい。
前にお父様が言っていた。
(賜りました。あそこの少女でs…!)
ウーシアスと呼ばれる女神はオレを見ると驚きの表情を見せる。
「?」
何だ?
あの女神みたいな人、オレを見たら固まっちゃったんだけど。
「?…ど、どうしました?」
(なぜ…あの御方が此処にいらっしゃるのですか…?)
「あの御方?」
(…まぁ、いいでしょう。力を貸しましょう。私もあの者が気になりますので。私の勘違いでは無ければあの者は…)
「え、えぇ…。ありがとうございます?」
シューカ先生の返事を聞いた女神は先生の中に宿る。
淡くオレンジ色に光るシューカ先生の身体。
よく分からないんだけど、シューカ先生の準備が整ったようだ。
オレも気を引き締め直して行くとしよう。
ただ、もう二人の魔力は使い果たしちゃったから、お父様から貰った魔力を使おう。
本当は、魔闘演舞までとっておこうと思ったけどシューカ先生がここまでしてくれたんだったら遠慮なく使う。
「じゃあ、私も思いっきり行きます!」
「ええ!遠慮はいりません!」
(試させて貰いましょう。本当に“器”に値する者か…)
お互い頷くと同時にオレはシューカ先生の右方向に曲がり込みながらダッシュする。
「先までのスピードは無いようね!」
「ふん…!!」
「くっ!」
オレはシューカ先生から10M程離れたところで拳を振り下ろし地面に叩きつける。
ドコンという音と共に地面が盛り上がって砂埃を巻き上げる。
「目眩しね!でも…!」
砂埃から逃げるようにシューカ先生は後ろへ跳ぶ。
(天啓 — 『熱視確』)
シューカ先生の黒の瞳がオレンジ色に光る。
「正面!」
バレた!
巻き上げた砂煙の中から踏み込んで飛び出したオレをオレンジの瞳が捉えている。
あの状況でもオレを視認できていたのか!
(天啓 — 『仙炎帝・壬』)
シューカ先生の右手に持つ大きな杖の先が赫く光り輝く。
「ハッ!!!」
横に振った杖の先から炎の刃がオレを襲う。
「『魔力解放』!」
お父様!借ります!!
魔力解放スキルを使用した瞬間、薄紫色の髪がより濃い紫色に変化する。
バチバチと音を鳴らしながら、黒紫色の火花が身体中に舞う。
「な、何!?」
(不純な魔力…!やはり私の間違いだった…?)
解放したお父様の魔力によって身体能力が向上する。
前方に迫る炎の刃を頭を伏せて避ける。
そのままの勢いでシューカ先生へと突進をする。
「はぁあああ!!!」
握り締めた右拳をシューカ先生に目掛けて突き出す。
「同じ攻撃は喰らわないわよ!!」
(天啓 — 『陽炎・残身』)
オレの目の前に炎がいきなり舞い上がる。
目を凝らしながら舞い上がった炎の先に居るシューカ先生を捉えながら、リベンジ・エミテッドで瞬時に炎を散らす。
入った!!
オレの距離だ!!
が、
オレの前に居たはずのシューカ先生が残像と共に消える。
「!?」
「こっちよ!」
頭上にいるシューカ先生と目が合う。
(天啓 — 『仙炎帝・壬』)
同じ技だ。
また杖から炎の刃が飛んでくる。
「しまった!!—— なんてねっ!」
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